青山剛昌の冒険活劇漫画『YAIBA』!新アニメに備えて魅力と注目ポイントを紹介

更新:2024.9.13

漫画『YAIBA』はサムライを目指す少年剣士の物語。伝説の魔剣を駆使して魔物やライバルと対峙し、激しくバトルするのが楽しい王道の少年漫画です。 作品としては約30年前に完結していますが、2024年5月に「完全アニメ化」と銘打った新作アニメの制作が発表されました。あえて今アニメ化される本作がどう面白いのか、国民的漫画の陰に隠れた名作の魅力と、新アニメでの見所をご紹介していきます。

ブックカルテ リンク

三行でわかる記事の内容

  • 『YAIBA』は『名探偵コナン』で知られる青山剛昌の作品
  • 少年がライバルと戦って成長していく王道バトル漫画
  • 魔剣にまつわる展開は今読んでもワクワクする

青山剛昌の剣劇アクション漫画『YAIBA』はこんな作品!

『YAIBA(ヤイバ)』は「週刊少年サンデー」誌上にて、1988年から1993年にかけて連載されていた青山剛昌の作品です。単行本は全24巻で累計発行部数1,700万部。1993年には第28回「小学館漫画賞」児童部門を受賞しています。

舞台は現代の日本。ジャングル育ちの型破りな少年剣士が、魔剣に取り憑かれて世界征服を目論むようになったライバルを倒すため、日本中に散らばった「伝説の玉」を求めて強敵と戦うアクション漫画です。

作者の青山剛昌といえば、国民的推理漫画『名探偵コナン』が有名。『YAIBA』は30年以上前に完結しているのもあって、『名探偵コナン』の影に隠れてしまっていますが、笑いあり涙ありアクションありの王道少年漫画として根強い人気を誇っています。

『YAIBA』1993年に1度『剣勇伝説YAIBA』のタイトルでアニメが放送されましたが、原作途中の「かぐや編」で終了しており、ラストまで描かれたアニメ化はありませんでした。

ところが2024年5月、突如として「完全アニメ化」と銘打った新アニメが発表されました。令和になってまさかの『YAIBA』新アニメのニュースに、SNSなどを中心に大きな話題を呼んだのはまだ記憶に新しいでしょう。

この記事ではそんな『YAIBA』の魅力を、原作漫画のあらすじや設定などを交えつつご紹介していきます。すでに完結している作品ことから中盤以降の展開にも触れていくため、ネタバレが気になる方はご注意ください。

漫画『YAIBA』のあらすじ

父・剣十郎との修行でジャングル育ちの鉄刃(くろがねやいば)は、アクシデントから巡り巡って日本に辿り着き、剣十郎と旧知の峰家に転がり込みます。

そして刃は峰家の娘さやかが通う中学校で、剣道の猛者・鬼丸猛(おにまるたけし)と運命的に出会いました。互いをライバルと認識した2人は切磋琢磨し、剣の強さを高めていくのですが……鬼丸は実家の地下で眠っていた魔剣「風神剣」の力に魅入られ、身も心も危険な鬼にとなってしまいます。

対抗出来るのは対となる魔剣「雷神剣」と、剣を強化する「伝説の玉」。刃は鬼丸やその配下と熾烈な戦いを繰り広げながら、日本各地に散らばった伝説の玉を探す旅に出ることになります。

漫画『YAIBA』登場人物紹介

『YAIBA』は全24巻で、いくつかの長編エピソードごとに新しいキャラクターが何人も登場します。とはいっても、ほぼ全編にわたって重要な位置を占めるのは鉄刃と峰さやか、鬼丸猛の3人です。

主人公は鉄刃。強いサムライになることがユメで、道着代わりの着物とゲタがトレードマークです。身体能力が非常に高く、ジャングル育ちなので常識はないものの、戦闘中の閃きや奇策を思いつくことから頭が悪いわけではありません。小柄なので小学生くらいかと思いますが、れっきとした中学2年生。

峰さやかはヒロイン。実家が剣道場で自身も剣道を習っていることを除けば、ごく普通の女子中学生です。思春期の少女らしくややツンツンした一面はありますが、根は優しくしっかりしていて、ギャグパートではツッコミ役をこなします。物語中盤では彼女の出自が物語に大きく関わり、魔剣を手にして戦う姿も描かれました。

