アニメや映画も公開となった人気漫画シリーズ『約束のネバーランド』。ミステリーやサバイバル、ヒューマンドラマと様々な側面を見せる名作の中身を、物語のはじまりから結末まで解説します。
白井カイウ原作、出水ぽすかが作画をそれぞれ務める漫画『約束のネバーランド』。ジャンプにて連載され、その予測不能なストーリー展開と独自の世界観が話題を呼び、数多くの読者を虜にしました。
物語は、ある孤児院、グレイス=フィールドハウス(以下GFハウス)で育てられた年長者、エマ、レイ、ノーマンの3人が、自分たちを含むハウスの子供たちが「鬼」に食べられるためだけに生きていたという事実を知ってしまうところからスタートします。
ママという監督者の目が光る中、どうにかして全員で脱出する方法を探すことにした3人は、体に埋め込まれているGPS、ハウス一帯を囲む塀と深い崖、迫る里親という名の出荷など、数々の問題を抱えながらママと高度な頭脳戦を繰り広げていくことに。
テレビアニメ第1期としてGFハウス脱獄編が2019年1月に放送されていた『約束のネバーランド』。2021年1月からは延期になっていたテレビアニメ第2期が放送開始され、待ちに待った続編ということで、人気を呼びました。
メインキャストは変わらずに続投され、新たにムジカ役で種﨑敦美、ソンジュ役として神尾晋一郎が加わりました。詳しくはTVアニメ「約束のネバーランド」Season 2をチェックしてみてください。
また、第2期からは原作者である白井カイウがシリーズ構成を担当。内容を一度再構成していて原作とは大きく違うストーリーとなっているところがあるので、賛否両論の意見はありますが、違った見方として楽しむこともできそうです。
そして、2020年には浜辺美波主演でGFハウス脱獄編が実写映画化されました!
子供たちが出荷されない上限年齢の原作設定が、12歳から16歳に変更されており、また、映画オリジナルの登場人物も出てきます。
詳しくは映画『約束のネバーランド』公式サイトをチェックしてみてください。
浜辺美波主演の作品をまとめた記事もあるので、気になった方はぜひご覧ください。
浜辺美波の出演作品総まとめ!大ヒットの映画、テレビドラマは原作の物語が面白い!
余命わずかのヒロインやギャンブルに賭け狂う美少女、全力変顔の恋する乙女など、どんな役柄も自分のものにしてしまう浜辺美波。テレビドラマや映画だけでなく、数多くのCMにも起用される彼女は期待の若手女優です。 この記事では、浜辺美波が演じた役柄やその原作について紹介します。
また、2021年9月3日には『約束のネバーランド』の作者である白井カイウ先生と出水ポスカ先生の短編集が発売となります。
こちらには白井カイウ先生と出水ポスカ先生の描いた短編が4作品収録。さらに、約束のネバーランド展だけで読むことの出来た『約束のネバーランド』の後日譚も収録されます。新たに書き下ろした漫画やおまけページもあるので、約ネバファンは必見ですね!
- 著者
- ["白井 カイウ", "出水 ぽすか"]
- 出版日
『約束のネバーランド』のさらに凄いところは、小説も楽しむことができるという点。
これまでに、計4冊発行されており、それぞれ物語の核心に迫るものやバックボーンなど、他の媒体では知ることができない気になるものばかりです。
それぞれ、第1弾から順に「約束のネバーランド ~ノーマンからの手紙~」、「約束のネバーランド ~ママたちの追想曲~」、「約束のネバーランド ~戦友たちのレコード~」、「約束のネバーランド ~想い出のフィルムたち~」です。
どれもおすすめですが、特におすすめしたいのは、「約束のネバーランド ~ノーマンからの手紙~」と「約束のネバーランド ~ママたちの追想曲~」の2冊。
前作は、ノーマンが出荷当日にエマに向けて脱走を後押しする手紙を書いているとき、ふと過去の思い出が蘇ってくる、そんなお話です。
原作では語り切れなかった、素敵な家族とのかけがえのない日々。読んでいるとあたたかくもなり、そして同時に切なくもなります。
- 著者
- ["七緒", "出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
- 出版日
「約束のネバーランド ~ママたちの追想曲~」は、イザベラが飼育監を目指すきっかけとなったとある少年のこと、そしてクローネが飼育監となるために11歳でシスター養成学校に入り、命を懸けて過酷な環境で生き続ける話の、2本が収録されています。
どの話も、原作では少しだけ断片的に話されていたものですが、詳しくは語られていませんでした。
彼女たちがどのようにしてシスターを目指すことになったのか、絶望の中でどう生きてきたのか、知られなかった真実が垣間見え、涙なしで見ることはできません。
- 著者
- ["七緒", "白井 カイウ", "出水 ぽすか"]
- 出版日
4冊とも文字でないと伝わらない思い出が込められており、原作を読んでいる人も違和感なく読むことができます。さらに深く「約ネバ」の世界に浸りたい方にはぜひ読んでほしい作品です。
食用児
…認識番号『63194』
本作の主人公。明るく前向き、そして誰よりも家族想いな性格で、弟や妹たちから慕われています。GFハウスの最年長である11歳の女の子であり、飛びぬけた運動神経の持ち主。
さらにテストでは、フルスコアである300点近くをほぼ毎回獲得しつつも、同い年ながら自分より賢いレイとノーマンを尊敬しており、飛びぬけた学習能力で肩を並べていますが、彼らと比べれば、かなり楽観的で後先考えず行動し、2人を困らせてしまうこともしばしば。
