SNSやインターネットがテーマの小説おすすめ6選!ネット社会の怖さを描く

更新:2021.11.15

SNSやインターネットは、いまや私たちの生活に欠かせないものとなりました。しかし使い方を誤れば、とんでもない事件へと発展する恐れがあるのです。この記事では、SNSやインターネットをテーマにした小説のなかから、特におすすめのものをご紹介していきます。

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SNSと自意識を巧みに描いたおすすめ小説『何者』

演劇サークルに所属していた拓人、拓人とルームメイトでバンド活動をしている光太郎、光太郎に好意を寄せていて留学経験がある瑞月、就活をしないと宣言しながら不安を隠せない隆良、隆良の恋人で留学経験がある理香……彼らを中心に物語が展開していきます。

5人は、定期的に集まって情報共有をしていましたが、腹を割って本音を語ることはありません。SNSにも就活に関することを呟きますが、そこでも他人に見せる表向きの言葉と、自分の内面を吐露する場面を使いわけていました。

観察力が鋭い拓人は、他人を分析する能力に長けています。自分のことは棚にあげ、仲間のSNSを覗きながらさまざまなことを思うのです。その行動が後に自身を苦しめることになるとは知らずに……。

著者
朝井 リョウ
出版日
2015-06-26

2012年に刊行された朝井リョウの作品です。「直木賞」を受賞しました。朝井自身は同年に大学を卒業し、映画関連の企業に入社しています。実際に体験した就活の様子がリアルに描かれているといえるでしょう。

5人の就活に対するモチベーションはさまざま。積極的に留学やインターンシップに行く人、趣味を諦める人、就活をしないと公言しながらこっそりと動く人……それぞれの心理描写が実に巧みで、建前と自意識の両面を見れることが魅力でしょう。

SNS上ではいわば理想の自分を演じることができ、それに対するフォロワーの反応があると、あたかも自分が「何者」かになれたのではないかと勘違いをしてしまうこともあるでしょう。就活というのはこれまで目を背けてきた、自分は何者でもない、何者にもなれないという事実を突きつけられることなのかもしれません。

終盤に驚きの展開が待っているので、ラストまで気を抜かずに読んでください。

朝井リョウの作品を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

『何者』の次に読むべき朝井リョウ小説おすすめ7選!

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直木賞受賞作であり、映画化もされた『何者』。そのほかの朝井リョウの作品も読んでみたいという方におすすめの作品を7作紹介していきます。

SNSとインターネットに管理された世界とは『ザ・サークル』

友人の紹介で、とあるIT企業で働きはじめたメイ・ホランド。「ザ・サークル」というその会社は、あらゆる場所に小型の監視カメラを設置し、人々の暮らしを生中継できるシステム「シーチェンジ」を開発したことで注目を集めています。

ある日メイは、同じくサークル社に所属するタイ・ラフィートに監視カメラが設置されていない場所に連れてこられ、「シーチェンジは危険だ」という警告を受けます。

しかしメイにはその意味がわかりません。それどころか、「シーチェンジ」を通じて自身の生活を公開することで有名になり、その世界にどんどんとのめり込んでいくのです。

著者
デイヴ エガーズ
出版日
2017-10-14

2014年に刊行されたアメリカ人作家デイヴ・エガーズの作品です。映画化もされました。

架空のSNS「シーチェンジ」によって人々の生活が管理される世界。一見ディストピアのように感じられますが、これだけSNSが普及している現代では決してあり得ない話ではないでしょう。

徐々に「シーチェンジ」に取りつかれていくメイ。自分の発信によって多くの人間が動くことに快感を覚えます。しかし私生活を公開するということは、家族や友人の情報も漏洩してしまうということです。しかしメイは、SNSを介してではなく直接話したい、という知人の言葉にも耳を貸しません。

すべてを可視化することで、世界はどうなっていくのでしょうか。背筋がぞっとするようなSNSの怖さを実感できる作品です。

SNSの拡散能力を思い知る小説『白ゆき姫殺人事件』

早朝の雑木林で、「白ゆき石鹸」を発売する化粧品会社に勤める三木典子の焼死体が発見されました。遺体に複数の刺し傷があったことから、犯人は相当の恨みを抱いていたと予想されます。

殺された三木は、かなりの美人で評判だったそう。同期で内向的な性格をしていた城野美姫は、常に彼女と比較されていました。

フリーライターをしている赤星雄治は、城野が犯人だと推測。取材と憶測を混ぜた記事を週刊誌に掲載し、載せきれなかった要素をSNS「マンマロー」で発信します。その内容は、城野が「呪いの力」をもっていたり、「魔術」を使ったりしていた過去があるというもの。情報はものすごいスピードで拡散し、城野は「白ゆき姫殺人事件の魔女」として仕立てあげられていきました。

