頭が金魚鉢の殺人鬼に立ち向かうスク水少女のホラー漫画『血潜り林檎と金魚鉢男』。独特の設定と世界観にファンが多い本作。今回はこのおすすめ漫画の魅力をご紹介させていただきます。
- 著者
- 阿部 洋一
- 出版日
- 2015-12-12
出典:『血潜り林檎と金魚鉢男』1巻
雨上がりの晴れた日によく出没する吸血鬼、「金魚鉢男」。金魚鉢の頭にスーツ姿という見た目の男です。男の頭部の鉢の中にいる金魚、通称「金魚毒」は相手の首筋に噛みついて血液中に入り込み、その人の魂ともいうべき「魂血」を吸収します。そしてどんどん肥えていく金魚毒が爆発して全身にまわったとき、吸血された相手は金魚の姿になってしまうのです。血を吸いきると金魚鉢男はその金魚毒を回収し、頭の鉢に戻します。
その時に浮かび上がってくるのは今まで見たことのないような不思議な見た目をした怪物の表情。ただの金魚鉢だった頭部が真っ赤に染まり、そこに顔のようなものが浮かび上がってくるのです。まさに突飛と言える設定のホラーですが、それが阿部洋一の描く濃密な世界観と画風に合っており、設定が活かされた作品となっています。
- 著者
- 阿部 洋一
- 出版日
- 2016-01-12
妹を金魚鉢男によって金魚にされてしまった昊介は、真夏の炎天下で自販機にもたれかかったまま眠っている少女に出会います。少女はスクール水着姿で拳銃を所持している摩訶不思議な見た目。彼女は林檎と名乗り、この格好が仕事着であり「血潜り」という吸血被害者の血の中に入って彼らを救う仕事をしていると話します。
ある日、昊介が金魚鉢男に遭遇してしまい、林檎に助けを求めることに。彼女は彼の血の中に潜っていきますが、泳ぎが下手。ジタバタしながら泳いでいく少女の姿は萌えるものがあります。なんとか林檎によって救われた昊介は妹を元に戻す方法を探るため、林檎と一緒に血潜りの仕事をすることになるのです。
出典:『血潜り林檎と金魚鉢男』1巻
本作はホラー漫画ではありますが、吸血鬼の頭が金魚鉢だったり、それを救う少女がスク水で街中を歩いていたりとかなり奇抜な設定です。林檎に連絡をとれるのは回線の切れた公衆電話の受話器だったり、金魚鉢男を見つけるためのアンテナがビニ傘だったり。
そしてそんな設定をすんなり受け入れている日常もシュール。教室にいる異様にでかいクラスメイト、なぜかふたりとも眼帯をしている警察官(しかもひとりは両目)、学校の空っぽのプールの中にある自販機、日よけのパラソル、ビーチチェアなどが、誰も突っ込むことなく自然に登場しているのです。なんともカオスな世界観。作中の季節夏なので、もしかしたらみんな暑さで頭がやられているのかもしれません。
水の入っていないプールで、金魚すくいのポイを振るスク水少女たち。人々が金魚男によって、完全に金魚になってしまうのを防ぐため、彼女らは日々鍛錬を積んでいます。金魚男は前述のとおり、頭が金魚鉢で、スーツを着てネクタイまで締めている、全てが謎に満ちた男。スク水少女たちは、金魚男に対抗できるのでしょうか。
- 著者
- 阿部 洋一
- 出版日
- 2015-12-12
ストーリーからキャラ設定まで、独特の世界観を持つ『血潜り林檎と金魚鉢男』。読み進めてみると、可愛らしい絵からは想像できないような濃密なホラーが描かれています。かなり不気味で恐ろしいストーリーになっていますが、空白の多いコマ割りと可愛らしい絵のおかげか、すんなりとページをめくることができでしょう。ストーリーと絵が綺麗にバランスをとっていて、とても不思議な感覚になります。ぜひ手にとって確かめてみてください。
なぜすべての大元である金魚男を殺そうとしないのか、不思議で不思議でたまらない少女、柘榴。金魚男を自らの手で殺すために、彼女はある策を立てます。その策とはウブな少年、吉田に鼻血を大量に出させることによって、その血の匂いで金魚男を呼び寄せるというものでした。金魚男を殺してはならないという禁忌を守るため、柘榴を探す昊介と林檎。しかしなかなか見つけることができず、ついに恐れていた事態が発生してしまいます……
- 著者
- 阿部 洋一
- 出版日
- 2016-01-12
物語がクライマックスに向かって動き始める第2巻。なんとしてでも禁忌を守らなければなりませんが、殺気にはやる柘榴を止めることは出来ませんでした。なぜ金魚男を殺してはならないのか?その先に何が待ち受けているのか?その最大の謎は3巻で明らかになります。
【注意】これより先は3巻のネタバレを含みます。
ついに金魚男と直面することになった柘榴。味方であった吉田が金魚男にやられている間に、颯爽と弓矢を取り出し、金魚男の頭を射抜きます。矢は見事に的中し、割れた金魚鉢からは謎の黒い液体が溢れ出てきました。体液は止まることを知らず、街全体までもが黒く染まってしまいます。液体によって次々と金魚に姿を変える人々。一体、世界はどうなってしまうのでしょうか。
- 著者
- 阿部 洋一
- 出版日
- 2016-02-12
金魚男の死によって、人類滅亡の危機が訪れます。彼を殺してはならないという禁忌は世界を守るためのものでした。人類を守るために必要なことは、金魚男を生き返らせること。そのためには同じ血を持つ、林檎を生贄に捧げなければなりません。
林檎とパートナーを組み、ともに過ごしたきた昊介。彼は人類を救うのか、はたまた林檎を助けるのか。本作の気になるクライマックスは、ぜひご自身の目でご覧になってください。
- 著者
- 阿部洋一
- 出版日
- 2012-12-15
奇抜なキャラと世界観が際立つ『血潜り林檎と金魚鉢男』。読んでみないと分からないシュールで恐ろしい感覚があります。試しにその世界を覗いてみませんか?