初心者にも分かりやすいおすすめの仏教入門本5選

更新:2021.11.28

仏教や禅に興味があるけれど、どれを読めばいいか分からない。そんなことはないでしょうか。ここでは、仏教に関する本の中で、とっつきやすく面白い本を厳選。初心者でも楽しめる仏教の本5冊を紹介します。

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仏教とは

仏教は、紀元前5世紀頃に生きていたインドのブッダ(釈迦)を開祖とする宗教です。諸行無常、諸法無我、涅槃寂静といった教えを持ち、人々を苦悩から解放し安らぎを与えることを旨としています。日本に仏教が伝わってきたのは6世紀前半で、国家による保護のもと、平安時代になると最澄、空海によって新たな宗派が発展。鎌倉時代に、この世の終わりだ、という終末論が日本全体を覆った時、人々を不安から救うために多くの宗派が誕生し、さらなる発展を遂げました。

仏教で行う座禅から派生した禅(禅宗)も有名。禅では、座禅を中心とした修行において、内観・自省することで悟りを得ようとする事が基本的な目的です。

禅や仏教の考えは広く世間に受け入れられ、現代の日本にも多くの仏教徒が存在、その数は少なくとも4000万人と言われています。

仏教の歴史、用語を学べる池上流入門書

物事を分かりやすく解説する事で知られる池上彰による仏教の本です。仏教の歴史や、考え方の基本的な部分が分かりやすく解説されていて、初心者でもとっつきやすい点がポイント。

著者
池上彰
出版日
2012-07-19

本文中では、仏教に関する要所を丁寧に解説しているので、そうだったのか、と納得できる要素がたくさんあります。

例えば、南無阿弥陀仏の意味は何だろうという問題。この意味を読み解くと、まず、南無は、古代インドの言葉であるサンスクリット語で、心から信じます、という意味です。これを、南無阿弥陀仏と続けて唱えることで、阿弥陀様(如来、狭義の仏陀)の御心に全てをお任せいたします、という意味になります。

この世の超越的な存在である阿弥陀様の計らいに全てを任せるという考えは、大きなものの流れに身を任せるというような意味を持ち、そこには、虚無やあきらめとは異なる、肯定的な要素を見いだせる点が特徴です。

また、本書には池上彰とダライ・ラマ法王との対談も掲載されていて、法王の言葉を読む事が可能。その中の一例を挙げると、次のような言葉があります。

「普段から物質的な発展だけを追い求め、外面的な幸せを得ることだけを考え、内面的なことをあまり考えずにすごしていたとしたら、このような惨事(東日本大震災)が起きたとき、すべての望みを失ってしまいます。(中略)心を訓練していれば、逆境に立たされた場合でも、心の中では希望や勇気を失わずにいることができるのです。」
(『池上彰と考える、仏教って何ですか?』から引用)

確かに、物質的な価値の発展だけを求め、内面的な価値の発展を疎かにしていると、物質がなくなったとき、全てが失われてしまったように感じます。しかし、内面を鍛錬しつつそこに価値を見いだしていると、どのような時でも安らかな心を保つことができます。心の中に価値のある精神を持っていると、何かで物を失う事はあっても、内面的な価値は残るので、全てを失ったような状態になることはありません。

物質的な価値を否定しているわけではありません。むしろ、物質的な幸せは、人を幸せにする上で大切な要素だと思っています。しかし、それと同時に内面を鍛えることも行っていくと、物質的な外面と精神的な内面の両面の価値をもつことができ、より確かな幸せをつかむことが出来るのではないでしょうか。

仏教の知識、歴史など基礎的な所から、そうだったのかと驚くような部分までを網羅した、仏教の入門書として最適な一冊です。

読むと静かな気持ちになれる禅の入門書

仏教から派生した禅のもつ魅力を平易な言葉で解説したのが本書です。禅問答のような難しい受け答えや仏教用語があるわけではないので、禅だけでなく仏教の考え方にも軽く触れてみたいという人におすすめ。昔も現代も、人々は皆が不安や悩みを抱えて過ごしていますが、この本をはじめ、禅や仏教の中には、そのような悩みを軽減するような考えが多く示されています。

