加藤シゲアキ人気の全著作を紹介!文学賞の評価を受けるジャニーズ小説家!【2021最新】

更新:2021.12.9

加藤シゲアキは、ジャニーズのグループNEWSのメンバーとして活動しながら、『ピンクとグレー』で小説家デビュー。その後もコンスタントに著作を発表し『オルタネート』が直木賞、本屋大賞の候補となったのち、吉川英治文学新人賞を受賞!アイドルとして培った表現力の垣間見える小説をたっぷり紹介します。

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アイドルと作家の顔を持つ小説家・加藤シゲアキ

加藤シゲアキは1989年、広島に生まれ、幼い頃は大阪、10歳からは神奈川で育ちました。本名は加藤成亮と書きます。1999年からジャニーズ事務所に入所し、2003年にNEWSというグループのメンバーとしてデビューしました。

そして、アイドル活動と並行して大学を卒業。2011年に『ピンクとグレー』で小説家デビューを果たします。今から紹介する作品は、ドラマや映画化されているものもあり、若者の中から支持を得ているといえるでしょう。

また2021年には直木三十五賞、そして本屋大賞の候補に『オルタネート』が選出。直木賞の選考会では宮部みゆき、北方謙二、伊集院静らが評価しました。受賞は逃すも、吉川英治文学新人賞を受賞。

この記事では、NEWS加藤シゲアキではなく、作家としての彼の作風の魅力について、出版順に全作紹介していきたいと思います。どの作品も彼の性格が垣間見えることでしょう。

加藤シゲアキのデビュー作。芸能界の光と影を表す青春小説『ピンクとグレー』

あらすじ

小学生の頃、横浜へ引っ越してきた川田大貴は、同じマンションの同級生、鈴木信吾と仲良くなりました。中学、高校を共に過ごすなかで、2人ともモデルにスカウトされます。

ルームシェアをはじめ、お互いが自分の夢である芸能界に向かって行きますが、人気の差と共に2人の仲にヒビが入っていくのでした。

大貴は年数が経ってもバイトと細々とした仕事をこなす日々を送っていました。それとは逆に、真吾はドラマなどに出演していて、大貴とは差が広がっていました。

しかし、2人はずっと一緒に過ごしてきた仲間です。同窓会をきっかけに、また仲良くなれるかもしれない、という気持ちが芽生えてきます。

再会を果たした2人でしたが、それもつかの間、大貴が真吾に呼ばれて行くと、そこには思いがけない状態が待ち構えていました……。

著者
加藤 シゲアキ
出版日
2014-02-25

ここが見所

一見、明るく夢を追う青春小説のようですが、2人のすれ違いからは芸能界の裏の顔が垣間見えるようです。

成功したはずの真吾が抱えていた悩み、成功していない大貴の挫折と苦悩は、芸能界にいる加藤シゲアキならではの、華やかさと影の部分が表現されている世界観だと感じられます。

この作品を書いた当時、加藤が所属するNEWSはなかなか売れない時代を過ごしていました。その影響もあったのでしょうか、主人公である大貴の挫折がリアルなものなのだと実感させられることでしょう。

この作品の特徴の1つとして、章のタイトルが飲み物で表現されていることが挙げられます。章ごとの年齢によって、飲み物が変化していくのです。小学生時代は「イチゴオレ」。大きくなり、コーヒーが飲めるようになり、お酒になっていきました。

この部分は、大貴の年齢の変化と共に成長を表しているのでしょう。

2016年には中島裕翔、菅田将暉、夏帆、岸井ゆきのらの出演で行定勲監督が実写映画化。開始62分で大きく変化する展開に注目です。

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2人の出会いが生み出すもの『閃光スクランブル』

あらすじ

主人公は、5人組のアイドルグループに所属している亜希子です。亜希子は、俳優の尾久田と不倫関係にありました。

その関係を狙っていたのは、パパラッチの巧という男です。2人の出会いは運命的なものでした。

著者
加藤 シゲアキ
出版日
2015-11-25

ここが見所

作者自身もアイドル活動を行っていることから、亜希子のアイドルとしての姿勢にもしかしたら自分の影を重ねていたのかもしれません。

アイドルというのは、寿命が長いとはいいがたいです。女性は特に、若いアイドルに次々と押され、芸能界から消えていく者も少なくないと感じます。

この物語は、そんな、自分に自信がなくなってきているアイドル亜希子と、パパラッチである巧の出会いから始まりました。職業上、2人の出会いは最悪なものだったのです。

巧には、抱えている苦悩があります。彼は妻を事故で亡くしており、それからというもの、ゴシップを追うという、芸能人から嫌がられるようなイメージの悪い仕事に身を落としていました。つまり、妻の死は巧の心を傷つけ、立ち直れないものとなっていたのです。