刃のライバルにして、終始敵となるのが鬼丸猛。坊主頭が特徴的な少年で、本来はクールかつストイックに剣道に打ち込む性格でした。

魔剣の力に溺れた鬼丸は風神と同化し、鬼の角が生えてからは残忍で凶暴な人格に変わり、魔王を名乗り世界征服を目指すようになります。作中最強格の強さを誇ると同時に、蘇生や催眠などの高度な術で配下を増やすなど、魔王と呼ぶにふさわしい強敵。

そして宮本武蔵と佐々木小次郎。どちらも歴史的に有名な剣豪本人ですが、武蔵は死なずに生き続けている実年齢400歳以上の老人で、小次郎は鬼丸によって現代に蘇りました。

武蔵は雷神剣を手にした刃の未熟さを見抜き、修行をつけるために同行するようになった事実上の師匠。小次郎は鬼丸配下の手引きによって、当初は刃と武蔵を付け狙っていましたが、いつの間にか仲間になっていました。

他に重要なのは刃の父・剣十郎でしょうか。自由奔放なためふらっといなくなって戦いには参加しませんが、さまざまな助言をしたりトラブルの元になったりします。

漫画『YAIBA』の魅力

『YAIBA』は少年漫画の王道を行く痛快娯楽作品です。昨今様々なテーマ性を盛り込んだ作品が目立ちますが(それが悪いわけではありません)、その点で本作は非常にシンプル。友情とライバル関係を織り交ぜつつ、剣劇アクションを軸とした物語が最初から最後まで貫かれます。

主人公・刃の天真爛漫なキャラも素晴らしい。刃の素直で邪気がない反応(途中からスケベ小僧になりますが)でスッと物語に入り込めるので、肩肘張らずに気楽に楽しめます。

ストーリーのテンポが良く、サクサク読めるのもポイント。因縁の対決、ライバルキャラとの共闘、武器貸与による二刀流……などなどベタだが熱い展開が満載です。強敵が仲間になること自体は珍しくありませんが、『YAIBA』の場合は本当に一時的にタッグを組むだけで、最後まで敵対し続けるのが面白いところ。

わだかまりを脇に置いて、共通の敵に挑む姿に特別感があって燃えます。

燃えるといえば、刃たちが使う魔剣が非常にクールです。雷神剣と風神剣はそれぞれ主人公とライバルの愛剣で、武器としての強さは互角。使用者の技量で差が出たり、必殺技や能力を付加する「伝説の玉」の存在がいい意味でゲーム的ですし、とてもワクワクさせられます。

前半と後半で武器に変化があるのもいいアクセント。パワーアップ版の龍神剣や、2つに分かれていた雷神剣と風神剣の本来の姿・覇王剣(当初は風雷剣とも)といった、童心をくすぐる仕掛けがたまりません。

『YAIBA』は約30年前の古い漫画ですが、その魅力と面白さは今読んでも色褪せずに鮮やかに感じられます。

漫画『YAIBA』注目エピソード:鬼丸城の決戦【ネタバレ注意】

『YAIBA』はいくつかの長編エピソードと短・中編エピソードで構成されており、物語の序盤の山場となるのが鬼丸城での決戦です。刃と鬼丸の長い因縁の始まりでもあります。

刃との試合で力を渇望し、風神剣に飲まれて文字通りの鬼と化した鬼丸。風神剣を使いのこなす鬼丸相手に、なすすべがなかった刃は対となる雷神剣を探す旅に出ました。

雷神剣を守護していたのはかの剣豪・宮本武蔵。刃は無事に対の魔剣を手にするものの、まだ未熟で使いこなせません。鬼丸配下の刺客たちと戦いつつ、彼は武蔵の指導で修行に励みました。

日本制圧に乗り出した鬼丸は、国の中枢である国会議事堂を占拠、「鬼丸城」へと変貌させます。刃は修行の末に、どうにか雷神剣を使えるようになり、鬼丸との直接対決に挑みました。

風神剣の「風神波」と雷神剣の「かみなり斬り」、壮絶な威力が激突。魔剣の力は拮抗し、風神剣は刀身が折れ、雷神剣は力の核たる「雷神の玉」を失ってしまいます。

最初の大きな戦いの結果は痛み負け。刃は奪われた「雷神の玉」の代わりに、7つある「伝説の玉」集めに奔走することになります。

著者
青山 剛昌
出版日

漫画『YAIBA』注目エピソード:月の女帝かぐやの侵略【ネタバレ注意】

刃は7つの玉を集めて龍神に認められたことで、「龍神の玉」によって雷神剣が「龍神剣」に変わりました。数々の試練と仲間の犠牲を踏み越え、再び鬼丸に決戦を挑む刃。

2人は超常的な力によって海上で互角の戦いを繰り広げますが、そこへ割って入る者がいました。月の国からの侵略者、女帝かぐやの一派です。かぐやの圧倒的な武力を前に、またしても刃と鬼丸の決着はつかず、彼らはそれぞれ退却を余儀なくされました。

