子どもをほめる、そして叱る。子育てをしていると必ず経験することでしょう。 「上手に描けたね。すごい!」 「なんでこんなことするの!いつも言っているでしょ!!!」 つい言いがちなフレーズですが、「本当に、これでよかったのだろうか」と思ったことはありませんか。 本記事で紹介する『自分でできる子に育つほめ方叱り方』では、「こういう理由でこの叱り方は良くない」「こう改善すると良い」ということが具体的に紹介されています。今日から即実践できる内容になっているので、ぜひ本書を手にとり、参考にしてもらえると嬉しいです。
本書では、今注目されているモンテッソーリ教育・レッジョ・エミリア教育の概念をもとに「ほめ方・叱り方」を紐解いています。
- 著者
- 島村 華子
- 出版日
まず冒頭でいわれているのは、「条件付き子育てはNG」だということ!
早く課題が終わった子どもに対して「すごいね!早かったね!」と褒めていませんか。「約束守らないならもう絵本読んであげないよ」と叱っていませんか。このように「褒美と罰」を使って愛情をエサに子どもをコントロールしてしまうと、親子関係に歪みが出てしまうのです。本書ではこう明記されています。
子どもたちの行動やモチベーションを外的にコントロールし、その子の本当にやりたいことの妨げになる可能性がある(『自分でできる子に育つほめ方叱り方』p5より引用)
つまり、親の望むことや言うことを聞かないと親は愛情をくれないという公式が、子どもの頭の中で成立してしまう恐れがあるということです。
条件付き子育てには以下のようなデメリットがあります。
①短期的な子育ての効果しかみられない危険性
②自己肯定感を揺るがせてしまう可能性がある
③親子関係が悪化していく
④自分が受けた条件付き子育ては継承されていく恐れがある
とはいえ、「これまでこのやり方でやってきたのに」という人は多くいるでしょう。そんな方のために、本書では逆の「無条件子育て」について詳しく紹介しています。
対する無条件子育ては、子どもの行動の善し悪しに関わらず愛情を注ぎ、気持ちに寄り添うことです。
以下の5つのポイントを見直すと変わっていきます。
①ほめ方、叱り方の習慣をアップデートする
②子どもを一個人としてリスペクトする
③子どもにとってよきリーダーでいる
④子どもへの要求を見直してみる
⑤子育ての長期的ゴールを持つ
本書ではこの5つを理想論にしないために、ほめ方、叱り方の具体的ポイントを知ることができます。即実践できることが魅力です。
ここではモンテッソーリ教育、レッジョ・レミリア教育はどのようなものか紹介していきます。
モンテッソーリ教育は、史上最年少プロ棋士・藤井聡太さんが幼児期に受けた教育として話題になりました。本書以外にもたくさん関連本が出版されているので、知っている人も多いでしょう。レッジョ・レミリア教育も、近年注目が高まってきている教育のひとつです。
モンテッソーリ教育は、個人に基づいてカリキュラムを設定しています。対するレッジョ・レミリア教育のカリキュラムは、民主主義教育を基盤にしています。
両教育方法は、カリキュラムこそ大きく異なるものの、実は根底にある考え方に共通点があるのです。それは子どもに対するイメージ。尊敬・尊重を基盤にしている点ではよく似ています。
モンテッソーリ教育、レッジョ・レミリア教育ともに、一人ひとりを生まれながらに能力をもち合わせたパワフルな学習者であるだけでなく、権利をもった一市民としてみなします。(『自分でできる子に育つほめ方叱り方』p6より引用)
この子どもに対する大人のイメージが、「自分でできる子に育つ」かどうかの分かれ道です。子どもへの接し方、教育理念、大人の役割に大きな影響を与えます。
本書では、主に3種類のほめ方があるとされています。それが以下の3つです。
①おざなりほめ:具体的ではない、中身に欠けるほめ方(例:「すごいね」「上手!」)
②人中心ほめ:性格、能力、外見といった表面をほめる(例:「かわいいね」「優しいね」)
③プロセスほめ:努力、過程、試行錯誤の手順をほめる(例:「頑張ってやりきったね」「失敗しても諦めなかったね」)
このうちおざなりほめ、人中心ほめはNGなほめ方です。「ほめて育てよう」と意識したり、忙しかったりするとやりがちなほめ方ですよね。
おざなりほめが習慣化されると、子どもは「ちゃんと私のこと見てくれていないのかな」と感じてしまう恐れがあります。その結果、「頑張っても頑張らなくてもおざなりほめされる」と思うようになり、子どものモチベーションが下がってしまうのです。また、本当にほめてほしいところをほめられないことで、不信感を抱きます。
全ての人格や才能をほめてしまう人中心ほめにも要注意です。人中心ほめが習慣化されると、子どもはそのアイデンティティから外れてはいけないと思うようになります。子どもにとってプレッシャーになってしまうのです。
では、唯一良いとされるプロセスほめをするにはどうすれば良いのでしょうか。
プロセスほめは、名前の通り努力や成長にフォーカスするほめ方です。
あるゴールや結果までのプロセスをほめることで、さらに良いプロセスを積み上げようとするようになります。プロセスに対するモチベーションが上がるのです。また、このプロセスほめにはもうひとつメリットがあります。結果にフォーカスしていないため、うまくいっているときも、うまくいっていないときもほめられることです。
プロセスほめが良いという理屈が、よくわかる人は多いでしょう。しかし、実際に子育てとなれば話は別。おざなりほめ、人中心ほめをしてしまいがちです。
そういった方に向けて、本書ではプロセスほめの3つのポイントを紹介しています。以下の3ステップです。
ステップ①成果よりプロセスにフォーカスする
ステップ②むやみにほめるのではなく具体的にほめる
ステップ③子どもに自由回答式の質問をする
最後のステップである、自由回答式の質問をすることが一番のポイント!
