第5回となる「フリースタイル書評バトル-芸人編-」は初のピン芸人対決!「ペンはピンよりも強し!芸人」としてバイク川崎バイク、紺野ぶるま、ヒコロヒー、寺田寛明の4名が戦います。 普段から1人でネタを作り上げている彼らは、文章だけでも魅力満載!四者四様のおすすめ本にご注目です。
これまでに三四郎の相田周二さんや錦鯉の長谷川まさのりさんらが優勝し、連載権を獲得した「フリースタイル書評バトル」。
今回エントリーするのは、「書く」ことに定評のあるこちらの4名のピン芸人です!
あなたの1票で、連載の権利を獲得する芸人が決まります。
ただし、誰がどの本を紹介しているのかは伏せたまま記事を公開します。文章だけで判断して投票してください!
Twitterの投票フォームには、こちらから飛ぶことができます。(投票は締め切りました)
投票終了後にこの企画を知ったという方は、「自分だったらこの作品に投票した」などと想像しながら読んでみてください。
結果発表は記事の1番最後へ!
それでは早速、バトルの開始です!
初めて読んだ益田ミリさんの本、それが、
タイトル『どうしても嫌いな人』。
当時僕には「どうしても嫌いな人」はいなかったが、どうしても解決しないことがあった。それは「どうしても売れないこと」だった。
- 著者
- 益田 ミリ
- 出版日
- 2013-04-10
自分の目の前にある大きな岩。
他人から見たら砂の一粒くらい小さなものな気がして、誰にも話せない。今日も不甲斐ない、岩はまったく動く気配がなかった。むしろ毎日大きくなっている気がする。
この先に行きたいのだけど、こういうときはどうするんだっけ。
例えば、嫌いな人がいるとき。小学生の時ならクラス替えがあったけど、大人になると職場という逃げ場のない部屋に閉じ込められた気分になる。
好きな人や趣味のことで頭をいっぱいにしたいのに気がつくと、嫌いな人のことばかり考えている。家に帰っても耳の上のあたりがしんしんと痛いんだっけ。今は、あの出口が見えない感じに似ている。
そんなとき、友人に勧められて読み開いてみると、それは漫画で描かれるエッセイだった。そのイラストはなんともライトなタッチで、顔面は数えるところ六筆だけで構成されている。
頭髪に至っては一筆書きで可笑しく、それでいて初見なはずなのに昔から知っていたようなエモーショナルがある。
実写化するなら劇団経験があって、厚めの生地のエコバックが似合う女優さんに演じてほしいというのが僕の願望。
ゆるい癒し系エッセイが始まるのかと思えば、主人公であるカフェ店員のすーちゃん(36)の前に、誰もが一度は出会ったことのある「嫌いな人」がさらりと登場する。
「嫌いな人に向き合う自分」は、いつも心が穏やかではない。
こんな少ない画数で人間の感情や、無言の間を表現する漫画は他にない。
些細なことの積み重ねで出来上がった悩み事を、丁寧にほどいていってくれる。
読み終わった後には表紙を見るだけで涙するかも……⁉
「人生とは近くで見れば悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」とは喜劇王チャールズチャップリンの言葉である。
つまりはひとつの出来事をとってしても解釈次第でどうとでもなるというような名句であり、それをチャップリンがユーモラスにウォーミングな喜劇に昇華させることで体現しているとすれば、O.ヘンリーはいつもどこかシニカルなユーモアを以てして人生の機微を切り取った繊細な小説へと昇華させている。
- 著者
- ["O・ヘンリー", "高義, 小川"]
- 出版日
本書の原題は「Witches' Loaves」、「魔女のパン」という邦題でご存知の方も多いかもしれないが、これを翻訳者である小川高義氏が本書で「魔がさしたパン」と改題したのである。魔がさしたパン、なんとも色気のある題であり、魔がさしたパン、まさにその通りの物語である。
今作は田舎町で堅実にパン屋を営む40代の質素な女性が、客である芸術家風の男性に慕情のようなものを抱き始めるところから、物語がみしみしとのろい音をたてて動きだす。
ときめきと可能性、「いやしかし」と思い直す冷静さ、それらの自意識の渦にいながら「それでもやっぱり」という淡い期待に抗えなくなった時、魔がさしたように勇気を出してみる瞬間があるということを私たちは知っている。
しかし、人生とは良くも悪くも、ひとつ魔がさしただけで取り返しのつかない方へ転がっていくこともまた私たちは知ってしまっている。
今作はぜひ「それ!我こそは知っています!」と綺麗な挙手ができてしまう方に読んで頂きたいのである。
クローズアップされれば悲劇だけれど、ロングショットで見ればあなたの「魔がさした」経験もなかなか笑えるものだと気づき、その経験の呪縛から少しは解放されるのではないだろうか。
期待を秘める女は魔女などではなく、本当はどこにも魔女などいなくて、そこにいるのはいつだって、魔がさしただけの女なのかもしれない。
尊敬する人や好きな人が「好き」と言っていたものは「好き」になりやすい。人間なら誰しもが持ちえる単純な思考。
