ギザ歯怪異×腹ぺこJKミーツオカルト『オカワリいただけただろうか?』ネタバレレビュー

更新:2025.8.22

webアクションで好評連載中のオカルト百合漫画『オカワリいただけただろうか?』。本作は友達作りが下手な食いしん坊JK・四谷寿々が、ボーイッシュ美人な真島さんと出会い、グルメで怪奇な冒険を繰り広げる話です。今回はそんな『オカワリいただけるだろうか?』のあらすじや魅力を、ネタバレありでご紹介していきたいと思います。最後までお付き合いください。

都内在住の小説漫画好きwebライター。特にホラー・ミステリー・ハードボイルド・ヒューマンドラマを愛する。 好きな作家は浅田次郎・恩田陸・東山彰良・いしいしんじその他。 YouTubeチャンネルのシナリオや読書メディアで執筆中。お仕事のご依頼ございましたらTwitterのDMからどうぞ。
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『オカワリいただけただろうか?』の簡単なあらすじと登場人物紹介

 

主人公の四谷寿々は15歳の高校一年生。友達が欲しいと意気込んでいたものの入学初日の自己紹介にド滑りし、学食でぼっち飯に甘んじているポンコツ娘。最近のお気に入りはホクホクお揚げが売りのキツネうどんで、毎日のように食べています。

ある日のこと、学食で取り巻きに囲まれている少女を見かけた寿々。彼女の名前は真島さんといい、数々の運動部から勧誘を受けている人気者でした。その一方でミステリアスな雰囲気を纏い、人と馴れ合わぬ態度をとっています。

そんな真島さんにぼんやり見とれていたところ、当の本人がツカツカやってきて、「お前美味そうだな」と顔を掴んで言うではありませんか。突然の出来事に動揺するも、続けざま「明日の昼屋上に来い」と告げられ、「一緒にお弁当を食べる友達ができた!」と舞い上がります。

翌日……手作り弁当持参でウキウキ登校した寿々は、体育の授業中に不審な視線と寒気を感じ、気付いた時にはまたもやキツネうどんを啜っていました。せっかく誘ってくれたのに約束を破ってしまったと落ち込み、大慌てで真島さんに謝りに行ってみると、「明日は来い」とそっけなく告げられます。

真島さんの優しさに感動し、明日こそはと決意を新たにする寿々。にも関わらず翌日も何故かキツネうどんを頼んでしまい、ぼろぼろ泣きながら麺を啜る羽目に。

さらには謎の頭痛と体調不良に見舞われ、保健室に運び込まれます。目覚めた時には既に放課後……「待ってるはずないよね」と思いながら屋上に向かいとぼとぼ歩いていると、校舎内に居残った女生徒たちが、真島さんの噂を交わしているのが耳に入りました。

曰く、真島さんと一緒にいる子はいなくなってしまうこと。故に中学時代は「魔人ちゃん」と呼ばれ、同級生に避けられていたのだとか……。

単身屋上に到着した寿々を出迎えた真島さんは、魔性めいて怪しげな微笑みを浮かべていました。謎のプレッシャーに駆り立てられ衝動的に屋上の柵を乗り越えた寿々は、たった15年の寂しいぼっち人生を回想し、「友達とご飯食べてみたかったなあ」と悔やみます。

そこで間一髪真島さんに引き戻され、「お前に取り憑いている怪異を食べる」と宣言され……!?

登場人物紹介

  • 四谷寿々 15歳の高校一年生。幼児体型で童顔。子供の頃から鈍臭くて一人ぼっちだった為、友達とご飯を食べるのが夢。入学初日の自己紹介に失敗し、教室で孤立している。実は食べることで怪異を引き寄せる特殊体質「食憑(クイツキ)」で、キツネうどんを好んでいたのもお稲荷さんの憑依が原因。何事にも一生懸命な頑張り屋。
  • 真島さん 寿々の初めての友達。黒髪ショートヘアで高身長なボーイッシュ女子。スポーツ万能らしく、数々の運動部から勧誘を受けている。一緒にいる子が消えてしまうことから、中学時代は「魔人ちゃん」のあだ名で恐れられていた。その正体は不明。人に取り憑く怪異を主食とし、捕食時は顔の中心に異形の開口部が生じる。寿々を囮にしてご馳走に預かろうと企む。
著者
U-temo
出版日

グルメ×オカルト×百合の詰め合わせ 寿々はぼっち飯を卒業できるか!?

