三島由紀夫のおすすめ作品10選!日本が誇る天才作家の本を文庫で

更新:2021.11.30

絢爛豪華につくりこまれた世界観で、昭和から現代にいたるまで数多くのファンをもつ三島由紀夫。国際的にも名をはせた彼は、一体どんな人生を送ったのでしょうか。彼の生涯と、おすすめ作品を紹介していきます。

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三島由紀夫とは。演説の後、割腹自決で幕を閉じた生涯

 

1925年に東京都四谷区で生まれた三島由紀夫。本名は平岡公威(ひらおかきみたけ)といいます。虚弱な体質でしたが、母の影響で幼くして詩や俳句に親しみ、学校の機関紙に作品を発表するなどしていました。

その文学的な才能は早くから注目を集め、三島由紀夫の筆名に改め、16歳で文芸誌に『花ざかりの森』を発表。批評家から激賞を受けます。

戦後、1947年に東京大学法学部を卒業した三島由紀夫は、大蔵省に勤務して事務官に任官されますが、この職をわずか9ヶ月で辞め、職業作家としての道を歩むことになりました。

最初の書き下ろし長編小説『仮面の告白』、『禁色』『潮騒』『金閣寺』など話題作を発表し続け、ベストセラー作家となります。またボディビルや格闘技にも専心し、その鍛え上げた肉体を写真家が撮影、松屋銀座で発表するなどしました。

さらに映画俳優として大手事務所と契約を交わし、自身の短編小説『憂国』を映画化。監督と主演を務めています。執筆以外の活動でも社会から注目される存在となっていきました。

1960年代には、英訳された作品が海外からも高い評価を受けるように。「ノーベル文学賞」候補として名を連ねることになり、作家としての地位を不動のものにしていきます。

晩年の三島由紀夫は、政治的な行動を強くみせるようになりました。自衛隊に入隊すると「楯の会」を結成。国土防衛の思想にもとづき、会員たちに指導をしていきます。

1969年には、東大全共闘が主催する討論会に出席。思想が異なる全共闘のメンバーと激論を交わしました。

1970年、三島由紀夫は楯の会の会員とともに、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地を訪れ、益田兼利総監を人質に立てこもり。マスコミも注視するなかバルコニーに立って、憲法改正、自衛隊の決起を訴えました。その後、割腹自決をしています。45歳でした。

「三島事件」と呼ばれるスキャンダラスな死は、日本社会に大きな衝撃を与えました。波乱万丈な生涯とその衝撃的な死に注目されがちな三島由紀夫ですが、多くの名作を残しているのもまた事実。国語の教科書にも多数採用されています。

ではここからは、三島由紀夫のおすすめの作品を紹介していきましょう。

 

三島由紀夫と東大全共闘の思想がわかる!映画化で話題の『美と共同体と東大闘争』

 

東大全共闘が主催した討論会に、三島由紀夫が出席したのは1969年のこと。三島が自決をする前年で、学生運動がピークだった時代です。

右と左、対立する思想に立つ両者は、一体どんな言葉を交わしたのでしょうか。討論会の記録と、当事者たちの振り返りが収録された作品です。

 

著者
["三島 由紀夫", "東大全共闘"]
出版日

 

2020年に映画「三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜」が公開されたことで、再び注目が集まった作品です。

超満員の東大教養学部で、三島由紀夫と全共闘のメンバーが議論したのは、「自我と肉体」「時間と空間」「天皇」「過去と現在と未来」「芸術」など……。日米安保条約には触れずに、お互いの主張を発していきます。全共闘側の参加者が観念的で抽象的な言葉を多用しているからこそ、三島由紀夫の頭のキレっぷりがわかるでしょう。

彼がどのような社会を実現したいと思っていたのか、賛否はともかく、その熱量だけは理解できます。日本の在り方をここまで真剣に考えていた、考えようとしていた人がいたことに、驚くかもしれません。

1960年代ニッポンの空気を体感できるドキュメンタリーな一冊、三島由紀夫の思想に触れたい方は必読です。

 