今回は、好きな某先輩に「これめちゃくちゃおもしろかったよ」と言われ、そのとおりだった本を紹介したい。
とはいえ、せっかくの書評バトル。本来なら自分が見つけた本を「お勧めの本?んー、○○○って知ってる?」的な発見マウントをとりたいところ。でも嘘はつけない。教えてもらって感謝しているから。
タイトルは『その女アレックス』。
- 著者
- ピエール ルメートル
- 出版日
- 2014-09-02
海外のミステリー小説の和訳版。あらゆる賞を7冠獲得、ミステリー好きにはかなり有名だとは思われるが、意外と知らない人も多い。(ボク調べ)
そして、おもしろい小説の条件として「3割越えたあたりでページをめくる手が止まらなくなる」というのがある。まさにそれ。(ボク条件)
肝心の内容はというと、アレックス、という美しい女が痛ましく監禁されるシーンから物語は転がりだす。ただね、そこからの転がり具合がとにかくえげつない。転がる転がる。
読みながら「え?」「うお」「まってまって」と大げさではなく声に出してしまったのを覚えている。
あと、シンプルに怖い。ホラーではなく、人間の怖さ。多少グロなシーンも。映像化は正直見たくないかも。優しいお話が好きな人にはお勧めはできないかも。
ただただ怖いのに引き込まれるだけ。ただただアレックスがどうなっていくのか気になって仕方ないだけ。活字で想像された映像が脳内を走り回る。ドキドキ。バッドエンド?ハッピーエンド?どうなるの?
伝わってますかね?今僕の中にある言葉のカケラ、喉の奥、鋭く尖って突き刺させてますかね?(ボクノート)
お気づきかもしれないが深く内容には触れてない。あまり知らずに読んでほしいのです。
そして読み終わったアナタはみんなにこう言うんです。
「その女アレックスって知ってる?」
初めてこういった文筆のお仕事を頂けました。
とても嬉しい。
ウレシオス流星群。
星降る夜、君とダンスを。
私は今でこそおとなしいタイプに見られがちですが、子どもの頃は明るい性格であまり読書をするタイプではありませんでした。
足も速かったです。信じてください。
「とくダネ!」の小倉さんのプロフィールに「陸上100メートル10秒9」と書かれていて釈然としないのと同じことだと思ってください。
ですが中学2年生のとき、部活でいじめの入口のような状態に遭ったことをきっかけに、日常生活を常にビリーアイリッシュの『bad guy』みたいな声量で過ごさせてもらうようになりました。
休み時間は図書室で過ごす。教室に戻りづらい。
「心の壁を越えろ!おもしろ図書室の人選手権」といった状態でした。おもしろくはなかったし。
そんなときに出会って、本を読むのが好きになるきっかけになった本があるので紹介させてください。
ショートショートの神様、星新一先生の短編集『だれかさんの悪夢』です。
星新一先生、小学校の図書室でも置いてあるやつです。書評バトルの選択としてはベタすぎますか?どうだ?まあ思い出なので。
- 著者
- 新一, 星
- 出版日
まず、とにかく読みやすい。
『世にも奇妙な物語』とか、僕の世代で言うと『週刊ストーリーランド』によく星新一の小説が原作になってるものが出ていました。「名奉行・文さん」とか「女警部・神宮寺葉子」シリーズではないです。三面記事太郎でもないです。
要は、短くてサクッと読めて、意外なオチが待っているというあれです。
ほぼほぼネタバレになるので内容に関して言えることがあまりないんですけど、みんなが大好きなやつだと思います。
もう、ハーゲンダッツです。みんなが大好き。
この本にはそんなダッツが47篇も入ってます。
なぞなぞの本?と思うぐらいのペースで読み進められます。
読書が苦手な人ほど入りやすい、そんな本だと思います。個人的に好きな話は「問題の装置」です。
たくさんの投票、ありがとうございました。
投票結果と、それぞれの本が誰のおすすめだったのかを発表します!
- 著者
- ["O・ヘンリー", "高義, 小川"]
- 出版日
同率3位 『その女アレックス』ーバイク川崎バイク
予想しながら読んだ方は、当たっていたでしょうか?
ということで、優勝は寺田寛明さんでした!
優勝者の寺田さんにはコラムの連載を依頼します。2月初週開始予定です。
今後の更新のお知らせはホンシェルジュのTwitterでおこないます。こちらをフォローしていただくか、honciergeの特集ページでもチェックできます。現役の国語塾講師でもある寺田さんは、どんな本を取り上げてくれるのでしょうか?お楽しみに!
前回までの勝者による連載もご好評いただいています!
<Hi-Hi上田浩二郎のツカみよければ全てよし【連載初回】>
<トンツカタン森本晋太郎の#森本にボケろ!一行漫画要約文【連載初回】>
この企画が気に入ってくださった方は、前回までの記事もぜひご覧ください。
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 開催!第1回「今、ラジオが面白い芸人」>
<フリースタイル書評バトル-芸人編- 【第2回「出版芸人」】>
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