オカいたこと『オカワリいただけただろうか?』はwebアクション連載中のU-temoの百合漫画。

タイトルの由来は夏の心霊番組『ほんとにあった怖い話』(ほん怖)内にて、心霊写真の該当箇所を指摘する際のナレーターの決め台詞、「おわかりいただけただろうか?」です。作者のU-temoは百合オタに百合はご法度です!?』全3巻、『今日はまだフツーになれない』全1巻を刊行済み。もののけ荘のニートども』、『百合好きくんと百合好き好きくん』も人気です。

著者
U-temo
出版日
著者
U-temo
出版日
著者
U-temo
出版日
著者
U-temo
出版日

本作の見所は力の入ったグルメ描写、および寿々と真島さんの凸凹な友情。第一話冒頭から美味しそうなご飯が登場し、空腹に訴えかけてくるのでご注意。

主人公の寿々は「食憑」と呼ばれる霊媒体質の持ち主で、食べれば食べるほど怪異を引き寄せてしまいます。

それに目を付けたのが怪異を主食とする謎の女子高生、真島さん。一見ボーイッシュなクールビューティーですが、その正体は未だ謎に包まれています。

ぱっくり裂けた顔面に巨大な牙と三個の眼球を備えた異形の口が開く、捕食時の演出はインパクト大。「魔人ちゃん」の忌み名に恥じない、正真正銘の化け物と言っても過言ではありません。

寿々と真島さんのコミカルな掛け合いが楽しい日常パートの緩さと、怪現象に巻き込まれた二人が元凶の打倒or異界からの脱出を目指すホラーパートの落差が、ストーリーに絶妙な緩急を生んでいる点に注目してください。

最初は体めあて(誤解を招く発言)だった真島さんも、誰かの為に一生懸命になれる寿々の純粋さにだんだんとほだされていき、彼女に身を挺し庇われる段に至って特別な感情を自覚します。

損得勘定で始まった関係が本物の友情へ変化していく過程に伴い、寿々を単なる囮と見なしていた真島さんが人に近付いていく振れ幅が描かれ、感情移入が捗るのが大きな美点。

作中で扱われる怪異のバリエイションもオカルト好きの食指をそそるポイントで、一話~二話は学校、三話~四話は心霊スポットのトンネル、五話~七話は洒落怖で知名度を上げた異界駅が舞台になりました。ちなみに真島さん、駅も食べます。悪食ここに極まれりですね。

百合・オカルト・グルメ、三拍子揃った鉄壁の布陣!具沢山の駅弁を思わせるリッチな内容は、あなたの胃袋を掴んで離しません。

著者
U-temo
出版日

怪異を食べる怪異!?ミステリアスな真島さんの正体に迫れ

真島さんの正体も本作の強烈なフック。見た目は女子高の王子様然とした高身長美少女、気になるその正体は……寿々が彼女の本性に全く気付かず懐いているのも、読者のハラハラドキドキを煽る要素になっています。

人なのか怪異なのか。どちらでもないのか。

ちょっと本気を出せば怪異をたいらげることなど朝飯前な真島さんは確かに強く頼れる存在ですが、寿々と一緒に行動する動機は彼女に寄ってくる怪異の捕食に他ならず、利用価値がなくなっても友達でいてくれるかはわかりません。

真島さんと一緒にいる子はいなくなってしまうと噂が広まったことからも、彼女が背負った複雑な過去が垣間見えます。ここで注目してほしいのは「いなくなる」の真意。はたして神隠しを意味するのか、真島さん自身に食べられたことをさすのか、何通りにも解釈できます。

前者の場合は真島さんと友達になったことで怪異に巻き込まれたのかもしれませんが、後者の場合は……。

過去に寿々と同じような体質の子をそばにおいていたのなら、その目的は怪異の入れ食いに非ず、メインディッシュを横取りされないように監視することにあったとは考えられないでしょうか?

そもそも普通の女子高生に怪異の捕食は不可能ですし、顔面が異形化したりもしません。元は人間だったとしても、現在の状態はそこからかけ離れています。捕食時に生じる巨大な口腔内に、目玉が三個あるのも気になる所。

通常の人間は一対二個の眼球しか持ち得ぬ為、三個眼球があるのは怪異の証と言えます。

味方に付ければこの上なく頼もしく、敵に回せばこの上なく危険な存在であるからこそ、真島さんの今後の動向から目が離せません。

著者
U-temo
出版日

『オカワリいただけだろうか?』を読んだ人の反応や感想

『オカワリいただけただろうか?』を読んだ人におすすめの本

U-temo『オカワリいただけただろうか?』が気に入った方には石川扇『私の怪談師はポンコツ可愛い』をおすすめします。

幼い頃から霊感体質に悩まされてきた女子高生・白春青。ある日突然彼女に声を掛けてきたのは、怪談師志望の同級生・夏目咏でした。咏に押し切られ渋々怪談収集を手伝うことになった青は、深夜に訪れた心霊スポットの神社の境内で、大量の藁人形を発見してしまい……。

骨の髄まで怪談オタクなの怖いもの知らずな暴走ぶりと、無謀な相方に振り回される青のツッコミが冴え渡る、ほんのり百合テイストな青春エンターテイメントです。

著者
石川扇
出版日

続いておすすめするのはさりい・B怪異部~M県Y市の怪現象について』。

主人公・桜庭桜が転校してきた夕闇市は異常な因習が支配する土地。同級生には「発狂」「生肉」「轢死」「自死」など不吉な名前の持ち主が勢揃いしている上、高校を卒業するまで町から出ることが許されず、禁忌を破れば恐ろしい怪異が襲ってきます。

夕闇市から生きて脱出する為、桜は怪異部部長・安藤渦と手を組んで調査を開始するのですが……。

因習村ホラーの魅力とデスゲームのスリルが詰まった問題作、ぜひご覧ください。

著者
さりい・B
出版日
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