…認識番号『81194』
同じくハウスの年長者である11歳の男の子であり、天才と呼ばれるノーマンと唯一互角に渡り合えるほど、博識で知恵者。テストの成績はほぼフルスコアです。
身体能力も高いですが、いつも木の下で読書にふけり、ハウス中の本はすべて読み終えたと話すほど本の虫。実は通常なら起こるはずの「幼児期健忘」(=幼少期の記憶をなくしてしまうこと)が起こらず、小さい頃からハウスの真実を知っており、「ママ」(=ハウスの監督者)と取引を行いながら、どうにかエマとノーマンの2人を助ける方法を模索していました。
…認識番号『22194』
ハウスの年長者である11歳の男の子で、年長組3人の中でも断トツの頭脳を持つ天才と称されています。テストは3人の中で唯一の毎回フルスコア。
ただの鬼ごっこでも頭を使い、標的がどう動くのか状況を観察、分析し、常に敵の手を読むことを行っているので、かけっこなどの単純な走力勝負でこそエマには勝てませんが、鬼ごっこでは彼の右に出る者はいません。天才であるがゆえに、何が最善の行動であるかを理解しているので、これが1番いい考えと思えば己を犠牲にすることも…。
…認識番号『65194』
上記3人に次いで高い成績を残している10歳の女の子。内気な性格ではありますが芯は強く、ノーマンまでとはいかなくとも、優れた洞察力と思考力を併せ持っています。
エマたちが農園の真実にたどり着いた時も、いち早く様子がおかしいことに気づき、心配する面も。
…認識番号『16194』
明るくお調子者な性格ですが、鬼ごっこでノーマンに勝てないことを悔しがるなど、負けず嫌いな一面もあります。ギルダと同じく10歳の男の子で、成績はフルスコア組(=エマ、レイ、ノーマン)と、ギルダに次ぎ高い得点を獲得。
兄弟たちを思う気持ちは人一倍強く、正義感にかられ状況判断を甘く見がちで、突発的な行動をして3人を困らせることもありますが、脱出のためにエマたちを支える大切な存在になります。
…認識番号『34394』
活発で明るい4歳の男の子。ドンやギルダのスコアに次ぎ最高平均点は203点と、4歳児にしてかなり優秀なことが伺えます。
また、本の背表紙にあるミネルヴァの隠しメッセージに気づいたり、農園の真実に1人でたどり着いていたりと、脱出をする上でかなりキーとなる存在。
…認識番号『ETR3M8』
※左図
エマたちが目指していた目的地にいた、28歳前後の男性。
13年ほど前、エマたちと同じようにハウス(グローリーベルハウス)の真実にたどり着き、仲間と共に脱出を図り成功したものの、強敵の「鬼」によって自分以外は全滅してしまいました。
それを深く後悔し、長年己を攻め続けてきたことがシェルターの落書きなどで伺えます。エマたちの家族が自分の仲間の姿と重なったことで冷たく接し、生き残るためには仲間・希望・情けをすべて捨てろと言い放ちます。この13年間、たった1人で生き抜いてきたので、鬼との戦闘技術や体力、知識、食料調達の方法、全てにおいてとても優れ、エマたちが外の世界で生き残るうえで座標となる存在になります。
…認識番号『KGX2A7』
※右図
ユウゴの仲間であり親友の男性。以前はサブリーダー的な立ち位置で、ユウゴと並ぶくらい、戦闘技術や知識があり、優しい性格です。
大人
…認識番号『73584』
GFハウスの監督者で、子供たちに明るく、愛情をたっぷり注ぐその姿から「ママ」と呼ばれ慕われていますが、その素顔は「鬼」に食用児を引き渡すために子供を育てている飼育監。
頭が切れ、ママの頂点に立つグランマからも一目置かれる存在で、エマたちを満期出荷(=12歳で出荷)させるために、あの手この手で脱出の阻止をし、お互いに高度な頭脳戦を繰り広げます。
…認識番号『18684』
後からGFハウスに、子供たちの監視強化として派遣された黒人の女性。イザベラのミスにより、子供たちに事実を知られたことが分かると、彼女をどうにか引きずり降ろし、ママである監督者の座を奪おうと目論みます。
鬼
言葉を話すことができる、知性鬼。宗教上の理由から今まで人間を食べたこともなく、食べる必要もないと話す。人間の少女のような体格で、とても優しく、エマたちを助け食事をふるまう場面も。
※左図
ムジカと同じく宗教上の理由から人間を食べないという、人間よりも少し体格が良い男性の鬼。エマに弓矢の技術や、動物を殺す方法を教えるなど面倒見の良い一面もあります。
鬼の頂点に君臨する女王。王家の血筋、そして高い戦闘能力を持ち、鬼の中では彼女に勝てる人はいないという。特に美食家で、食にかける思いは大きい。
鬼の王家出身。いつもパルウゥスという小さな猿を肩に乗せているのが特徴的。「狩りは互いに命を懸けるから楽しい」と言い、自ら命を守る顔の仮面を外して狙わせたりと、自分を殺す気でかかってくる人間が大好物。
ラートリー家関係者
ラートリー家第35代当主。ウィリアム・ミネルヴァは偽名であり、本名はジェイムズ・ラートリー。ある日、鬼と「約束」を交わした初代ユリウスの懺悔の書を見つけ、一族に伝わる美談とは全く異なる真実を目にしたことをきっかけに、食用児たちを助けるために動き出しました。
ラートリー家第36代当主。ジェイムズの実の弟で、兄とは正反対に、人間の世界の安寧のためならば、食用児たちの犠牲は仕方ないという考えの下、食用児を管理しています。
ざっくりとキャラそれぞれの関係性が見えてきたところで、ここからは、各巻のあらすじをネタバレ紹介していきます。
まだ漫画を読んでいない方は、ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。
