カラスに似た黒い鳥が水面ギリギリを飛んだり、水の中を潜っているのを見かけたことがありませんか。 「鵜呑み」にするという言葉の語源にもなったカワウ。名前だけは知っているけどどんな鳥か知らないという方が多いかと思います。 今回はカワウの生態とカワウのまつわる本を紹介していきます。
成鳥の全長は80cmを超え、身近に見ることのできる鳥の中でも大型の野鳥です。
オスとメスの全身は黒色で、繁殖期には頭部と腰の両側が繁殖羽というもので白くなります。
くちばしは付け根あたりが黄色く、先端はかぎ状になっていて、捕らえた魚をくわえて逃がさないような仕組みになっています。
瞳はエメラルドグリーン色をしています。
目に入る光の量をうまく調節できるため、水中でもくっきりと魚の姿を捉えることができます。
他の水鳥のカモやカモメなどと比べて体に油分がないため、体が水に沈んでしまいますが、その分深く泳ぐことができます。脚の水かきを使って、水深10mも潜ることができ、1分以上潜水することもできます。
さらに水中での体温維持に多くのエネルギーを必要とするため、多い時で1日に 体重の1/4に相当する500gの餌を食べます。
また翼は水に濡れると飛び立つことができなくなるので、翼を広げて乾かす姿を見ることができます。
カワウは、高速ではばたきながら、少し慌ただしいような飛び方をします。営巣地やねぐらと採食地の間を往復し、行動範囲は1日に60㎞にも及びます。
ウミウとの区別がしにくいですが、カワウの方が少し小さいです。
カワウは魚食性のため、潜水して魚を捕まえます。
基本は淡水、汽水、海水域にいる魚で、フナやコイ、ブルーギルなど基本的に口に入るものであればなんでも食べます。
ヨーロッパでの研究からも 餌にはこだわりが無く、お腹が空いたときに一番捕まえやすい餌を採餌しているという報告があるようです。
この姿から「鵜呑み」の語源にもなっています。
”鵜呑みとは、食物を噛まずに丸飲みすること。物事の真意・内容をよく理解せず受け入れること。魚を噛まずに丸飲みにする姿から、人から言われることをよく考えず採り入れる事をさすようになりました。”
魚以外にはアメリカザリガニなどの甲殻類やヒキガエルも餌としていることが報告されています。
また集団でも餌をとる姿がしばしば見られ、横一線に並び「追い込み漁」を行います。
カワウは危険が迫ったり、驚くと胃の中の魚を吐き出す習性があります。
カワウの大きな特徴のひとつは、群れで行動することです。コロニー(集団営巣地)は、多数のカワウ同士が集まって密集して巣を造って繁殖する場所のことを指します。
カワウは天敵から身を守るために、集団で餌をとったり、特に夜間は群れで休息・睡眠し、繁殖も多数の個体が集まって行ないます。
コロニーは水辺に接する場所に作られ、森林以外にも海岸・湖沼に近い岸壁や人がつくった建造物、巣台などさまざまな場所や構造物を利用することもあります。カワウとサギ類などは一緒にコロニーを作ることもあります。
アオサギやゴイサギ・コサギ・チュウサギ・アマサギとの混合コロニーを形成する場合もあります。
コロニーの木を見るとカワウが排泄した糞で、幹や枝が異様に白くなっています。
かつては糞を肥料にしていたようですが、化学肥料ができてから活用されなくなってしまいました。今では景観悪化だけでなく、水質・土壌汚染や悪臭などの糞害が問題になっています。
鵜飼とは、日本の伝統的な文化で、鵜を巧みに操って川にいる魚を獲る漁法のことです。
鵜飼の起源は、稲作とともに中国から伝承したとする説、日本と中国で別個に発生したとする説があり、しっかりとした文献が残っていません。ただ、各地の古墳から鵜飼を表現しているとみられる埴輪が出土しているそうで、少なくとも古墳時代には鵜飼が行われていた可能性が高いとされています。
そして鵜飼は織田信長、徳川家康などの武将や皇族に愛され、今日までその歴史が続いています。
現在岐阜県の長良川で行われているん長良川鵜飼だけは唯一皇室御用となっているため、そこで働く鵜匠は国家公務員となっています。
ちなみに全国の自然豊かな川で行われる鵜飼いですが、実は鵜飼いで使われれいる鵜はカワウではなくウミウです。ウミウの方が体が大きく、餌をたくさん摂ることが理由とされています。
カワウは集団で飛来し、魚を大量に捕食するため被害が大きくなると言われています。
カワウは魚の中でも特にアユを好むそうで、養殖や放流されているものも被害を受けているようです。
海外でもカワウの急増による被害は起きており、アメリカのコロンビア川では現地で絶滅が危惧されている鮭がカワウの被害を受け、鮭を守る為に陸軍がカワウの駆除を行っているそうです。
- 著者
- ["亀田 佳代子", "前迫 ゆり", "牧野 厚史", "藤井 弘章"]
- 出版日
鳥類学の本の中でもカワウに焦点を当てた珍しい一冊です。
鳥類生態学、森林生態学、歴史民俗学、環境社会学の異なった視点から動物と人の未来のあり方を提言しています。
カワウがどういう鳥なのかという紹介から人間との関わり、森や地域に与える影響などが書かれています。
一見嫌われているイメージのあるカワウですが、他の鳥と変わっている部分が多く、生態はとても興味深いです。
しかし前述した通り漁業などに与える影響は深刻なものとなっています。
少しでもカワウと人間が共存できる環境を作れる日を願っています。