エトピリカといえば「情熱大陸」で流れる葉加瀬太郎の名曲ですが、エトピリカは海鳥ということをご存知でしょうか? 今回は名前は聞いたことあるけど、あまり知られていないエトピリカの生態について紹介していきます。
エトピリカはアイヌ語の「エトゥ=クチバシ」「ピリカ=美しい」が由来しています。
日本語の別名は「花魁鳥(おいらんちょう」と呼ばれています。
顔が白く目の後ろからの金色っぽい飾り羽が特徴的で、オレンジ色の大きなくちばしには縦線が入っています。
大きくてカラフルな嘴と、困り顔が特徴な海鳥です。
・ツノメドリ
・ニシツノメドリ
・エトピリカ
この3種類を総称してパフィンと呼びますが、チドリ目ウミスズメ科に分類される海鳥で、一般的にパフィンはニシツノメドリのことを指します。
ツノメドリとニシツノメドリは、嘴の色が若干異なります。
また、ニシツノメドリはパフィンの中では一番小さく、エトピリカが全長39cmと一番大きいです。
エトピリカ・ツノメドリは北太平洋、ニシツノメドリは北大西洋に生息しています。日本では非常に珍しい鳥となっていますが、世界的に見ると全体で300万羽くらい生息していると考えられています。
全体の3分の2はアメリカアラスカ州とアリューシャン列島(アラスカ)で、残りはロシア極東で繁殖します。かつては北海道東部で、数百羽が繁殖していましたが、1970年代から激減し、現在は北海道根室半島沖に浮かぶ無人島ユルリ島とモユルリ島で数羽が繁殖しているだけです。
温暖化による影響、漁獲の網にかかってしまったりという原因があるようです。
エトピリカは一年のうち繁殖期以外はほとんど海の上で過ごす海鳥です。エトピリカの主食はニシンやシシャモ、などの小魚やイカです。
泳ぐスピードは時速88kmに達することができ、潜水時間は約20〜30秒ほどです。水中で狩りをするときには、約60mの深さまで潜れます。
エトピリカの短い羽は泳ぐのには便利ですが、飛ぶのにはあまり適していません。もちろん飛ぶことはできますが、得意ではないようです
ペンギンなどの海鳥は一般的に子供に対して、自分が一度食べたものを消化して与えるのですが、エトピリカのヒナは生まれた時から小魚を食べて育ちます。そのためエトピリカは何匹もの魚を雛に与えなければなりません。
そうなると何度も巣と餌場を往復するのは面倒です。
その時に有効なのがこの嘴なのです。エトピリカは一度の潜水で大量の獲物を口に咥えることができます。さらにクチバシには棘のような返しがついていて、一度に多くの魚を捕まえることができるのです。
実はものすごく実用的な嘴なのです。
エトピリカの生態を語る上で大きな特徴なのが、換羽(鳥たちにとっての衣替え)です。カモなどの水鳥は羽が変わると印象も変わることが多いですが、エトピリカも夏と冬で姿を大きく変えます。
夏になると目の上に金色のふさのような羽がはえ、嘴には明るい色のもようがあらわれます。
上の写真が夏のエトピリカで下が冬のエトピリカです。同じ鳥だとはとても思えない変貌ぶりです。夏の鮮やかな羽はメスへのアピールのためと言われていて、繁殖期が終わるとその役目を終えます。
しかし子育てが終われば天敵から目立たない色にするって自然界においてとても頭の良いルーティンです。
そして繁殖が終わると、特徴的な嘴も剥がれ落ちます。
繁殖期は5〜9月で、初夏に1つだけ卵を産み、オスとメスが交互に温め45日くらいでふ化します。エトピリカの子育ては、断崖絶壁や人がなかなか近づけないような,壁の割れ目や穴などに営巣するためとても観察しにくく、その繁殖生態はあまり記録されていないのが現状です。
野生においては、 卵は常に温められているというわけではなく,1日数時間, 多いときは丸々1日、エサを食べに行ったり,休憩したりと, 両親が海に出ている間卵は放置されることもあるようです。
ツノメドリのヒナは黒いフワフワの産毛をしています。
繁殖後は、親鳥もヒナも南の地位域に移動し、越冬していると言われています。
- 著者
- 中野耕志
- 出版日
可愛すぎる海鳥・パフィンをテーマにした日本で初めての写真集となっています!日本屈指の野鳥写真家・中野耕志が、イギリス、アイスランド、そしてアラスカにて撮影したパフィンたちの姿を紹介しています。
- 著者
- ["Mike Unwin", "David Tipling", "森本 元", "David Tipling", "森本 元"]
- 出版日
ガンカモ類、潜水性鳥類、海鳥、渉禽類、鳴禽類、ワシタカ類、フクロウ類など、世界の渡り鳥67種とその「渡り」を、心を魅了するドラマチックな写真とともに紹介されていて、圧倒的なビジュアルと最新科学によって解き明かされた、鳥類の「渡り」についての最新知見が詰まった一冊。こちらはツノメドリについて取り上げられています。
まだまだわかっていないことが多いエトピリカ。世界的に数は多くても、日本では絶滅に瀕しています。環境問題は動物保護における最大のテーマですが、一人ひとりの意識で少しでもエトピリカの住みやすい環境を作ってあげたいですね。