かの有名なチャールズダーウィンがガラパゴス諸島で注目した動物でも代表的なのが「ガラパゴスゾウガメ」。ガラパゴス諸島にいる生き物の70%が固有種と言われていますが、なかでもその大きさや特徴的な姿は誰もが一度見たら忘れないことでしょう。今回はそんなガラパゴスゾウガメの生態やゾウガメにまつわる書籍を紹介します。
ガラパゴス諸島だけに生息する世界最大級のゾウガメで、体長1.5m、体重270kgに達する成体も確認されています。象のように大きく、足も象に似ていることからその名がつきました。
スペイン語でリクガメを意味する「ガラパゴ(Galapago)」から由来されていて、ガラパゴス諸島は『「ゾウガメの島々」という意味になります。
寿命が非常に長く、基本的にゾウガメは成熟するまで20~30年、平均寿命は100歳を超えます。最長で152歳まで生きた記録もあることから脊椎動物の中で最も寿命が長いと言われています。
かつてガラパゴス諸島には、15亜種のガラパゴスゾウガメが存在していましたが、現在11種の亜種が生息しています。
現在確認されている個体数はわずか約1万5000頭。ガラパゴス諸島のサンタクルス島、イザベラ島、サンチアゴ島などで見ることができ、サンタクルス島のダーウィン研究所ではゾウガメが保護されています。
性格も象に似て非常におとなしく、人を襲うことなどはありませんが、繁殖期になるとオスは他のオスに対して体当たりや頭突きをして追い払います。鳴くことも珍しいガラパゴスゾウガメですが、オスは交尾の際に唸り声のような呼吸音をあげることもあります。また、オスは交尾のときに甲羅の上に乗りやすいように、お腹が凹んでいます。
ガラパゴスゾウガメは、主に草や木の葉やサボテンを食べます。長い首を伸ばしてその際に鋭いクチバシで葉を切り取ります。
また体内に水分を大量にためることができるため、飲まず食わずで1年間生きることができます。この特異な体質が寿命の長さにもつながってると言われています。
ガラパゴスゾウガメは生息している島によって甲羅の形に違いが見られます。分類方法では甲羅の形が鞍型、ドーム型、そしてその中間型の3つに分けられます。
鞍型の特徴は甲羅の前方が高く反り返っており、首元部分の甲羅が切れ上がっているため、首を伸ばして植物を食べることがができます。一方、ドーム型は甲羅の裾が広がっていて、地面に生えた植物を食べています。
ガラパゴス諸島に生息するサボテンは、10mを越える木のように育つ種と、低く育つ種に分けることができます。
前述したようにガラパゴスゾウガメの好物はサボテンです。ただサボテンも食べられてばかりだと繁殖することができないため、ガラパゴス諸島のサボテンにはガラパゴスゾウガメに食べられないように縦方向に進化したと言われています。
またガラパゴスゾウガメだけでなく、陸生のガラパゴスイグアナの好物であるためこの2種がサボテンの進化を促したと考えられています。
ガラパゴスゾウガメはかつて数万頭が暮らしていました。 そこまで多くいたガラパゴスゾウガメが姿を減らした理由に人間が大きく関わっています。
こちらも前述した通り、ガラパゴスゾウガメは飲まず食わずでもしばらく生きていけるということは、人間側からすると食べ物を与えなくても新鮮な肉を長期間維持できるということになります。そのため、17世紀~19世紀の間に、海賊船や商業船の乗組員により、10万頭以上ものガラパゴスゾウガメが狩られました。
他にも原因として、人間が島にヤギやブタ、ネズミなどの生き物を持ち込んだということがあります。野生化したヤギが増えて草を食べられ、ネズミに卵を食べらるなど生態系のバランスが崩れたことで、ガラパゴスゾウガメの数は減っていきました。
ガラパゴスゾウガメに限らず、カメが長生きな理由については、心拍数がとても少ないためという説があります。
小動物心拍数が多い生き物ほど寿命は短く、心拍数が少ない生き物ほど寿命は長いとされています。心拍数が少ないと代謝の速度が抑えられ、過剰な活性酸素が発生せず、老化も緩やかになります。
ガラパゴスゾウガメは代謝は非常に遅く、消化には1週間から3週間もかかります。その上1日に16時間睡眠をとります。
つまり、単純に心拍数の少ないガラパゴスゾウガメは活性酸素が少なく、寿命が長くなるということです。
また、長生きしたゾウガメの遺伝子を調べたところ、寿命の短い脊椎動物にはないようなDNA修復、免疫反応、癌抑制につながる多くの遺伝子変異体が存在することもわかったそうです。
さまざまな要因がガラパゴスゾウガメの寿命の長さに繋がっているのです。
- 著者
- 地球の歩き方編集室 編
- 出版日
世界遺産第一号でもあるガラパゴス諸島。驚くべき生き物たちの進化の姿を、実際に訪れたかのように楽しめる完全ガイドになっています。一般のガラパゴス関連書籍とは一線を画し、旅行の実用書として観光ポイント案内やクルーズ情報、希少な動物解説を充実させています。
- 著者
- ["加藤 英明", "蛸山 めがね"]
- 出版日
「クレージージャーニー」や「池の水ぜんぶ抜く」でおなじみの爬虫類ハンターとして大人気の静岡大学講師、加藤英明氏が、世界各国を回って出会ってきた珍しい爬虫類の不思議な魅力を、マンガをまじえて紹介する一冊になっています。世界各国で大冒険をくり広げるストーリーは、子どもから大人まで楽しめるワクワクの内容になっています。
加藤氏だからこその視点や爬虫類好きな人にはたまらない図鑑ページも充実しています。各国の爬虫類やその他の生物もしっかり紹介しています。
今回はガラパゴスゾウガメの生態について紹介させていただきました。
ガラパゴス諸島では、現在22種が絶滅危惧種に指定されています。気候変動や人間による様々な活動、外来種などの理由で、50種以上の動植物が絶滅の危機に侵されているそうです。そのため、貴重な生き物たちを守るために法がつくられたり保護プロジェクトが行われたりするなど、ガラパゴスの自然や生態系の豊かさを守っていくためにあらゆる努力が行われています。これからの未来では人間の手によって種類や数が少なくなる生き物がいなくなることを願っています。