「母と慕う彼女は、親ではない。共に暮らす彼らは兄妹ではない。ここ、グレイス=フィールドハウス(GFハウス)は孤児院で、私は孤児。――そう思っていた。」
第1巻は主人公であるエマのこのような意味深な言葉から始まります。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2016-12-02
冒頭では、いま挙げた不思議な言葉が孕む不穏な空気とは裏腹に、平和に暮らす子供たちの様子が描かれます。
誰よりも明るく、運動神経が抜群のエマ
博識で知恵者であるレイ
断トツの頭脳を持つ天才ノーマン
この3人の年長者を筆頭に、肌の色も、性格も様々な血縁関係のない38人の子供たちが、毎日行われる特殊な勉強とテスト、そしてママ(=ハウスの監督者)であるイザベラの愛を受け、すくすくと育っていました。
ここ孤児院では、6歳から12歳までの間に里親が見つかる仕組みで、上述のエマたちは11歳。そろそろ期日である3人の誕生日が迫るころ、6歳のコニーに里親が決まったという知らせが入ります。
別れを惜しまれながらママと旅立ったコニーでしたが、その後すぐ、彼女が大好きだったリトルバーニーのぬいぐるみを忘れていったことにエマが気づきました。
森の奥に設置されている柵と、外へ通じる門へは近寄ってはいけないと、幼いころからママに言いつけられていましたが、エマとノーマンはリトルバーニーを届けに門へ向かうことを決意。
しかし、そこで2人が見たのは、変わり果てた姿のコニーと、異形な姿を持つ「鬼」、そしてそれと話をしているママでした。そう、このGFハウスは孤児院などではなく、「鬼」という存在に食べられるために生かされていた(=飼育されていた)「農園」だったのです。
ママもそんな鬼に仕えながら食用児(=孤児)たちを育て上げ、出荷させることが仕事。その事実に打ち震えながら、なんとか見つからずに外へ逃げることができたエマとノーマンでしたが、この時、リトルバーニーを荷台の下に置き忘れてきてしまったことを思い出しました。
誰がいたのかは特定できないはずですが、誰かがいたという事実をママに知られてしまいます。かなり頭の切れる彼女は、あらゆる手段を投じてどの子が真実を知ってしまったのかを特定しようとしてくるのでした。
そのママの疑いの目をうまくかいくぐりながら、エマは、鬼に食べられないように子供たち全員でハウスを脱出しようという無謀な提案を、仲間に引き入れたレイ、そしてノーマンに話します。初めは反対を色濃く示していたレイでしたが、エマに押され、その場は仕方なく同意しました。
ここから、ママとの高度な頭脳戦と心理戦が繰り広げられていくのです。
いち早くエマたちの異変に気付いたギルダとドンも脱獄の仲間に加えた彼女たちは、ある計画を進めていました。
それは、体力や知力の低い年少者に鬼ごっこという名目で、脱出の訓練をすること。
そんな中、新たに監視役として派遣された大人シスター・クローネと、内通者としてエマたちの行動をママに報告している存在が明らかにされます。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2017-02-03
シスターは、誰が真実を知っているのかあぶり出すママの策の一つでしたが、長年、飼育監としてママになることを夢見てきた彼女からすれば、チャンスというほかありません。どうにかしてイザベラを失脚させようと裏で計画を練り始めます。
そして、ノーマンが内通者として怪しい人物に罠を張っていたところに姿を見せたのは、レイでした。
彼は、「幼児期健忘」(=)という、幼少期の記憶をなくしてしまうことが起こらなかったため、鬼の存在やハウスの真の目的を小さいころから知り、1人で抱えて生きてきていたのです。
彼がスパイをしていることを知っていたノーマンは、今の状態を維持して問題なく満期出荷(=12歳で出荷すること)を目指すママの思惑を逆手に取り、新たに2重スパイを提案しレイを仲間に加えました。
そんなある日、エマのもとに4歳児のフィルが見つけたと持ってきたのは、ハウスの図書本に隠されたモールス符号。ウィリアム・ミネルヴァという、食用児の味方かもしれない人物を、その暗号を元に見つけ出すことができたのです。GFハウスの外を生き残るうえで大切な手掛かりになるかもしれない貴重な存在です。
こうして着々と脱出に向けて準備を進めていくエマたちの、次なる目標は「外」の下見。ハウスはその敷地を高い塀で大きく囲まれており、元々は近づくことすら許されていませんでした。
そこで生まれたもう一つの問題は身体のどこかに埋め込まれているとされる「発信機」です。
小さい子の世話を任されていたエマが、耳に成長すると分からなくなるほどの小さなしこりを見つけました。発信機を壊す道具を着々と作っていたレイは、これで無効化させることが可能になりました。しかし、今はそのときではない。
発信機をつけられている状態でママとシスターの目を盗み、塀の上に登って下見をするという、かなり大きな賭けに出ようとします。
ドンとギルダの為を思い、鬼という存在がいること、そして里親に出されたら最後、奴らに食べられてしまうという事実を正確には伝えていなかったエマ。
しかしそれが却って不安を抱かせる結果となり、2人は大胆にも、ママの部屋に隠された“秘密の部屋”に潜り込むという危険を冒し、真相を突き止めてしまいます。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2017-04-04
