医療機器業界は、超高齢化社会を迎える今後にあたり伸び代のある業界です。医療に関わらない方にとって無関係の業界だと思われるかもしれませんが、体温計や血圧計など日々お世話になっている商品は医療機器メーカーが研究・開発したものです。 業界はとても広いため、カメラで有名な「オリンパス」や「富士フィルム」も医療機器部門を保有しています。化粧品の企業も医療機器業界に大きく関わっています。 これからますます業界の発展が望める医療機器業界へ、就職や転職を考えている方もいるでしょう。本記事では、現役の営業さんへインタビューし、実態を調査しました!医療機器業界に興味のある方、必見の内容になっています。
医療機器業界といわれても、よくわからないという方がほとんどなのではないでしょうか。
多くの場合、病院関係の何かだと完結してしまいがちですが、実は病院だけにとどまらず、私たちの日常生活に、身近にみられるものが医療機器業界の生みだした商品なのです。
ざっとあげただけでも身近なものばかりというのが分かりますよね。これらはすべて医療機器業界が日々研究開発をおこなうことで一般ユーザーに向けに販売されています。管理や使用方法をできるだけ簡素化し、さらにできるだけ安価になるように考えられています。
最近では新型コロナウイルス感染症対策で、商業施設などの入場時に検温を求められることはありますよね。その時に使用される非接触型の体温計、あれも医療機器業界が研究開発したことでできた体温計です。
数十年前までは、水銀柱を用いた体温計が家庭用として普及していました。計測するのに5分近くかかる水銀体温計に比べ、最新の体温計であれば接触せずに数秒で体温が測れる。これぞまさに医療機器業界の努力のたまものです。
もちろん家庭用商品だけではなく、いわゆる病院内にあるようなMRIやCTの装置から内視鏡のカメラ、輸液用のポンプなど、今日の医療現場にはなくてはならないものを研究・開発・販売もしています。
今日の日本の医療は、高度解析・処理をサポートしてくれる医療機器の発展があってこその安全性と安定性を保っています。これからも需要が高まることはもちろん、さらなる分野の細分化がなされ、ますます目が離せない注目の業界となるでしょう。
さて気になる年収ですが、業界全体の平均値としては「668万」とされているようです。ただし、実際にはその年齢や実務の内容、外資系や国内企業かなどにより、個々人のひらきがあるようです。また、企業務めをしているか、個人事業主としての働き方をしているかによっても違ってきます。
とくに営業職の場合、どのくらいのノルマを設定されていて、どの程度達成できているか、ノルマ達成の継続期間によって、同期内でもかなりの年収差が認められます。「我こそは営業向き!」「アグレッシブに活動でき、体力、精神力ともに自信あり!」という人は年齢が若くても高い年収を得ることができそうです。
ひとことに医療機器業界といってもその就職先は「営業」か「開発・研究」に分かれることとなります。
現在あるものを時代のニーズに合わせ改善・修正したり、あると便利な医療機器の新規開発を担う「研究・開発」部門は、主に企業内で業務をおこないます。さらに、その安全性の保障のための治験や、有害事象に対する対処・改善のために、被験者などから情報収集をおこない、また研究開発に没頭します。
治験コーディネーターや医師などと連携を取りながら業務は進行しますので、日々研究対象に向き合っていればよいわけではありません。他職種や他部門、さらには外部の人間と円滑なコミュニケーションが取れるような、ソーシャルスキルも求められます。
対して営業職は、企業が開発した機器を実際に医療現場に販売するため販促活動をおこなう部門です。対象者は病院の理事会だったり、医師や看護師が相手だったりしますので、医療機器に関する知識はもちろん、取り扱う上での技術や使用者に対しての信頼関係の構築など、求められるスキルは多岐にわたります。
実際に販売した後も、何か機械の故障やエラーがあり、現場での対応が困難な時は、いつどのような時でも連絡が来て、迅速に対応することが求められる職種となります。