三島由紀夫の原点、禁断のマイノリティーリポート『仮面の告白』

三島由紀夫の長編2作目である『仮面の告白』は著者の自伝的小説であり、同性愛を扱った作品として文学史に特異な位置を示しています。

幼い頃見た汚穢屋、女性だと知ってがっかりしたジャンヌダルクの絵本、通りを行く兵士たちの汗の匂い……。祖母に育てられた主人公の私は、自分が性的倒錯者だと気が付きました。

聖セバスチャンの絵に性的に惹かれた私は、中学生で逞しい旧友の近江に恋をします。彼の脇の下に目を奪われる私は自分の人とは違う性的嗜好に苦悩しますが、やがて近江は去っていくのでした。

高校卒業も間もないころに旧友の妹である園子に出会った私は彼女に惹かれます。美しい彼女と普通の男女の恋愛を演じることができた私は、ついに彼女との接吻を試みますが……。

 

著者
三島 由紀夫
出版日


性的倒錯者の苦悩の描写が続きますが、それは同性愛という少数性を越えた普遍さを備えていました。誰もが通過してきたであろう、思春期独自の心の痛みが喚起されるのです。それは自分と他者の差異に深く悩み、自分を世界に投げかけてみようという試みに表現されていくのでした。

主人公は苦しみの解決を望み試行錯誤します。しかし、失敗と挫折が繰り返されるだけでした。

私はいかにして世界と和解することができるのでしょうか?

ぜひご自分の目で確かめてみてください。

三島由紀夫の代表作といえる傑作、美という脅迫『金閣寺』

三島由紀夫の代表作であり、戦後日本文学の傑作と称される『金閣寺』。作家は実際に起こった金閣寺放火事件に着想を得て、この作品を執筆しました。

貧しい寺の息子である溝口は、父親から金閣寺の美しさを教え諭されて育ちました。幼い溝口の観念のなかで、金閣寺の美はゆるぎないものになっていきます。

溝口は自らの吃音にコンプレックスを抱いており、それが原因で学友から嘲笑される日々を過ごしました。また、美しい少女、有為子にも軽蔑され、女性に対して精神的な壁を感じるようになります。

やがて溝口は知人のつてで金閣寺に入り、修行生活を始めます。しかし実際に見た金閣寺は、溝口の想い描いたような美しさはありませんでした……。

 

著者
三島 由紀夫
出版日


その後溝口は明朗な性格の青年鶴川や有為子に似た女性に出会います。また、金閣寺に対する認識も変化し、戦況が悪化するなか、いつ破壊されるかわからない悲劇的な美としてとらえ直してゆくのでした。

大学で出会った歩行障害を持つ柏木は、自分の肉体的ハンデをものともせずに、高い身分の女性を自分のものにしています。柏木に紹介された女性と関係を持とうとする溝口ですが、その時に目の前に金閣の幻影があらわれ、失敗に終わりました。

きめ細かな文体で描かれた観念劇は溝口のゆがんだ自意識を表白します。コンプレックスに凝り固まった心は美的なものにたいして異様な執着をみせました。そして、憎悪と愛情が混じりあうのです。

それまで三島作品を否定的にとらえていた批評家も『金閣寺』においてその類まれな才能を認めるに至ります。近代文学の傑作として2017年現在まで累計発行部数330万部を越えるロングセラーの小説となり、海外でも高い評価を受けたのでした。

三島由紀夫が世界を夢中にさせた潔癖の悪意『午後の曳航』

13歳の少年を主人公に措き、そのセンセーショナルなストーリーから国内外で評価される『午後の曳航』。日米英合作での映画化、またドイツではオペラ化され、作品の影響の大きさを示しています。

横浜でブティックを経営する母親のもとで育った登はある日、家の中でのぞき穴を発見します。そこからは母親の寝室が見え、登は航海士の竜二と母親が裸で部屋にいるのをのぞき見してしまいました。

海の男である竜二を、登は英雄視します。

同級生の仲間たちに竜二のことを誇らしげに吹聴する登ですが、グループのリーダーの少年は世界の虚しさを講義し、父親や教師の大罪を語ります。そして猫の解剖を仲間に命令するのでした。

やがて竜二は母親と店を経営するため俗事にかまけるようになります。竜二に海の男を期待していた登は裏切られたと失望し、そのことを少年グループのリーダーに告げるのでした……。

