黒沢清のおすすめ監督作18選!原作の魅力を知ればクロサワ作品がもっと面白い!

更新:2021.11.15

世界的注目を集める映画監督・黒沢清。2020年9月ベネチア国際映画祭での銀獅子賞(監督賞)受賞によって、ますます今後の活躍が期待される日本人映画監督です。この記事では、黒沢清の魅力や特徴を探りながら、監督を手掛けたおすすめの映画やテレビドラマ作品について原作とともに紹介します。

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黒沢清は銀獅子賞を獲得した映画監督!代表作『回路』ほか経歴・プロフィールを紹介

2020年9月、蒼井優主演の『スパイの妻』がベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞しました。日本人監督としては北野武監督以来、17年ぶりの受賞となった黒沢清(くろさわきよし)。どのような映画監督なのか、まずはプロフィールから紹介していきます。

黒沢清は、1955年兵庫県神戸市生まれ。立教大学在学中から自主製作で8ミリ映画を撮り始めます。映画評論家として知られる蓮實重彦の授業を受講。その影響で映画製作の道へ進みます。長谷川和彦、相米慎二らの助監督を経てディレクターズ・カンパニーに参加。その後、1983年『神田川淫乱戦争』で商業映画デビューを果たしました。

1997年サスペンスサイコスリラー作品の『CURE』が国際的に認められ、黒沢清という名が知れ渡ることに。1999年の『カリスマ』は初めてカンヌ映画祭で上映され、同年フランスでも劇場公開されました。

2001年の『回路』、2008年の『トウキョウソナタ』、2015年の『岸辺の旅』ではいずれもカンヌ国際映画祭などで高く評価されています。2018年にはSF要素も魅力の『散歩する侵略者』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。

黒沢監督は映画だけでなく「学校の怪談」シリーズなどテレビドラマの演出も務めています。そのひとつ『花子さん』はレギュラー放送やスペシャルドラマでも放送された人気作品です。そのほか、テレビドラマとして放送された『降霊』や『贖罪』は後に劇場公開されました。

また、人材育成にも力を入れており、1997年より映画美学校講師、2005年より東京藝術大学大学院映像研究科教授を務めるなど幅広く活躍している映画監督です。

「こんなの観たことない!」黒沢清作品のヒットの仕掛けはモヤモヤした感情の描写

黒沢清は、映画監督、映画評論家、教育者などさまざまな顔を持っています。大学在学中に、實重彦の授業を受け、「映画は一生かけて付き合うに値する」と叩き込まれ映画製作の道へ。

そんな黒沢清といえば、ホラー監督のイメージが強い一方、ただ怖いだけの作品を作っているわけではありません。そこで、黒沢清作品の魅力やなぜ心を掴んで止まないのか探っていきます。

黒沢監督が扱う作品の多くはディスコミュニケーションの物語です。人間とそうでないもの(幽霊や宇宙人など)が理解し得ない状況下で派生する「何か」を「独特の世界観」で描いていきます。独自の視点を持ち、廃墟やダークファンタジー的な美術セットを効果的に使い、高い演技力を持った俳優陣がその世界観をより鮮明に表現していくのです。

話の展開においても、どこかモヤモヤした不可解な感情がしだいに芽生え、その先に何があるのかどうしても目が離せなくなる。これが黒沢映画の魅力です。この不思議な感覚こそが病みつきになる理由でしょう。そこには、観客が「こんなのこれまで観たことない!」と感じる作品を作りたい。そんな監督の想いが込められています。

最新作『スパイの妻』がベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した際、「もう一歩チャレンジするための受賞と思っています」と語った黒沢清監督。これからもますます魅力的で独特な「クロサワールド」を世界中の観客に提供してくれることでしょう。

黒沢清監督をよく知るためにはこちらの本もおすすめです。

著者
「文學界」編集部
出版日

【ライターおすすめ】黒沢清を知りたい人、必見!『トウキョウソナタ』(2008年)

