鳥類の中でも危険な鳥として知られているヒクイドリをご存知でしょうか。 実は鷹や鷲などの猛禽類こそ危険なイメージがありますが、そうではないようです。 今回の記事ではヒクイドリの生態とともにヒクイドリの魅力を知ることのできる本をいくつかご紹介します。
ヒクイドリは主にニューギニアとオーストラリア北東部に生息する大型の鳥類です。
ヒクイドリは漢字で「火食鳥」と書き、くちばしの下の皮膚が赤くなっていて
その様子が火を食べているように見えることが由来となっています。
ヒクイドリはオスよりメスの方が体重が大きく約58kgで、オスの体重は約29-34kgです。
中には最大80kgになる個体もいるようです。
目は大きく、頭には大きなトサカがあり、そのトサカが長いほど年齢が高いと言われています。
現在は生息地の減少により年々個体数が減少しており絶滅が危惧されています。
個体の違いや、オスとメスの違いにもよりますが、ヒクイドリの体重は現生の鳥類の中ではダチョウの次に重いと言われています。つまり世界第2位の重さの鳥です。
またダチョウ同様にヒクイドリも足が速く、成長は時速50km の速さで走ることができます。
ただ、これだけダチョウと比較してきたヒクイドリですが、分類的にはエミューに近い系統となります。
エミューもダチョウも同じに思える方も多いかもしれませんが、そもそも住んでいる環境から、足の本数、子育ての仕方など共通しない点の方が多いのです。
生態的にエミューに似ているといった方が正しいかもしれません.
ヒクイドリは気性が粗いとされていますが、猛禽類など生態系のトップに立つような鳥は非常に警戒心が強く、人間に対しては臆病です。
ただ、自分の縄張りに侵入されてり、防衛本能が働いた際に攻撃的になります。
内側の指の先には、刃物のような長く鋭い爪があり、危険を察知したり怒らせたりすると強力なキックで攻撃します。衝撃力に加えて引き裂く力もあるということなのです。過去にこの蹴りで亡くなってしまった方もいるため、危険な鳥という認識がされているのです。
凶暴だと勘違いされてきたヒクイドリですが、実は自然界で非常に重要な役割を担っています。
体が大きいヒクイドリはなんと1日に5kgの餌を必要とし、その餌を探すために20kg移動します。ヒクイドリに食べられた果実の種子は移動した先々で排出されます。
果実の食べ方が噛まずに丸呑みなので果肉だけが消化されます。これにより果物は生息域を広げることができます。木の実の中には、ヒクイドリの特殊な器官を通らないと芽を出さないものもあるようです
ヒクイドリの住むオーストラリアのデインツリー熱帯雨林は世界最古の熱帯雨林とも呼ばれています。
そのため長い間植物にとっては種子を運んでくれる非常に大切な存在であり、ヒクイドリによって森の生態系が守られてきたといっても過言ではありません。
ダチョウの仲間であるということから、ヒクイドリの卵も大きいです。
一つの卵の重さは約600gで、一度の産卵で3~4個産みます。
この大きさはダチョウ、エミューに次いで世界で3番目に大きな卵となります。
さらに卵の色は森の保護色となる緑色です。
卵はでかさゆえに40日間温めなければ孵化しません。
ヒクイドリは卵を温めるのも子育てをするのもオスのみです。抱卵の間オスはじっと動かず負荷を待ちます。その際オスは蓄えた脂肪だけを消費して過ごすので、ガリガリになるそうです。
生まれてきたヒナも普通の鳥のヒナよりは大きですが、オオトカゲなどに襲われる危険があるため、ある程度大人になるまでの9ヶ月間付きっきりで世話をします。
このような光景からヒクイドリのオスは「イクメン」と呼ばれることがあります。
なぜメスが子育てをしないかというと、ヒクイドリの世界では一夫多妻ならぬ一妻多夫制が主流らしくメスは卵を産むと次のオスのところへ行ってしまうからだそうです。
この子育ての方法はエミューも同様です。
- 著者
- ワクサカソウヘイ
- 出版日
- 2017-08-01
その名の通りやばいやつしか載っていないというなんともマニアックな一冊。ヒクイドリだけでなく、この本でしか出会うことのできないような鳥も載っています。スーパーハード・バードウォッチャーという肩書きを持つワカサカソウヘイの独自の見解も面白いです。鳥の生態や行動に興味がある方にはおすすめです。
- 著者
- 出版日
- 2015-02-06
鳥の行動生物学や進化学に精通している鳥類学者上田恵介による一冊。
ヒクイドリだけでなく飛べない鳥にフォーカスを当てていて、それぞれの生態や特徴が解説されています。
日本には生息していませんが動物園などで見ることもできるので、もし見かけた際はこの記事や紹介した本を参考に観察してみてください!