映画。皆さん一度は見たことがあるでしょう。では、一番好きな映画は何でしょうか?これまで映画を見て泣いたことはありますか?あるいは腹を抱えて笑ったことは?この小説に登場するのは、誰よりも映画に笑い、映画に泣いた人たち。そんな人々が起こす、小さな奇跡の物語が、『キネマの神様』です。 この記事では、2020年の12月に映画が公開される本作の魅力を、徹底的にご紹介。映画の持つ力にあなたもきっと心を震わせられますよ。
まずは原作のあらすじと見所、そこから考えられる映画の見所をご紹介しましょう。熱が入ってしまったので長いと感じる方は目次から気になる項目をご覧くださいね。
主人公のゴウは、ギャンブル依存症で借金だらけのダメ人間。おまけに心臓病で入院し、娘の歩は失業と、一家そろって崖っぷちに立たされてしまいます。
挽回の方法も無い中、もう一つの趣味である映画鑑賞にいそしむゴウ。しかし、彼の書いた文章が、老舗の映画雑誌を発行する映友社の目に留まったことで、まさかの展開に……?青年劇場で演劇にもなった人気小説が、ついに映画化です。
本作のタイトルは、ゴウが話題になるきっかけとなったサイトの名前からきています。
平成はビデオやDVDのレンタルが広がり、映画館にとっては冬の時代でした。その雰囲気を反映して、映画館も主人公親娘のようにボロボロ。2008年に刊行された本作ですが、過去の時代を反映している様子は、今見てるからこそ、懐かしさとともに楽しめる内容です。
映画にとっては冬の時代でしたが、本作に暗い空気はありません。むしろ映画館は必ず復活すると力強く読者に訴えかけてくるのです。欠点ばかりの仲間たちがみんなで力を合わせ、いわゆる「バズり」に似た社会現象を巻き起こす様子は、胸が熱くなります。
映画によって仲間と、見知らぬ人たちとつながれること。映画の真冬の時代を乗り越えた今だからこそ実写化の価値があるのではないでしょうか。ゴウや歩、映友社の面々は、映画の力でどう世界を変えるのかでしょうか。
そして実写映画は、曲者ぞろいのキャラクターが見所。それぞれどんなキャストが演じるかというと……。このあと登場人物の設定とともにご紹介します!
ここでは、原作小説の登場人物と、実写映画のキャストをご紹介します。山田洋二が監督と務める本作は、どんな俳優陣で彩られるのでしょうか。
主人公のゴウは、ギャンブルと映画が生きがい。借金はしても返さない。家族に迷惑をかけてはあっけらかんとしている。おまけにはげ頭という、ダメダメのダメ親父です。
しかし人情に厚い彼を、家族も仲間も憎め切れません。そして映画への深い愛は自他ともに認める熱量!古今東西の映画に精通し、名作は頭の中で再生できると豪語するほど。彼の書いた映画評は、物語全体を動かしていきます。
ダメだけど憎めない。こんな難しい役を演じるのは、皆さんご存知の志村けんが演じる予定でした。代役として沢田研二が演じることになりました。序盤の怠け者ぶりと、終盤での成長した姿を、どう演じ分けるのか、期待が高まります。
そして、小説ではほのめかされても語られることのなかったゴウの青春時代を、日本アカデミー賞を何度も受賞した若手実力派俳優、管田将暉が熱演します。
ゴウは80歳になる老人で、太平洋戦争に従軍した経験があります。戦争に翻弄されながらも、情熱に燃える若かりしゴウを、菅田将暉がどう表現するのか。その演技は映画全体に影響すると言っても過言ではないでしょう。
また、様々なドラマでヒロイン役を務めた人気急上昇中の永野芽郁が、過去でゴウが恋をする食堂の娘に選ばれました。永野芽郁といえば、数千人規模のオーディションを突破した実力派女優の一人です。
そしてゴウの妻、淑子役には、人気ドラマ『あまちゃん』や大河ドラマにも出演している名女優、宮本信子が出演します。ろくに家族らしいこともしてくれないゴウに愛想を尽かしかけながらも、どうしても家族でいてほしいと願っている。そんな複雑な感情を演じ切る、ベテランの力に注目です。
歩やテラシンなど、まだ明かされていない役も多数ありますが、主な配役だけでもこの豪華さ。まさに記念すべき一作になりそうです。公開日は2021年4月に延期されています。公式ホームページもありますので、新しい情報をチェックしてみては?