黒沢清の作風を理解するためにおすすめの作品が『トウキョウソナタ』です。ホラーの第一人者として知られる黒沢清が、家族をテーマに崩壊と希望を描いた人間ドラマである点が魅力です。

『トウキョウソナタ』は、日本・オランダ・香港合作の黒沢清監督オリジナル作品。脚本は、黒沢監督とオーストラリアの映画監督・マックス・マニックス、東京藝術大学の教え子であった田中幸子の共同執筆となっています。

海外映画祭での評価も高い黒沢監督。本作でカンヌ映画祭にて「ある視点部門」審査員賞を受賞しました。小説版も発表されており、脚本にも参加した田中幸子が担当しています。

東京にある2階建てに暮らす佐々木一家はごく普通の家族でした。しかしながら、次男は家族に内緒でピアノを習い、父は会社からリストラされ、長男はアメリカで志願兵になろうとするなど徐々に家庭が崩壊。そんなある日、佐々木家に異変が起こるのでした。

映画では、主演の夫婦役を香川照之と小泉今日子が演じています。津田寛治、井川遥、役所広司などベテラン陣が脇を固めました。

夕食は家族みんなで食べるという佐々木家。とんでもないことが起こっても、最後には普通に食卓を囲みそれぞれが詮索しない。そんな様子が切なくもあり同時に家族の強さにも感じます。次男が演奏するドビュッシーの『月の光』が心に響く珠玉の作品です。

著者
田中 幸子
出版日

ここから先は、黒沢清が監督した作品の中から原作や小説版が出版されている作品をピックアップしてその魅力を紹介していきます。

【映画原作】黒沢清を世界に知らしめた名作!『CURE キュア』(1997年)

『CURE』は黒沢清監督のオリジナル作品です。その作品力の高さから一躍注目されました。主演の役所広司は東京国際映画祭にて主演男優賞を受賞。またこの映画祭で、フランスの映画批評家ジャン=ミシェル・フロドンが本作を鑑賞したのをきっかけに、黒沢清という新進気鋭の映画監督の名が欧州でも広く知られるようになりました。

連続猟奇殺人事件が発生し、被害者はいずれも喉元から胸にかけて鋭利な刃物で×の形に切り裂かれていました。それぞれの犯人は捕まるも何の関係性もなく、捜査は行き詰ります。その事件を追う警視庁の高部刑事は、やがて記憶障害の男・間宮まで辿り着くのでした。

小説版の『CURE キュア』も黒沢監督の自身の手で執筆されています。小説版では、映画とはまた異なる世界観や表現で楽しむことができます。人物の関係性や、映画にも一瞬だけ登場する『邪教』という本に記載されている伯楽陶二郎のことなど掘り下げて書かれています。小説版も読むことで、タイトルの持つ「CURE=癒し」の意味がより把握できるのではないでしょうか。

著者
黒沢 清
出版日

【映画原作】麻生久美子、加藤晴彦、小雪が送る驚愕のネットスリラー!『回路』(2001年)

黒沢清監督が描くインターネットの世界で広がる恐怖の物語が『回路』です。2001年に加藤晴彦と麻生久美子を主演に迎え実写映画化されました。その2年後、黒沢監督自ら執筆した同名の小説版が発表されています。

観葉植物販売の会社に勤める一人暮らしの平凡なOLミチ。同僚の田口が自殺すると、同僚や親友、両親までも次々と姿を消していきます。同じ頃、大学生の亮介の身の回りでも、パソコンが奇妙なサイトにアクセスしてしまうというおかしな現象が起こるのでした。赤いテープで縁取られた開かずの間に、パソコンの向こうからアクセスしてくる妖しい影とは……。新感覚スリラーの決定版です。