地球全体の危機に対して、紆余曲折を経て刃と鬼丸が共闘することに。龍神剣と風神剣の2つの力で一時攻勢に出るものの、自らの民と地球と融合したかぐやの真の姿には歯が立ちませんでした。

しかし、刃は龍神の助言で7つの玉すべての力を解放、龍神の力そのものを引き出します。彼は自身をかばって瀕死になった鬼丸に背中を押されて、ついにかぐや打倒を果たすのでした。

「かぐや姫伝説」になぞられたかぐやの逸話、さやかに秘められた秘密、死闘の中で描かれる刃とやさかの淡いラブストーリー……全編を通して見所が多い長編エピソードとなっています。

著者
青山 剛昌
出版日

漫画『YAIBA』注目エピソード:忍び寄る地下帝国【ネタバレ注意】

かぐや襲来の大騒動が落ち着いてしばらく経ったころ。全国で不気味な地震が頻発し、関東平野には巨大ピラミッドが出現しました。次なる敵は地底人。彼らのピラミッドに日本全土を沈める装置があると知った刃たちは、謎めいた少女エメラルドに導きでピラミッドに乗り込み、犠牲を経てなんとかピラミッドを止めることに成功しました。

しかし、東京のピラミッドは始まりに過ぎませんでした。世界中にピラミッドが現れ、あっという間に地球は地底人の支配下に置かれてしまいます。苦労した東京のピラミッドは、単なる前哨戦に過ぎなかったのです。

そして地底人との激戦の途中、裏で糸を引いていたのが鬼丸だと発覚。彼は地下帝国を利用して科学技術を盗み、最終的に帝国を滅ぼし地上を奪おうと画策していました。

かぐやから奪った魔王剣で、地下帝国の巨人を凶暴化させた鬼丸。地上も地下帝国も窮地に陥りますが、刃が雷神剣と風神剣が1つとなった「風雷剣」を駆使して野望を阻止することに成功します。

エメラルドの数奇な運命、風神雷神の二刀流からの新しい剣登場、畳みかけるようなシリアスとアクション展開がたまりません。

著者
青山 剛昌
出版日

漫画『YAIBA』注目エピソード:最終決戦ヤマタノオロチ【ネタバレ注意】

地下帝国の危機から半年。一見すると世界は平和になったように思えましたが、水面下では鬼丸の計画が進んでいました。古の魔物ヤマタノオロチの復活を狙って、日本各地の封印を解いていく鬼丸。

自身の存在を賭けた龍神の力添えにより、刃は「風雷剣」――聖剣「覇王剣」の真価に気づくも、四大鬼神の猛攻に力及ばずヤマタノオロチが復活してしまいます。日本列島が飲み込まれ、巨大な龍に変化するという悪夢。

絶望的な状況でしたが、希望はありました。地球全土の窮地に地下帝国が手を差し伸べてくれたのです。さらに眠りについていたかぐやを復活させ、さやかの体に宿らせて協力してもらうことに成功します。

最終決戦の舞台はヤマタノオロチの巨体。刃の覇王剣と鬼丸の魔王剣、何から何まで正反対の想像を絶する熾烈な戦い。物語の始まりから続く長い長い因縁の決着が、ついにここでつきます。

これまでのすべてが収束するストーリー、キャラクター総登場による総決戦がとにかく熱いです。覇王剣と魔王剣の壮絶な攻防、手に汗握るまさかの展開……終始目が話せません。

物語の大枠としてはこのエピソードで実質終わりと言っていいですが、この後にも少しだけ刃の日常は続きます。

著者
青山 剛昌
出版日

新作アニメ『YAIBA』では完全な映像化とアクションに注目!

『YAIBA』は2024年5月8日発売の「週刊少年サンデー」にて、新作アニメの制作が発表されました。詳しい放送スケジュール、制作スタジオ等については未発表ですが、「完全アニメ化」を宣言しているのが特徴です。

最初の概要で少し触れましたが、『YAIBA』は1度『剣勇伝説YAIBA』としてTVアニメが放送されました。そちらは「かぐや編」までで終了しており、しかもテンポ重視で展開が一部カットや改変されているので、「完全アニメ化」には原作に沿って忠実に作るという意味が込められていそうです。

