第4回となる「フリースタイル書評バトル-芸人編-」。今回は「ツッコミワードの魔術師芸人」としてトム・ブラウン布川、カミナリたくみ、トンツカタン森本、オズワルド伊藤の4名が戦います。独特の言葉選びの面白さでツッコミスタイルに定評がある彼らに、好きな本をツッコミつつ紹介してもらいました!
累計1000票近くを獲得したフリースタイル書評バトルを今月も開催!
第3回となる今回の参加者は、個性的なツッコミで知られるこちらの4名です。(芸歴順、敬称略)
誰がどの本を紹介しているのかは、投票期間終了まで公表しません。あなたの1票で、連載の権利を獲得する芸人が決まります。
投票は、紹介する文章だけでおこなってください。
前回までの企画や参加者が気になる方は、ぜひこちらもチェックしてみてください。
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 開催!第1回「今、ラジオが面白い芸人」>
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 【第2回「出版芸人」】>
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 【第3回「型破りエピソード芸人」】>
投票終了後にこの企画を知ったという方は、「自分だったらこの作品に投票した」などと想像しながら読んでみてください。
<結果発表を見たい方はこちら!>
それでは早速、バトルの開始です!
肌を撫でるひんやりとした風に秋の訪れを感じたある日のこと。マネージャーから「フリースタイル書評バトルのお誘いをいただきました」という連絡が来た。フリースタイル書評バトル。なんて物騒な組み合わせの言葉なんだ。クレイジー大富豪の発想である。
なるべく争いごとには巻き込まれたくない性分だが、企画の概要を聞いたときにワクワクしている自分がいた。それと同時に思い浮かんだのが今回紹介する『バジリスク~甲賀忍法帖~』(以下「バジリスク」)という漫画だ。
時は遡ること1614年。後継者選びに苦悩した徳川家康の命により、血で血を洗う忍法争いをすることになった伊賀と甲賀それぞれ10名の精鋭たち。長年の因縁から容赦ない死闘をくり広げる一癖も二癖もある忍者たち。しかしその10人の中に伊賀と甲賀の垣根を越えて愛を育んでいた朧と弦之介もいたのであった……。
忍者、能力者バトル、禁断の恋。僕をワクワクさせるすべてがこの「バジリスク」という漫画に詰まっている。1巻からトップスピードを保ったまま駆け抜ける、一切の無駄を削ぎ落とした全5巻。個性豊かな技の応酬により手練れの忍びたちが次々と散っていく様子はあまりにも儚く、あまりにも悲しく、あまりにも美しい。
このフリースタイル書評バトルという企画も、言うなればホンシェルジュという徳川家康の命による書評争い。まだ見ぬ相手と白熱の戦いをくり広げるという意味ではほぼ「バジリスク」である。
となると今回の参加者に僕が想いを寄せている人もいるのかもしれない。もちろんその人と争うことなんてしたくない。なので万が一、他の人の書評を読んで少しでも「この文章、新垣結衣さんっぽいな」と思ったら僕には一票も投じないでほしい。
書いてるうちにテンションが上がって結果的にずいぶん気持ち悪い文章になってしまったが、これで「バジリスク」の魅力がすこしでも伝わるなら僕はどうなっても構わない。
どんとこい、恥とリスク。
- 著者
- せがわ まさき
- 出版日
- 2003-05-02
この作品は『殺し屋』などでお馴染みの山本英夫先生が原作、『HEAT-灼熱-』などで有名な池上遼一先生が作画を担当しているという漫画界、特に青年誌好きには堪らなすぎる夢のタッグを実現させた漫画です。
ただこんなにすごいお二人が作った漫画なのに、世間の人がこの存在を知らなすぎる! ぜひ広まってほしいので書かせてもらいます。