さらにその事故が原因で、巧は色が見えなくなっていました。

『閃光スクランブル』という題名は、この作品にピッタリでしょう。この作品の舞台は渋谷で、メイン通りにスクランブル交差点があります。

その、交差するものと、一瞬の強い光である「閃光」という言葉を融合させていることから、『閃光スクランブル』という題名は、この作品にぴったり当てはまる言葉となっているのかもしれません。

そして、その交差する光は、亜希子と巧でしょう。

2人は、職も年齢も異なりますが、唯一、心に悩みを抱えていることが共通しています。題名は、その二人が出会うことによって、閃光が生み出されるという意味ではないでしょうか。ぜひ読んで、題名の意味も考えてみてはいかがでしょうか。

「魂燃やして生きる」事の大切さを想う『Burn.‐バーン‐』

あらすじ

主人公は、世間から昔天才子役ともてはやされていたレイジという男です。レイジが渋谷の宮下公園で出会ったのは、ホームレスとドラッグクイーンでした。

自分の目標に向かって明るく生きている2人によって、レイジは次第に人間としての心を取り戻していきます。

しかし、彼らは宮下公園から追い出されてしまうのです。

著者
加藤 シゲアキ
出版日
2014-03-21

ここが見所

この物語は、レイジの子供の頃と大人になった現在を交互に描いていきます。

子役だったレイジは、大人に言われるがままに演技をして生き抜いていました。それはまるで機械のようで、毎日感情を殺して生活していたことが読み取れます。

そんな中、ホームレスの徳さんとドラッグクイーンのローズの2人と出会いました。彼らの明るい性格から、レイジは次第に自分を見つめなおしていきます。

大人になったレイジは、脚本家になっていますが、子供の頃の記憶がありません。徐々に明らかになっていく過去に、思わず胸が詰まります。なんといっても、徳さんとローズとの突然の別れはとても切ないものに思われるでしょう。

徳さんが言った、「魂燃やせ」という言葉が印象に残るはずです。

昔、機械のようだったレイジを支え、導いてくれた徳さんとローズのおかげで、レイジは大人になった今、このような生活を送っているのだということが、嬉しく感じられます。

一期一会とはよく言いますが、子供の頃に支えてくれる大人たちのおかげで、子どもは変わっていくのだと感じる物語です。レイジはきっと、2人のおかげで、良い父親になることでしょう。

明るい印象の芸能界に自分を殺され、社会的に排除されてしまうような大人たちに救われる、そんな希望を持った作品となっています。加藤シゲアキの温かい心を感じることもできる、おすすめの作品です。 

加藤シゲアキ、初の短編集『傘をもたない蟻たちは』

人々の「生」と「性」を描いたこの作品は、全6編からなる短編集です。加藤シゲアキ4作目となる今回の小説は、恋愛ものから推理ものまで、加藤が今出せるすべてを網羅していると感じます。

今回は、この短編の中からいくつか紹介したいと思います。

著者
加藤 シゲアキ
出版日
2015-06-01

「恋愛小説(仮)」あらすじと見所

「恋愛小説(仮)」は、主人公で作家の僕が「男子の恋愛」をテーマにした小説を書き始めるところから始まります。書き始めてからすぐに詰まってしまい、寝てしまうと、彼は夢の中で美しい女性と出会うのです。

彼は、自分が書いた恋愛小説が現実のように、夢に現れることに気付きました。そのため、自分の初恋の相手を登場させたところ、なんと夢にも登場し、デートを重ねていきます。

魅力の1つは、「200字以内に書いたものが夢で現れる」という設定です。自身が短編を書く中で、200字という短い文章で物語を描く主人公を登場させるのは、思わず、センスがいい!と感じてしまうことでしょう。

「インターセプト」あらすじと見所

「インターセプト」は、結婚式の2次会で出会った男女のお話です。

なかなか男になびかないことで有名な安未果を落としてやろうと、林は意気込みます。口説きは通じなかったものの、お互いに好きなものが同じだということが分かり、意気投合していくのです。

安未果の巧みな誘いにより、林は彼女と一夜を共にしました。そして、朝、そこで林が見たものとは……?