真相を知ってより一丸となった5人は下見に向けて動き出しますが、早速シスターに勘づかれてしまい、利害の一致を理由に手を組もうと持ち掛けられます。しかしそこで手の内を見透かされ、発信機の場所と壊し方を知っていることがシスターに知られてしまったのでした。
こうして、子供たちが脱獄しようとしている証拠として、発信機を壊す道具を探していた矢先、頃合いを見て動き出したイザベラが、シスターへある一通の手紙を渡します。その内容は「シスター・クローネを飼育監に任命する」という本部からの通告でした。
一瞬の喜びもつかの間、すぐにこれが罠であり、自分が出荷されてしまうことに気づいたシスター。しかしどうやっても逃げられないことを悟り、最後のあがきとしてエマたちへ“ある物”を残していきます。
そうして隙を見て下見へ行こうとしていたエマとノーマンの前に、ママ、否、飼育監としてのイザベラが姿を現し、冷酷にも、ノーマンの“出荷”が明日に決まったと告げるのでした。
すべては、それをエマたちに悟られないようにするためのフェイク。見事に出し抜かれてしまったうえ、その場でノーマンを助けようと咄嗟にイザベラに向かっていったエマの足を、彼女は無情にも顔色一つ変えず折ってしまうのです。
突然宣告されたノーマンの出荷、そしてママによって折られたエマの足。明日全員で逃げることもできなければ、ノーマンだけ逃がすこともできない。
どうしようもない状況の中、エマとレイが選んだのは、ノーマンだけ逃げた“フリ”をすることでした。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2017-07-04
それは、発信機をレイの道具で無効化し、全員の脱獄決行日まで森の中で潜伏するというもの。しかしノーマンは、姿をくらませるはずの出荷当日、発信機を”生かしたまま”塀に下見をしに行く強行策に出るのです。
自分が逃げることで、他の誰かを出荷させてしまうのではないか、さらに警備と発信機が厳重になり、これからの脱獄に影響が出るのではないか。天才ノーマンだからこそ、これが先の先まで読んで出した最善策だったのです。
この下見により、ハウスの周囲は崖で覆われていること、出口は門の先に繋がっている本部への橋1本だけということが、ノーマンの命と引き換えに判明したのでした。
絶望するエマたちに、シスターが遺したミネルヴァの「ペン」を渡して去っていくノーマン…。
彼がいなくなったことで、エマとレイは心折られ満身創痍。2か月も行動を起こさない2人に、さすがのイザベラもようやく諦めてくれたと思いはじめた、レイ12歳の誕生日前夜。
出荷が迫るその日、突如ハウスが炎に包まれました。レイが黙って食われてやるものかと、自殺をするためにオイルなどを準備していたのです。
しかし、すべてはノーマンの計算内。レイが命を絶つ準備をしていることに気付いた彼は、それを利用した作戦を考えていました。
そのことをレイにも隠していたエマが、決行当日、肉や髪の毛、そして自身の発信機入りの片耳をそぎ落として燃やし、彼が命を絶ったとイザベラに報告したのです。
発信機が示すは炎の中。失意に暮れるイザベラ、そして火事の混乱に乗じ、エマたちは無事にハウスから逃げ出すことに成功したのです。
塀の上に登ったレイは、4歳以下の子供たちがいないことに気づきます。
そうです。エマは、4歳以下を連れて行かない、という苦渋の選択をしていました。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2017-09-04
本当は生まれたばかりの赤ちゃんまで連れて行きたかったエマの思い。
この2か月間、何もしていないようで、着実に脱獄の機会を狙っていたエマは、ギルダやドンと共に、5歳以上の子供たち合わせて15人に向けて、真実を話し徐々に仲間に引き入れたり、鬼ごっこという名の特訓を重ねていました。
そして4歳以下の子を連れていこうか迷い、フィルにのみ真実を話して相談します。しかし4歳児のフィルは何と、このハウスの体制をおかしく思っていたと言い、真実をすぐに受け入れたうえで、待っている、とエマに告げました。
塀の外は森に囲まれており、誰も立ち入ったことがないからこそ、追手や獣、鬼、そして地形と、気にしなければいけないことはたくさんあります。
そんな中、エマが目指していたのは、ノーマンからもらった「ペン」によって導きだされた南の方角【B06-32】。
そのペンは軸に細工が施されており、引くと目指す場所や、メッセージを見ることができるようになっています。
しかし、樹の中へ落下してしまったり、追手としてきた鬼に見つかったり、仲間とはぐれたりと、ミネルヴァが指し示す目的地まで行くのはかなり難航してしまいます。
突然の高熱に倒れたエマを抱え、焦るギルダ達と、1人、追手の鬼を誘導し取り囲まれてしまうレイ。
お互いのピンチを助けてくれたのは、ムジカとソンジュと名乗る”鬼”でした。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2017-11-02
彼らは、人を食べないといい、エマに薬草を飲ませ、他の子供たちに料理を提供してくれたのです。
ソンジュに話を聞くと、争いが絶えなかった1000年前、鬼と人間が結んだ「約束」により、1つだった世界を人間と鬼の2つの世界に分け、両世界をお互い不干渉に、そして鬼に人間を提供することで、それぞれの平和が保たれていること。エマたちのいたGFハウス以外に、高級農園が3つと、量産農園というただ太らせて出荷させるだけの施設があることがわかりました。
そして、ムジカとソンジュが使っているという隠し地下通路を通って、安全に森の出口まで到着、2人にみんなでお礼を言い、名残惜しくお別れをします。
