「中高一貫校に通いながら、高校デビューを果たした」という真空ジェシカのガクさん。その当時の友人との間の誰にも言えなかったエピソードと、その頃を象徴するような漫画について綴っていただきました!(編)
こんばんわ。
真空ジェシカのガクです。
布団かぶりながらでいいので読んで貰えたら嬉しいです。
寝落ちしちゃったら誰かに弱火にしてもらってくださいね。
雑菌をなくしてサッパリ朝を迎えましょう。
(煮られ寝前の人用の挨拶になってしまいました。ごめんなさい。)
こちら、好きな漫画とそれを読んでいた時期のことを書いています。
よろしくお願いします。
今回の漫画は『サナギさん』です。
僕は作者の施川ユウキ先生の大ファンで出た作品は全部買ってるんですが、最初に知ったのはこの漫画。
サナギさんと出会ったのは高校生の時でした。
- 著者
- 施川 ユウキ
- 出版日
中学時代ずっと暗かった僕はクラスの中心グループの明るい人たちに憧れてて、高校デビューを目論みました。
中高一貫校に通っていて、高校で内部進学組と高校受験組が入り混じります。
僕は中学で友達がほぼいなかった事を利用して、高校受験組を偽ってクラスに馴染む事に成功しました。
最初は受験組の子に「内部のヤツってみんなで固まっててなんか嫌だよな」とか言って仲間意識を芽生えさせ、徐々に友達を増やしていきました。
そんな中で最初にできた友達がU君でした。
身長が小さめでモチっとした感じの男の子。
見た目は可愛い感じだけど、バンドを組んでて勉強嫌いでバイクに乗っている、ちょっとだけヤンチャ憧れがある感じのヤツでした。
僕はヤンチャに全く手が届かなさそうな所にいたので、ヤンチャに憧れるくらいの距離感である彼に憧れてました。
家が比較的近めで、「勉強教えてよ」と言われて一緒に近所のモスバーガーで勉強したりして仲良くなりました。
U君は外部組だけど内部推薦で、僕は受験で入った事にしてたので賢いと思われていたのです。
「高校に入ってこういう人と仲良くなりたかったんだ!」と思ってた僕は、凄く頑張って授業を聞いて彼に勉強を教えてました。
それまで僕には地元で遊ぶ経験がほぼなかったのでそれがめちゃめちゃ楽しかったです。
楽しく中学を過ごしてきたヤツの話は全部新鮮で面白かったです。
知らない音楽とか漫画とかたくさん知ってるし。
仲良くなってからはU君のバイクの後ろに乗せてもらって家に遊びに行ったり。
家行ってもそんなやる事もなく寝転がって漫画読んで過ごすみたいな。
こういう普通の学生みたいな事がずっとしたかったんだよな!!最高!!!と思ってました。
その時U君の部屋にあって、おすすめされて読んだのが『サナギさん』でした。
どんな漫画かというと、サナギさんという中学生女子と仲良しのフユちゃん、そしてその同級生たちの日常会話を描いた4コマギャグ漫画です。
絵はすごくほのぼのしてて可愛らしいキャラクターがたくさん出てくるんですが、話してる内容は全然中学生らしくない。
言葉遊びとか、物事を普段と違った視点で捉えたりとか。日常の気付きを普段掘らない方向に深掘りしてみよう!という感じの話が多いです。
ニコニコ柔らかい表情で読むというよりは、ニチャニチャ笑いながら読んで、たまにブヒッと声が出てしまうみたいな感じ。
絵柄で想像するのとは少し違うので、是非読んでみてほしいです。
サナギさんは理想の学生生活像でした。
ストーリーがあるわけではなくて、会話と想像力だけで日常を楽しんでいる。
こんな友達がいたら最高だなーって、僕はU君の家でゴロゴロしながら思っていました。
最高の学生生活の中で最高の学生生活を読んでいたんです。
そりゃたまんなかったですね。
けど、クラスが変わってからは全然話さなくなっちゃいました。
今考えるとそれも含めて高校生っぽくていいですよね。
そしてこれは余談なんですけど、この最高の日々の中で一回だけ、すごく小さな感情なんだけどその後何年もうっすら覚えているような気持ちに出会う体験がありました。
U君の家に向かう最中。彼のバイクの後ろに乗って、ヘルメットをかぶって彼の体にしがみついてる時。
可愛い顔してるのにでかいバイクに乗っている彼がなんかすごく愛おしく思えてきた事がありました。
「あれ?やけに愛おしいな?」という。
未知の扉が目の前に現れた瞬間がありました。
ただ当時の僕は、その感情とあまり向き合いませんでした。
なんというか、拒絶したわけではないんです。
知らない道に知らない扉が急に現れたんだけど、鍵が閉まってると思ってそのまま通り過ぎたみたいな。
けど、知らない扉があったな、くらいの意識があってずっとその感覚は僕の中に残り続けました。
その後大人になってから、友達と3人でゲイバーに行きました。
初めてのゲイバーだったので、ママからゲイについて色々と教わりました。
その中で、ママは扉を開く瞬間の話をしてくれました。
何人かに一人は、扉を開く資格を持っているんだけど、ほとんどの人がその扉を開かずに生涯を終えてしまうこと。
そして扉を開くのならできる限り早い方がいい、との事でした。
結婚して家庭を持ってから自分の中にその扉がある事に気付く人も少なくないようです。
ただそうすると、その気持ちを表に出せなくなってしまったり、表に出せても相手がいなかったりして成就できない事がある。
なのでもし少しでも自分の中にその扉の存在を感じたなら無理してでも開けてみた方がいいよ、と言われました。
開けてみて何もない部屋だった、という分には構わないのだからと。
その時に僕は、あのバイクの後ろに乗ってる瞬間の事を思い出しました。
そういえば僕にも扉が見えた瞬間があったなと。
あれを開くという選択肢もあったのだろうかと考えました。
ゲイバーのママは、その話をした後「私くらいになると少し話をしただけで扉を持っているかどうかわかるわ」と言いました。
また、「私なら一晩過ごせば誰とだって新しい扉を開かせてあげる事ができるけど」とも。
興味本位で「僕らはどうですか?」とママに聞きました。
一番奥に座っている友達に「アンタは誰よりも興味深々にこの話を聞いてるわよね。アンタだったら何時間もいらないわ。ホテルに行けばすぐよ」と言います。
次に僕の横に座っている友達に「アンタはちょっとガードが固いわね。けど私なら、一晩過ごせば絶対にイケるわ」と。
最後に僕の方を見て言いました。
「アンタは中性的な雰囲気を作って女を引き寄せようとしてるただの女好きね。アンタとは絶対ヤラないわ。」
その場にいる全員がママのその意見に同意しました。
結局、あのバイクの上で見た扉の先に何があったのかは僕にもわかりません。
けどそういう感情が確かにあったこと、そして確かにあの時間が楽しかったこと、それだけわかっていればとりあえずはいいかなと思っています。
ご紹介した漫画『サナギさん』、気になった方はぜひ手に取ってみてください。電子書籍でも読めますよ!
「岳漫読」は6回限定連載、毎月第3土曜日に更新予定です。更新のお知らせはホンシェルジュTwitterをご覧ください。ご感想は「#岳漫読」でお待ちしています!
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