ジャンプ期待の超新星!外薗健『カグラバチ』のあらすじと魅力を徹底解説

更新:2024.5.28

2巻までの累計発行部数が早20万部を突破し、ジャンプの新看板として期待されている異能バトル漫画、外薗健『カグラバチ』。 非業の死を遂げた父親の復讐に燃える青年・六平チヒロの生き様に痺れる本作は、週刊少年ジャンプ次世代を支える即戦力として、熱い注目を集めています。 今回はそんな『カグラバチ』のあらすじやアングラな魅力を、ネタバレを交えてご紹介していきたいと思います。

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『カグラバチ』の簡単なあらすじと登場人物紹介(ネタバレあり)

舞台となるのは我々の知識とは異なる歴史を歩んだ日本。斉廷戦争と呼ばれる激戦から15年の歳月が経過し、国土は復興の道を歩んでいました。

主人公は15歳の少年・六平千鉱(チヒロ)

国で最も名高い刀匠の父・六平国重と、人里離れた山奥で暮らしています。チヒロは国重の指導のもと刀鍛冶の極意を学び、やがては父の跡を継ぐと目されていました。

普段の国重は万事だらしのないぐうたらダメ男で、生活全般をしっかり者の息子に依存しています。一方でチヒロに三匹の金魚をプレゼントするなど、お茶目で優しい所もありました。

世間とは殆ど没交渉の父子ですが、国重の友人・柴登吾が時折訪ねて来ては、思い出話をして帰っていきます。柴曰く嘗ての国重は斉廷戦争に従事し、数々の妖刀を作り出した英雄だったそうです。

国重はチヒロに「自分が打った刀が誰かの命を奪うかもしれない」と説き、「その重さを背負えるか?」と真剣な面差しで問います。そこでチヒロが覚悟を伝えたところ、国重は息子の志の高さに満足し、「期待している」と声を掛けました。

ある日のこと、六平邸を三人の刺客が急襲します。国重は瀕死の重傷を負いながらも息子を逃がして事切れ、唯一落ち延びたチヒロは父の復讐を誓い、地下室から奪われた6本の妖刀刺客の行方を追っていました。

それから3年後。三人の刺客を擁する謎の組織、「毘灼」が動き出し……。

登場人物紹介

  • 六平千鉱(ろくひら・ちひろ) 本作の主人公で18歳。父・国重を殺された復讐に燃え、「毘灼」に強奪された6本の妖刀の回収を目的にしている。無表情で寡黙な青年。
  • 六平国重(ろくひら・くにしげ) チヒロの父親。故人。斉廷戦争にも参加した有名な刀匠で、数々の妖刀を世に送り出した。冗談好きで剽軽な性格。刺客の奇襲時に息子を庇って命を落とす。
  • 柴登吾(しば・とうご) 国重の旧友。関西弁の陽気な男。元「神奈備」所属の妖術師で瞬間移動が使える。チヒロの復讐を支援。
  • 鏡凪シャル(きょうなぎ・しゃる) 孤児の少女。驚異的な治癒力を誇る鏡凪一族の生き残り。天真爛漫な食いしん坊。
  • ヒナオ 「喫茶ハルハル」で妖術師と依頼人の仲介役をしている少女。

用語解説

  • 妖刀 刀匠・六平国重だけが作れる特殊な力を秘めた刀の総称。世間的には斉廷戦争を勝利に導いた妖刀六工(ようとうろっこう)と呼ばれる6本を指す。
  • 淵天(えんてん) 国重の遺作となった妖刀。父の形見としてチヒロが所持する。これのみ戦後に打たれたので一般に存在を知られてない。
  • 斉廷戦争(せいていせんそう) 日本滅亡を企む敵との間に起きた戦争。六平国重が生み出した妖刀六工のうち5本が敵を弱体化させ、最後の1本「真打」が勝利の鍵となった。
  • 妖術師 玄力を操って様々な術を行使する能力者の総称。東京に千人以上潜伏している。
  • 玄力 全人類の中に眠る超自然の生命エネルギー。練り上げると肉体が強化され、妖術の構築が可能になる。
  • 神奈備(かむなび) 妖術師を雇用する国家組織。国の脅威となる異分子の排除を目的に活動する。
  • 毘灼(ひしゃく) 四年ほど前から活発化し始めた妖術師組織。構成員は手の甲に炎の紋章を刻んでいる。チヒロの父の仇。
  • 楽座市(らくざいち) 年に一度開催される闇の競売。人・物問わず非合法な商品が売買される。裏社会の要人たちが集まる。
  • 漣家(さざなみけ) 楽座市を司る妖術師一族。

評価基準

  • ストーリー性 ★★★★
  • キャラクター ★★★★★
  • 画力 ★★★★
  • 没入感 ★★★★
  • おすすめ度 ★★★★★

ド迫力の異能日本刀バトル!見開きのかっこよさに痺れる

『カグラバチ』は2023年スタート、既刊2巻まで発売中。作者の外薗健は手塚賞出身、今作が連載デビュー作となる新人漫画家。1巻の帯には『僕のヒーローアカデミア』堀越洋平が絶賛コメントと祝辞を寄せています。

漢字表記では『神楽鉢』。「ジャンプ+」では一話が無料で読めます

本作の見所は新人離れした画力の高さが支える大迫力の剣戟!一話の完成度からして非常に高く、外道の手足が容赦なく千切れ飛ぶバトルシーンは、骨太アクションに飢えた読者に諸手を挙げて迎えられました。

日本刀主体のバトル漫画としては、社会現象を巻き起こした吾峠呼世晴『鬼滅の刃』が有名。現代風の世界に舞台をスライドした『カグラバチ』は、人情噺に重きを置いた『鬼滅の刃』をよりハードに、よりソリッドに研ぎ澄ませた印象を受けました。

6分で網羅する『鬼滅の刃』!キャラクター一覧と章分けの解説で初心者もまるわかり!