やっと目的の場所にたどりついたエマたちは、地面に隠されていたミネルヴァの地下シェルターの中へ。
「長旅ご苦労。ようこそB06-32シェルターへ」と、一人の大人の男性が出迎えました。
シェルターの中にいた彼は、13年前にグローリー=ベルという農園から、エマたちのようにペンを頼りに、仲間と逃げてきたうちの一人だと言います。
そして同時に、弱いから他のみんなは死んでしまった、とも話しました。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2018-01-04
だからこそ、なぜ弱いはずのエマたち脱走者15人全員が、生きてここに来られたのか不思議でならず、その先もそうだとは限らない、このままではエマたちは確実に死ぬと断言されてしまいます。
生きるためには、情け、希望、仲間、すべてを省くことが大切と、“先輩”は語ります。
そんな名も語らないオジサンに、エマは大胆にもウィリアム・ミネルヴァさんを一緒に探してほしい、でないとシェルターの緊急破壊装置を作動させると脅しをかけ、協力を得ることに成功しました。
シェルターにあった置手紙には【A08-63】地点にミネルヴァがいるといい、地図には『ゴールディ・ポンド』の文字。
心配そうに見送るギルダたちをシェルターに残し、エマとレイ2人でオジサンと共に次なる目的地へ旅立ちました。
どちらか片方は見殺しにしようと企むオジサンと、取引なしで話し合いたいと考えるエマ、どちらにせよ家族に危害を加えるなら殺してやると決意するレイの、長い命がけの旅が始まるのです。
早速、オジサンの企みにより、人食いと呼ばれる鬼に目をつけられ、今にも襲われそうな2人。
彼は、片方死んだら助けてやると言い残し、高みの見物を決め込む始末です。
探り探りの中でレイが気づいたのは、不死身だと思っていた鬼は、目が弱点であり急所だということでした。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2018-04-04
そのお陰で、命からがら鬼たちから逃げ切ることに成功したエマたちは、その後もオジサンのペースに負けじと食らいついていきます。
気づけば3日目の夜、また殺してやろうと計画するオジサンに、エマは腹を割って話し合いたいと持ち掛けます。
実は彼は、一人生き残ってしまった自分への後悔、仲間への懺悔を背負い、この13年間ずっと苦しんでいました。
それに気づいていたエマは、生きることこそ仲間の望むことだと強く訴えます。
その熱意にオジサンも心揺るぎますが、時すでに遅く、企てていた彼の策略により、エマが「密猟者」に連れ去られてしまうのでした。
エマが目を覚ますと、そこはカラフルな村の中で、ペンは、ここが目的地『ゴールディ・ポンド』であることを差しています。
この村にいた子供たちに、ここは金持ちの鬼たちの道楽で作られた、昔のように新鮮な人間の“狩り”を楽しむための場所、「秘密の狩庭」であると教えられます。
今日は3日に1度、知性のある鬼たちが狩りにやってくる日で、鬼に襲われていた子供を助けようとしたエマは、レウウィスという厄介な鬼に目をつけられてしまうことに。
改心したオジサンとレイは、外からゴールディ・ポンドの中に入る計画を練り、エマの救出作戦が始まったのでした。
結局、子供皆を助けることができず悲しみに暮れるエマの前に現れたのは、オリバーという少年をリーダーに、グランド=ヴァレー農園出身の9人の子供たち。
更に彼らに紹介されたのは、かつてオジサンの仲間でグローリー=ベル農園出身のルーカス。
ゴールディ・ポンドで死んだと思われていた彼は、片腕を失いながらも何とかここで生き延びていたのです。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2018-06-04
彼にミネルヴァさんが残したとされる扉を案内され、持っていたペンで開くと、そこに広がっていたのは、金色の池、つまりはゴールディポンドと、そこに浮く島がありました。
島にある建物の中に入ると、エレベーターと電話機が設置されています。
電話からは、ミネルヴァさんの録音された声が流れ、自分は、かつて1000年前に鬼と約束を結んだ一族の末裔、ジェームズ・ラートリーという人物であると語り始めました。
先祖が約束を結んでしまったことで罪悪感に駆られ、ハウスの本に暗号を隠したり、ペンに細工をしたりしたこと。元々はこのエレベーターも人間の世界に行けるように残したが、一族にばれてしまい今現在は使用不能となった挙句、追われる身となってしまったこと。そしてエマたちが録音を聞いている頃には、自分はこの世にいないだろうことを告げます。
しかし、GFハウス然り、ほか「高級農園には人間の世界を行き来できる道がある」、そして「七つの壁を探しなさい」と言い残して電話は切られました。
「七つの壁」を探すということなど、他にもできる限り彼の手によって情報が残されており、人間の世界へと希望を持ったエマとルーカス、そして他の子供たちも、この秘密の狩庭を終わらせるため、立ち上がるのでした。
狩庭を終わらせる戦いに参戦した、様々な農園出身者の子供たち。
計画は、エマがレウウィスを足止めしておいて、その隙に他の子供たちが鬼を殺し、最後に終結した皆でレウウィスを倒すというものでしたが、彼以外の鬼たちも予想外にしぶとく、悪知恵を働かせ、子供たちは苦戦を強いられてしまいます。
- 著者
- ["出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
