『また、同じ夢を見ていた』6の見所をネタバレ解説!物語の謎・伏線を考察

更新:2019.1.17

250万部以上を売り上げた『君の膵臓を食べたい』の作者・住野よるの、2冊目の作品『また、同じ夢を見ていた』。 本作は、小説とひとくくりにするのは難しいでしょう。童話のように感じさせる反面リアリティもあり、幸せや人生について考えさせる自己啓発的な要素も組み込まれています。読者になんとも言い難い感情をもたらせてくれる作品です。 今回は、そんな魅力満載の『また、同じ夢を見ていた』のあらすじや登場人物の紹介、さらには結末までをご紹介していきましょう。

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『また、同じ夢を見ていた』あらすじ、登場人物を簡潔にネタバレ解説!

250万部以上を売り上げた『君の膵臓を食べたい』の作者・住野よるの、2冊目の作品。

本作は2016年に発売され、そのすぐ1週間後には売り上げ数が1万6000部に到達したという、人気作です。それを受け、2018年には文庫版が発売され、こちらの発行部数も2019年現在40万部を突破しました。

著者
住野 よる
出版日
2018-07-11

主人公は、読書が大好きで、少しおませで賢い小学生・奈ノ花(なのか)。論理的に考え、そのうえはっきりとものを言うので、クラスでは浮いており、友達がいません。

そんな彼女の友達といえば、黒猫の「彼女」、アパートに住んでいて「季節を売る仕事をしている」という社会人の「アバズレさん」、お菓子を焼くことがとっても上手な「おばあちゃん」、そして最近出会った女子高生の「南さん」だけです。

学校の外に友達が多い彼女ですが、席が隣で絵を描くことが好きな桐生君は、少しだけ気になる存在のよう。しかし、自分の描いた絵を周りに見せないことや、描いている時が幸せだと周りに言えない消極的な彼のことを、奈ノ花は意気地なしとも思っています。

ある日クラスで「幸せ」について考える授業があり、それをきっかけに奈ノ花は「幸せ」が何かについて考えるようになりました。

そんななか、彼女の日常ではさまざまな出来事が起こります。それは誰にでも起こりうるような、些細な出来事ですが、彼女はまっすぐにそれらに向き合います。

そんな彼女が道を間違えないように、その度に的確にアドバイスをしてくれる学校の外の友達たち。そして、彼女たちは皆アドバイスを終えると、なぜか次々と奈ノ花の前から姿を消していくのでした。

なぜ彼女たちは姿を消してしまったのでしょうか。そして、その正体とは……。

『また、同じ夢を見ていた』の見所1:読者、時期によって異なる解釈が生まれる世界観

著者
住野 よる
出版日
2017-04-27

 

作者は、絶大な人気を誇る小説『君の膵臓をたべたい』(略称「キミスイ」)の、住野よる。

同作は「泣ける!」という感想を持つ人が圧倒的に多いようですが、この『また、同じ夢を見ていた』は、いろいろな解釈や意見が出てくるのが特徴だといえるでしょう。それは、まるでこの作品のテーマでもある、「幸せ」は人それぞれまったく違うものである、というのを暗示しているようです。

作者はインタビューで、「1つの感想を抱く本はつまらない」という、ある作家の言葉に共感して影響を受けていると語ります。まさにその影響が良く作用した内容といえるでしょう。

また個人によってだけでなく、初見と読み返した時に感想が異なってくるであろう点も、本作の魅力。読者ごと、そしてその読者が時間を経て体験したことによって感想が異なり、何度も楽しめる作品になっているのです。

『また、同じ夢を見ていた』の見所2:謎の多い登場人物たち!

 

本作に登場する人物たちは、とにかく皆ミステリアス。それぞれの正体は?と考えながら読み進めていくのも、楽しみの1つでしょう。

主人公は、奈ノ花。本をよく読むので、論理的に物事が考えられる賢い小学生です。「人生とは~」が口癖で、よく人生を何か別のものでたとえます。この「人生とは~」という言葉は、スヌーピーのセリフに影響を受けてとのこと。

そんな彼女の友達の1人、女子高生の南さん。奈ノ花がたまたま見つけた建物の屋上に1人でいて、人知れず小説を書いています。両親とケンカしたまま死に別れてしまったことを、ずっと後悔している人物です。同じ後悔を味あわせないためにも、奈ノ花に両親と必ず仲直りしろと約束させます。

雨の中ケガをしていた黒猫を助けようとしたことがきっかけで、奈ノ花の良きお姉さん的存在になったアバズレさん。表札に乱暴な字で「アバズレ」と書かれているのを奈ノ花が名前だと勘違いしたことから、そう呼ばれることとなりました。