映画版でなかなか説明のつかない部分なども小説版で明らかになっていきます。特に映画で描かれていない死後の世界は秀逸で、本当の恐怖とはどこまでも続く孤独だということが描かれていきます。映画と小説をコンプリートして黒沢ワールドに浸ってください。

著者
黒沢 清
出版日

【映画原作】役所広司が魅せる、クロサワホラー!『叫』(2007年)

『叫』は黒沢清監督のオリジナル作品。ベネチア国際映画でも上映され高い評価を受けました。黒沢作品には欠かせない役所広司が主演を務めています。

東京湾岸の埋め立て地で、3件の殺人事件が起こりました。いずれも加害者が被害者の顔を水たまりに押しつけ、海水で窒息死させています。手口は共通するものの、それぞれに何の接点も見つけられませんでした。しかし、事件を担当する刑事・吉岡だけは、なぜか全てのことを知っているような感覚に見舞われるのですが……。

吉岡の前に現れる赤い服の女性とは。耳を劈くような叫とともに訪れる恐怖が心に残ります。これまでのクロサワホラーとも異なる新しい作品です。赤い服の女性を葉月里緒奈が演じたことも話題となりました。

この作品の小説版を担当したのが『世界の涯ての弓』の林巧。映画では赤い服の女性のビジュアルが強烈な印象を残していますが、それをうまく物語に落とし込みました。衝撃のラストを小説版でも味わってください。

著者
林 巧
出版日

【映画原作】香川照之と小泉今日子が熱演!家族の再生物語『トウキョウソナタ』(2008年)

日本、オランダ、香港の合作で製作された『トウキョウソナタ』は黒沢清監督のオリジナル作品です。黒沢監督に加え、映画監督のマックス・マニックスと田中幸子が共同脚本を務めました。

東京に住むごくごく普通の家族、佐々木家。小学6年生の次男はこっそりピアノを習い、父親はリストラされ、長男はアメリカ軍に入隊しようとしています。それぞれが秘密を持った家族は徐々に崩壊の道へ。それでも、やがて全てを乗り越え再生へと向かう姿を描いた物語です。佐々木家夫妻を香川照之と小泉今日子が演じ、そろって黒沢作品にはなくてはならない存在となりました。

小説版も発表され、田中幸子が担当。田中は東京藝術大学の黒沢清の教え子であり、城戸賞も受賞した実力派です。映画では描き切れなかった細かいディテールを入れながら、リアルであたたかい新たな作品を生み出しました。

カンヌ国際映画祭では、ある視点部門審査員賞を受賞。そのほか海外映画祭にて高い評価を受けた傑作です。

著者
田中 幸子
出版日

【映画原作】佐藤健が恋人・綾瀬はるかを仮想空間で救う!『完全なる首長竜の日』(2013年)

作家だけでなく鍼灸師としての顔も持つ乾緑郎の小説『完全なる首長竜の日』。2010年に「このミステリーがすごい!」にて大賞を受賞しました。

少女漫画家の淳美の弟・浩市は自殺未遂を起こし植物状態となってしまいました。その原因を探るべく「SCインターフェース」という機器を通じて、意識不明の弟と対話を続けている淳美。そんな中、謎の女性が浩市にアクセスしたことで不可解なことが起こり始めるのでした。

作品が発表された当初も謎や仕掛けの面白さが絶賛。2013年には『リアル~完全なる首長竜の日~』というタイトルで黒沢清監督により実写映画化されました。

姉弟という設定から恋人に変更。自殺未遂をした恋人・淳美を救おうとする浩市の物語になっています。その恋人同士を佐藤健綾瀬はるかが演じました。また、結末も小説と異なるなど、映画化するための大胆な改編が行われ感動作に仕上げています。

リアルと仮想の間で揺れる不思議な読了感が味わえる原作とリアルをはっきり描いていく映画。どちらがお好みかぜひ比べてみてください。

 


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著者
乾 緑郎
出版日
2012-01-13

【映画原作】深津絵里と浅野忠信が描く究極の夫婦の愛!『岸辺の旅』(2015年)

