シェイクスピアの悲劇おすすめ5選!あらすじで読む代表作品

更新:2021.11.25

シェイクスピアはたくさんの劇を生み出しましたが、中でも有名なのは悲劇です。シェイクスピアの作品の中でも知名度の高い悲劇を5つ紹介します。

ブックカルテ リンク

謎の男、シェイクスピアが生み出す数々の人間群像

シェイクスピアはルネサンス期を代表する劇作家です。彼の作品は何百年も前に書かれたものなのに、いまだにその人気は衰えることを知らず、現代の映画、ドラマ、演劇の世界に多大な影響を与え続けています。彼に関する資料がほとんど存在しないことから、複数の人間がいたという説や、哲学者ベーコンが実はシェイクスピアなのではないかという別人説もあるミステリアスな人物です。

『ヴェニスの商人』や『真夏の夜の夢』といった喜劇、『ソネット集』のような詩集でも評価が高いですが、何よりも有名なのは悲劇です。シェイクスピアの4大悲劇といえば『ハムレット』『オセロ』『マクベス』『リア王』。そして4大悲劇には数えられていないものの、いまだに人気の衰えない『ロミオとジュリエット』も悲恋劇の傑作です。生き生きとした登場人物、洗練されたセリフの数々が時を超えて愛されるシェイクスピア劇を作り上げています。

悲恋物の定番!死を賭した恋『ロミオとジュリエット』

著者
シェイクスピア
出版日


シェイクスピアを知らない人でも本作なら知っているという人も多いでしょう。現代にいたるまで舞台で映画で何度も上演され、アメリカ版の『ロミオとジュリエット』である「ウェストサイド物語」もまたミュージカル物の傑作として大評判になりました。4大悲劇の中には『ロミオとジュリエット』は含まれていないのですが、シェイクスピアの作品として、1番の知名度があるこちらからご紹介したいと思います。

舞台はイタリアの街、ヴェローナ。モンタギュー家とキャピロット家は反目しあっており、両家の間では争いが絶えませんでした。ヴェローナの領主はこの争いに禁止命令を出しますが、それでお互いの中に蓄積された憎しみが消えるわけではありません。

そんな中モンタギュー家の息子、ロミオはキャピロット家の仮装パーティーに潜り込みます。恋多きプレイボーイ、ロミオは最近失恋しており、友人たちがそれを慰めようとパーティーに誘ったのでした。そこでロミオはキャピロット家の一人娘、ジュリエットに出会います。一目で恋に落ちるロミオとジュリエット。互いの家が仇敵同士であることに悲しさを覚えながらも、その境遇は二人の恋をますます盛り上げます。

ロレンス神父のもとで内密に結婚式を執り行うことにした二人。しかし悲劇が起こります。街中でジュリエットの従兄、ティーボルトがロミオにケンカを吹っ掛け、ロミオの友人マキューシオを殺してしまうのです。マキューシオを殺され、かっとなったロミオは逆にティーボルトを殺害。争いを禁止していた領主はこの事件に怒り、ロミオをヴェローナから追放するよう命令します。

一方ロミオの追放を聞き、悲しむジュリエットにもたらされたのは許嫁パリス伯爵との急な結婚の知らせでした。ロミオという夫がありながらパリスと結婚するぐらいなら死ぬ、何かいい手だてを考えてくださいとロレンス神父に迫るジュリエット。そこで神父は仮死状態になる薬をジュリエットに与えることを思いつきます。ジュリエットが死んだと周りに思い込ませ、目を覚ましたジュリエットとロミオをひそかに一緒にさせるという作戦です。神父はジュリエットが仮死状態になったことを知らせる使いをロミオのもとに送るのですが……。

原作『ロミオとジュリエット』は演劇らしく、いろいろなセリフがかなり大げさです。映画などでこのセリフをそのままやると、登場人物全員が情緒不安定に見えることでしょう。しかし、これらのセリフの仰々しい言い方がシェイクスピアの持ち味なのです。ロミオとジュリエットの恋の盲目っぷりがよくわかるのは原作ならでは(ジュリエットが、ロミオのことになるとティーボルトの死もそっちのけで、彼のことばかり考えている恋愛中毒状態です)。ちなみに一番悲劇なのはたぶんジュリエットの許嫁のパリス伯爵でしょう。この意味は原作を読めばわかるはず。

原作『ロミオとジュリエット』の悲劇性は家が敵同士ながら愛し合った二人にもありますが、この二人の恋愛に巻き込まれた他の人々にも及んでいる気がするのです。

「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」。父の復讐に取りつかれた男をめぐる悲劇『ハムレット』