この漫画は「一人ひとつ五感が特化している極道VS透明人間」という漫画。極道アベンジャーズが透明人間を追い込んでいくところがヒリヒリして最高すぎます。
そして、この漫画で1つ注目してほしい部分は擬音です。たとえば相手の目を潰すシーン。普通目潰しなら「ブスッ!」とか「ブシュッ!」のような音のイメージなのですが、この漫画は「ペコッ。」という音を使います。
確かに実際に目が潰れたら「ブスッ!」よりも「ペコッ。」みたいな音の方が近いのかもしれません。これは山本英夫先生が池上遼一先生との対談で言っていたのですが、漫画でかなり気にしているのが「音」なのだそうで。擬音で怖さの表現がかなり変わってくると。確かに「ペコッ。」の方がかなり怖いです。
僕もネタをやるときは、かなり音を気にしてやっています。かつての僕らはピストルで撃つ音を「ピヒューン!」撃たれたら「ウゥッ。」と、わりとリアルに表現をしていました。しかし一部のイカレポンチを除いて、かなり引かれていました。
そこで気付きました。漫画は楽しんだり悲しんだり「怖かったり」があることが良いのだけども、お笑いのネタは楽しいと思わせないといけない。描写がリアルすぎると怖がらせてしまうときがあるのだと。つまりピストルの音は「ピヒューン!」ではなく「バキューン!」撃たれたら「ウゥッ。」ではなく「グワァーー!」みたいなことで良いのです。
それに気付いてネタの音をデフォルメするように変えたら、前よりもはるかに笑いが来るようになり、今の自分たちがあります。なので、山本・池上両先生にはいつかお会いして深くお礼をするのと、僕らのネタを漫画で描いてもらい、どんな「擬音」で表現するのかをぜひ見させてもらえたらと厚かましく思っています。
描いてもらえましたら、その音でネタをやりウケるかを舞台で試したいです。スベったら責任は全てお二人持ちでお願いできればと思います(笑)うひょーー!!
- 著者
- 山本 英夫
- 出版日
- 2016-02-29
「頭にぶち込んだことちゃんとやれ!!」
小学生の頃、過ちを犯しては母に怒られ、また同じ過ちを犯しては母に怒られ、さらにまた同じ過ちを犯しては母に怒られ、同じ過ち母怒る、同過母怒、同過母怒、同過母怒……。
上記の台詞は、これの繰り返しの末、ついに母から飛び出したパンチラインだ。 頭ではわかっているのになぜかできない。覚えたはずなのに肝心な時に発揮できない。 こんな経験みなさんにもあると思う。おそらく、いや絶対に「ねぇーよバーカ!」という人は0だ。 僕も頭ではわかっているのに、ポケットティッシュをトイレに流して詰まらせるという同じ過ちを繰り返し、何度も母に怒られた。
ある番組で本を読んでメンバーにプレゼンをするという企画があり、そこで僕の課題となった本がこの『学びを結果に変えるアウトプット大全』。
簡単に内容を説明するとこの本には……頭に叩き込むインプットも大切だが、しっかり学んだことをアウトプットすること(人に説明す る・教える・行動に移す)が大事と書かれている。
つまり、毎月本を10冊読んで1冊も人に説明出来ないより、毎月本を3冊読んで3冊とも人に説明できた方が良いという事だ。 昔よく面倒くせーなーと言いながら読書感想文や映画の感想文など学校の教育の一環で怠そうに やっていたが、これはとても大事なアウトプットだったと今となって気づいた。
日々の生活や出来事・人間観察がタネとなって、漫才・コント・エピソードトークとしてお客さんに放出する。芸人はまさにアウトプットをしまくる仕事だ。 このフリースタイル書評バトルも読んだ本を紹介するという立派なアウトプット。
実を言うと冒頭の「同過母怒」のエピソードはずっと忘れていたが、このバトルのおかげで思い出し、今文章としてみなさんにアウトプットすることができた。 このバトルがなかったら墓場まで持っていったと言っても過言ではない。……いや、それは過言だな!