医療機器業界は10年間で生産金額が増えており、今後も成長することが想定されている業界です。日本だけでなく海外でも同傾向にあり、さらに成長スピードが速いと言われています。
医療機器業界では日本企業だけでなく、海外の企業にも注目した方がよいといえるでしょう。
日本の有名企業でいえばオリンパスやニプロ、日本光電なのではないでしょうか。筆者の勤務している施設でも、毎日目にする医療機器業界の代表格ともいえる企業です。海外企業であれば、ストライカー、ジョンソンエンドジョンソンなどが有名企業です。
海外企業では、新製品を開発したベンチャー企業を大手企業が買収し、販売する流れが主流になりはじめています。自社だけで研究・開発をおこなうのではなく、研究・開発に優れた企業と協同してイノベーションを起こしていく流れが日本にもやってくるかもしれません。
今後の医療機器業界でどんな働きをしたいのかを考え、就職・転職する企業を選ぶのがおすすめです。
医療機器業界に従事する上で、必須な資格はとくにありませんが、近年はMR資格(医薬情報担当者資格)を保有していることを必須条件としているところもあります。また、ME(臨床工学技士)やMT(臨床検査技師)が転職して医療機器業界に就職することもあるようです。
医薬情報担当者の仕事や資格内容は「5分で分かる医薬情報担当者」で確認してみてくださいね。
医療機器の研究開発部門に就職するならば、最初から医療現場を熟知する必要はないかもしれませんが、研究開発職では傾向として高い学歴を求められるケースが多いようです。
医療機器業界の営業職であれば、学力そのものに焦点を当てられるケースばかりではないようです。まずは医療機器の卸業者で実績を積んで、その後医療機器メーカーに転職、もしくは引き抜かれるということもあるので、学歴に自身のない人はこちらのルートを目指すのもよいでしょう。
ただ、転職ルートを目指すのであれば、まずは医療の現場を熟知していることが求められます。ですのでまずはMRとして働いてみたり、MEやMTのように医療現場そのものに携わったうえで転職を目指すと、転職が成功するケースが多いようです。
とくにMEやMT出身者から医療機器メーカーへの転職希望者は多く、理由としては年収の伸び率がよいことがあげられます。一般職からの転職希望の方は、ライバルに医療従事者がいるということは知っておいたうえで、就職試験対策を練るとよいでしょう。
現役の看護師として働いている筆者の施設にも、当然ですが、医療機器メーカーの営業が出入りしています。そのなかでも取引の経歴が長く、少なくとも筆者の勤めている施設では圧倒的に医師や看護師の信頼を得ている営業の人に、医療機器メーカーの営業としてのお仕事内容を聞いてみました。
彼はもともと専門学校卒ということもあり、学歴には自信がなかったようなので、最初に販売店からキャリアをスタートさせました。いずれは外資系メーカーへ就職するという目標をもって営業に励み、少しづつ取引できる相手を増やしながら実績を積んでいきました。
安定した営業成績を維持し、横のつながりも広くなってきたころ、念願の外資系企業へ転職。
目標をもって営業を続け、医療機器に関する知識を日々インプットし続けた結果、ほかの営業さんと比べても明らかに商品に対する知識があり、何か不具合が生じたときにも迅速に駆けつけてくれる信頼できる営業に。
急な手術のエントリーにも何とか間に合うように商品を納入してくれる、横のつながりも広く持っています。
販売店勤務から念願の外資系の医療機器メーカーに転職したことで、年収はおよそ1000万円前後に。同年齢の人に比べてかなり高い金額をもらえているそうです。
取引が成立し、安定して納入することができればインセンティブがつき、お給料にも反映されていきます。お給料の面からみても、とってもやりがいのある仕事ですよね。
医療機器メーカーの営業は、プライベートな時間が確保しにくいのが難点だそうです。不具合があった時に、緊急度が高くない商品であれば翌日に対応することも可能ですが、その不具合が患者さんの命に直結するような不具合であれば、夜中でもいつでも迅速に駆けつけなくてはなりません。