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さて、ここからは『キネマの神様』の魅力についてご紹介していきましょう。
本作は映画を題材にした小説ですが、映画の魅力といえば、やはり短い時間の中に詰め込まれた濃密なストーリーではないでしょうか。
基本的に一作で完結する映画は、2時間程度の中で精いっぱい観客の心を動かさなければなりません。ストーリーは山あり谷あり、名作はいつでも人の目を釘付けにします。
本作の道のりも、まさに映画そのまま。心臓病で倒れたゴウが、崖っぷちのなか映画評論のブログで大ブレイク。個性的ながら欠点の目立つ仲間が集まり、話はとんとん拍子に大きくなります。
かと思えば、思わぬ障害につまづきそうになり、さらには強力なライバル、ゴウを超える映画への洞察力を持つローズ・バッドが乱入してきて……?
この大きな筋の中に、家庭の問題、個人の感情などがからんできて、ページをめくるごとにカメラが切り替わるような感覚を覚えます。息もつかせぬテンポとスピード感は、作者が映画を見る中で培ったものでしょう。
この映画のような小説が、どのように映像化されるのかも、映画を見るうえでひとつポイントかもしれません。
このあとは、小説ならではの魅力について解説します!
- 著者
- ["原田 マハ"]
- 出版日
先ほどお伝えしたように、『キネマの神様』は実に映画的な物語ですが、もちろん小説ならではの魅力があるからこそ、ここまでロングセラーになっています。本作の読み味を独特なものにしているのは、本文中に挟まれるブログや雑誌の文章です。
文には人柄が出るといわれますが、ゴウの書く文章の朴訥さ、恥ずかしげもなく好きなところを褒めちぎる素直さに触れると、彼が憎み切れない人物であることが自然に理解できます。
ゴウだけではなく、登場人物それぞれが書く文面が、その人となりを表しているのが、本作の妙。他にも、若い同僚のメールの文面からは、少年のようないたずら心が伝わってきますし、歩が若いころの提案書は、みずみずしい感性にあふれています。
本作では本当に様々な映画の題名が出てきます。誰もが知っている有名作品から、ちょっとマニアックなものまで様々ですが、一番大きく取り上げられているのが、『ニューシネマ・パラダイス』です。
イタリアの貧しい村に住む少年が、唯一の娯楽の場である映画館に入り浸り、映写技師と友情をはぐくむお話です。作中であらすじが書かれていますが、それだけでも涙ぐんでしまうような感動のストーリー。映画とは何かを考えさせてくれるこの作品は、失業して夢破れた歩に、再起する力をくれます。
またゴウとローズ・バッドの評論合戦の中で出てくる『フィールド・オブ・ドリームス』。幽霊が試合をする野球場を舞台に、家族の交流を描くちょっと不思議で、アメリカ的な価値観を見事に表現した傑作です。
この映画の見方の違いは、アメリカ人のローズ・バッドとゴウの初めての衝突の原因になりました。まったく違う文化に触れられる映画の力をよく表している展開ですので、アメリカ文化を知りたい方はこの作品に触れてみてもいいかもしれません。
さらにホラー映画やアニメ映画まで、数多くの映画が紹介されますので、どれか気に入る作品があるはず。古い映画が多いので、レンタルも容易です。休日に楽しんでみてはいかがでしょう?
最後に、結末までの見所を解説しましょう。
ゴウが自分の人生を作った映画たちを紹介するサイト「キネマの神様」は、ネットで大反響を呼びます。英語版までできて、得意の絶頂にあるゴウ。その鼻っ柱を折ったのが、アメリカ人であること以外すべてが謎の評論家、ローズ・バッドでした。
驚異的な筆力に、ユーモアと皮肉交じりの的確な論評。そして無限に映画を見ているのでは、と思える知識を有する強敵です。無類の映画好きのゴウでさえ苦もなくひねられます。 しかしゴウはめげません。むしろライバルを尊敬しながら、自分の映画観を語り続け、それがブログの飛躍につながります。
そんなすべてが順調に見えたある日。ゴウの親友であり、名画座のオーナーであるテラシンが、閉店を決意したと告白します。原因は近くオープンする大規模シネマコンプレックス。皮肉にも、それは歩が長年携わってきた計画の成果でした。
もはや小規模の映画観の時代ではないと諦めるテラシン。しかしゴウは諦めません。名画座の危機をローズ・バッドに訴え、力を貸してほしいと頼み……?
この展開以降も、ハラハラする展開が続きます。果たしてこの息をもつかせぬ展開はどこに着地するのでしょうか。
結末まで読んだときに思い浮かぶのは、やはり映画のエンドロールではないでしょうか。最後のページを眺めているだけで深い余韻を感じるのは、映画と同じ力が、この小説にもあるからでしょう。その終わりものを知りたい方は、ぜひ小説を読んでみてください。
- 著者
- ["原田 マハ"]
- 出版日
いかがでしたでしょうか?でこぼこな人物たちが映画によってつながり、一つの奇跡を成し遂げる物語です。果たしてどのような作品になったのか、『キネマの神様』、キネマでも小説でも、どうぞお楽しみ下さい。
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