世の中にはうまくアウトプットができずに悩んでいる方もいると思う。 この本にはそのヒントが書かれている。 「頭にぶち込んだことちゃんとやれ!!」 と怒られたくない人にオススメの1冊だ。
- 著者
- 樺沢紫苑
- 出版日
エッセイが好きである。
小説のような完全な作り話も好きではあるのだが、本に関して言えば、エッセイは時折、いいものを読んだという感覚にもう1つプラスアルファを感じることがあるから。
あくまで僕個人の意見であるので、お前になにがわかるんだと言われたら、こちらもこちらでエルボーandナックルですよといった心情なのだが、いいエッセイを読んだ後は、この人に会ってみたいと思うのである。
『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』を読み終わった後もまた、この文章を書いた人に会ってみたいと思ってしまったのだ。
作品自体の主軸は、茶道の先生と出会い茶道を通しての、作者である森下典子さん本人の心情の変化。
もちろん茶道に関しての情報など、コックピットくらい狭いところでやるあれでしょくらいのもんだったので、ほぼ手ぶらで茶道の世界を覗かせて頂いたのだが、予備知識などなくともどっぷりと浸かることができた。
なぜならば、森下さんの言葉はとても凜としていて、日本語を立たせているし、とても正直なのである。嘘がないというよりも、とてもとても正直なのだ。
正直であるから、わからないものを無理にわかろうとしなくていいと言われてる感じがして、次々と知らない道具やルールなどが出てきても全く苦ではなかった。
完全に知らない世界のことを知ろうとする時のストレスってのは意外としんどいもんで、こっちのラインに立ってると向こうの人の言葉なんて鼓膜まで辿り着かないことがほとんどだ。しかし森下さんは、茶道を始めた頃の気持ちを純度100%で鮮明に覚えているため、その言葉1つ1つに嫌味がまるでない。
あの時の、その時の、この時の、今の気持ちを見事なまでに正直な言葉で放つのである。
だからこそ、作中に登場する、とにかく粋で乙でかっこうのいい「先生」と呼ばれる茶道の師匠との出会いも引き寄せることができたのだと思うのだ。
自分に自信がないなどと思う瞬間なんて腐るほどあるが、そんな時僕は身の回りの人間のことを思い出す。素敵な人達ばかりじゃないの。そう思うと、こんな人達に囲まれてる自分が、くだらない人間なわけがないと思えてくる。
森下さんが先生と出会えたことも、作中の森下さんの言葉や感じ方から、森下さん自身の魅力により引き寄せたものだと思わされる。
いいエッセイを読むとその人に会いたくなる。
きっとあなたも、森下さんの人生に触れてみたくなるはずである。
- 著者
- 森下 典子
- 出版日
- 2008-10-28
たくさんの投票、ありがとうございました。
投票結果と、それぞれの本が誰のおすすめだったのかを発表します!
予想しながら読んだ方は、当たっていたでしょうか?
ということで、優勝はトンツカタン・森本晋太郎さんでした!
優勝者の森本さんにはコラムの連載を依頼します。11月末開始予定です。
今後の更新のお知らせはホンシェルジュのTwitterやnoteでおこないます。こちらをフォローしていただくか、honciergeのトップページでもチェックできます。これからもこの企画をぜひ一緒に盛り上げていきましょう!
前回までの記事はこちら。
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 開催!第1回「今、ラジオが面白い芸人」>
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 【第2回「出版芸人」】>
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 【第3回「型破りエピソード芸人」】>
また、前回までの勝者による連載もぞくぞく始まっています!
<Hi-Hi上田浩二郎のツカみよければ全てよし【連載初回】>
エッセイからビジネス書まで、バラエティーに富んだ選書となった今回。紹介されている漫画はどちらも5巻以内で完結していますので、手に取りやすいものばかりです。気になる作品はぜひ実際に読んでみてください!感想はTwitterにてハッシュタグ「#フリースタイル書評バトル」をつけてツイートをお待ちしております。結果発表をお楽しみに。
フリースタイル書評バトル
毎月4名ほどの芸能人が本のおすすめバトル!どの本を読みたくなったか、投票で参加していただけます。