- 出版日
ちょうどピンチに陥っていたヴァイオレットの元に、タイミングよくレイとオジサンが合流、すぐにその場の情報を整理し、オジサンの狙撃により鬼を倒すことができました。
しかし、すでにエマたちの計画に支障が出始めており、レウウィスの元へ集合できている子は少なかったのですが、それは時間稼ぎに自ら付き合っているレウウィスも同じことで、倒されていく鬼の仲間たちを悲しく思う感情に、自身も驚いていました。
そして、負傷者が続出し当初の計画よりも大幅に戦力が削られた中で、レウウィスに戦いを挑むエマたち。
しかし彼の強さは別格であり、徐々に追い詰められてしまいます。
決着がつきそうに見えたその時、危ないところでようやくレイとオジサンが合流。皆で最後の戦いに挑みます。
闘いはまさに熾烈を極め、両者どう転んでもおかしくないほどに互角の戦いでした。
エマたちは知恵を絞り、新しく作戦を立てなおします。それは、レウウィスの目に閃光弾を浴びせ、視力が回復する前に集中砲火、再生能力の限界まで銃を打ち込むというもの。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2018-11-02
しかし、あと一歩のところで、視力が回復したレウウィスが、エマの体を貫きます。
何とか立ち上がったエマの考えを察したレイは、一斉攻撃の合図を出し、ようやくレウウィスを倒すことに成功したのでした。
ルーカスは、ゴールディ・ポンドの破壊装置を作動させ、皆でシェルターに向かいます。4週間眠り続けていたエマが目を覚ますと、そこには無事にシェルターに帰ってこられた全員の姿があり、オジサンは初めて「ユウゴ」だと名乗りました。
エマの次なる目標は、全食用児を解放すること、そのために七つの壁を見つけ出し、「―――」と新たな約束を結ぶことです。―――とは、以前ラートリー家と約束を交わし、2つの世界を分けた、すべての鬼の頂点とされる存在です。エマのこの考えに、ユウゴもルーカスも、オリバーたちも賛同します。
そのためにまずやることは、「支援者」と連絡を取ることです。
シェルター内の電話に、支援者から「必ず迎えに行くからそこを動くな」というメッセージが伝えられ、希望を抱いたエマたちは、待っている間、「七つの壁」探しを並行して行います。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2019-01-04
鬼の町に潜入したところ、ついに七つの壁の入り口を見つけ出し、シェルターでユウゴたちに説明をしていると、突然ラートリー家の特殊部隊がシェルターの入り口を破壊し、攻め込んできました。
なんとか敵の包囲を抜け、脱出することに成功したエマたちでしたが、ユウゴとルーカスは、自分たちがシェルターに残り、敵が追って来られないようにすると告げます。それを聞いて渋るエマでしたが、必ず戻るというユウゴの言葉を信じて、皆を連れて逃げることを決意します。
ユウゴとルーカスは、全ての元凶の元であるラートリー家の追っ手に対し、たとえ自分たちが死んだとしても、倒してやると決意します。
8人いた刺客も、ついに2人まで絞り込み、ユウゴたちは深手を負いながらも、武器庫に充満しているガスの中で、ルーカスが発砲し大爆発を引き起こしたのでした。
- 著者
- ["出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
- 出版日
シェルターが奇襲される直前に、電話でミネルヴァと名乗る男からメッセージがあり、それをルーカスから紙をオリバーに託されていました。
そこには、次の場所へ行くようにと数字が書いてあり、エマは、ミネルヴァかどうかは分からないが敵ではないと踏んで、その場所を目指し新たな旅に出ました。
その途中、ミネルヴァからの使いと名乗る、ジンとハヤトが現れ、アジトへ案内するといいますが、前回の戦いで傷を負ったクリスの容体が悪化したのを受け、2人は近くにある量産農園で薬を入手しようと提案するのでした。
量産農園へ忍び込んだエマたち4人でしたが、度々の襲撃により警備が強化されており、すぐに鬼たちに見つかってしまいます。
それでも目的の薬を手に入れ、すぐに撤退することに成功。
- 著者
- ["出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
- 出版日
クリスも一命をとりとめることができたのでした。ミネルヴァのアジトに案内され、エマとレイが対面する時、そこにいたのはなんとノーマンだったのです。
つかの間、再会を喜んだエマたち。出荷された後、別の農園に送られたことを語ったノーマンは、鬼の正体について話し始めます。
食べることで進化しますが、ヒトを食べ続けなければその形を保っていられず、言葉を話すこともできなくなる、それが鬼のヒトを食べる理由でした。
ノーマンは続けて、鬼を滅ぼし、鬼世界に全食用児の楽園を作ることを宣言。一度はノーマンの考えを飲み込んだエマでしたが、本音は鬼を殺したくない、争いたくないとレイに告げます。しかしもうノーマンの作戦は開始されており、誰にも止めることができない状態にあったのです。
鬼を絶滅させる計画を練り、準備を進めていたノーマンに、エマとレイは、絶滅させるのではなく、七つの壁で約束を結びなおして人間の世界へ逃げようと説得しますが、ノーマンの考えは変わりませんでした。
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- ["出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
