【#25】※この岡山天音はフィクションです。/雨宿り。後から軒下に入ってきたお婆さん。

更新:2025.8.28

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「はぁ腕が痛いわ…」

 

「あなた、駅前の魚屋さん、ご存知?」

 

「私昨日から腕が痛むの。あの魚屋さんの壁って水色のタイル張りじゃない?あの冷たそうな壁に腕を押し当てて冷やしたら、ちょっとは痛みが引きそうな気がしない…?」

 

「これからその魚屋さんの壁に腕を当てに行くの。ついでに今晩の魚も買うつもりよ」

 

「あら。あなた綺麗な模様の傘を持ってるのね。ちょっとそれ広げて、私に見せてくれない?」

 

「思ったよりも強い模様ね。ありがとう。もういいわ」

 

「そう言えばあなたね、夜ベッドについて、眠るために目を瞑ったとき、瞼の裏に何か、模様みたいなものが見えることないかしら?」

 

「私には毎晩のように見えるの。でもあれってね、その模様がどんな模様だったかを、誰かに説明できる代物じゃないのよ」

 

「模様って言ってもね。私たちが普段目を開けている時に扱っているような模様とは、そもそもの理が違っているらしいの」

 

「でもあの模様は、今日生きた一日や、それよりも前から続いてきた私たちの人生と、実際には地続きのものらしいのよ」

 

「あの模様は残像。自分の人生の後ろ姿」

 

「『第三の目が視る日常』」

 

「その模様の事をね、TikTokスラングではそう言うらしいの」

 

「その人の人生のね、重要なものが、その時々で映し出されているのよ」

 

「今日の瞼の裏には、いったい何が映ってくれるのかしら」

 

「ああ。あなたの人生の中で、本当にめぼしいものは、いったい何なのかしらね」

 

「腕が痛むわ。雨、早く止んでくれると良いんだけど」

 

「嫌ねぇ」

 

※お婆さんはそう言うと、自分の傘を開いて、再び雨の中へと消えて行きました。

この岡山天音はフィクションです。

 

【#24】※この岡山天音はフィクションです。/せっかく諦めたばかりだったのに。

【#24】※この岡山天音はフィクションです。/せっかく諦めたばかりだったのに。

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【#23】※この岡山天音はフィクションです。/夏と教習所

【#23】※この岡山天音はフィクションです。/夏と教習所

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【#22】※この岡山天音はフィクションです。/携帯される俺

【#22】※この岡山天音はフィクションです。/携帯される俺

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