また、基本的に営業をおこなう時間は医師の空いているスポット時間を狙っていくので、自分のプライベートな時間を犠牲にすることも多々あるようです。出勤や帰宅の時間も読めないことから、生活リズムがなかなか安定しないことも。
学歴そのものあるに越したことはないそうですが、それよりも勉強し続けるモチベーションの維持や日々の仕事をおこなう体力、精神力も欠かせません。また、どのような職種の方とも円滑なコミュニケーションができるよう、ソーシャルスキルも求められます。
今回はいろいろと細かくお話を伺うことができましたが、学力以上に必要とされるスキルは多く、とても大変な仕事であることが分かりました。しかし、それ以上に多くのやりがいも感じられる仕事でもあるようです。
いろんな職種の人に関わることができ、自分の好きな商品の取引が成立し安定納入されれば、お給料にも反映される。「大変だけどたのしいですよ!」と笑顔で語られたことが、何よりもその仕事の素晴らしさを物語っていると感じました。
- 著者
- ["八幡 勝也", "木村 憲洋"]
- 出版日
こちらの書籍は、医療機器の代表的な機器、MRIやCT、レントゲン撮影装置、血圧計など今日の医療現場における、最低限の医療機器がどのような仕組みで検査や解析を行っているかが詳しく記載されている書籍です。
医療機器業界に携わるつもりなら、最低限押さえておきたい内容が網羅されています。少なくとも医療機器を開発、販売する立場であるならば、その対象となる医師や看護師に対し説明をおこなう立場にもなり得るので、基本的検査機器の仕組みは熟知しておいた方がよいでしょう。
また、イラスト付きでわかりやすい内容ともなっているので、自身が医療機器の販売などをする際に、プレゼンするための参考書籍としても活躍しそうです。
- 著者
- 宮田成章
- 出版日
こちらの書籍は、美容クリニックで取り扱われる医療機器の基礎基本が、わかりやすく載っています。現役で美容医療を提供している医師や看護師、医療事務の人たちも参考書として購入している書籍で、自分がこれから美容医療を受けようと思っている方にもおすすめできる内容となっています。
美容医療に関する書籍は、正直なところあまり多くはないでしょう。そしてそのほとんどが美容外科医向けの解剖学などを加味した少々難しい内容となっています。
決して有資格者じゃなくては読めないような内容ではないのが、本書のおすすめポイントのひとつです。美容皮膚科やクリニックでは、営業ノルマがある場所もあるので、販売員がごり押ししてくるところもあるかもしれませんが、自分自身が正しい知識を持っていれば、不必要な治療を受けずに済むかもしれません。
美容医療機器業界に興味の興味のある人はもちろん、これから美容医療を受けてみようかなという方にもおすすめできる1冊です。
- 著者
- 溝上幸伸
- 出版日
こちらの書籍は、これからの医療機器業界に対して、最先端の業界事情についてわかりやすくまとめられています。著者は医療従事者ではないので、その中立な視点から展開する内容もわかりやすく、医療従事者ではない人でも読みやすい内容となっています。
一般的に医療機器業界は、その大変さから年収が高い傾向があります。一見すると離職率が高そうに見えますが、実績を積んだことによる引き抜きや、よりよい企業への転職もよくある業界です。実際にこれから医療機器業界への転職を考えている人には、業界の事情を把握をするために、参考になる書籍となっています。
また、転職のみならず、医療機器業界への投資を考えていたり、これから取引相手に医療機器業界を視野に入れている人なども、業界事情を知るうえでおすすめの1冊となっています。
少子高齢化の現代社会において、医療機器業界は電子機器業界でも唯一、伸びしろがある業界といってもよいかもしれません。人間の健康維持や増進につながる業界なので、とても大変で責任感が求められる業界ではありますが、その分やりがいもあり、年収も比較的高い傾向があります。
今後も長きにわたって安定感のある医療機器業界に興味のある人は、ぜひ紹介した書籍も手に取ってみてくださいね。