 

著者
三島 由紀夫
出版日
1968-07-15


90年代に起きた少年事件に絡めて予見的な小説だという批評家の意見もあります。この作品の少年たちの暴力性と残虐性は、子供だからこその潔癖さの負の側面ともいえました。

主人公・登の求める英雄像は、現実に生きる大人たちにとっては身勝手なものです。しかし、だからこそ純化されたものでもあったのです。母親との結婚のため、生活の手段を整える竜二を堕落者と切り捨てる少年たちの視点には、ある種の真実がありました。

それは大人という存在形式への絶対的な拒絶の意志。

衝撃的な結末をぜひ楽しんでいただきたい小説です。

三島文学の異色作?海に寄り添う純愛物語『潮騒』

三島作品としては珍しい毒気のない恋愛ストーリー。そのためか多くの読者に愛され、ベストセラー小説として5回もの映画化がなされています。

18歳の新治は伊勢湾の歌島で貧しい漁師をしており、ある日見慣れない少女初江に出会います。初江は島の有力者である照吉の娘でした。

2人は恋に落ちたのです。

しかし、新治に思いをよせる千代子、初江との結婚を望む安夫が2人の邪魔をするのでした。新治と初江の噂を島に広め、それを耳にした照吉は2人が会うことを禁じたのです。

新治と初江は手紙でのやりとりで関係を保ちました。

そんな折、新治と安夫は照吉の持ち船である歌島丸に同乗することになります。この航海での船員修行を照吉は婚約の条件として安夫に命じていたのでした。船は順調に船出しますが……。

 

著者
三島 由紀夫
出版日


健康的な物語はどこか郷愁を感じさせます。風光明媚な島の景色が目に浮かぶような描写に読者は引き込まれてゆくでしょう。物語の構成はどこか紋切型と感じさせますが、三島はじめ当時の文壇の潮流においてはそれが逆に新鮮でした。

三島由紀夫はギリシアの古典『ダフニスとクロエ』に物語の材を得ています。

三島ファンには異例に映るこの純朴な作品ですが、海外を含め高い人気を誇りました。5度の映画化のみならず、テレビドラマ化、アニメ化など関連作品は枚挙に暇がありません。

純愛物語の雛形として様々な影響を与え続ける名作といえます。

三島由紀夫文学の集大成。きっと、会う『春の雪』

三島由紀夫最後の長編作品である「豊穣の海」。この四部作の第一部を飾るのが『春の雪』です。

華族の息子である松枝清顕は、貴族である生活のなかで鬱屈した思いを抱えていました。上流貴族である綾倉家に、本物の華族の優雅さを身につけるために幼いころから預けられているのです。

綾倉家には一人娘の聡子がいました。彼女は清顕の2歳年上で容姿も美しく快活です。そんな聡子に清顕は複雑な感情を覚えるのです。彼女を求める反面、拒絶を抑えることができません。

聡子の自分への好意を素直に受け入れることができず、ふとした勘違いから、自分のプライドを守るために彼女に冷たい仕打ちをしてしまいます。

その後自分の本当の気持ちに気づいた清顕でしたが時すでに遅く、聡子は洞院宮治典殿下と婚約関係になっていました。皇族と婚約した聡子に禁断の恋をする清顕は、高まる熱情を抑えることができません。

聡子の女中である蓼科を脅迫して、聡子との密会を約束するのです……。

 

著者
三島 由紀夫
出版日


螺旋型を描く夢と転生を主題にした4部作のなかで、巻頭のこの作品は上流貴族の悲恋をテーマにした物語でした。平安朝の「浜松中納言物語」に着想を得たこの大作のなかでも『春の雪』は最も広く受け入れられた作品といえます。舞台化、映像化も多く、2005年にも豪華キャストにて映画化されました。

前半の清顕の自意識過剰なまでの思索と青春期特有の葛藤の描写から、後半のドラマティックな話の展開まで緊張感があふれ、読者を魅了してゆきます。禁断の恋に溺れた清顕と聡子はいったいどのような結末を迎えるのでしょうか?