著者
枡野 俊明
出版日
2009-06-19

例えば、本書の中には次のような会話が示されています。

「「私の心はいつも不安でいっぱいなんです。どうかこの不安を取り除いてください」
「よし、ならば私がその不安とやらを取り除いてあげよう。だからまず、その不安とやらを私の目の前に出してみてくれないか。これが今抱えている不安です、と目の前に並べてくれたなら、必ず取り除いてあげる。さあ、出してごらん」」
(『禅 シンプル生活のすすめ』から引用)

これは達磨大師の言葉です。このように考えてみると、自分の悩んでいた不安がいかに些細なものであったかが分かります。形がなく実体のないものに悩んであくせくしていてもしょうがないですよね。悩みに心がとらわれている時、このように考えてみると、心の悩みもすっきりと晴れていくのではないか、と著者は言います。

つらくなった時、ストレスでむしゃくしゃしている時などは、この本を読むことをおすすめします。

幸せの在りかに気づく事ができる禅の入門書

仏教や禅の考えは、心を安らかにする事に主眼の置かれたものが多くあります。『ほっとする禅語70』では、禅の言葉を引用しつつ、日々生活していく上で大切な考え方を分かりやすく説いていきます。禅問答などのような難しい考えがない点もポイント。禅や仏教に興味があり簡単な本を読んでみたい、という人にうってつけの一冊です。

著者
石飛 博光
出版日

引用される言葉は、どれも含蓄のあるものばかりなのですが、ここでは、その中でも特にめぼしいものを例に挙げてご紹介します。

明珠在掌(みょうじゅたなごころにあり)

人は、自分が持っている幸せに気づかないものだ、という意味の言葉。人は、外に外に幸せを求めていくものですが、その幸せは案外自分の中に最初からあるものだ、という考えです。何かを獲得するために頑張るという事も大切ですが、なにをやっても満たされないような時は、日々の生活を思い返してみましょう。

三食美味しいご飯を食べられて、着るものに不自由しないし、家には冷暖房が備わっている。時々、美味しいケーキを買ってきて贅沢する事もある。一見すると当たり前の事ですが、世界には、衣食住に不自由している人が大勢います。このように考えた時、案外自分の生活は幸せなのではないだろうか、と思う事が出来たら大丈夫。きっと安らかな心になれるはずです。

仏教には、極楽は遙か遠くにあるのではなく、すぐそこにあるものという考えがあります。その事に気づけたら、心の中に言いようのない安らぎを感じる事ができるかもしれません。

簡単な言葉で禅の教えを解説しているので初心者にもおすすめです。

生を苦しみとしたブッダの教えを簡単解説

仏教の開祖であるブッダは、生きることは苦しみであると説きました。しかし、私達にしてみたら、生きることは苦しみである、と言われてもいまいち心に響きません。現代的な考えからしたら、なんて否定的な言葉だろう、と思いますよね。

しかし、私達は、どうしようもなく苦しくなり、ふさぎ込んでしまうことがあります。病気になり、周りの人が苦しみを理解してくれないような時、絶望することもあるでしょう。しかし、そのような時、生きることは苦しみであるというブッダの言葉は、その人を肯定してくれます。そのように考えると、苦しい状況にある人にこそ、ブッダの言葉は心に響くのではないでしょうか。

著者
佐々木 閑
出版日
2012-06-22

そして、ブッダの教えは、苦しみとどのように向き合っていくか、という具合に続きます。生きることは苦しみだ、という一切皆苦。全てのものは常に変化していく、という諸行無常。自分というものの実体は存在しない、という諸法無我。時間の流れを超えた平安の境地、涅槃寂静。

