最近、動物園において人気を急上昇させているのが「フクロテナガザル」です。名古屋にある東山動物園ではおじさんのような叫び声を出すことから、雄のフクロテナガザル「ケイジくん」がネットなどでも注目されています。いまやイケメンゴリラの「シャバーニくん」に引けを取らない人気者です。今回はそんなフクロテナガザルの生態と関連する書籍を紹介していきます。

哺乳綱霊長目テナガザル科に分類される類人猿です。テナガザルの仲間にはシロテテナガザル、ボウシテナガザル、ミュラーテナガザル、ワウワウテナガザルなど多数の種類が存在しています。フクロテナガザルはそのなかでも最大の種になります。オスは大きい個体だと20kg近い重さになります。
体毛はオス、メスともに黒色で、のどにある袋は灰色やピンク色です。
フクロテナガザルは、マレーシアとスマトラ島の低地から高地までの熱帯雨林に生息しています。
基本的には樹上で生活し、昼間に活動します。主に果実や木の実などを食べていますが、 昆虫や小動物などを食べることもあるようです。
名前の通り腕の長いサルのため、地面を歩く際はバランスを取るために長い腕を横に広げながら歩きます。テナガザルが腕を左右に上げて歩く姿は、おもちゃの「やじろべえ」にも似てると言われてます。
妊娠期間は人間よりも短く6~7ヵ月程度です。フクロテナガザルのオスは他のテナガザル科の種類よりも積極的に子育てに参加するイクメンな一面を持っています。子供は6~8歳くらいに成長すると生まれた群れを離れてます。
テナガザルは足の長さに比べて、腕がとても長いという特徴があります。 腕の長さは足の長さの約 1.5 倍の長さがあります。
また、親指以外の指は非常に長く、木の枝をつかみやすくなっています。
この手を使って枝などから前肢でぶら下がっておこなう移動運動を「ブラキエーション」と呼びます。
のどにある喉頭嚢(こうとうのう)を顔と同じくらい大きく膨らませて、声を振動させることで大きな声で鳴きます。
その声は2km先までも聞こえるといわれています。
この行動は1日に数回行われます。(時間は決まっていないが、一度鳴きだすと15分ほど鳴き続けるそう。)
テナガザル類は、種によって異なる特有の鳴き方をし、性別によっても変わってきます。
そのため全てのフクロテナガザルがおじさんのような声で鳴くわけではありません。
この鳴き声は、オスとメス同士、仲間とのコミュニケーションをとる役割以外にも、他の群れに対してなわばりを主張していると考えられています。
10月24日は国際テナガザルの日です。
絶滅が危惧されているテナガザルの現状や保全・保護について広く知ってもらうため、2015年にオーストラリア・パース動物園で開催された国際テナガザル飼育保全会議で制定されました。
毎年この日にあわせて、動物園などではテナガザルの生息数や保全状況を知ってもらうためのイベントが行われています。
フクロテナガザルは、現地では森林伐採のため生息地が減少し、野生種が絶滅の危機に晒されていて、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにて絶滅危惧IB類に指定されています。
- 著者
- JTBパブリッシング 編集部
- 出版日
日本全国の動物園より個性あふれる人気の生き物の生態を知ることができるのはもちろん、意外な特技やおもしろエビソード、飼育員さんならではのコメントなど、かわいいだけじゃない生き物の魅力を紹介しています。
写真だけでなく動画でも楽しめるので、おうちにいながらも動物園を楽しめるような一冊になっています。
- 著者
- []
- 出版日
フクロテナガザルの飼育でもお馴染みの、年間約240万人が訪れるという名古屋の「東山動植物園」。飼育動物の種類数は約500種の日本一の動物園をより詳しく知ることができる、細かすぎるガイドブックです。200時間を超える徹底取材によって、動物の種類を学べるだけではなく、東山で飼育されている「個体」についても愛着が湧くはずです。子どもから大人まで楽しく読めるイラスト中心なのも読みやすいポイントになっています。
- 著者
- ["日本モンキーセンター 編", "京都通信社"]
- 出版日
進化の系統樹にもとづく分類ごとに、個性的な181種のサルを収録しています。
フクロテナガザルをはじめ、サルについて詳しく知ることができる一冊です。
からだのしくみ、認知、社会構造、コミュニケーションなどを、最新の研究情報を交えてくわしく紹介しています。
今回はフクロテナガザルの生態についてご紹介しました。
動物園に行った際はぜひ近くで観察してみてくださいね。運が良ければフクロテナガザルの鳴き声を聞くことができるかもしれません。