猫からは逃れられない!アニメ化が決まった漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』の魅力を紹介

更新:2025.1.17

漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』はウイルスの蔓延によって、人間がゾンビ――ではなく可愛い猫ちゃんになる異色のパニックホラー作品です。登場人物は大真面目ですが、やってることはギャグというシリアスな笑いが特徴。 連載直後から「変な漫画」とネットで評判になった本作ですが、2025年のTVアニメ化が決定しました。 この記事ではそんな漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』について、作品のわかりやすい内容と魅力、おすすめエピソードをご紹介していきます。

小説も漫画も映画も基本雑食な、しがない物書き。温故知新で古典作品にもよく触れるようにしています。
泡の子

3行でわかる記事の内容

  • 触れれば猫になるウイルスが蔓延した世界でサバイバルする漫画
  • ゾンビ映画っぽいが猫が酷い目に遭うことはないシリアスなギャグ作品
  • 猫好きにもゾンビ好きにも好評で、2025年にTVアニメ化が発表された

モフれば猫化!漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』はこんな作品

『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』は2020年10月から「月刊コミックマッグガーデン」およびWebコミック配信サイト「マグコミ」で連載されている作品です。原作・ホークマン(大崎崇人)、作画・メカルーツ(つるかめ)。既刊5巻で、最新の第5巻は2024年2月22日に発売されました。

本作は人間が猫化するN・Nウイルスの世界的大流行によって、文明が崩壊した世界で主人公たちが生き延びていくポストアポカリプス(終末後世界)作品です。

一見すると作画はリアルタッチのホラーで、登場人物のリアクションもパニックものやサスペンス並みに必死ですが、恐怖(?)の対象は可愛らしい猫ちゃん。耳がピンと立っていて尻尾が長くて、「にゃん」と鳴いて小柄で気まぐれですばしっこくて、野良だったり室内飼いだったりするあの猫です。

あくまで「ホラー風」の実質ギャグ漫画なため、ホラー系が苦手な人でも安心して読めます。後ほど魅力の項目で詳しくご紹介しますが、敵ポジションであっても猫が不幸な目に遭う展開だけは一切ないこともあって、多くの猫好きや愛猫家に指示されています。

作品タイトルがゾンビ映画の原点『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のパロディで、それにちなんだネタも豊富でゾンビ映画愛好者にも好評です。

漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』はSFゾンビサバイバルホラーの体裁なのに、作中のすべてが猫を中心に回る、猫好きによる猫好きのための猫漫画と言っても過言ではありません。このようにかなり風変わりな作品ながら熱烈な読者を獲得しており、2024年2月には第5巻発売と同時にTVアニメ化が発表されました。2025年放送予定。

原因はウイルス!漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』のあらすじ

20XX年10月……ある企業で研究されていた「N・Nウイルス」が爆発事故で流出、人間を猫に変える驚異のウイルスが人知れず接触感染を繰り返した結果、人類はわずか数ヶ月で滅亡の淵に立たされることになります。

時間は少し遡り――爆発事故から少し後、とある都市に記憶喪失の男が現れました。彼は猫カフェ「メゴコロ・ネコメ」を経営する兄妹、ガクとカオルに保護されてしばらく一緒に過ごしますが、猫化パンデミックの発生で運命が一変。

兄妹によってクナギと名付けられた彼は、唯一覚えていた豊富な猫の知識と抜群の身体能力を活かして、生き残った人々を守って猫災害を生き残るべく(猫を傷つけないように)立ち向かっていきます。

生粋の猫好きしかいない!漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』登場人物

『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』はストーリーの進行で少しキャラクターが入れ替わります。そんな中で中心的存在として描かれるのが、クナギとカオルの2人です。

クナギは本作の主人公と言っていい男性。1つに縛った長めの髪と、額にある傷跡が特徴です。自分の名前を含む記憶を失っていますが、なぜか猫の知識だけは残っており、優れた判断力と凄まじい身体能力でいくつもの窮地を脱していきます。

カオルは本作のヒロイン。前髪パッツンの長い黒髪と吊り目が目立つ女子高生です。普段の態度はキツめですが、記憶喪失のクナギを発見・保護したのは彼女で、実は優しい心の持ち主。行きがかり上、クナギとコンビで行動します。

そんなカオルの兄・ガクは、猫を心から愛する「メゴコロ・ネコメ」の店長。カオルが連れ帰った当時得体の知らないクナギを快く受け入れるなど、かなりのお人好し。猫化パンデミック発生時にはクナギらとともに逃げますが……。