そこで注目したいのは、発表にあたって描き下ろされた『YAIBA』の新規イラスト。刃が持つ雷神剣の他に、剣や木刀が地面に突き立っています。風神剣、龍神剣、そして覇王剣……さらによく見ると、「剣十郎」と名前の掘られた木刀まであります。

覇王剣が登場するのは地下帝国以降ですし、木刀は最終エピソードのアイテム。ファンサービスとも考えられますが、わざわざ「完全アニメ化」と掲げていることから、ストーリー全編の映像化をイラストで暗示している可能性は充分あります。

『YAIBA』新アニメには、旧アニメにはなかったストーリーもそうですが、近年世界的に評価の高いアニメ表現による激しい剣劇アクションにも期待したいです。

新アニメのキャスティングはまだ不明ですが、旧アニメで主要キャラクターを演じた声優陣は刃役の高山みなみ、鬼丸役の堀川りょうを含めてほぼ全員が現役。先だって発表されて話題を呼んだ、同じ小学館の『らんま1/2』新アニメがほぼオリジナルキャストだったことからしても、大半の声優は『YAIBA』旧アニメから続投するのではないでしょうか。

ちなみに2024年4月公開の映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』には、『YAIBA』から鬼丸猛と6代目・沖田総司がカメオ出演していました。カメオ出演自体はこれまでにもありましたが、2人揃って映画に登場したのはタイミング的に『YAIBA』新アニメの前振りだったのかも知れません。

『名探偵コナン』出演時の声優はそれぞれ、鬼丸役・津田健次郎と沖田役・遊佐浩二でした。ただし、鬼丸は『YAIBA』旧アニメで担当した堀川りょうが服部平次を演じているため、混同しないように津田健次郎を代役にしていると思われます。従って新アニメではおそらく堀川りょうが鬼丸役で、(出番があれば)沖田役は遊佐浩二になるでしょう。

今現在『YAIBA』新アニメの詳細は未発表なので、気になるあれこれについては続報を待ちましょう。

『YAIBA』の作者は『名探偵コナン』で知られる青山剛昌

青山剛昌は鳥取県出身の漫画家です。血液型はB型で、1963年6月21日生まれの61歳(2024年8月現在)。言わずと知れた人気作品『名探偵コナン』の作者です。

幼少期から漫画が好きで、当時「私立探偵専門の漫画家になりたい」との夢を持っていたことが小学校の卒業文集に残されています。ただし、ずっと本気で目指していたわけではなく、高校卒業後は美術教師になるために日本大学芸術学部に進学しました。

ちなみに高校まで剣道部所属だった関係で剣道への造形が深く、『YAIBA』や『名探偵コナン』でたびたびモチーフになるのはそのため。

転機が訪れたのは大学時代に入った漫画研究部でのこと。青山剛昌は先輩の矢野博之(のちにアニメ演出家・監督になる人物)に勧められ、漫画家を志したと語っています。

当初「週刊少年マガジン」に持ち込み投稿をして、第35回「少年マガジン新人漫画賞」で『さりげなくルパン』が選外佳作に選ばれました(完全に余談ですが第34回同賞に『ベルセルク』の三浦建太郎が入選しています)。『さりげなくルパン』は主人公の名前や設定などから、『まじっく快斗』の原型と言ってよい作品です。

残念ながらマガジン編集とは折り合いが悪く、改めて「週刊少年サンデー」に持ち込んだところ、1986年に『ちょっとまってて』が第19回「小学館新人コミック大賞」少年部門に入選。同作が「週刊少年サンデー」に掲載されて商業デビューしました。

1987年「週刊少年サンデー」増刊号で『まじっく快斗』の連載スタート(のちに不定期連載化)。その後、『YAIBA』が1988年から1993年まで続く長期連載となり、そこから1994年の『名探偵コナン』に繋がりました。

著者
青山 剛昌
出版日

青山作品は主人公とヒロインが幼馴染みであることがほとんど。また連載作品では『YAIBA』のみ完全には当てはまらないものの、主人公が正体と目的を隠して活躍するという特徴があります。肉体年齢が変化する展開も青山剛昌の好みのようです。

『YAIBA』はすでに完結している作品ですが、エピローグでは刃たちの物語がまだまだ続くことが示唆されました。そのため新アニメと前後して読み切り続編が発表されるかも知れません。『名探偵コナン』の連載があるので実現するかはわかりませんが、ファンとしては「その後」が気になるので、いつか何かの形で見られればいいですね。


漫画『YAIBA』は単行本だけでなく、漫画アプリでも読むことが出来ます。「サンデーうぇぶり」なら基本無料で最後まで読めるので、気になった方はまずそちらからどうぞ。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る