ブッダの教えは、このように苦しみを認める所から始まり、絶対的な安らぎを見いだす所までを説きます。このように考えてみると、ブッダの教えは、苦しんでいる人を救う事に主眼が置かれていることが分かります。

また、ブッダの教えは死生観にも表れていて、本書ではそれも紹介されています。人が死ぬ時、その人の存在はこの世から消えてなくなりますが、その人が周りの人と築いた絆は、周りの人達の中に残ります。そのようにして、人は死んだ後も誰かの中で生き続けるのだ、という考えが本書の中で示されているのです。これは、ブッダの教えの中から導かれる考え方で、多くの人に感銘と安らぎを与えるいい考えですね。

このように考えた時、ブッダの生きることは苦しみだ、という言葉も、人を安らぎに導くための端緒であることが分かります。本書では、そのような考え方を基礎にしてブッダの考えを論じる、ブッダの思想入門として最適な一冊です。

知識がなくてもOK。仏教を深く学びたい人に

仏教の般若心経の教えを現代語で解説した本です。考え方自体は少し難しい部分もありますが、これ一冊で仏教的な考え方の概要を掴むことができるので入門書に最適。仏教について詳しくは知らないけれど、どのような考えが繰り広げられているのか知りたい、または、仏教の難しい部分まで全体像を見通したい人におすすめできる一冊です。

著者
玄侑 宗久
出版日

本書の中では、般若心経について読み解いていく他にも、様々な概念の中に般若心経の教えを探っていき、老子、荘子だけでなく、ハイゼンベルクの不確定性定理、ボーア、フェヒナーなどの考えにある仏教との関連性を指摘。現代的な他分野の概念の中に仏教的な教えの片鱗を見いだしました。

また、仏教というと、日常生活からは離れた存在であると思われがちですが、この本の中では、私達と密接に関わりのある事柄についても仏教の考えを展開している点に注目。例えば、死についても次のように述べています。

「死にたいと思ったら、水の中に飛び込んでみればいい。死にたいと思っていた自分に関係なく、身体は助かろうとしてもがくでしょう。死にたいなどと思っていたのは脳細胞の一部だけで、身体全体は生きたいと思っていたことが分かるはずです。」
(『現代語訳 般若心経』から引用)

このように、死にたいと思う気持ちも、脳の中の一部が考えているだけのことであり、身体全体は生きたいと思っているのです。そのように考えた時、必死になってとらわれていた死ぬという考えの小ささ、死ぬ事の意味のなさに気づくのではないでしょうか。私という自我意識も、身体全体で考えれば頭の中の小さな一部であり、それにとらわれて思い悩む必要がない事に思い至ります。

私達大人は、物を判別していくことで自分を表し、それこそが私だと信じています。しかし、仏教では、そういった概念を戯論と呼び、このような考えを排除する方向へと考える事も。そうして肥大していった概念を縮小し霧消させていく考えが、仏教の中には存在します。

私達は現代社会に生きていますから、私心や概念を全く無くすことは出来ません。しかし、同じ私心が多くの苦悩を生み出してきたことも確かです。筆者は、私心というものをそのように捉えました。こうして考えると、時には日常生活から離れた仏教の教えに身を投じ、落ち着いた心境に至ることも必要なのではないか、と思い至ります。

考え方は少し難しいですが、仏教に関する知識が無くても読めるだけでなく、仏教の呪文の効用、空などの考え方の概要を学ぶ事もでき、仏教の入門書としてだけでなく、面白い考えを学ぶ上でも最適な一冊です。

仏教には、禅問答のような難しい考え以外にも、分かりやすく魅力的な教えがたくさんあります。豊かな現代社会に生きている私達にとって、仏教の考え方は、普段得ることの出来ない物事の新鮮な捉え方を示してくれます。

2500年の歳月をかけて磨かれてきた仏教の考え方は、どれも魅力的なものばかり。面白そうだなと思ったり、気になる本があったら、是非手に取ってみてください。

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