『夏の庭 The Friends』で知られる湯本香樹実の小説が『岸辺の旅』です。湯本香樹実は、音楽大学出身の異色の作家であり、その抒情的で誌的な文体で不思議な世界を表現しています。そんな湯本の『岸辺の旅』は2015年に黒沢清監督により同名で実写映画化されました。主演を深津絵里と浅野忠信が務めています。

ある日、夫の優介が失踪します。残された妻の瑞希は3年間、彼の捜索をしつつピアノを教えながら過ごしていました。そんな折、突然帰ってきた優介は、自分はすでに死んでいると告げます。これまで優介がお世話になった人たちのもとを訪ねる旅に、夫婦そろって出かけることになるのですが……。

湯本の小説は決してホラーではなく「夫婦の愛」を軸に描かれています。静ひつな大人の童話でも読んでいるような作品ですが、黒沢映画でもその世界観を損なうことなく表現されています。フルオーケストラを使った音楽など黒沢監督初の試みが非常に効果的です。意外性がありながら、湯本香樹実×黒沢清は非常に面白い組み合わせでした。

著者
湯本 香樹実
出版日
2012-08-03

【映画原作】西島秀俊&竹内結子の好演!香川照之の怪演!『クリーピー』(2016年)

日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作『クリーピー』は前川裕の小説です。

犯罪心理学を教える大学教授の高倉は、妻の康子と戸建てに2人暮らしをしていました。ある日、高校の同級生で刑事の野上から一家失踪事件の分析を依頼されます。その後、高倉の周囲では不審な出来事が続けて起こることに。隣人に疑いを向ける高倉は徐々に本当の恐怖を知ることになるのでした。

この前川の小説をオリジナルの展開により『クリーピー 偽りの隣人』というタイトルで実写映画化したのが黒沢清監督です。主演に西島秀俊を迎え、不気味な隣人を香川照之が務めています。2人とも黒沢作品の常連。竹内結子や東出昌大など豪華キャストも集結しました。

高倉を元・刑事、野上を刑事時代の後輩などと設定を変え、ストーリーも大幅に変更。しかしながら、原作の読了感と映画を見終わった後の後味の悪さは変わりません。前川作品と黒沢作品の持つ恐怖が似ているからでしょうか。日常の中にあるかもしれない恐怖に思わずゾクっとさせられる作品です。

 


 

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著者
前川 裕
出版日

【映画原作】松田龍平と長澤まさみの宇宙規模の愛は黒沢清の真骨頂!『散歩する侵略者』(2017年)

2005年に劇団イキウメが上演した舞台『散歩する侵略者』。2年後、劇団の主宰であり劇作家・演出家も務める前川知大の手により小説化されました。幾度となく舞台での再演を繰り返す人気作品を同名で実写映画化したのが黒沢清監督です。主演に松田龍平、長澤まさみ、長谷川博己を迎えました。

3日間行方不明になっていた夫・真治が帰ってくるも別の人格になっていました。妻の鳴海は戸惑いを隠せずイライラが募るばかり。そんな折、真治から「俺さ、本当は宇宙人なんだ。地球を侵略に来たんだ」と告白される鳴海。真治以外にも、ジャーナリストの桜井をガイドに人間の概念を盗んでいく宇宙人たちの存在がありました。果たして地球の運命は……。

前川はオリジナルのSFやオカルト、ホラーを得意とする作家です。本作でもコメディ要素にラブロマンスなども加えエンターテインメント作品に仕上げています。そこに黒沢監督が加わり、独自の世界観を掛け合わせ唯一無二の映画となりました。

 


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著者
前川知大
出版日

【映画原作】夏帆と染谷将太が演じるもうひとつの侵略の物語『散歩する侵略者』(2017年)