タニシは猫カフェ常連客。モヒカンとゴーグルがトレードマークです。かなりのマッチョマンながら、猫に危害は加えられない(登場人物全員がそうですが)ため、筋肉は見せかけだけで頼りになりません。第1話冒頭で猫化(キジトラ)して犠牲者の末路を読者に伝える役割で、本人の主な登場シーンは過去回想のみ。

そしてカオルの友人ツツミ。パンデミック発生時にバイト先のスーパーに籠城しており、後からやってきたカオルと再会します。重度の猫アレルギーなため、猫の接近を敏感に感じ取れるキーパーソン。

他にも後から登場するサバイバー、本筋とは別で生き延びているらしい番外編のキャラクターや、独自の思惑があるらしい意味深な猫も……。

どうしてこんなに可愛いのか?漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』の魅力

『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』はゾンビ映画のタイトルをパロっていることからもわかる通り、未知のウイルスの脅威に晒されるゾンビパンデミックホラーのスタイルを踏襲しています。

ところが暴力表現やスプラッター描写は皆無。本作はざっくり言えばゾンビものをひねった亜種なのですが、ゾンビ作品にありがちな刺激の強い要素を排除してあるのがユニークです。

この手のジャンルで感染と言えば、噛みつきやひっかきが定番。一方で本作の感染とは撫で撫でやスリスリといった、猫に触れて可愛がる(じゃれつかれる)行為です。触れるだけで即座に猫化が始まる恐ろしいウイルスなのですが、本作の世界の人類は約9割が愛猫家なので、猫化の際はむしろ猫に触れて嬉しそうなのがおかしいやらおぞましいやら。

猫への対処も、傷つけないよう逃走が基本。しかもドアに巻き込まないようゆっくり閉める、閉所から出る場合は猫を閉じ込めてしまわないように隙間を開ける、どれだけ急いでいても車で猫バンバンは欠かさない……と、猫への思いやりを絶対に忘れません。銃などの武器があっても、威嚇だけで絶対に直接当てないなど、猫ファーストが徹底されています。

猫を避けつつ、怖がるのではなく可愛いと思い、触るとアウトなのに触りたくて仕方ないという異常さ。大真面目な顔をして現実基準だとズレたことをする、シリアスとトンデモのギャップから生まれる笑いが本作の持ち味であり魅力です。

作中ではたびたび猫に関連するトリビア、飼育方法が紹介されており、ある種のハウツー本として読めるのも面白いところ。

ちなみに番外編となるAnother caseを除く各話のサブタイトルはすべて、小説や映画のタイトルのパロディとなっています(『すべてがFになる』、『今宵われら星を奪う』、『任務外作戦』など)。特に内容とリンクしてるわけではないようですが、元ネタが何か調べながら読むとクスッとするかも知れません。

漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』おすすめエピソード【第1巻Chapter2ネタバレ注意】

爆発事故で密かにウイルスが漏れ、記憶喪失のクナギが拾われてから4ヶ月。クナギは客より猫を優先する悪癖があるものの、猫カフェの店員を務める程度には馴染んでいました。

そんなある日、常連の男性客が店を訪れます。男性客は無類の猫好きで、店に来る直前にも人懐っこい野良猫と戯れてきたと話すのですが……。彼は突然、店の猫に与えるおやつを自分で食べ始めたかと思うと、見る間に猫に変化してしまいました。

そして猫になった客とそこから感染した猫たちによって、連鎖的に感染発生。クナギの機転で何人かは店を出て難を逃れましたが、外もすでに感染でパニックになっていました。

クナギの凄まじい行動力と飽くなき猫への愛、そしてガクの決断と覚悟が見所です。ビジュアル的には猫がじゃれついて来るだけなのに、進行している事態はパニックホラーのノリなのが非常にシュール。『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』の要素がすべて詰まった見事なエピソートです。

漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』おすすめエピソード【第2巻Chapter6ネタバレ注意】

可愛い猫の前に警察も自衛隊も無力。猫化の混乱は拡大の一途を辿っていました。そんな中、カオルの友人ツツミと合流したクナギたちは、かろうじて機能している救助隊がいることを知ります。しかし救助ヘリを呼ぶには、猫まみれの街を抜けて高いビルに登り、合図しなければいけませんでした。

触るだけでアウトな猫をいかに避けていくか。クナギはツツミの猫アレルギーの体質を利用することを思いつき、比較的安全なルートで近場のビルに接近していきました。ところが、たった1匹の特殊な長毛種の猫に見つかって事態は悪化。その猫は大きな鳴き声を発して周囲の猫を呼び寄せました。