著者
ウィリアム シェイクスピア
出版日
1967-09-27


『ロミオとジュリエット』と並ぶシェイクスピアの代表作です。シェイクスピア劇の中でも長編であり、傑作と名高い作品です。

デンマーク王の息子、ハムレットは急死した父の亡霊と出会い、その死の真相を知ります。父は現デンマーク王である先王の弟クローディアスに殺されたというのです。クローディアスは王の座を奪ったばかりか、ハムレットの母(先王の妻)ガートルードを妻に迎えていました。怒りに燃えるハムレットはクローディアスへの復讐を誓います。復讐をやりやすくするため、狂人のふりを始めるハムレット。しかし、亡霊の言うことが信じられなくなることもあり、悩み続けます。

ハムレットの変わりように、宰相ポローニアスは自分の娘オフィーリア(ハムレットの恋人)に探りを入れさせようとしますが、ハムレットは彼女を邪険に扱います。オフィーリアはハムレットの仕打ちに嘆くしかありません。さらに彼女を悲劇が襲います。ハムレットは王妃との会話を陰から聞いていたポローニアスをクローディアスと勘違いし、刺し殺してしまうのです。父を恋人に殺されたオフィーリアは悲しみのあまり気が狂い、自殺してしまうのでした。オフィーリアの兄、レアティーズは妹と父の身に起きた惨劇を知り、ハムレットへの復讐を誓います。

一方ハムレットはクローディアスが父を殺したことを確信し、復讐の計画を練ります。クローディアスもハムレットに殺人がばれたことを察知。ハムレットを遠ざける手段を画策します。その中でクローディアスはハムレットを憎むレアティーズと結託。クローディアスはレアティーズとハムレットに剣の試合をお膳立てしました。そして、レアティーズには切っ先に毒を塗った剣を渡し、ハムレットを確実に殺せるよう仕向け……。

この物語は二人の男の復讐譚です。一人はハムレットですが、レアティーズもまた復讐にかられ、身を滅ぼします。オフィーリアを含め、直接先王殺しに関係のない登場人物がとばっちりで死んでいく悲劇。ほとんどの登場人物が死んでしまうラストには復讐のむなしさを感じます。

血なまぐさい野望の先は狂気の世界だった……。亡霊と魔女が交差する暗黒の物語『マクベス』

著者
シェイクスピア
出版日
1969-09-02


おそらくシェイクスピア悲劇の中でもっとも陰惨で血なまぐさい物語がこれでしょう。奇妙な言葉とともに三人の魔女たちがマクベスの運命を狂わせる予言をする冒頭がすでにホラーじみています。

スコットランド王ダンカンに仕えるマクベスとバンクォーは遠征から帰る途中に、歌を歌っている不気味な魔女三人と出会います。魔女たちは予言をします。マクベスがコーダーの領主になり、やがてデンマーク王になることを、またバンクォー自身は王にはならないが、その息子たちが代々王になるであろうことを。

予言の後すぐに、コーダー領主の地位がマクベスに与えられるという伝令が届きます。王になるというもう一つの予言に期待を膨らませるマクベス。しかしダンカンは息子マルカムに王位を譲るつもりであることを知り、マクベスは王の暗殺を計画します。しかし小心なところがあるマクベスには迷いがありました。そんなマクベスの背中を押したのがマクベス夫人です。夫をけしかけ、王を殺させ、動揺する夫をしりめに冷静に血まみれの凶器の剣を処分します。

マルカムを犯人に仕立て上げ、もくろみ通り王位に就いたマクベス。しかし一緒に予言を聞いていたバンクォーはマクベスを疑います。バンクォーの息子が王位に就くという予言を恐れたマクベスはバンクォーとその息子を殺そうとしますが、バンクォーは殺害できたものの息子は逃がしてしまいます。

疑心暗鬼に陥り、不安定になるマクベス。次第に殺したバンクォーの亡霊に悩まされるようになります。またマクベス夫人も精神の安定を欠いていき、自殺してしまうのでした。やがて貴族マクダフは前王殺害の嫌疑で逃亡していたマルカムと組んで、マクベスに向かってきます。マクベスは再び魔女の予言を頼ります。「女から生まれてきたものにはマクベスは倒せない」という言葉にほっとするマクベスですが……。