誰しもがこの結末にゾッとすることでしょう。男性の作家ながら、女性のしぐさやしたたかさを上手く表現できていると感じます。こんな視点での作品も描くことができるのか、と感心すること間違いなしの作品です。

他6編も、様々なジャンルに挑戦した加藤シゲアキの心意気が伺える作品となっています。

登場人物の動機が繊細に描写される長編小説『チュベローズで待ってる』

あらすじ

上巻「AGE22」

22歳の主人公・光太は就活に惨敗。そこで歌舞伎町のホストクラブでトップの雫に誘われ、そのホストクラブ「チュベローズ」で働き始めます。

下巻「AGE32」

その10年後の2025年、32歳になった光太は大手ゲーム会社に勤務し、ヒットを飛ばすクリエイターとなっていました。ホスト時代の人間関係を頼りにトラブルを解決していくうち、10年前のある人物の死について真相を究明していきます。

著者
加藤 シゲアキ
出版日
2017-12-12
著者
加藤 シゲアキ
出版日

ここが見所

色々な出来事、人物が複雑に絡み合い一筋縄ではいかない物語性が魅力。順当に考えればこうなる、という展開が裏切られていきます。

上下巻に分かれていますが、下巻「Age 23」を読むことで上巻の謎がわかっていくようなからくりになっています。

特に下巻の最後のパートでくり広げられるメインの登場人物によるモノローグ。そこでは人物が行動にいたるまでの心の動きが丁寧に描かれます。主人公が直面したある登場人物の死、その理由には人間のエゴや尊厳にまつわる人間くさい動機がありました。

加藤シゲアキがアンソロジーに参加「ポケット」(『行きたくない』所収)

あらすじ

住野よる、奥田亜希子ら5名の若手作家が「行きたくない」をテーマに書き下ろした短編集『行きたくない』。そこに収められている加藤シゲアキの作品が「ポケット」です。

高校生の条介は幼馴染のアンに、彼氏と別れるところを見守るように頼みます。別に見たくないし、だからといってバイトも「行きたくない」と思う主人公。

恋愛をしたり、音楽を作るなどで自己実現をしたりと自分よりも先に進んでいるように見えるクラスメイトたち。彼らと自分を比べて「ここではないどこか」に行きたい、今とは違う自分になりたいともがく思春期の少年を描いた物語です。

著者
["加藤 シゲアキ", "阿川 せんり", "渡辺 優", "小嶋 陽太郎", "奥田 亜希子", "住野 よる"]
出版日

ここが見所

高校生ぐらいの年齢の時には誰しもが感じるような焦燥感を、見事な言葉選びや主人公以外の人物の描写で描き出した本作。

後半では不登校になって浮いてしまった友人に優しく接しますが、自分の知らない世界に興味を持っていた友人が先に進んでいるように感じてしまいます。気後れしてしまう自分自身の描写に、こちらまでキュッと心が狭くなるような気持ちになるでしょう。

最終的に、「行きたい」と積極的に思えるような場所を見つけることができるのでしょうか?短いストーリーですが、同じような気持ちの読者を優しく肯定してくれるような物語が詰まっています。

加藤シゲアキがジャニーさんについて語る!初エッセイ集『できることならスティードで』

あらすじ

キューバ、パリ、スリランカへの実際の旅、祖父を見舞いに訪れた岡山、観劇で訪れた大阪、そしてトレーニングという肉体の「旅」や思考の「旅」まで……。

様々な意味での「旅」をテーマに、小説誌「小説TRIPPER」で4年間連載していたエッセイを収めた初のエッセイ集が『できることならスティードで』。

「渋谷」では出身地を聞かれてもなかなか断定できない自分にとって、ホームタウンと呼べる場所についての思索が綴られます。

また「浄土」では2019年7月に亡くなった「ジャニーさん」への想いが明らかに。

著者
加藤シゲアキ
出版日

ここが見所

人間・加藤シゲアキについて赤裸々に書かれた初のエッセイ集である本作。フィクションを描いた小説よりも、ダイレクトに彼について知ることができます。

たとえば『ピンクとグレー』『閃光スクランブル』『Burn.―バーン―』の3作の舞台に選んだ「渋谷」。3作に共通する「芸能界と渋谷」というテーマを選んだ意図も、このエッセイを通して理解できるでしょう。