波のごとく押し寄せる猫たち。クナギは囮を買って出て、統一された意思の元に動く1匹の巨大な群体生命と化した猫の群れに対して、命がけの鬼ごっこに身を投じます。

これまで猫は人懐っこくて可愛いだけでしたが、第2巻に入った辺りから少し様子が変わってきます。長毛種の猫のように妙な行動をする個体や、集団行動が出てくるのです。人間が猫になった影響か、あるいは人間に変わる支配種として社会性を獲得しているようにも……。難しいことはさておいて、とりあえず愛くるしいのは確かです。

漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』おすすめエピソード【第3巻ネタバレ注意】

圧倒的な猫ウイルスの感染力で各国体制は完全に崩壊、地球中あらゆる場所が無政府状態――猫の楽園と化していました。

あてどなく逃げていたクナギとカオルは、博物館を城塞化した拠点「ヴェンデルシュタイン」に身を寄せていました。そこでのクナギたちの役割は安全な寝床と装備の提供と引き換えに、物資の探索・確保することでした。

リーダーのカズコの指揮の下、コミュニティは安定していたのですが……ある時、クナギとは別班の探索チームであるウォード親子が消息不明になります。ウォード親子は父コウジ、レンとマサキ兄弟の3人チームで、砦創設時から活躍する百戦錬磨の戦士です。普通の猫に後れを取るはずがない、とクナギたちは救出に向かいました。

猫との戦いは(愛猫家しかいないせいで)人間側が一方的にやられるだけでしたが、この辺りから少し体勢が整って、サバイバルらしくなっていきます。が、それもつかの間。ちょくちょく匂わされていた異常個体の猫が本格的に登場し、さらなる窮地がクナギたちを襲います。

第3巻ラストには他の猫や異常個体とも一線を画す、かなり意味深な猫が顔を見せるのですが、それが第4巻でなんと……! 猫化をもたらした元凶N・Nウイルスや、そもそもの研究、クナギの過去とどう関わってくるのか(あるいは関係ないのか)続きが非常に気になる展開に注目です。

2025年放送予定!TVアニメ『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』

突拍子もない設定と猫の愛らしさで、猫好きとゾンビ映画好きの間で話題の漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』。ノリがゾンビ映画、パニックホラーテイストなので早くから映像化を望まれていましたが、2025年のTVアニメ化が発表されました。

現在は公式サイトとティーザームービーが公開されているのみ。詳細な放送時期や放送媒体、制作スタジオなどの情報はまだ出ていません。ただ、公式発表とPV公開を「ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント」が行っているので、子会社の「ソニー・ピクチャーズ アニメーション」が担当する可能性はあります(ソニー・ピクチャーズは配給だけかも)。

ちなみにアニメ化発表に寄せられた作者2人のコメントによると、制作陣には猫好きが集まっているとか。漫画でも猫の種別の描き込み、仕草にはかなりこだわりが見られるので、アニメではそれを超えるリアルな猫を期待したいです。もしかするとギャグなのを逆手にとって、猫パートを一部実写にしてくる可能性も……。

後はやはり、クナギをはじめとした愛猫家のキャラクターたちの迫真のリアクションですね。声優の演技も含めて、真剣であればあるほど滑稽で面白くなるため、アーバーアクションなくらいの演出を期待したいです。

『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』はネタ的に映像作品と相性が良さそうなので、今後の人気次第では実写映画化もあり得るかも知れません。

漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』原作・ホークマン、作画・メカルーツ

漫画『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』は原作・ホークマンと作画メカルーツの2人体制で製作されています。理由は不明ですがどちらも別名義で、本来のペンネームはそれぞれ大﨑崇人(おおさきたかひと)とつるかめ。

大﨑崇人は『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』以外に、配信活動をしながら県と魔法で戦う漫画『配信勇者』の原作も担当しています。ただし大﨑崇人は原作者専業ではなく、自分でも絵を描く漫画家。単独では終末後世界を機械の僧侶が供養して回る短編漫画『21G』を発表しており、どこか突き放した視点から描くSFを得意としているようです。

作画担当のつるかめは北海道在住のイラストレーター、漫画家。代表作は『雨天の盆栽』です。女子高生の部活モノと盆栽を組み合わせた意欲作で、『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』に比べると萌え系路線の作品でした。

その一方でフランスのバンド・デシネ(ビジュアルを重視した1枚絵のような漫画)を思わせる摩訶不思議なSF短編漫画『鍋島オクナの一日。』も発表しており、引き出しの多い漫画家のようです。こちらはリアルタッチかつ映像を切り取ったようなコマ表現で、『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』の片鱗を感じられます。


 

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