子どもにYES、NOで答えられる質問を投げるのではなく、「何を」「どうやって」「どうして」にフォーカスした質問します。そうすると、子どもが何を見てほしいのか、何を伝えたいのかを引き出すことができます。大人も傾聴力を鍛え、発揮することができるのです。
ただし、「今日はどんな1日だった?」とざっくりすぎる質問は避けた方がいいでしょう。子どもはたくさんの情報を整理しきれないからです。「今日、お友達といていちばん楽しいことはなんだった?」「どうしてそう思うの?」というような的を得た質問を投げかけてみましょう。
ここではすぐに実践できるプロセスほめについて、具体例を用いて紹介します。
おざなり・人中心:さすがお兄ちゃん(お姉ちゃん)だね
プロセス中心:自分から挑戦してくれたんだね、一緒にやったら早く終わったね、お手伝いでいちばん頑張ったことはなんだった?
お兄ちゃん(お姉ちゃん)はお手伝いをするべき、という大人の勝手な押し付けになってしまいます。お兄ちゃん(お姉ちゃん)らしい振る舞いをしなかったら愛情がもらえないと思ってしまう可能性も。お兄ちゃん(お姉ちゃん)という色眼鏡を取り払い、その子自身が考えて行動してくれたことに目を向けてみましょう。
おざなり・人中心:やっぱり頭がいいね!
プロセス中心:毎日の頑張りの積み重ねだね、ひとつひとつの問題に丁寧に答えているね、今回のテストで何をいちばん学んだ?
頭がいいとほめることで、子どもの自信過剰に繋がり、努力をしない傾向を生み出す危険性があります。また、良い結果が出なかったときに自己肯定感が下がったり、言い訳を用意したりと、長期的にあまり良い効果は得られません。点数だけにこだわらず、そこまでの準備や実際に学んだことにフォーカスしてみましょう。
ほめ方ももちろんですが、さらに気になるのは叱り方ですよね。
「こんなにゲームするなら捨てちゃうよ!」
「二度とお菓子は買わないからね!」
やってしまいがちな”罰”を用いた叱り方には、問題点があります。
それが以下の4つです。
①より攻撃的・反発的になる
子どもは「いかに罰を逃れ、自分の望みを叶えられるか」と考えるようになります。厳しい校則に縛られれば縛られるほど、逃れようと試行錯誤した経験はありませんか。同じことが起き、より反発する恐れがあるのです。
②力により解決することを正当化する
子どもは良くも悪くも親の影響を受けます。話し合いなしに、力で解決することを模範としていた子どもたちが大人になったとき、はたして平和的解決をするようになるでしょうか。罰の連鎖は世代を超えることもわかってきているため、あまりおすすめはできません。
③親子関係の悪化
罰というのは、子どもの心を混乱させます。罰を用いて叱ってきた親が信頼できない存在だと子供が判断すれば、親に対して心を閉ざし、関係の悪化に繋がってしまうのです。
④反省を促さない
罰を受けた子供たちは、それをどう逃れようかを考えます。「自分の行動のどこに問題があったのか」を考えないため、結果的に反省を促すことにはならないのです。
罰を用いた叱り方はよくない、ということは理解できたと思います。だからといって、叱らないという選択も良いものとはいえません。ここでは、上手な叱り方についてポイントを紹介します。それ以下の4ステップです。
ステップ①「ダメ!」「違う」をできるだけ使わない
ステップ②結果より努力やプロセスに目を向ける
ステップ③好ましくない行動の理由を説明する
ステップ④親の気持ちを正直に伝える
感情ではなく論理で向き合い、プロセスに目を向けることは、ほめ方と同様です。その上で最も大事なことは最後のステップ。「わたしはどう思うか」というわたしメッセージを伝えることが重要ポイントです。時間がないからと感情や罰で子どもを叱るのではなく、丁寧に向き合ってみてはいかがでしょうか。
ここではすぐに実践できる叱り方について、具体例を用いて紹介します。
人中心:落ち着きのない子だ!
