耳慣れない「鉄道パーサー」という職種。新幹線や特急列車で飲食物などの販売をしている方々のことです。車内販売以外に、電車内で切符の販売、観光案内、具合の悪い方へのケアなど、車内での接客を主におこなっています。サービス以外の安全確認やトラブル時の誘導も業務のひとつです。 本記事ではそうした鉄道パーサーの仕事内容から就職・転職のルート、年収、そしておすすめの資格などをご紹介しています。記事の最後には鉄道パーサーに関する本、鉄道パーサーの基本となる「おもてなし」に関する本を紹介しています。こちらの書籍もぜひ参考にしてみてくださいね。
耳慣れない「鉄道パーサー」という職業があります。鉄道パーサーとは、新幹線など中・長距離を走る鉄道車両内で車内販売をおこなうサービス業をしている人たちのことをいいます。鉄道会社版の客室乗務員と呼ばれることもあります。
車内販売から安全確認、乗客が快適に過ごせているかどうかなど、視野の広さが重要です。細かな気遣いがなければ十分には務まらない職業です。
鉄道パーサーは具体的にどんな業務をおこなっているのでしょうか。この章では鉄道パーサーの仕事内容をご紹介していきます。
鉄道パーサーの仕事は会社によって異なります。新幹線や特急列車のワゴン販売、乗客への対応があげられます。地方の鉄道会社で無人駅が多い場合、車内での切符の販売や観光案内を主な仕事としていることもあります。
通常時の販売、乗客の案内や安全確認以外に、重要なのは緊急時の乗客の誘導です。
鉄道会社によっては、鉄道パーサー以外の担当業務となっていることもあります。しかし緊急時でも落ち着いて行動できるかどうかは、鉄道パーサーとして必要な素質のひとつであるかもしれません。
給料は、就職先の鉄道会社によって異なりますが、平均すると300万円〜400万円の間となっています。
基本的な給与形態は月給制ですが、乗車する列車の走行距離によって給与が上乗せされることもあります。たとえば寝台列車での業務を担当した場合は泊まりがけの仕事となるため、数万円が上乗せされます。
売上ごとにインセンティブが発生することも。稼ぎ方にはさまざまな方法があるようです。
鉄道パーサーになるには、鉄道会社もしくは鉄道パーサーの派遣をおこなっている関連会社に就職しなくてはなりません。鉄道会社への就職自体は人気があるため、就職難易度は高いでしょう。
車掌や駅員、運転士などの現場職は、実は高卒が最終学歴の方がもっとも多いと言われています。そのため鉄道パーサーを目指す方も高卒からの就職は十分に可能性があるといえます。
大卒で入社する方のほとんどは、本社・支社での総合職に就きます。これは逆にいえば、現場職で働きたい場合は高卒での就職を目指さなければいけないということです。自分がどちらの職種で働きたいのか、よくよく考える必要があるといえます。
現場職の採用は、運転士への登用を前提にすすめられます。それ以外の職種を考えて採用されることも多いですが、基本的には運転士を前提に採用がすすめられます。
その際に大切なのが適性検査です。運転業務に携わる仕事には国が定めた明確な基準があり、入社試験ではその点を見ています。鉄道運転士の就職についての詳細は「5分で分かる電車運転士」の記事も参考にしてくださいね。
適性以外には、精神的タフさも重要とされています。実際、駅にいる時や電車に乗っている時に感じる方は多いかと思いますが、何かしらのトラブルと隣り合わせの職業であることは間違いありません。
トラブルが起きないように広い範囲に目を光らせ、その上で快適な乗車体験を提供しなければなりませんから、精神面が強いことはひとつの強みとなるでしょう。
結論からいえば、中途採用枠は存在します。異業種からの転職も可能といえるでしょう。
しかし、受験するには年齢制限が設けられています。募集は不定期におこなわれているので、随時、気になる鉄道会社のHPを確認してみてください。地方私鉄、第3セクター鉄道会社は人手不足の会社が多いため、中途での採用確率は高くなるかもしれません。
鉄道パーサーになるために必須の資格というのはありません。強いていえば、海外旅行客の利用が多い職業であるため、英語や中国語、韓国語など基礎的な勉強はおこなっておくとよいでしょう。
他にも余裕があれば取得したい資格をいくつかご紹介します。
1つ目のおすすめ資格は「旅行業務取扱管理者」です。この資格は、旅行業者は営業所ごとに旅行業務取扱管理者の資格保有者を1人以上、管理および監督業務をおこなう義務のもと、実施されている資格です。