三島由紀夫が最後に目指した「究極の小説」、その到達点をぜひ味わっていただきたいです。

愛は薄っぺらいものだ『鹿鳴館』

「僕が今夜暗殺しようとしているのは、僕の父なんです。」(『鹿鳴館』より引用)

明治の文明開化の権化、『鹿鳴館』は、日夜開かれるパーティを舞台に、政治とロマンスを描いたシリアスな戯曲です。愛してくれなかった実の父を殺そうとする青年・久雄。実は息子久雄を愛している父清原。昔、清原と恋に落ちて久雄を生んだ母朝子。朝子の現夫で久雄に清原を暗殺させようとする影山伯爵。4人のすれ違い、謀略を描いた本作は、恋愛の偽りと欺瞞、政治の薄っぺらい権威性が見事に描かれた、三島の傑作です!

 

著者
三島 由紀夫
出版日
1984-12-24


影山「あなた一人のためにやらせたことだ。私の羞(はづ)かしがりの気弱な愛情がやらせたことだよ」(『鹿鳴館』より引用)

愛憎劇を引き起こした張本人は、影山ですが、なぜ影山はこんなことをしたのか。それは愛のためでした。影山のセリフの「あなた」とは、朝子のことです。女は男を狂わせます。しかし、女は知っているのです。男は、実は私の内面を見ているのではない。男は私の空虚な穴とつながっているだけなのではないか、と。

影山 「隠すのだ。たぶらかすのだ。外国人たちを、世界中を。」
朝子 「世界にもこんないつはりの、恥知らずのワルツはありますまい。」
影山 「だが私は一生こいつを踊りつづけるつもりだよ。」
(『鹿鳴館』より引用)

戯曲の最後、朝子は、憎らしいはずの影山と、ワルツを踊ります。そのワルツは無力で、それでいて美しいワルツでした。男女の性愛は表層的な狂気であることに気付いている朝子は、最後にもろくも美しいワルツを踊るのです。嘘に満ち満ちた世界で踊るダンスは美しい。虚偽に満ちたこの地球は、美しい星であると、三島は言っているかのようです。

三島由紀夫作品のなかでも異色のSF小説『美しい星』

あなたは地球を美しい星だと思いますか? どうやら『美しい星』の登場人物は、地球を美しい星だと思っているようです。登場人物というと語弊があるかもしれません。なぜなら彼らは自分のことを宇宙人だと思っているのだから。

戦後、世界は新しい戦争に巻き込まれます。その冷たい戦争は人間に取り返しのつかない核戦争の「釦(ボタン)」を発明させてしまいました。この美しい星を人間から守らなければならない。そう考える宇宙人(地球人)のおはなしです。

 

著者
三島 由紀夫
出版日


ある夜、光る円盤が彼らの前にやってきて、恍惚とした体験を彼ら一家に与えます。父の重一郎は火星人で、母の伊余子は木星人。兄の一雄は水星人で、妹の暁子は金星人。彼らはそれぞれの惑星の記憶を持っており、実は今の地球人の姿は仮の姿であることに気づくのです。

重一郎は、「地球への慈愛」を持ち、美しい星を救わなければいけないと考えますが、大学の助教授である羽黒は(彼も小惑星出身なのだそうですが)、そんな人間は殺すべきだという価値観を持っています。物語のクライマックスは、地球を救おうとする重一郎と地球人を殺そうという羽黒との激論です。

羽黒「そもそも人間が人間を統治するのがまちがつてゐるんだ。草鞋蟲(わらじむし)にやらせたはうが、もう一寸ましだらう」(『美しい星』より引用)

それに対して重一郎は、次のように答えます。

重一郎「公園のベンチや混んだ電車の中で、人間がふと伏目になつて、どこともわからぬところを眺めてゐる姿を私はたびたび見た。あれは自分の中の空洞を眺めてゐる目つきだった。私はその空虚が花を咲かせるのを待ち、つひにはそれを見た」(『美しい星』より引用)