またエッセイに加えて書き下ろしの掌編小説も3編収められています。

本作のタイトルにも関連する「ホンダ スティード 400」は、加藤シゲアキ自身がかねてから憧れていたというホンダのバイク「スティード」を手に入れた青年の物語。本当にバイクを手に入れられたら加藤シゲアキもこうしたかったのだろうな、という希望を垣間見ることができるストーリーになっています。

長編小説はハードルが高いけれど、彼がどんな小説を書くのか知りたいという方も気軽に読める長さのショートストーリーなので、ぜひ手に取ってみては。

本屋大賞を逃したからこそ、文学新人賞として評価された『オルタネート』

あらすじ

ユーザーは高校生限定のSNSアプリ「オルタネート」のある世界の、東京にある高校が舞台。そのアプリが新たに開始したサービスでは、遺伝子レベルで相性を見極めてマッチングしてくれます。

オルタネートを使いこなして信者のようになる人、嫌う人、その輪に入ることを選ばない人……それぞれの人物らが青春に命を燃やし、運命を選び取っていくさまが鮮やかに描かれた群像劇です。

著者
加藤シゲアキ
出版日

ここが見所

全国の高校生が、直木賞のノミネート作品のなかから選ぶ「高校生直木賞」を受賞した本作。アプリ介して進んでいく物語に、ライトノベルのように親しみやすい表紙のイラストも相まって若年層からも評価を受けています。

加藤シゲアキがこれまで意図的に避けてきた「恋愛」というテーマが描かれている点にぜひご注目を。恋愛については、ジャニーズの著者が描写するとどうしても自身と重ねられてしまい、そのことが先行して話題になってしまうのではないかという懸念から、これまで避けてきたテーマ。

彼自身が30代になり、そろそろ青春時代のことを客観的に書くことができると考えが変化してきたそう。

作中では料理に情熱を燃やす登場人物2人が想いを寄せあっていきますが、料理を愛する2人だからこその表現で愛を伝えるシーンは思わず読者もキュンときてしまうでしょう。

加藤シゲアキ自身による企画で、オフィシャルプロモーションムービーも制作されています。映像化される日が来るかもしれませんね。

連載中の最新作は加藤シゲアキの分岐点に?『ミアキス・シンフォニー』

あらすじ

「anan」で不定期連載中の『ミアキス・シンフォニー』が2021年7月現在の加藤シゲアキ最新作。

東京の小粋な和食料理店を訪れた父・たっちゃんと20歳の娘まりな、その店の大将・橋本と弟子。女子大の教授と付き合う教え子、親友との三角関係に悩む女性……。

1話ごとに違う登場人物が主人公となって物語を紡ぎ、話を追うごとにそれらがリンクし合っていく構成になっています。

anan(アンアン)2021/4/7号 No.2244[今、私たちにできること。/Travis Japan]

2021/3/31
 
マガジンハウス

10話が掲載されている「anan」2021年4月号の試し読みと購入はこちらからどうぞ。

ここが見所

「ミキアス」とは、犬と猫の祖先といわれている動物のこと。「あらゆる登場人物の分岐点」になぞらえたタイトルで、自分にとっても分岐点になれば」と加藤シゲアキは語ります。

刹那的な生き方をする人物、器用になんでもこなせるわけではない人物、とそれぞれの個性や感情が細かく描かれ、誰に共感しながら読むか考えるのもおすすめ。

2021年7月現在10話まで発表されている本作の結末ですが、作者の心のうちではもう決まっているとのこと。あの話の誰が実はこの話の誰誰で……と推測しながら読む楽しみ方も不定期連載ならではです。ぜひ連載をリアルタイムで追いかけて、読み返しながら刊行を楽しみにしましょう。


 いかがだったでしょうか。ジャニーズだから、とあなどれない加藤シゲアキの実力を感じてみてください。作品を出すごとに上がる評判は、もはや話題のみで読まれている作家ではないということを思わせるものです。ぜひ読んでみて下さいね。

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