主にツアー企画運営会社に就職する方が取得しています。
資格には「国内旅行業務取扱管理者試験」と「総合旅行業務取扱管理者試験」、「地域限定旅行業務取扱管理者試験の3種類があります。旅行業界で唯一の国家資格ですので、自分が担当する業務と照らし合わせ、取得しておくとよいでしょう。
参照:全国旅行業協会
鉄道を利用するのは健常者だけではありません。体に何かしらの障害を持った方や、歩行が不自由な方も利用しています。各駅ではリニューアルと同時にスロープをつけたり、ホームの幅を広くするなど、バリアフリーな造りにすることも少なくありません。
しかし造りが便利になっているからとはいえ、駅員や鉄道パーサーの介助は今後も必要です。そんな場面に遭遇した場合に、一人ひとりに適切なサービスをおこなうことができるのが「サービス介助士」です。
サービス介助士は駅だけでなく、空港やデパート、飲食店など場所を問わず活躍しています。今後の社会で必要なスキル・知識を学べるので、取得しておいて損はないでしょう。
参照:日本ケアフィット共育機構
- 著者
- 関大地
- 出版日
著者の関大地氏はJR東日本の車掌で、高崎線の英語アナウンスがSNS上で話題になり、英語車掌として知られるようになりました。この本では、関氏が鉄道マンになるためにやったことやJR東日本に入社してからの体験談が載っています。
車掌になるには駅員を経験するのがほとんどですが、関氏の場合、入社してからしばらくは保線作業を担当していました。保線作業員から車掌に転身した珍しい経歴を持っています。車掌として乗務していて緊急事態が発生したとき、保線作業での経験を活かすことができたという体験談を書いています。
外国人観光客の増加にともない、英語や中国語などの外国語や日本語による自動放送を耳にすることが多くなりました。しかし、トラブルが発生時、外国語で案内をできる車掌は多くありませんでした。そうしたトラブル発生時にこそ、車掌による車内アナウンスが重要であるということが書かれています。
他に、鉄道に関する雑学や、東日本大震災後の計画停電からおこなったドア対策の経験なども載っています。
旧態依然とした業界に、新風を吹かせていくにはさまざまな努力や想像力が大切だということが分かりますね。鉄道関連の業界への就職を考えている方におすすめできる本です。
- 著者
- []
- 出版日
この本には、2名の女性の鉄道パーサーへのインタビューが掲載されています。鉄道パーサーだけでなく車掌・運転士・保線作業員など鉄道に携わっている方のインタビューもあります。
インタビューの内容から実務、鉄道業界全体を知ることができる本だといえるでしょう。鉄道業界への就職を考えている方にぜひ一読してもらいたい内容が詰まっています。
また、鉄道会社の情報だけでなく鉄道学科がある高等学校や専門学校もあります。鉄道業界への就職を志望し、鉄道学科がある高等学校に進学することを考えている場合、中学生にも読んで欲しい本といえますね。鉄道学科がある専門学校なんかも紹介されています。
この本には鉄道会社の情報が詳しく掲載されているので、就職活動の参考にもなるかもしれません。
- 著者
- 誠, 山口
- 出版日
この本では、鉄道パーサーと同じように快適なサービスを提供する客室乗務員(CA)の歴史を学ぶことができます。戦前、敗戦後のGHQの統治下、独立後から現在にいたるまでの客室乗務員が対象です。
たとえば、客室乗務員の呼び方がエアガール、エアホステス、スチュワーデス、CAに変わる歴史的背景を知ることができます。
接客時のマナーや身だしなみといった点で、客室乗務員と鉄道パーサーには共通している部分があります。日本の客室乗務員の呼び方の歴史を体系的に知るのに最適な1冊です。
鉄道パーサーは接客業です。鉄道という公共交通機関で仕事するため、非常時の的確な対応が求められます。ひとつの判断が乗客の安全や命に関わるので、求められているものは想像以上に多く、重いのです。
しかし鉄道会社への就職を考えていた方や、そもそも鉄道が好きな方にとっては天職ともいえる仕事のひとつでしょう。担当する乗車の走行距離によっては夜通しであったり、泊まりがけの仕事もあるため体力に自信がなければ厳しい一面もあります。タフな精神も必要です。
この記事ではできる限り、パーサーの仕事内容やおすすめの資格などをご紹介しました。興味を持った方はおすすめした書籍を読みつつ、具体的な行動を起こしてみてはいかがでしょうか。