そして、お菓子作りが得意なおばあちゃん。アバズレさんと同じく奈ノ花の良き相談相手として、彼女を元気づけます。未来を予知しているような発言をすることが多く、その言葉で奈ノ花を導きます。

また、彼女は「live me」というサインが入った大きな絵を持っており、物語において重要なポイントとなってくるので、ぜひ覚えておいていただきたい点です。

最後に、奈ノ花の担任の先生である、ひとみ先生。怒ることは少なく、生徒1人1人の性格もよく熟知しています。奈ノ花が間違っていることを発言すると、丁寧に諭してくれる人物。国語の授業で「幸せとは」について考えてみようと提案したのも彼女です。

 

『また、同じ夢を見ていた』の見所3:南さん、アバズレさんの名前の由来とは?散りばめられた謎・伏線を考察

 

本作に出てくる人物には、本名が明らかにされない者が何人かいます。ここではさらに彼らについて詳しく説明していきましょう。

たとえば南さんも、その1人。彼女が着ていた制服の袖には、高校の名前が刺繍されていました。しかし、小学生の奈ノ花は「南」という字しか読むことができず、それが彼女の名前だと勘違いしたのです。奈ノ花が両親とケンカしたことを知った彼女は、奈ノ花に仲直りする約束を取り付けます。

次に、アバズレさん。先ほども少しご紹介しましたが、表札に「アバズレ」と書かれているのを見て奈ノ花が名前だと勘違いし、それ以降「アバズレさん」と呼ばれるようになります。

「アバズレ」とは品行が悪く、厚かましく、卑しい女性のことを罵って使われることが多い言葉。心ない人が表札に書いたのではないかということは、字面からも窺えるでしょう。しかし彼女は特に否定することもなく、奈ノ花に「アバズレさん」と呼ばせるのでした。

彼女は本人曰く「季節を売る仕事」をしているとのこと。季節を売るとは、春を売る=売春のことだろうと推測できます。小学生の奈ノ花には理解しづらい職業であることも考慮しての発言でしょう。

最後は、なんとも不思議なおばあちゃんです。何もかもお見通しのような雰囲気を持ち合わせており、「奈ノ花には先を見通せる力がある」と言います。また彼女には絵を描くことが好きな友達がいるようで、大きな絵を仕事場に飾っていました。その絵には「live me」というサインがあります。

このように本名が出てこない登場人物たちですが、実はある共通点があるのです。

それは、奈ノ花のことを普段は「ガキ」「お嬢ちゃん」などと呼んでいたのに、何かをきっかけに、名乗りもしなかった奈ノ花の名前を口にしたこと。

奈ノ花の名前を呼ばない理由は?彼女たちの本名が出てこないのはなぜ?名前を知らないはずの奈ノ花の名前を知った経緯は?

さまざまな謎は、エンディングへの伏線となっています。

 

『また、同じ夢を見ていた』の見所4:マンガもおすすめ!

 

本作はハードカバーや文庫だけでなく、漫画でも刊行されています。

作画は、桐原いづみ。彼女は、住野よるのデビュー作『君の膵臓をたべたい』でも作画を手がけています。

『また、同じ夢を見ていた』の漫画は全3巻。内容も実にしっかりしていて、セリフの部分はほぼ余すことなく原作どおりで、世界観を楽しめます。

 

著者
桐原 いづみ
出版日
2018-03-12

 

本作の見所は、奈ノ花の元気ハツラツな表情や賢い表情などが、実にうまくに表現されている点。また原作だと気難しい印象が強い彼女ですが、桐原の柔らかい絵柄によって可愛らしい印象が加わるもの物語に引き込まれる原因となっているでしょう。

前作『君の膵臓をたべたい』も手掛けていることもあり、住野よるの世界観をかなり理解していることが感じられる本作。原作のイメージがうまく表現されているので、小説が苦手だという方にもおすすめできます。

 

『また、同じ夢を見ていた』の見所5:魅力的な名言!印象に残った言葉をランキングで紹介

本作では、奈ノ花が人生をさまざまなものにたとえていきます。住野よるのインタビューによれば、50近くもの似たようなフレーズを考えていたというのだから驚きです。

そんな本作には、実に多くの名言が登場します。なかでも印象に残ったフレーズをランキング形式で紹介していきます。

第5位

人生とはクジャクの求愛のようなもの。
(『また、同じ夢を見ていた』より引用)

