どんな話をしてたっけな。
ああ、例えば僕に好きな人が居たりとか。
で、その人との事を相談したりしてましたね。
僕、本当に吸い込まれる様な女性が好きで。
いっつも吸い込まれちゃって帰って来られなくなっちゃうんですけど。
あ、成就はしてないです。
でも彼はいっつも的確なアドバイスをくれるというか、同い年とは思えない考え方をしていて、頼りにしていましたね。
僕がそういう人に惹かれるのは、自分の人生を新しくしたいのかもね、って。
普段は飄々とした感じなんですけど、何人かで居る時、ふとみんなの奥にいる彼を見つけると、心ここに在らずみたいな顔をしていたのを覚えてますね。
心がどこかに行っちゃって、それを自分でも探してる、みたいな。
その顔をなんか、すごく覚えてますね。
(二十代・男性)
よく道端で会うから、その度に挨拶ぐらいはしてたわね。
ちっちゃい頃からちゃんと挨拶してくれて、可愛らしい子って感じだったわよ。
大学生くらいまであそこに住んでたのかしら。
一度その頃に上を見ながら歩いてた事があってね。こう空を見ながらゆっくりゆっくり歩いてたのね。
私、危ないと思ったから「どうしたの?」って声掛けたの。
そしたら「飼ってる鳥が逃げたかも」って。
その時の顔がえらくボーッとした感じだったからね、私ちょっと面食らっちゃった。
あら、この子こんな顔だったっけ?って思ったの。
そういえば、あの子の顔をちゃんと真正面から見たのが久しぶりだったからかしらね。
というか初めてだったのかも。
あぁ大人になったのねぇ、って。
そういう事ではねぇ、なかったのかも知れないけれど。
(七十代・女性)
息子の友達で、よく家に来て遊んでましたね。
みんなでゲームとかをやってたのかな。
はつらつとした子だったと思いますよ。子供の突発的にハイになる感じってあるじゃないですか。時々ゲームで興奮して大声を出したり。それを注意した事がありました。
あ、そう。
それで、一度息子たちの輪に僕が混ぜてもらう機会があって、その時は彼が自作したゲームを皆でやってました。
どんなだっけな。
忘れちゃったけど。カードみたいな物を使ってた気がします。
なんだっけな。
神様のゲーム、みたいな。
神様が姿を現したり、姿を消したり。
そんなゲームだった気がします。
詳しいルールは思い出せないな。
でもそのカードの絵が気持ち悪くって。
彼が描いたらしいんだけど、それを言った気がします。
酷い大人だね。
まぁそんな感じです。
懐かしい。
元気なんですか?彼。
(五十代・男性)
夏休み、実家とか帰るんですか?って話を何となく私がしたんです。
そしたら、その年は少し前に帰ったから今年はもう帰らないって。
あーじゃあどこか行ったりするんですか?って聞いたら、友達とバーベキューに行くって。
良いですねとか話してたら、でも本当は一人でトンネルに行きたいんだ、って。
どこのトンネルですか?って聞いたら、まだ良いトンネルが見つかってないって。
トンネル自体が目的地というか。
で、入りたい、みたいな感じらしいです。
聞き返しましたけどね。私も。
入ってどこに行くんですか?って聞いたら、どこにも。入ってそのままそこにずっと居たいって。
なんかそういう願望があるんですって。
昔から。
トンネルの真っ暗の中で、自分とその真っ暗の境い目を、確かめたい、って。
こんな話、初めて誰かにしたって言ってました。笑ってましたけどね。
レジ締めの時です。バイトの。
印象に残ってますね。流石に。
なんか、意外だったんで。今話しててもよくわからないし。
話しやすいし、向こうは大人だけどなんかノリも合う気がして、シフトが一緒になるとよく話してたんですけどね。
その時の話は、あの人がそんな事を言い出すとは思ってなかったので、覚えてますね。
実は闇っぽい人なのかな?って。
なんだったんでしょう。
(十代・女性)
夢で会った事しか無いんです。数度。
実際にいる人なんだって知って、へぇ〜〜って。
だからどこかで会ったり見たりしたのかもしれません。駅とか?
夢の中でのその人ですか?
そうですね、すごく悲しそうな印象があります。
喋ってなくて。いつも。
椅子に座ってこちらをじっと見つめてるんです。一度も目を逸らさず。
その夢の中でその人は何かを物凄く言いたいんだけど、何かを言う事は禁じられてる様なんです。
誰からなのかはわかりません。
神様かも知れません。そんな気がします。
でも、目が、凄くおしゃべりで。
可哀想でした。
私も触れたいんだけど、私にも腕が無くて、というか多分、体自体が無くて。
触れたことはありません。
現実のどこかで会ってるんですかね?
道とか。
わかりません。
(三十代・女性)
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