5分でわかる鷹匠・鷹狩!中東で開かれる世界の最大の大会とは?

更新:2022.7.6

一富士二鷹三茄子というように古くから、鷹などの猛禽類は日本人の生活に近い存在であり縁起物とされてきました。その逞しい顔つきと鋭い爪は強さの象徴でもあります。 TV番組の夕方のニュースなどで、鳥の大群などに向かって1羽の鷹が飛び込んでいき、その場から追い払うといったような映像を見たことはありませんか? 実は日本を含めて世界には鷹を巧みに操る職業があります。 今回は「鷹匠」について取り上げるとともに、最後には猛禽類にまつわる書籍を紹介していきます。

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鷹匠とは?

 

鷹匠(たかじょう)とは、鷹や鷲などの猛禽類を飼育、訓練を行う専門家です。本来は猛禽類を放して狩りを行い、獲った獲物を販売することを生業とする職業で、鷹狩のために必要な猛禽類の飼育や訓練も行っていました。

現在も日本では江戸時代から受け継いできた当時の各流派等が存在しています。
鷹匠は公的な資格があるわけではないので、流派を名乗らず独自で鷹狩をしている方々も多くいます。

現在はカラスや鳩などの害鳥対策として用いられることで注目が集まっています。
市街地やマンションなど依頼のあった場所に鷹を放つことで、糞害を起こすカラスやハトを本来の生息地に返すことができるため、多くの自治体や団体が鷹匠に依頼をしています。

また動物園や花鳥園では、パフォーマンスとしても活用されています。

 

鷹狩の歴史とは?

 

鷹狩りは紀元前1000年代から蒙古・中国・インド・トルキスタンなどのアジアの遊牧民を中心とした広大な平野で発達しました。やがて、それはトルキスタン人によってペルシャに伝えられました。


そしてヨーロッパでは、紀元前400年頃貴族や聖職者などによって広められ、13世紀には最盛期となりハヤブサはこの時代のシンボルとなったそうです。

そこから日本には、仁徳天皇の時代に伝えられ、貴族の娯楽として扱われていました。当時はキジなどを捕まえていたと言われています。


戦国時代では織田信長や徳川家康などの戦国武将にも愛されてきました。


江戸時代になると鷹狩は盛んになり、とりわけ好んで行ったのが徳川三代将軍・家光と八代将軍・吉宗で、江戸とその近郊に遠大な鷹場を設け、鷹匠役所を置き、鷹狩りに関する法律を定めていたそうです。

 

鷹匠が扱う鷹の種類は?

 

鷹匠が狩りに用いる猛禽類の種類は、獲物の大きさや性質などによって異なります。

 

・ハリスホーク

成鳥の体長は46-76cm
日本名では「モモアカノスリ」と呼ばれています。
その名の通りモモが赤みを帯びた色をしているのが特徴です。

北アメリカ大陸のアメリカ合衆国南部~中央、そして南アメリカ大陸のブラジル、チリ、アルゼンチンなどに分布していて、野生では群れを形成して狩りや生活するので社会性が高い猛禽類として知られています。ペットとして飼育しても人を仲間と認識するため、猛禽類の中では飼育しやすい種類となっています。

1980年以降、鷹狩に用いられるもっとも一般的な鷹になっています。

 

・ハヤブサ
世界最速の鳥として知られるハヤブサも昔から鷹狩りで用いられてきました。

ハヤブサの大きさはオスが42cm、メスが49cmほどでカラスと同じくらいです。

平地から山地の海岸、河口、河川、湖沼、農耕地などに生息し、崖の上や見晴らしのよい木や杭などから空間を見張る。都市部に進出している個体もいて、高層ビル、煙突、など人口模造物に営巣することもあります。
ハヤブサは「すばやい翼」という名前の由来があるように、狩りを行う際に翼をすぼめて急降下する習性があります。小型の鳥を好んで捕食し、空中で鷲掴みにして蹴り落とす行為を繰り返すことで獲物を弱らせます。

中東ではハヤブサより一回り大きいシロハヤブサが人気となっています。

 

・イヌワシ

全長75~85cmほどの大型猛禽類です

日本では北海道から九州までの広い地域で確認されています。
イヌワシは、主に草地、伐採地、牧場など開けた場所を狩り場に選んでいます。

獲物を捕獲する時は、狩り場を見渡せる木や岩に止まって獲物の出現を待つか、あるいは狩り場の上空をゆっくり帆翔しながら、地上の獲物を探します。 獲物を発見すると翼をたたんで急降下し、捕獲寸前に足を突き出し爪をたてて捕らえます。

絶滅の危機にさらされており、日本全国で500羽に満たないと考えられています。

 

鷹匠の世界の最大の大会とは?

 

世界各地に鷹匠はいますが、中でもアラビア半島が有名です。なんと現在では、世界の鷹匠の半数以上が、この一帯に住んでいると言われています。

野生のハヤブサやタカの保護が重視されており、飼育、繁殖施設や専用病院まであるそうです。

古くから鷹狩りは、ヨーロッパでは貴族の趣味やたしなみの一つでしたが、遊牧民にとってはアラビア砂漠では生き抜くための生活手段でした。そのためハヤブサを捕まえて訓練し、ウサギなどの小動物を狩っていました。

小動物は貴重な食料でハヤブサが人々の食生活を支えていたようです。

鷹狩りはアラブの文化のなかで重要な位置を占めています。

そのようなルーツがありながらも、アラブで鷹匠が多い理由は鷹匠の世界大会が行われる場所でもあるということがあります。

アブダビ首長国で開催される「アブダビ大統領杯」では、およそ2500羽のハヤブサが近隣の国から集まります。

元々は鷹狩りの技を競技にして一般市民にも親しめるものにしようと、2000年代の初頭にハヤブサの競技会が始まりました。毎年12月から1月にかけて開催され、決まった距離のなかで、いかに獲物を早く捕まえられるかを競うもので、賞金はなんと最高約7億7000万円にもなると言われています。

 

鷹と生きる 鷹使い・松原英俊の半生

著者
谷山 宏典
出版日

 

鷹とともに生きる男松原英俊。鷹匠の中でもdeepな彼の約50年、鷹狩をしながら暮らすアウトローの世にも不思議な半生記が描かれています。鷹を愛し、鷹に愛された本物の鷹匠です。
鷹匠でなくても日本人の中で彼ほど野生に身を置いている人はいるのだろうかと思えてしまうような、衝撃的なエピソードが楽しめます。

 

世界で一番美しい鷲の図鑑

著者
["マイク・アンウィン", "齊藤慶輔", "デヴィッド・ティプリングほか", "布施雄士"]
出版日

 

世界に現存する68種すべての鷲を躍動感あふれる美しい写真とともに紹介されていて、猛禽類好きにはたまらない一冊になっています。

小さい鷹や大きな鷲までサイズ感や日本で見ることのできない種類が載っているのも楽しめるポイントになっています。

 


 

鷹匠はなかなか身近に見ることのできない職業ではありますが、時代ごとや国ごとに形を変えながら現代にその文化が残っています。あなたの住んでいる街に害鳥がいないのはもしかしたら鷹匠のおかげかもしれません。世界最大の大会も一度は見てみたいですね。

 

 

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