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折れないノーマンに、人肉を食べなくても理性と姿を保つことができていたムジカとソンジュの存在を話しますが、それはかつて「邪血の少女」と呼ばれ、その血を分け与えるだけで、その体質を他の鬼に継承することができる鬼といいます。本来、死んだとされている存在に、ノーマンは計画に支障が出ると踏み、探し出して殺そうと企むのでした。
また、鬼の絶滅を止めることも、遅らせることもできないと言い、それでも、七つの壁を越えて約束を結びなおしてから、自分が鬼の王家を殺す前に戻ってこられたら考える、とエマたちに告げます。
早速、七つの壁の入り口から入ったエマとレイでしたが、空間がゆがんだり、赤ちゃんやじいさんになったり、自分が誰だか分からなくなったりと、簡単には―――に会えず、苦戦を強いられてしまうのでした。
七つの壁の向こう側を目指し、エマだけが「―――」と会い、ある条件と引き換えにして約束を結び直し、「食用児全員で人間の世界に行きたい」という願いを叶えてもらうことができたと言います。
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- ["出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
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しかしその頃、ノーマン達は王都襲撃の計画を進めており、さらに保護してほしいという名目で、ムジカたちの捜索を依頼されたドンとギルダは、ノーマンの思惑を察しつつも、ムジカたちを守るために捜索し、無事再会します。
喜びもつかの間、やはり後をつけ忍んでいたノーマンの部下であるハヤトたちが、ムジカとソンジュに襲い掛かったのです。
ムジカとソンジュに襲い掛かるハヤトたちは、ソンジュとのあまりの力の差に愕然。同時に ※「ラムダの発作」も出てしまい、なんとか助けようとしてくれるムジカを見て、早々に降参をします。
ギルダは、ノーマンは本当に殺す気だったのだと実感し、兄である彼を止めるため、ムジカに助けを求めます。
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- ["出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
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ムジカとソンジュも同意し、王都へ向かうことに。そして、アジトに約束を結び直したエマたちが戻りますが、ノーマンの今回の本当の目的である、王や貴族を殺すだけではなく、王都にいる鬼をすべて殺し、殲滅するつもりであることを聞かされ、すぐに馬で王都へと急ぐエマたち。
しかし、すでにノーマンの計画は実行され、女王、貴族たちへの攻撃、そして殲滅、王都の街にも毒(=強制的に知性をなくすなど鬼の退化を促す薬)をばら撒いてしまっていたのです。遅れて到着したエマたちが見たのは、悲しくも貴族たちの死体の中で佇むノーマンでした。
※「ラムダの発作」…人体実験で行われた投薬による副作用の発作。特殊な薬を飲まないと抑えることはできません。
間に合わなかったエマとレイでしたが、鬼を絶滅させると言うノーマンに対し、これ以上戦わなくていい、約束を結びなおし人間の世界へ逃げられると訴えます。
ノーマンは「一緒に生きたい」という本音を洩らします。
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- ["出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
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ようやく3人の気持ちが一つになったその時、倒したはずの女王が復活、危ないところをムジカとソンジュが合流します。
ソンジュが姉弟関係であったという女王、レグラヴァリマと対峙しますが、沢山の死体を取り込んだ彼女に、徐々に押されていきます。
しかし女王は、その鬼たちの過剰摂取、所謂食べ過ぎにより、体内から爆発を起こし死んでしまいます。こうして鬼の王政は崩壊し、次の王を決めなければいけないと、ソンジュのアテを探しに行くムジカたちと別れを告げたエマたちは、ノーマンのアジトへと向かいます。
途中、青ざめるオリバーたちが駆け付け、アジトにいた子供たちが、ピーター・ラートリーの手によってGFハウスに連れ去られたと言います。エマは迷うことなく助けに行くことを決意し、最後の戦いに向けて計画を練るのでした。
この鬼の世界を、自分の統括下で調停することを目論むピーター・ラートリーは、 ※「グランマ」となったイザベラと手を組みました。
GFハウスで、イザベラの手により10人の子供たちが“処理”されそうになっていたそのとき、エマたちが駆け付け、間一髪で助けることに成功。
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- ["出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