初見の方は、何を言っているか正直よく分からないのではないでしょうか。奈ノ花のこの言葉を聞いたアバズレさんは「派手なこと」がキーワードになっているのか考えますが、実は奈ノ花の考えは違います。

クジャクが求愛する時は、ピシッと背筋を伸ばしつつ、綺麗な羽を広げますよね。実はこの姿勢と羽が関係しているのですが……小学生ならではといった感じで、思わず「なるほど」と納得させられること間違いなしの言葉です。

第4位

人生とは、オセロみたいなものですね。
(『また、同じ夢を見ていた』より引用)

奈ノ花はよくアバズレさんとオセロで遊ぶものの、なかなか勝つことができません。そのことをおばあちゃんに話します。そして「いつか私もオセロが強くなるかしら?」と聞くと、「なっちゃんには先を見通す力があるから必ず強くなる」とおばあちゃんは答えるのです。

オセロに勝っていたわけではないのに、どうして彼女は奈ノ花に「先を見る力」があると思ったのでしょうか。

また、オセロというキーワードは他にも出てきます。

いつものように、奈ノ花はオセロを人生にたとえるのですが、嫌なこと(黒)もあればよいこと(白)もあるというような単純なものではなく、彼女の賢明さが表れた解釈の言葉です。オセロというゲームの本質をさして「人生とは」とたとえています。

この言葉を読み解く場面は感動的なので、ぜひどういう意味でのオセロなのかということを、ご自身で頭の片隅に置きながら読み進めてください。

第3位

幸せとは、今、私は幸せだったって、言えるってことだ。
(『また、同じ夢を見ていた』より引用)

おばあちゃんの発言です。確かに幸せって、その瞬間には気づきにくい場合もあるのではないでしょうか。だからこそ後から思い返した時に「幸せだ」と感じることができるのであれば、それは幸せだということでしょう。

そういったことって意外と多いのだということを、本作を読んであらためて感じる方も多いのではないでしょうか。

第2位

誰かを好きになることを諦めなきゃ、必ず幸せな人生になる。
(『また、同じ夢を見ていた』より引用)

クラスで誰も味方をしてくれないことに落ち込んだ奈ノ花は、誰とも関わらず生きていくと言います。それに対して、アバズレさんが言った言葉です。

誰かを好きになったからといって、必ず相手もその好意に応えてくれるわけではありません。それでも、悲しいからと嫌いになるより、そのまま好きな気持ちを大事にすることの方が、やはり幸せを感じさせてくれる。そのように、アバズレさんは言うのでした。

第1位

幸せは、あっちからやってくるものではなく。
こっちから、選んで手にするものだから。
(『また、同じ夢を見ていた』より引用)

物語終盤で登場する言葉。現状を嘆いているだけだったり、幸せになりたいと思って受け身でいるだけではダメということですね。

奈ノ花は「人生とは~」と、いろんなもので人生をたとえます。それぞれが的を射ており、考えさせられるところが多いのが本作の魅力ではないでしょうか。あなたのお気に入りのフレーズを見つけていくのも楽しいかもしれません。

『また、同じ夢を見ていた』の見所6:感動の結末をネタバレ解説!タイトルの意味に繋がるラストとは?

 

南さんもアバズレさんも奈ノ花の前から消えて、学校の外の友達はついにあばあちゃんと猫だけになってしまいました。ある日、「また、同じ夢を見ていた」と呟いたあばあちゃん。彼女は、寝たきりになることが多くなっていきました。

そして、たぶん今日が最後だから、と彼女は自身の過去について語り出すのです。それは、自分のせいで離れ離れになってしまった大切な人についてでした。

それを聞いた奈ノ花は……。

 

著者
住野 よる
出版日
2018-07-11

 

『また、同じ夢を見ていた』というタイトルの意味は、最後まで読み終えると分かるという仕掛けになっています。この言葉を、奈ノ花の他の不思議な友達たちも呟くのです。

きっと彼女たちがいなければ、小学生時代にいじめられていた桐生くんと向き合うこともなく、奈ノ花も桐生くんも人と関わらずに1人で生きていくことになってしまっていたかもしれません。

彼女たちのおかげで、物語ラストの奈ノ花があるのです。

最後の一文は、「薔薇の下で」という表現で締めくくられています。住野よるらしい、ロマンティックさを感じさせる美しい終わり方でしょう。

インタビューでもさまざまな解釈を読者にしてもらう方が嬉しいと、自身の気持ちを語っている住野。そのことを証明するかのように、本作は自由に解釈できる作品になっています。

なんとも幻想的なラストは、ぜひ本編でお確かめください。

 

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