恋愛小説を得意とする作家。村上由佳の本を初めて読む方でも楽しんで読めるような作品をランキング形式でご紹介します。一部恋愛小説ではないものもありますが、その独特な世界にきっと引き込まれるでしょう。
村山由佳は1964年生まれの恋愛小説作家です。2003年に「星々の舟」で直木賞を受賞した他、2009年には「ダブル・ファンタジー」で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞の3つの文学賞をを受賞し話題となりました。
自分自身が望む作家であり続けるために必要だとして身体に3箇所刺青を入れるなど、作家としての強い覚悟をもった人です。
高校生2人の恋愛を描く、青春長編小説です。『BAD KIDS』 の姉妹編ですが、いきなり『海を抱く』から読んでも十分楽しめます。
- 著者
- 村山 由佳
- 出版日
- 2003-09-19
真面目な優等生の恵理と、超高校級サーファーでチャラいと噂の光秀、普段なら接点のほとんどない二人がある出来事をきっかけに出会い、それぞれの影を見つめていく。恵理と光秀、2人とも主人公の本作は、2人が交互に語り手を務め、2倍楽しめます。心の機微がよく描かれていて、スラスラと読める作品です。
18歳、微妙な年齢、若さ、幼さ、弱さ、それらをひっくるめた不安定な強さ。甘いラブストーリーじゃないけれど、ドロドロもしていなくて、読後はなんだか成長したような気がする、そんな本です。
恋人を実の兄に奪われてしまった主人公の祐介は、大学を休学し東京から逃げるように信州菅平の宿「かむなび」で住み込みで働くことになります。そして、「かむなび」に関わる人達を通して成長していく……。
- 著者
- 村山 由佳
- 出版日
- 2004-04-15
祐介の周りにいる人は、実にクセが強いです。「かむなび」のオーナーである園主とその姪で訳ありな子連れの瞳子。「かむなび」にいつも花を届けに来る、夢追う花屋の娘・美里と花綾。不登校の小学生、桜。こういった濃いメンツに囲まれて祐介は新たな一歩を踏み出します。
タイトルの「すべての雲は銀の 」は英語の諺”Every cloud has a silver lining.”からとったもので、直訳すると「すべての雲は銀の裏地を持っている」、すなわち「どんな不幸にもいい面がある」という意味があります。
失恋、という不幸を背負った祐介がどのように成長していくのか、見どころです。
恋愛小説をメインに書いている村山由佳ですが、この作品は自伝的な母と娘の家族小説となります。
主人公の夏帆は38歳でバツイチの小説家。夏帆は兄弟の中で自分にだけ厳しい母が疎ましくて仕方ありません。そんな母を裏切ることに快感を覚えるようになった夏帆は放蕩するようになります。
しかしいくら放蕩しても母からの支配から逃れられない夏帆。小説家になり母が呆け始めてしまってもそれは続くのです。
- 著者
- 村山 由佳
- 出版日
- 2014-11-20
母と娘の確執を描いたこの作品ですが、父の告白により思いがけない展開が起こります。それは一体なんなのか……。
どこの家庭にもいろいろな親子関係があるとは思いますが、この作品は相当ドロドロしています。是非この複雑な母娘の愛憎劇を味わって下さい。
小説すばる新人賞を受賞し、映画化もされたこの作品は村山由佳の大ベストセラーとなりました。
主人公の歩太は美大を志望しながらも進路に迷った結果、予備校生となってしまいました。予備校への入学手続きに行く電車で出会った女性はなんと入院中の父親の主治医になる人でした。
しかもその女性、五堂春妃は恋人である斉藤夏姫の姉なのです。歩太は夏姫という恋人がいるにも関わらず8歳年上の春妃に惹かれていきます。
- 著者
- 村山 由佳
- 出版日
- 1996-06-20
春妃の過去とそれにリンクする現在の出来事がきっかけで2人の恋ははじまるのですが……。
19歳の予備校生と27歳の精神科医という登場人物。女性視点でみると歩太が可愛くて仕方ないと思います。この作品には続編もありますので、そちらもぜひお読み下さい。
舞台はアメリカ。ボストンで父が自殺したことにより、母に精神的に虐待されるようになった真冬。母には常にお前は人を不幸にすると言われ続けます。
そんな母から逃れるために、真冬はニューヨークの大学へ通うのですがそこで出会ったのがラリー。ラリーには前妻との子供ティムがいます。実は、ティムも真冬と同じように母親から虐待を受けていたのでした。
- 著者
- 村山 由佳
- 出版日
- 2002-06-20
そして、真冬はラリーと結婚することに。しかし、そこで不幸が訪れます。結婚式の直後にラリーは強盗に射殺されてしまったのです。
ラリーの死後、真冬はティムと共にラリーの生家があるアリゾナへと向かいます。アリゾナでインディアンと接することで真冬の心は癒され再び羽ばたくことができるようになるのでした。
児童虐待や人種差別などあらゆる問題を独自の視点から描き、傷つきながらも前を向いて歩いて行く、真冬の生き様を描いています。アメリカの壮大なスケールで描かれたこの作品是非お読み下さい。
Second Seasonまである長編シリーズのこの作品。巻数は多いですが1冊がそんなに長くないためサクサク読めるのではないでしょうか。
高校3年になる春休みのこと、父の転勤で勝利はいとこ姉弟と同居することになりました。5歳年上のかれんは勝利の通う高校の美術教師として赴任することに。
一緒に暮らすうちに明らかになるかれんの秘密。その秘密を知り勝利はかれんを意識するようになります。
紆余曲折を経て2人は結ばれるのですが、いとこ同士という、人には言えない恋愛です。そのことが相まって、2人それぞれに好意を寄せる人が現れたりして……。
- 著者
- 村山 由佳
- 出版日
- 1999-06-18
序盤では一緒に住む2人ですが、物語が進むと別々に住むように。遠距離恋愛でさらにもどかしくなる2人の関係はどうなってしまうのか?
作中に出てくる喫茶店「風見鶏」。ここのマスターがいれるコーヒーは絶品であり、ここからタイトルの「おいしいコーヒーのいれ方」にリンクしています。
勝利とかれんの関係がもどかしくも応援したくなるこの作品、是非読んでみて下さい。ピュアで心がほっこりする作品です。
女性作家にも関わらず、年下の男性視点での描写が実に心を惹きつけます。純愛が眩しい恋愛小説もさることながら、ドロドロした自伝的小説もなかなか読み応えがあります。是非読んでみて下さい。