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社会的大ヒットを記録した『鬼滅の刃』はどんな漫画なのか。この記事を読めばキャラの解説や全巻のストーリーや見所をネタバレありで把握でき、未読の人でも大まかに鬼滅の刃を理解できます! 周りはアニメと映画を見ているのに私は全く知らなくて不安、という方でも大丈夫。むしろ原作知識でアニメ・映画のみ勢に差をつけていきましょう!

最大の相違点は主人公の目的と信条。竈門炭治郎は唯一生き残った妹・禰豆子の救済に尽力しましたが、一話の時点で天涯孤独になったチヒロは、父の復讐と形見の回収に人生を捧げています。

チヒロが眉一筋動かさず敵の手足を切り飛ばす描写からは、復讐鬼と呼ぶに相応しい、底知れぬ凄味と気迫が伝わってきました。

本作を異能バトル足らしめているのは玄力と妖術の設定。玄力とは全人類に備わる超自然的な力、妖術とはそれを練り上げた術式をさします。玄力を宿す刀は妖刀と呼ばれ、零天石(だてんせき)と名付けられた特殊な鉱石を原料とし、チヒロの父・国重しか作り出せません。

故に国重が手掛けた妖刀六工を巡る争奪戦が勃発、裏社会の組織が殺し合いを繰り広げているのが現状です。妖刀六工は各自異なる性質と能力を秘め、チヒロが所持する淵天を含め、3本しか持ち主が判明していません。

淵天は涅(くろ)・千(ちぎり)・猩(あか)・錦(にしき)の技を放ちます。技名の由来は国重が生前プレゼントした金魚。刺客の奇襲時に殺されており、これをチヒロの想念が具現化しています。

技の発動時には虚空を泳ぐ金魚が現れ、殺伐としたバトルシーンに雅な興趣を添えているのに注目。躍動感あふれる大胆なコマ割りは最高にかっこよく、白刃と凶弾が錯綜する殺陣特有のヒリヒリしたスリルが味わえます。

著者
外薗 健
出版日

硬派な主人公と食いしん坊幼女の掛け合いに萌える!

『カグラバチ』はただシリアスなだけの復讐譚ではありません。主人公の六平チヒロを筆頭に、敵味方問わずユニークなキャラクターが活躍し、物語を引っ張っていくのも大きな魅力。

1巻ではチヒロの協力者・柴の剽軽な軽口と、中盤以降に登場する幼女・シャルの明るさが、重苦しい雰囲気を中和してくれました。とはいえこの2人も重要な役割を担っています。

週刊少年ジャンプの主人公において、無口無表情を通すチヒロの人物造形は異色。過去の経験に起因するとはいえ、どんなトラブルに直面しても表情を変えず、大抵の物事に動じません。

そんなチヒロに毎度の如く柴がツッコミを入れ、シャルが無邪気に懐くことで、ぐっと親しみやすくなるのがポイント。チヒロとシャルの微笑ましい掛け合いは本作における貴重な息抜きシーンであり、脱力系のセリフ回しと合わせ、思わず吹き出してしまいました。

だからこそシャルが抱えた大きな秘密と、彼女に差し向けられた刺客を迎撃するチヒロの気迫が、絶対に負けられない瀬戸際の戦いの動機付けとして際立ちます。

最愛の父と刀を奪われた主人公が、再び守るべきものと巡り逢い、さらなる強さを手にする展開は脳汁ドバドバ!

チヒロとシャルが育む心温まる絆の描写、友人の忘れ形見を守り導く柴の包容力、2巻で本格登場する香刈緋雪漣伯理の複雑な思惑も、『カグラバチ』への没入を促す強烈なフックとなっています。

著者
外薗 健
出版日

『カグラバチ』を読んだ人におすすめの本

外薗健『カグラバチ』を読んだ人には吾峠呼世晴『鬼滅の刃』がおすすめです。

『鬼滅の刃』はアニメ化をきっかけに大ヒットしたバトル漫画。大正時代の世界観において、『カグラバチ』とは趣を異にする、妖しく美しい日本刀バトルが堪能できます。

家族を殺されながら復讐を否定した炭治郎と復讐に魂を売ったチヒロ……ある意味味対極に配置された、主人公の運命に引き込まれました。

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著者
吾峠 呼世晴
出版日
2016-06-03

クライマックス目前と噂される芥見下々『呪術廻戦』も、『カグラバチ』好きにはぜひ押さえてほしい作品。

呪術と妖術……呼び方は違えど似た概念が登場することに加え、登場人物の生死に手心を加えないハードな展開や、シャープな絵柄が生み出す躍動感が共通しています。

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著者
芥見 下々
出版日
2018-07-04
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