『散歩する侵略者』は劇団イキウメの代表作。2007年には劇団の主宰で劇作家・演出家の前川知大自身の手により小説化されました。2017年には、黒沢清監督による同名実写映画が公開されています。

同年、WOWOWにて『予兆 散歩する侵略者』というタイトルでスピンオフドラマが放送され、それらをまとめて劇場公開したものが本作になります。映画『散歩する侵略者』とはまた別の物語で、同じ原作から、概念を奪う「侵略者」はほかにもいるという筋立てを新たに作り上げました。

夏帆、染谷将太、東出昌大ら豪華キャストが集結しています。東出昌大は前作『散歩する侵略者』にも出演していますが、本作では侵略者役を演じています。

小説『散歩する侵略者』は侵略者に体を乗っ取られた夫と妻の夫婦の愛を描いていました。本作でも夫婦の物語を主軸にしつつ、概念を奪われることのない妻とガイドの夫という新たなストーリーを展開していきます。よりホラーテイストが色濃くなっており、すぐ近くに脅威は存在しているのかもしれないと思わず考えてしまう作品です。

著者
前川知大
出版日

【映画原作】蒼井優と高橋一生が時代に翻弄される夫婦役を熱演!『スパイの妻』(2020年)

『スパイの妻』は、2020年6月にNHK BS8Kで放送された黒沢清監督のオリジナルドラマです。黒沢監督初の戦争を扱った作品。1940年の満州を舞台に、恐ろしい国家機密を偶然知ってしまった夫とその妻を中心に、時代に翻弄されていくさまを描いています。この夫婦を蒼井優と高橋一生が演じています。

この作品はベネチア国際映画祭コンペティション部門で最優秀監督賞にあたる銀獅子賞を受賞したばかり。同年10月には装いも新たに劇場公開されることになりました。

その小説版を『名も無き世界のエンドロール』で小説すばる新人賞を受賞しデビューした行成薫が担当しています。本作は特に史実に基づいている部分もあり、差別的な用語であることを踏まえ、あえて当時使われていた言葉をそのまま使用している箇所もあります。

また、小説版オリジナルとして、2020年設定の現代パートを追加。登場人物の個性を強め物語を発展させています。劇場版と比べてどんな風に肉付けされているのか確認するのも楽しそうですね。

著者
行成 薫
出版日

続いて、テレビドラマ作品の原作も紹介します。

【テレビドラマ原作】映像化不可能といわれた椎名誠の処女小説を黒沢清が実写化!『もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵』(1990年)

『もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵』は椎名誠の処女小説です。表題作の小説から始まり、出版業界や各雑誌における作者の辛口コラムを展開しています。椎名誠節の過激な表現で面白おかしく語る物語です。

小説には実在の人物が登場しますが、あくまでフィクションとして描かれていきます。「本の雑誌」の編集長の椎名誠は同誌発行人のめぐろ・こうじとのケンカがきっかで、自身の叔父が所有する味噌蔵に閉じ込めて復讐します。活字中毒のめぐろ・こうじが一切の活字のない状況下で精神をきたしていく様子を描きました。ある種のサイコホラーのような物語です。

この作品を原作とし「DRAMADAS」という深夜枠で、黒沢清が同名の連続ドラマの監督を務めました。カルト的な人気を誇る黒沢清監督の出世作ともいうべきテレビドラマ。主人公を今は亡き大杉漣が演じています。いろいろな意味で貴重な作品ですね。

著者
椎名 誠
出版日

【テレビドラマ原作】椎名誠のシュールコメディの決定版!『よろこびの渦巻』(1992年)

『よろこびの渦巻』は椎名誠原作の小説です。『蚊』という短編集に収録されています。この短編集には表題作の『蚊』を含め全部で9編の作品が収められています。

『よろこびの渦巻き』は占い一家に焦点をあて、喜びと不幸の真理を描く物語です。どの短編も椎名誠の持つ不思議な感性と世界観を持ちながら、面白おかしい文体ですいすいと読み進めてしまいます。

