社畜出世ストーリー『社畜!修羅コーサク』。ただの『課長 島耕作』パロディ漫画とお思いですか?実は内容はかなり独特です。通勤時間の片手間に読んでどハマりすること間違いなしの次に来るギャグ漫画です。
- 著者
- 江戸 パイン
- 出版日
- 2016-09-20
出典:『社畜!修羅コーサク』1巻
図画コーサク、おそらく30代。肩書き、社畜。武辣苦(ブラック)商事に勤務する彼は、今まさに東京からFuckoka(ファックオカ)の墓多(ハカタ)支社に飛ばされたところです。そこは一般社会の常識などない、企業の偏った理屈がまかり通る町。『社畜!修羅コーサク』はそんな街で女には目もくれずに、一流の社畜として生きる男のサクセスストーリー!『課長 島耕作』の作者、弘兼憲史も黙認の狂作です。
出典:『社畜!修羅コーサク』1巻
彼のお辞儀は「誠意はあるが仰々しさはなく爽やかでいて厳かでさっぱりしていてこってりしている」もの。それはまさに墓多ラーメンのようなパーフェクトなお辞儀スタイル!
実はファックオカ銘菓である「ぴよこ」を、東京銘菓として渡されて怒り心頭だった上司も、その社畜スキルを感じさせるお辞儀におののきます。
出典:『社畜!修羅コーサク』1巻
社畜回避。それは「長年真面目に通勤してきた社畜にのみ許される技」。東京の通勤ラッシュで鍛えられたと言われる、障害物を回避する動きのことです。コーサクのその巧みなステップはファックオカでも健在。
有明海からサガを超えてやってきた「わらすぼ」(有明海奥部の軟泥干潟のみに分布するエイリアンのような見た目の魚)が雨で行動範囲を広げ、台風にも関わらず出社するコーサクに襲いかかります。しかしその社畜回避によって彼は目をつむりながらでもわらすぼたちの攻撃をかわせるのです。攻撃を見事にかわした後の、雨が滴り落ちるのも気にしないその横顔は渋くてかっこいい。通勤ラッシュでそこまで鍛えられるかは謎ですが……。
出典:『社畜!修羅コーサク』1巻
社畜リサーチ。それは「己の矜持かなぐり捨て他者に矜持願う社畜技」。
上層部にゴリラ好きがいるということでお局ゴリラが幅をきかせている、コーサクの部署。そんなお局の明美に気に入られたコーサクは彼女に何かプレゼントを渡すことにします。
しかし実はバナナは鬼門。そこでコーサクは社畜リサーチ技術を駆使するのです。時には分身の術のように、時には某イケメン集団のチューチュートレインのように、軽いフットワークで彼女の情報を集めます。そしてコーサクが選んだプレゼントとは……。
社畜漫画を紹介した<おすすめ社畜漫画5選!最近働きすぎなあなたに読んでほしい笑えて沁みる作品>もおすすめです。ぜひご覧ください。
コーサクが所属する部署でも一番のイケメン・ファク山はさまる。桜坂で君の幸せを風にそっと歌うような美男子です。
家の風呂がバランス釜という昔ながらのもので、使い方が分からずに困ったコーサク。何やらそれについて知っていそうなファク山に聞いてみることにします。
しかし同僚たちはそれを見て「図画のヤツやっちまった!! アイツ死んだぞ!!」と言うのです。それもそのはず……。
出典:『社畜!修羅コーサク』1巻
ファク山は熱く語り出すとファックが止まらなくなるのです。かつてヤンキーだった彼のこのトークを理解できるのは不良指数・通称FQ(ファッキュー)120以上の者のみです。
そんな指数きいたことありませんが、不良界でのTOEIC的存在なのでしょう。暴走族加入の際の面接には最も合否に加味されるものだと聞いたことがあるような無いような気がしなくもありません。
しかもこのトークで何より怖いのがファク山がこの話を止められることを何よりも嫌い、「わかりません」と言うとひどい仕打ちが待っているということ。かつてその憂き目にあった社員は思い出すのも辛いという表情をします。
聞く者を混乱の渦に巻き込むファックのインフレ。しかしコーサクはファク山のこの困った特徴にも「社畜リスニング」という技を駆使して対応するのです。
出典:『社畜!修羅コーサク』1巻
昨日の晩御飯はなんでしたか?という質問のランキングで2位「うろん」、3位「土」をおさえて約半数がラーメンと答えるほど麺好きが集まる墓多。そこは原料である小麦、つまり白い粉に支配されているといっても過言ではない町です。「その依存度の高さは水不足でもうどんをゆでずにはいられないカガワ県民に匹敵する」ほど。
流通元に取引をしに行ったコーサクは、製粉所で働くコナレディたちの笑いをとることで白い粉の取引量が決まるということを知ります。営業担当者たちはサングラスが特徴的な社長リモータンとコナレディたちの好みにあった一発芸を披露しなければならないのです。
そこで重要になるのがMBA。「Master of Business Administration」(経営学修士)の略でしょうか?いいえ、これは社畜漫画、そしてコーサクが取得しているのはただのMBAではなく「社畜MBA」です。社畜MBAは「めっちゃババアがアガる」の略。それは社畜中の社畜のみが獲得できる伝説の資格です。ババアがらみのビジネスシーンで無類の強さを発揮するMBAホルダーの彼がする一発ギャグとは……。
ほとんどのことを気合いと根性で乗り切ってきたコーサクですが、どうしても抗えないものがあります。それは人間の三大欲求のひとつ、睡魔です。
デスクで、取引先で、彼を陥れようとする同僚の術中にはまってしまったコーサクはどうにか睡魔と戦います。会社で業務中に眠ってしまうなど社畜の名折れです。絶対に負けられない戦いがそこにはあります。
そこでコーサクが編み出した技は「社畜居眠りラッコスタイル」!それは「満員電車で毎日通勤し他者に身を委ねることに恐れをなさない人懐っこい社畜のみが使える技」。
コーサクは満員のエレベーターを利用して壁や周囲に程よくもたれかかりながら仮眠をとります。その姿はさながら水族館で手をつなぎながら眠るラッコ。
少しでも眠れる場所があればそのチャンスを見逃さない。それがタフな社畜となる秘訣なのです。
ある日のコーサクの行動予定表のホワイトボードに書かれてあった文字はNR。NR(ノーリターン)とは、営業先などから直接帰社するということを意味します。
営業などで働いたことがある人ならばNRという自由行動を利用してサボったこともある人もいるのではないでしょうか。そんなことはしたことない方が大半かとは思いますが、自由行動になることは確かです。
しかしそこはプロフェッショナルな社畜・コーサク。彼にとってNRは「本日帰社せず」という意味ではなく、「訪問先で命を落として戻れなくても本望である」という決意を示したもの。そう、彼はいつ命を落とすかも分からないハードボイルドな「社会」の中で生きているのです。
仕事で命を落としても本望。普通に仕事をしていてそんなことあり得るのかと思えますが、この後コーサクにそんな命の危機が訪れるのです……。
- 著者
- 江戸 パイン
- 出版日
- 2017-04-20
2巻が4月20日に発売された『社畜!修羅コーサク』。その独特な世界観は説明が不要なほど完成された設定です。通勤の合間に読めばその面白さに中毒になること必至。ヒット直前のこのギャグ漫画をぜひお手にとって読んでみてください!