天然記念物にも指定されているカモシカ。地域によっては山に入れば、そう難しくなく目撃することが出来ます。しかし、かつては乱獲によってその数を少なくしていたそうです。今回はそんなカモシカの生態とカモシカにまつわる生態を紹介します。
世界には13種類ほどのカモシカがいますが、日本で見られるのは日本固有種のニホンカモシカだけです。
カモシカは基本的に灰色っぽい色をしています。
オス、メスともに短いツノを持ち、生え変わることはありません。
おとなしい性格で、基本的に鳴くことはありません。
体重が30~45kgほどあり、寿命は15年ほどとされています。オス、メスともに縄張りを持ち、通常は単独で行動しています。
シカという名前からも間違えられがちなのですが、カモシカはシカの仲間ではなく 偶蹄(ウシ)目のウシ科に属する動物になります。そのため、鹿とは異なりツノは枝分かれせず、生えかわることもありません。
胃袋も牛と同様に4つ持ち合わせています。
本州・四国・九州に分布しており、山地の森林や丘陵地帯に多く生息しています。
分布としては、低標高地に多い傾向となっており、500m未満の標高で見られることの方が多くなっています。
カモシカは鹿よりも山奥、険しい崖地などに住んでいることが多いです。
カモシカはオスメス縄張りを主張する動物です。
カモシカの両目の下には眼下腺と呼ばれる分泌腺があり、そこから出る甘酸っぱい匂いを木にこすりつけて縄張りを主張します。
また、糞を決まった場所にする習性があり、糞場は直径1mをこえることもあるようです。
第2次世界大戦後、良質な肉と皮を目的とした密漁等によって分布域が縮小し、地域的な絶滅の危機にありました。
1925年に狩猟法が改正された際、カモシカは狩猟獣から除外され、1934年に天然記念物に指定されました。
しかし、保護されるようになったことで地域によって食害をもたらす害獣と化し、被害報告も増えています。植林地の幼木の枝先を食べたり、30種類近い野菜や果樹を食べ荒らす被害も。
特別天然記念物であるが故に、捕獲することも駆除することも禁止されており、対応の難しさに農家の方々は頭をかかえています。
また鹿は積雪は苦手ですが、カモシカは積雪は苦になりません。
すらっとした足を「カモシカのような足」と例えることがありますが、実際のカモシカの足は短く、太いです。例えるならニホンジカの方が相応しいです。
カモシカは山の中で、山の斜面などを歩きまわりながらエサを佐賀さなければならないため、足が太くてとても丈夫に出来ています。また、ウシの仲間ということもあり、足はそこまで長くなく、むしろ少し短めでずんぐりとしています。
カモシカのような足という言葉が使われるようになったのは、ある動物との勘違いから生まれたと言われています。
カモシカは漢字で「羚羊」と書くのですが、カモシカとは別の「レイヨウ」と呼ばれる動物に勘違いされていたことが由来となっているのです。なんとレイヨウも漢字で書くと「羚羊」。
昔の人が実際の「レイヨウ」がどんな動物かを知らなかったため、カモシカを見た時に「この動物がレイヨウに違いない」と勘違いを起こしたそうです。そして、この2つの羚羊が混同していった結果、「カモシカのような足」という言葉が誕生したのです。
実際には「レイヨウ」のような足が正しいといえます。
度々カモシカは「森の哲学者」と呼ばれることがあります。
その理由は、警戒心が薄く、なおかつ好奇心が強いため、森で人間に遭遇するとと動かずにこちらを観察すること多いためです。
穏やかな性格であるがゆえに、そのようなあだ名が付けられました。
動物行動生態学を専門とする落合啓二氏による一冊。
特別天然記念物ニホンカモシカの40年におよぶ長期野外研究の集大成となっています。徹底的な行動観察や個体識別のデータを基にカモシカの生態や行動について詳しく書かれています。
野生動物について学べるだけでなく、生き物の保護管理に携わる人たちにもおすすめできる内容になっています。
高知市が運営する小さな動物園で飼育員として勤務していた中西安男氏。
1990年、四国山地に生息する特別天然記念物ニホンカモシカに、至近距離で目が合った途端に、強い衝撃を受け、それ以来カモシカの姿を追いかけて30年。ニホンカモシカの生態など愛くるしい写真とともに紹介されています。
今回は、ニホンカモシカの生態について紹介しました。天然記念物でありながらもそこまで遭遇することは難しくないかと思います。人に直接危害を加えるような動物ではないので、もし山などで遭遇したときは静かに観察みてくださいね。動物園では飼育しているところも多いので、見かける機会が多いかもしれないですね。