この小説を原作とし、関西テレビ制作の「DRAMADAS」という深夜枠で同名のテレビドラマを監督したのが黒沢清。小説同様に占いを扱いながら、人の幸せとは何かとシュールなコメディとして描いています。

主題歌「よろこびの渦巻」は、作詞を黒沢清監督、作曲を青山真治監督が担当しました。立教大学時代の朋友が出演やナレーションで活躍しています。

著者
椎名 誠
出版日

【テレビドラマ原作】黒沢清が描く思春期男子のおバカストーリー!『青春チンポジュウム』(1992年)

『青春チンポジュウム』は作・小池一夫、画・神江里見の青春漫画です。

中学3年生の悪ガキ3人組の昭如、森夫、重信は、年頃ということもあり女性の事で頭がいっぱいです。そんなある日、昭如は見ず知らずの女性に一目惚れします。若いエネルギーを持て余し、一風変わった告白を画策する昭如など、おバカな少年たちのギャグ漫画です。

この漫画を原作とし『胸さわぎの15才』というタイトルでテレビドラマ化されました。第11話と第12話の演出を担当したのが黒沢清監督。

漫画では見ず知らずの女性に恋する主人公でしたが、中型バイクに颯爽と乗り込む女教師に胸キュンする思春期ならではの男の子たちを描いています。いかにもモテなさそうな男の子たちの健気さが笑いを誘います。

著者
["小池 一夫", "神江 里見"]
出版日

【テレビドラマ原作】窪之内英策の異星人ファンタジーを黒沢清が実写化!『ワタナベ』

漫画だけでなく、イラストや広告、キャラクターデザインも手掛ける窪之内英策の漫画『ワタナベ』。1992年「ビッグコミックスピリッツ」にて連載していました。

遥か2万光年彼方の「カナーイ星」からやってきた異星人ワタナベ。ひょんなことから、平凡な中流家庭である時野家にホームステイすることになります。彼は卒論のため地球にやってきたのでした。ワタナベから見た地球とは。人間愛、家族愛を描く究極のファンタジー・コメディ漫画です。

この漫画を原作に同名テレビドラマが作られました。黒沢清監督が演出として参加しています。関西テレビで製作されたこともあり、吉本興業の芸人がレギュラー出演。若かりし頃の坂田利夫や宮川大輔、星田英利が作品を盛り上げています。

著者
窪之内英策
出版日

【テレビドラマ原作】黒沢清×網野成保コンビが送る戦慄のホラー作品『木霊』(1998年)

ホラー漫画家・網野成保原作の『木霊』。単行本『巨人真伝トキ』に同時収録されています。「木霊」とは樹木の精霊のこと。作品の中ではこう説明があります。「中世の人々は、「鬼か神か狐か木霊か」とその存在を恐れた」と。

嵐の放課後。ある学校に何者かが侵入します。そこには、主人公・和美の超能力の検証実験をしていた男女5人の生徒たちがいました。そんな中、学校に残っていた教ウも師や生徒たちが1人ずつ殺害されていきます。彼らを襲ったのがなんと木霊だったのです。ストーリーもさることながら、ビジュアルも面でもホラーファンにはたまらないのでは。

この漫画を原作にテレビドラマが放送されました。「学校の怪談G」というスペシャルドラマの中の同名ショートドラマです。監督は黒沢清が務めました。

原作者の網野成保は黒沢清監督のファンとのこと。自身のホラー漫画の参考にもされているようです。テレビドラマでは、黒沢監督の独特の世界観で、揺れるカーテン、床のシミ、黒沢作品でよく描かれる闇など映像的なアプローチがふんだんに盛り込まれています。

著者
網野 成保
出版日

【テレビドラマ原作】役所広司と風吹ジュンが演じる衝撃のラストは必見!『雨の午後の降霊術』(1999年)

