世界一美しいと言われてどんな鳥を思い浮かべるでしょうか。世界には数多くの鳥が存在していますが、そのなかでも特別に扱われているのが「ケツァール」です。今回はケツァールの生態とケツァールにまつわる書籍を紹介します。
前述した通りケツァールは世界一美しい鳥と称されています。中南米に生息し、現地では幻の鳥と呼ばれるくらい珍しい鳥です。体長は35cm程度で、長い飾り羽が特徴的で、この飾り羽を含めるとオスは90~120cmの大きさになります。
オスとメスの最大の違いは飾り羽で、オスは長くメスは短くなっています。
ケツァールの羽毛の色は、全身は主にエメラルドグリーン、くちばしは黄色、腹部は真っ赤なルビー色、風切羽は黒、尾羽は真っ白といった色鮮やかな姿をしています。また、エメラルドグリーンの部分は「構造色」と呼ばれるもので形成されていて、羽毛にある細かい構造によって光が乱反射して鮮やかな色に見ることができます。
「カザリキヌバネドリ」という和名も持っています。
ケツァールはアステカのナワトル語の由来の言葉で「大きく輝いた尾羽」という意味を持ちます。
その歴史も深く、マヤとアステカでは神聖なものとされ、ケツァールコアトル神の化身とされてきました。
また、限られた地域でしか見ることができず、その数も多くないために現地では「出会えると幸せになる」と言われています。
メキシコ南部、パナマ南部、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドル、ニカラグア、そしてコスタリカの高標高の雲霧林に生息すると言われています。そのなかでも特に取り上げられるのが、コスタリカ、グアテマラです。
・コスタリカ
太平洋とカリブ海に挟まれ、海岸から内陸の高山にかけて変化に富む地形が広がる中南米コスタリカ。その自然の豊かさから環境先進国と呼ばれ、近年ではエコツアーの先駆けの国として知られています。日本の九州、四国を足したほどの面積でありながら、地球上の全動植物の5%がいるとされ、希少種も多く、その多様性から、国土の4分の1が国立公園や自然保護区になっています。
・グアテマラ
中米のメキシコの下に位置する国になります。九州と四国をあわせたほどの広さの国土には500万人の人々が暮らしています。ケツァールは捕らえられて自由を奪われると死んでしまうため、グアテマラでは自由の象徴の鳥として考えられています。そのため、グアテマラはケツァールを国鳥に認定、そして通貨の単位にも採用されています。(単位は1ケツァル)コーヒーで有名なことから国名は知っていてもどんな国か思いつく方は少ないのではないでしょうか。
グアテマラの国旗の中央には自由の象徴としてケツァールが描かれています。
主に果実や昆虫、トカゲをはじめとする小さな生き物をエサとしています。なかでもアボガドの原種である「リトルアボガド」とも呼ばれるアグアカティージョの実がケツァールの好物になっています。3cmほどのこの実を丸のみして、胃の中で種を分離、吐き出します。 ケツァールの体内の消化液に浸かると柔らかくなり吐き出されすることによって、リトルアボガドは発芽しやすい状態になり、繁殖を助けられています。
ケツァールは、手塚治虫氏の漫画『火の鳥』(不死鳥)のモデルだと言われていますが、実際にモデルにしたという証拠はありません。ただ、これだけ美しい鳥なので、モデルになったといわれる理由も頷けます。
現在ケツァールは「準絶滅危惧」に指定されています。
昔から世界一美しい鳥と呼ばれるその羽は交易品として珍重されたため、ケツァールは乱獲されて数を大きく減らしました。他にも、ペットとして捕獲されることもあったそうです。
現在はワシントン条約によって保護されているため、商業目的での取引も禁止されています。そのため、日本国内の動物園で見ることはできません。
また、乱獲以外にもコスタリカでは以前はコーヒーやバナナなど農業で発展してきた国ですが、近代では工業化や人口の増大が進み、森林伐採や土地開発によって生態系が壊され、その姿が減少したと言われています。
- 著者
- ["晋平, 森山", "安行, 斉藤"]
- 出版日
身近な存在でありながら、憧れの対象でもある「鳥」の魅力を、 素敵な写真とともにわかりやすく解説したビジュアルブックです。
ケツァールのようになかなか直近で見ることのできない野鳥から、私たちが街の中で出会うことのできる野鳥も掲載されています。生態についても詳しく説明されているので、写真とともに楽しんでみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 川上 和人
- 出版日
- 2015-10-29
美しく可憐な鳥たちの姿を、アーティスティックに見せるビジュアルブックになっています。世界の珍しい鳥から、四季折々の鳥たちの姿まで、魅力的な写真でたっぷりと紹介されています。自然界だから生み出すことのできる鮮やかな色をこの一冊から楽しむことができます。
- 著者
- 上田恵介
- 出版日
シンプルなタイトル通りそのままです。世界各地の美しい姿形をもつ鳥たちの表情が紹介されています。見ているだけで癒されるので、子供だけでなく大人も楽しめること間違いなしです。
ケツァールだけでなく世界中には美しい鳥が数多くいるということがわかります。またその中で人間の歴史と深く根付いてきている鳥もしばしば。これからも野鳥たちと人間が豊かに暮らしていくためにも、自然や環境を考えて生活していきたいですね。