医療の世界で、医学や看護学と同様に重要な学問であるリハビリテーション。高齢化が進む近年では、リハビリテーションはかなり重要視されています。 リハビリテーションとはどのような学問なのか、リハビリテーションを学ぶにはどのような進学先があるのか。また就職に活かすことができるのかなどリハビリテーションという学問について詳しくご紹介します。 記事の最後にはリハビリテーションが学べる書籍もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
リハビリテーションとは、ラテン語の(rehabilitare)が語源となっています。再び(re)人間らしい状態にする(habilitare)という意味があります。リハビリと聞くと、機能訓練などの訓練をイメージしがちですが、単に訓練をさす言葉なのではなく、障害をもった方が可能な限りもとの社会生活を取り戻していく、ということを意味しています。
リハビリテーションの種類には理学療法、作業療法、言語聴覚療法、音楽療法、視覚訓練があります。
◾️理学療法
理学療法とは、身体に障害がある方に対して基本動作能力を回復させることを目的に運動療法や日常動作訓練、物理療法といった治療をおこなうための学問です。また、障害の回復だけでなく、新たな障害を予防するのも理学療法の役割です。
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◾️作業療法
作業療法は人の生活の中の作業に焦点を当てた治療、指導、援助をおこなうための知識を身につける学問です。
作業とは、食事をする、買い物をする、掃除をするなど生活のあらゆる場面でおこなわれているもので、障害を抱えながらこれらの作業をおこなうためのアプローチをします。リハビリテーションの学問のなかで唯一、精神分野も学ぶことができるという特徴があります。
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◾️言語聴覚療法
言語聴覚療法とは言語や聴覚、経口摂取など口や耳、声や嚥下機能に関する分野のリハビリをおこなうための知識や技術を身につける学問です。
◾️音楽療法
音楽療法とは音楽を活用して、対象者の心や身体のケアをする学問です。演奏を聴かせるだけではなく実際に対象者に演奏をしてもらったり歌ってもらったりするなどその手法は多岐にわたります。
◾️視覚療法
視覚訓練とは視覚に障害がある人に対しておこなうことが多く、歩行の方法や日常生活の動作、点字やパソコンの利用方法、視覚の機能を補助する道具の使い方などの指導をしていきます。
リハビリテーションではこのすべてを学ぶのではなく、後述する自分のなりたい職業や興味のあるものに合わせて、学びたいものを専門的に学んでいきます。
リハビリテーションを学び、資格を取得することで障害を抱える方へのリハビリをおこなうことができます。リハビリテーションは先ほどの5つの種類の中から資格を取得した後、自分のリハビリをおこないたい分野でその学問を活かします。
リハビリテーションがおこなえる分野はさまざまあります。
療法によって学ぶ内容が異なるため、どの種類を学びたいかは決めている方がほとんどですが、最初からこの分野のリハビリをおこないたいと決めてリハビリテーションを学ばれる方は少ないです。
たとえば、理学療法を学びたいと思ってリハビリテーションの世界に足を踏み入れる方は多いです。しかし、脳血管障害のリハビリをするか、運動器のリハビリをするかなどを最初から決めている方は少なく、多くは学んでいくなかで、この分野のリハビリテーションをおこないたいと意識する方がほとんどです。
ですので、焦ることなくじっくりとリハビリテーションという学問を学んでみてください。
リハビリテーションを学ぶことで患者さんにリハビリテーションをおこなう職業に就くことができます。
リハビリテーションには5つの資格があります。
理学療法士とは寝る、起き上がる、食べるなどの動作に対してアプローチをする職業です。リハビリテーションの職業のなかでも、医療機関や福祉施設以外にスポーツの分野でも活躍することのできる職業です。
理学療法士は国家資格で、国が定めた養成校で3年以上学ぶことが求められるため、独学で取得することはできません。全国に276校もの養成校があるので、どこで学ぶかを調べるところから始めていきましょう。
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作業療法士とは、作業に対してアプローチをしていく職業です。精神科などさまざまな分野で働くことができ、近年では女性の資格取得者が増えてきています。
理学療法士と同じく、作業療法士も国家資格です。また作業療法士養成課程のある大学、または短大や専門学校(4年制、もしくは3年制)で学ぶ必要があり、養成課程のある学校は全国に約190校があります。
合格率は80%程度と高水準のように思えますが、試験内容は難しいと言われています。
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言語聴覚士とは食べる、飲み込む、話すにアプローチする職業です。構音障害や嚥下障害の方などを対象に、仕事をおこないます。先ほどご紹介した理学療法士と作業療法士と比べると従事している方が少ないことが特徴です。
言語聴覚士も国家資格であり、試験を受験するには養成校で必要な単位を修得していることが求められます。
ただ、すでにある程度の単位を他の学校で納めているという方には1年制のコースも用意されているため、費用や時間も最小で取得することも可能です。
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音楽療法士とは音楽の力でリハビリをおこなう職業で、医療や福祉、教育などの現場で活躍します。リハビリテーションの職業の中で唯一の民間資格となることが特徴です。ピアノを弾けることがこの職業になるための必須条件です。
資格には自治体、協会、学会の3つの資格があります。資格取得するのに必要な条件が異なるので、詳細を調べてからどの資格を取得するかを検討してくださいね。
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視能訓練士とは視覚の分野のプロフェッショナルです。小児の弱視、斜視の視能矯正や視力検査などをおこないます。事故や病気で視力が下がった方が生活の質を維持できるようにアプローチもします。リハビリ職のなかでも乳幼児から高齢者と対象が幅広いことが特徴です。
どの職業になりたいかによって、その職業が専門とする分野のリハビリテーションを学んでいきます。
リハビリテーションについて学び、資格を取得した方は病院、クリニックなどの医療分野、介護施設や通所リハビリテーション、訪問リハビリなどの介護分野で働く方が多いです。
職種によって働ける場所は異なってくるがスポーツチームの専属リハビリ、行政機関、学校などで働ける職種もあります。
リハビリテーションの資格を取得するためには、大学あるいは専門学校などの養成校に通って必要なカリキュラムを修了する必要があります。どのような進学先があるのでしょうか?