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エマたちの目的は、逃げさせないと包囲を固める相手の虚をつき、GFハウスを占拠することでした。
ようやくピーター・ラートリーを追い詰めた先、背後からママたちが忍び寄ります。
焦る子供たちでしたが、彼女らが銃口を向けた先はなんと、ピーター・ラートリー。イザベラも他のママも、ママであることの苦悩、恐怖、死にたくないという思いに苛まれながら今までずっと闘っていました。この生き地獄を終わらせるため、イザベラは銃をとり、ママたちに扇動したのでした。
ついに逃げ出したピーターは、エマに追い詰められますが、約束が履行されていない今、エマさえ倒すことができれば約束は破棄されると踏み、近づいていきます。
※「グランマ」…飼育監長。すべてのママを束ねる存在。
エマは、殺そうと企むピーター・ラートリーに向けていた銃を下ろし、ラートリー家に何もしないから、食用児の自由を認めてほしいと訴えます。
エマも彼らを憎み、彼らを許すことはできないと言いますが、鬼も生きるために食べていただけだったし、ママ達も生きるためにしていたこと、ラートリー家が食用児を犠牲にして1000年守られた命があること。エマはすべてを理解し、自らと彼らの立場の違いに嘆きました。
- 著者
- ["出水 ぽすか", "白井 カイウ"]
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大好きだった兄、ジェイムズを殺してまで世界を守ったピーターは、エマの一緒に生きようという言葉と熱に侵され、もうどこへでも行けと言い残し、自決をしました。
その頃、鬼の王政では、生き残ったレウウィスが現政権を解体し、全ての民に邪血を分配、そして農園の廃止を訴え、新しい王にムジカを推薦し、新しい時代が始まったのです。
ようやくひと段落し、エマたちが人間の世界へ行く日、GFハウスの地下へ行くと、金の水の上に浮いた島があり、ここでエマは―――に約束の履行の意思を伝えればいいと言います。
そんなエマに「ごほうび(=対価)」の心配をするフィルたち。エマは特別にごほうびがなく、全員無事に人間の世界へ行けると告げ、それを信じ、皆で鬼の世界から旅立つのでした。
どこかの浜辺で目が覚めると、そこは人間の世界でしたが、周りにエマだけが見当たりません。エマはやはり、一人で対価を差し出しており、レイとノーマンは信じた己を悔やみますが、諦めずエマの捜索を開始します。エマの払った対価は何だったのでしょうか。
大人気漫画『約束のネバーランド』は、頭脳戦や心理戦といったドキドキな面白さはさることながら、その魅力は主人公エマにあるのではないでしょうか。
少年と名がつくジャンプでは、主人公が少女というのはとても珍しいですよね。
しかし、彼女の魅力である、太陽のように明るくて前向きなところは、主人公が男の子のものとは全く違った印象を与えてくれます。
それは周りに作用し、頭のいいレイやノーマンでさえも根拠のない自信に乗っかり、不可能なことを”可能”にさせてしまう凄さがあるのです。
約束のネバーランドの世界は、読んでいてもその残酷性や辛い別れに落ち込んでしまいがちですが、エマがそうさせない。
後味の苦さは残るものの、胸を占めるのはあたたかい家族の絆や、信じようとする気持ちです。
確かに残虐な鬼もいるけど、彼らは生きるために私たちを食べなきゃいけないだけで、それは動物を食べる私たちと何ら変わらない、ということに気づくなど、読者が鬼を憎めなくさせてしまうパワーがありますよね。
少年ジャンプといえば友情・努力・勝利がテーマに挙げられますが、よくある、がむしゃらに努力して何度も敵に立ち向かって…といった要素は本作にはありません。このあたりがよく「ジャンプっぽくない」と言われる部分でもあります。
しかし、原作者である白井カイウは、この作品を通して、女の子が主人公でも、激しいバトルがなくても希望をもって前に進めば、友情・努力・勝利につながっていくと話していました。「友情・努力・勝利」を別の視点から描いたのが、この『約束のネバーランド』というわけですね。
心理戦を主に置いたこの作品は、バトルで勝利をあげることこそないですが、それぞれの立場でお互い納得できる解決に向かって進んでいく様子を、とても緻密に描いています。そこでは従来のジャンプ作品の象徴である「友情・努力・勝利」がきちんと表現されており、これほど「ジャンプらしい作品」もないのでは、と思います。
いかがでしたか?
初めから衝撃展開が続く『約束のネバーランド』。張り巡らされた伏線や敵を欺く推理戦など、読者を一息もつかせない展開は、想像以上に激しさが止まりません。
本当に怖いのは鬼か、人間か。何を持ってなにを正義とするのか。ぜひ本作を手に取って考えてみてください。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2016-12-02
以下の記事では、「約束のネバーランド」の伏線について解説しています。気になった方は是非ご覧ください。
『約束のネバーランド』ちりばめられた伏線を開設!レイの父親やエマのペンダントの謎は?
「週刊少年ジャンプ」で連載された大人気漫画『約束のネバーランド』。 そのなかにはキーとなるさまざまな伏線があり、物語を面白く、複雑にしています。この記事では、1巻から最終20巻までの間に張られた伏線について、丸ごと解説していきます!伏線を知れば、きっとあらためて漫画を読み直したくなるはずです。 ただし、かなりのネタバレを含んでおりますので、未読の方はぜひご自身で読んでからこの記事を読んでいただければと思います!