人間の中身は空虚だ。だからこそ、愛おしい。宇宙人にも人間の儚い美しさがどうやら理解されているようです。

三島由紀夫のおすすめエッセイ『不道徳教育講座』

時代の反逆児、三島由紀夫。そんな彼は数多くのエッセイを残しています。その中でもこの『不道徳教育講座』は、人間のエゴイズムをヒューモアたっぷりに、我々に教えてくれる、人生の指南書です。三島らしい、毒舌たっぷりの言辞が数多く弄される本書は、たとえば以下のようなラインナップを見せています。「知らない男とでも酒場に行くべし」「大いにウソをつくべし」「人に迷惑をかけて死ぬべし」「処女は道徳的か?」……。

若者の一過性の遠吠えだ、と一蹴することは簡単ですが、『不道徳教育講座』は単なる、息を巻いたエッセイではありません。きわめて痛快で、論理的で、社会の真実であることも。一見の価値ありです。

 

著者
三島 由紀夫
出版日
1967-11-17


「学校の先生を内心バカにしないような生徒にろくな生徒はいない。」(『不道徳教育講座』「教師を内心バカにすべし」より引用)

あなたは学生時代、先生を心のどこかでバカにしたことはありませんでしたか? そういえばあったなぁ、と思うあなたは、きっと立派な大人になっていることでしょう。しかも露骨にではなく、心の中で大人をバカにしなさい、というのが三島の主張ですが、なぜ露骨に反抗してはいけないのでしょうか。

「(石原)裕次郎君の映画に出てくる大人はたいてい弱虫だが、本当の大人は画面にあらわれない。映画会社の重役たちこそ本当の大人で、裕次郎君の後楯をして大儲けしているのは、実はハイ・ティーン諸君ではなくてこういう大人たちである」(『不道徳教育講座』「教師を内心バカにすべし」より引用)

石原裕次郎にあこがれる若者は、映画のチケット代を搾取されています。露骨に反抗しても大人の想定済みなのです。「教師を内心バカにすべし」の最後にはこんな文章があります。

「教師をいたわって、内心バカにしつつ、知識だけは十分に吸い取ってやるがよろしい。人生上の問題は、子供も大人も、全く同一単位、同一の力で、自分で解決しなければならぬと覚悟なさい。」(『不道徳教育講座』「教師を内心バカにすべし」より引用)

三島は真の教育者かもしれません。

三島由紀夫による三島由紀夫神話『私の遍歴時代』

若者の偶像であった三島は、熱烈なファンが存在し、様々な武勇伝がまことしやかに受け継がれていました。その中で、彼が38歳の時に発表した自伝は大きな反響を呼びます。三島は太宰治とどのような関係だったのか。彼が肉体美を追求するようになったのはなぜか。

大蔵省をやめて、作家として歩んだ、彼の17歳から26歳までの十年間をつづった本書。三島由紀夫を形成したものは何なのか。三島好きなら必読です!

 

著者
三島 由紀夫
出版日


大学卒業後、三島は大蔵省の官僚として社会人の一歩をスタートしますが、数年務めたのちに、職業作家になることを決意します。はじめは、これで飯が食っていけるのかと悩み、雑誌に自分の作品が掲載されることをひたすら待つ、つましい様子も描かれています。しかし本書の見所は、彼の大胆な次のような表明です。

「現在の、瞬時の、刻々の死の観念。これこそ私にとって真になまなましく、真にエロティックな唯一の観念かもしれない。」(『私の遍歴時代』より引用)

本書で三島は、太宰治のような抒情的な文章を嫌い、知識人のこざかしいセリフも嫌悪しています。かわりに彼が求めるのは、身体の確かな手触りや肉体美です。センチメンタルで、わかりやすい共感の罠を避け、知識ではなく、確固とした肉体を追い求める彼が唯一美を感じるものがエロティックな身体です。

人間は嘘つきで、欺瞞に満ちている。確かな手触りは人間の死にしかない。死の観念を書いては消し、書いては消してきた彼の言葉達が、儚くも美しいのはこのためかもしれません。

三島由紀夫は半ば偶像化された作家の1人で、激動の昭和にあってその存在感は他の追随を許さぬ破格のものでした。作品を読まずともその名前は誰もが教科書で覚えることでしょう。

彼の描く物語は起伏が激しく、タブーともいえる主題を扱った挑戦的な作風で読むものを飽きさせません。ぜひこの機会に彼の小説を手にとってみてくださいね。

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