2020年9月現在、専門学校は全国に約190校あります。専門学校は北海道から九州・沖縄まであるので、誰でも学びやすい環境ではあるでしょう。
3年制と4年制があり、理学療法学科や作業療法学科、言語聴覚士学科を選ぶことができます。
医療や福祉の大学・短期大学への進学も可能です。リハビリテーションを学べる大学・短期大学は全国に約150校ほどあり、理学療法や作業療法が学べる大学・短期大学が多いため、学びやすいでしょう。
- 著者
- ["椿原 彰夫", "椿原 彰夫"]
- 出版日
リハビリテーションとは何か、どんな学問かについてまとめた1冊です。リハビリテーションを学問として学んでいきたいという方は教科書としてぜひ手元においてほしい1冊ともいえます。
中身はリハビリテーションの技術的なことだけではなく、リハビリテーションの歴史やリハビリテーションの役割、連携していく職種など幅広い知識が集約されています。最新のリハビリテーション情報も入っているのもポイントです。 理学療法、作業療法、言語聴覚の分野が中心となっています。
作者は初学者でもわかりやすいような表現で書くことによって、小説を読むように読んでほしいと意図しています。国家試験問題も収録されているため、資格取得を目指した勉強のためにも使うことができます。リハビリテーションの職業を目指す方にはおすすめな1冊です。
- 著者
- 途行, 川上
- 出版日
看護師の視点からリハビリテーションを捉え、医療のチームの中でリハビリテーションがどのような役割をしているのかを書いた1冊です。
作者は、作品を発表した当時は現役で働かれていたリハビリテーション医です。医師という職業の視点からリハビリテーションについて捉えているため、リハビリテーションが医療の現場でどのような役割をしているのか、他の職種からはどのようにとらえられているのかなど勉強になります。
リハビリテーションを舞台とした数少ない小説。リハビリテーションの資格取得者の多くが病院で働かれています。そのため、これからリハビリテーションを病院でおこないたいと考えている方には、一度読んでいただくと病院で働いたときのことがイメージできるのではないでしょうか。
また、リハビリテーションの資格を取得する際には病院で実習をしなければなりません。病院でのリハビリテーションの役割を予習するという意味でもリハビリテーションを学ぶ前あるいは病院へ実習に行く前に一度読んでみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 西広島リハビリテーション病院
- 出版日
リハビリをリードする広島県の先進的な病院が監修をしています。この施設のスタッフがリハビリテーションとはどういうことをするのか、リハビリテーションをおこなうことによってどのような影響があるのかを詳しく書いた1冊です。
この本ではリハビリの介入スタートの時期から、社会復帰におけるまでリハビリを受けることで最終的にリハビリを受けた患者さんがどうなっていくのかまでの経過を書いています。今まで紹介した本ではリハビリといえば、病院でのリハビリという観点でしたが、こちらは病院から退院した後の自宅でのリハビリのノウハウについても詳しく書いていることが特徴です。
リハビリテーションに関わる職業に就きたい方、リハビリテーションをおこなうことで最終的に患者さんがどうなっていくのかを知っておきたい、在宅でのリハビリの分野にも興味があるという方にはおすすめです。
薬や手術などをせずに治療をおこなうことのできるリハビリテーション。その職業の需要は現在も、そしてこれからも高いものです。
リハビリテーションを学ぶことで就ける職業も多彩であり、働ける場所も多いため、学んだことを将来的に活用していくことができるのではないでしょうか。
ご紹介した本を読んでみてリハビリテーションに興味を持たれた方は、ぜひチャレンジしてみてください。