野望に取りつかれながら、実のところ小心者のマクベスが徐々に狂気に侵されていく様がとても怖ろしい物語です。バンクォーの亡霊が見えるところなどは、完全なホラー。

またマクベスに輪をかけて恐ろしいのが、マクベス夫人です。夫以上の野心家であり、王の殺害にもためらうところがありません。その夫人の狂いっぷりがまたぞっとさせます。夜な夜な徘徊し、手を洗うしぐさを繰り返す夫人。「まだここに血の匂いが」(『マクベス』より引用 松岡和子訳)とつぶやきます。この血こそダンカンを殺したときの剣についていた血の幻なのです。いくら洗っても消えない血が両手にべったりとついている、恐ろしいシーンです。裏切りによる破滅を書いた傑作です。

甘い言葉に騙された老王をけなげな娘コーデリアの愛が包む『リア王』

著者
ウィリアム シェイクスピア
出版日
1967-11-28


うわべに騙されること、傲慢であることが、本当に自分を愛してくれている大切な人たちを見誤らせ、悲劇を起こすという物語です。

主人公のリア王はイングランドの王ですが、年老いて傲慢になっていました。高齢の彼は3人の愛娘に国土を分配して、跡を継がせようと考えます。うぬぼれが強くなっている老人、リア王は娘たちに自分をどれだけ愛しているのかを語らせたがります。要求にこたえて、長女のゴネリルと次女リーガンは耳障りの良い大げさな言葉を並べ立てますが、気立ての良い末娘のコーデリアは追従を嫌い、素朴な愛の言葉のみを語るのでした。

姉たちに比べ、妹の言葉がそっけなく感じたリア王は激怒し、コーデリアを国から追い出します。そしてコーデリアをかばった忠臣ケントも追放してしまうのでした。

権力を手に入れたゴネリルとリーガンはリア王を邪魔者扱いしだします。追放されたコーデリアの夫フランス王は姉二人の仕打ちを見過ごせず、イングランドに兵を向けます。再会するリア王とコーデリア。コーデリアはリア王を温かく迎え、リア王の狂気は癒えていきます。しかし、コーデリアには哀しい運命が待ち受けているのでした。

最後まで自分を苦境に追い込んだ父を見捨てない娘、追放されながらも最後まで忠誠を誓ってくれる臣下、主人に背いてでも善行をなそうとする召使などは、読者の心を動かすはずです。沢山の登場人物が登場し、戦いを繰り広げるシェイクスピア悲劇の中でも壮大な物語となっています。

人種問題をはらんだ悲劇!貞淑な妻を信じられなかった男の転落『オセロー』

著者
シェイクスピア
出版日
1951-08-01


ムーア人で黒人のオセロが美しい白人の娘デズデモーナを妻にしたことから始まる悲劇です。

オセロはヴェネチア軍の優秀な指揮官で、周りからも尊敬されていました。しかし、そんな彼ですら白人の美人妻を迎えるとなると、良い顔をしないものたくさんいました。特にデズデモーナに惚れていたロデリーゴや、オセロの副官キャシオはデズデモーナの結婚を惜しんでいました。この状況にオセロを憎んでいるオセロの部下、イアーゴは一計を案じます。

トルコ軍との戦いにキプロス島まで出撃するヴェネチア軍。新妻のデズデモーナはオセロについていきたがり、一緒に戦地まで赴きます。そこでイアーゴはキャシオが酒に弱いことを利用し、わざと乱闘を起こさせ、オセロがキャシオを軍隊から除名するよう仕向けました。

絶望したキャシオにイアーゴはデズデモーナに軍隊に戻れるよう口添えしてもらえばいいとささやきます。キャシオの懇願にデズデモーナは快く応じ、オセロにキャシオの部隊復帰を促します。一方イアーゴはそれとなくオセロにデズデモーナとキャシオの密通の話を吹き込みます。

デズデモーナの熱心なキャシオに関する弁明とイアーゴの話が相まって徐々に妻への信頼が揺らぐオセロ。さらにイアーゴはデズデモーナのハンカチを手に入れ、これをキャシオが使っていたとオセロに吹き込むのです。イアーゴの口車に乗せられ、オセロの憎しみは膨れ上がっていき……。

おなじみのゲーム「オセロ」の語源となった悲劇です。

シェイクスピアの悲劇に描かれている登場人物たちは人間が持ち合わせている黒い感情を赤裸々に示してくれます。嫉妬、傲慢、野心、憎しみ……それらは時代を超えても私たちの中に存在します。シェイクスピアの劇ではその負の感情の先に存在する破滅を疑似体験することができるのです。映画やドラマで筋を知っている話もあるかもしれませんが、一度原作を読んでみると新たな発見があるかもしれませんよ。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る