著者
湊 かなえ
出版日
2014-02-20

2012年に刊行された湊かなえの作品です。2014年には映画化もされました。

赤星の勝手な推測はあっという間に広まり、焼死体として発見された三木は悲劇の美人ヒロインに、彼女と正反対のタイプである城野は殺人犯に仕立てあげられていきます。

SNSの怖いところは、検証されていない情報があたかも事実であるかのように伝わってしまうこと。そこに悪意があろうと、なかろうと、世間が城野を追い詰めて居場所をなくしていくのです。さらに、三木の本当の性格を知っている人が城野を庇うと、その人までもが叩かれるように。

事件の容疑者がSNSの被害者になる展開は、恐ろしいという言葉がぴったり。さて、真犯人は誰なのでしょうか。

湊かなえの作品を他にも知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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SNSやインターネットの怖さを痛感!映画化もされた小説『スマホを落としただけなのに』

「男」は、たまたま乗ったタクシーでスマホを拾いました。稲葉麻美という女性から着信があり、彼女はスマホの持ち主の交際相手であることが判明。男は、待ち受け画面に写る麻美の姿に興味を抱きました。

後日、男と会ってスマホを返してもらう約束をした麻美。しかし男は現れず、スマホだけが返ってきます。

同じ頃、山中から若い女性の白骨遺体が大量に発見されます。刑事の毒島は連続殺人事件と推測、捜査を始めました。

著者
志駕 晃
出版日
2017-04-06

2017年に刊行された志駕晃の作品です。2018年に映画化されました。物語は、男、麻美、刑事の3つのパートに分かれて進行していきます。

男は、女性の黒髪ストレートという容姿に異様な執着を抱いていて、スマホの待ち受け画面で見ただけの麻美を狙います。SNS上の罠を仕掛け、だらしがない麻美の恋人を使って住所を把握……巧妙な手口で徐々に追い詰めていくのです。

たったひとつのスマホから、こんなにも個人情報が筒抜けになってしまうのかと驚くはず。パスワードやアプリ連携、顔の見えないSNSの使い方にも注意したいと思わせてくれる作品です。

自殺支援サイトをめぐる事件の真相は?『檻の中の少女』

サイバーセキュリティのコンサルタントとして働く君島のもとに、とある老夫婦が依頼をもってきました。それは、「ミトラス」という自殺支援サイトによって亡くなった息子の、死の真相を突き止めてほしいというもの。

ミトラスは自殺志願者と幇助者をマッチングして、志願者が希望通りに自殺をすることができると多額の手数料をとるというサービスです。しかしミトラスの主催者が殺され、君島に依頼をした老人も殺されて……。

著者
一田和樹
出版日
2011-04-22

2011年に刊行された一田和樹の作品です。一田自身もサイバーセキュリティ関連の仕事を経験していて、本書は彼のデビュー作になります。

自殺志願者を幇助するサイト「ミトラス」を中心に物語は展開されますが、インターネット上の情報だけでは、その人の本当の人となりはわかりません。老夫婦の息子はなぜ「ミトラス」を利用したのか、多くの自殺希望者に手をかけてる少女の存在とは……。

文章はすっきりと読みやすく、プロットも丁寧なので、非常に読みやすいでしょう。同じく君島が活躍するサイバーセキュリティ関連の続編も出ているので、気になる方はそちらも読んでみてください。

インターネット上の疑似家族を描いたおすすめ小説『RPG』

まだ建築途中の一軒家の中で、所田良介という男性の刺殺体が見つかりました。捜査が進むうちに、所田が実の家族に内緒で、インターネット上に疑似家族を作っていたことが判明します。

所田のハンドルネームは「お父さん」、そのほか「お母さん」「カズミ」「ミノル」というメンバーです。

所田の実の娘である一美は、父親が疑似家族のメンバーと直接会っていたところを見た、と証言。警視庁の武上は、マジックミラー越しに一美を立ち合わせたうえで、疑似家族だった3人の事情聴取を始めます。

著者
宮部 みゆき
出版日

2001年に刊行された宮部みゆきの作品です。2003年にはテレビドラマ化もされました。

インターネット上で疑似家族を作っていたメンバーは、みな現実の世界に不満を抱えていたり、孤独を感じていたりします。所田は、妻や娘とのすれ違いをきっかけに、インターネットの世界に逃避していました。

物語の大半が取り調べ室で進んでいくのが特徴。淡々としていながらも、宮部みゆきのストーリーテラーっぷりが光ります。ラストまで読むと、タイトルの『R.P.G.』が最大のネタバレになっていることに気付きます。さて犯人は……?

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