マーク・マクシェーンのミステリー小説『雨の午後の降霊術』。

霊媒師のマイラは、自身の名声を得るため、夫のビルと共謀し自作自演の誘拐を企てます。実業家であるクレイトンの娘を誘拐し、その居場所を霊視するというもの。ビルは身代金を要求し、マイラはクレイトンに居場所を突き止めたと知らせるのでした。

最後の最後で衝撃的なラストが待ち受けています。ぜひ実際に確認してみてください。1964年にはイギリスで同名映画も公開されました。

日本では1999年、黒沢清監督の手により『降霊』というタイトルでテレビドラマ化され、役所広司と風吹ジュンが夫婦役を演じています。ドラマでは、録音技師の夫と霊が見え、憑依させることができる妻がある事件に巻き込まれていくという物語になっています。

原作をモチーフに黒沢監督自身が脚色を加えました。放送後、このテレビドラマも劇場公開されています。黒沢監督ファンの間では名高い作品です。

著者
["マーク マクシェーン", "McShane,Mark", "和彦, 北沢"]
出版日

【テレビドラマ原作】小泉今日子×黒沢清が描く宮沢賢治の世界『風の又三郎』(2003年)

宮沢賢治の傑作短編『風の又三郎』は、賢治の死の翌年に発表され高い評価を得た作品のひとつです。

ある風に強い日に、谷川の小学校にやってきた不思議な転校生の高田三郎。そのうち風の又三郎と呼ばれるようになります。親しみを持ちつつもどこか怖いような存在。そんな又三郎と子どもたちの交流を描いた作品です。宮沢賢治の魅力が存分に堪能できます。

NHKでは2000年から2003年にかけて『朗読紀行 にっぽんの名作』というシリーズ番組を放送していました。日本の名作を有名俳優が朗読し、各映画監督が演出するというもの。『風の又三郎』の回は、小泉今日子が朗読を担当し、黒沢清監督が演出をしました。

曇り空、廃屋や閉鎖された遊園地など黒沢監督特有の世界観の中、小泉今日子が朗読。作品の持つどこか不思議でちょっと恐ろしい感覚が黒沢演出と見事に融合した番組作りになっています。番組を見ると宮沢賢治の原作がさらに魅力的に感じられます。

著者
賢治, 宮沢
出版日

【テレビドラマ原作】黒沢清演出でさらに増す不気味さ!湊かなえの傑作『贖罪』(2012年)

いくつもの作品が映像化され続ける湊かなえ。そのミステリー小説『贖罪』を黒沢清監督が連続ドラマ化し話題となりました。主演は『トウキョウソナタ』でもタッグを組んだ小泉今日子です。

ある静かな田舎町でひとりの美少女が殺害されました。その直前まで彼女と一緒にいた4人の女の子たちは犯人の顔を見たにも関わらず、そろって顔を思い出せずに事件は迷宮入りに。それから15年後、娘を殺された母の執念は終わることがありませんでした。湊かなえデビュー作から変わらぬ驚愕の面白さが本作にも蔓延しています。

湊の世界観と黒沢監督の不気味さが相まって、質の高い恐怖の漂うドラマとなっています。加えて、小泉今日子や香川照之といったベテラン俳優陣がさらに作品を盛り立てることに。これ以上ない組み合わせの作品となっています。

ドラマ放送後は劇場公開もされました。黒沢作品鑑賞後は原作がまた読みたくなるそんな相互作用のある秀作です。

著者
湊 かなえ
出版日

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【監督・脚本・演出作品一覧】黒沢清は日本で最も旬な世界的映画監督

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ホラー映画の監督のイメージが強い黒沢清監督。ただ恐怖を描いているわけではないことが今回紹介してきた作品からも窺えます。そして、映画やテレビドラマがいかに総合芸術であるかということを教えられます。今や世界の「クロサワ」は黒沢清といっても過言ではない程、その実力が認められています。今後の活躍もますます期待されますね。

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