プロセス中心:足と足をくっつけるゲームをしよう、少し座っていてくれると、話に集中できて嬉しいな
小さな子どもにとって、黙って座っていることは無理難題です。とはいえ、電車などの公共の場ではじっとしていなければならないときもあるでしょう。そういう場合は、ゲームするように声をかけることが有効。その上でわたしメッセージも伝えられるといいですね。
人中心:だらしない!早く片付けなさい!
プロセス中心:お洋服をたたむの、一緒にやってみようか、お掃除しにくいから、ものが床にないと助かるな
だらしないと決めつける前に、子どもが片付けをしやすい環境が整っているか確認してみましょう。また、大人と同じ水準の片付け完成度やスピードを求めないことも重要。まだ一人でできないようであれば、一緒にやってみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
子どもが最初にコミュニケーションを学ぶのは家庭です。家族の会話を通じて、適切な会話力・社会性を身につけていくのです。そのため、批判する・責める・罰を与えるというぶつかる習慣は改善していく必要があります。ぶつかる習慣が人間関係を悪化させていくとすれば、つながる習慣は関係修復の改善策です。
①「批判する」から「応援する」へ
②「責める」から「励ます」へ
③「文句を言う」から「傾聴する」へ
④「脅す」から「信頼する」へ
⑤「罰する」から「尊重する」へ
⑥「褒美で行動をコントロールする」から「違いを話し合う」へ
⑦「小言を言う」から「受け入れる」へ
以上7つを習慣化することで劇的に変わります。
子どもを、大人と同じ権利を持った一人の人間として尊重し、対話する。親が持つイメージを取り払い、子どもと向き合う。その上で「わたしはこう思う」とメッセージを伝える。こうすることで、親と子が対等につながっていきます。
ぶつかる習慣が癖になっている場合、つながる習慣への改善は容易ではありません。しかし子どもとより良い関係を築き、ご機嫌な毎日でいるために、少しずつ意識していくことをおすすめします。
ここでは、本書に関する感想・レビューについて触れていきます。
Amazonでは900を超える数のレビューが寄せられており、総合評価は星5つ中4.2!比較的高評価となっています。また、幼児教育・家庭教育部門で12週連続1位を獲得。累計売り上げ10万部を突破した、今一番売れている教育書です。
Amazon等では以下のような感想が挙げられています。
「エビデンスをもとに具体例が書かれていてわかりやすい」
「子育て中、頭の片隅に置いておきたい」
「読み終えた後に対話したくなった」
正解を日々探し求める育児のヒントになると、子育て中の親世代に人気です。
評価の高いレビューがある一方で、
「理想論すぎる、ここまでやりきれない」
「机上の空論に思えた」
という意見もありました。
育児に対する考え方や方法は、家庭の数だけあります。完璧を目指す必要はなく、あくまで一緒に学んでいくという姿勢で本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
ここでは、子どもの教育についての関連本を3つ紹介します。
『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』は、3歳〜12歳の子どもを対象とした教育本です。「0歳〜3歳までの子育てでモンテッソーリ教育を取り入れたい」という方にはこちらの本をおすすめします!
- 著者
- 藤崎 達宏
- 出版日
人生という長いスパンで見たとき、0〜3歳の成長速度には凄まじいものがあります。これから生きていくために必要な判断力・集中力・思考力……。子どもの能力はこの3年間で大きく開花するのです。
本書では、モンテッソーリ教育の肝である「自分で考えて行動できる子」に育つために親がすべき30のことが紹介されています。写真とイラストに加え、実例も豊富です。ぜひ一読して、子育てに自信をつけてみませんか。
2020年春頃から、私たちの生活を大きく変化させたコロナウイルスの流行。繰り返される休校・休園・登園登校の自粛で、子どもが家で過ごすことが増えたのではないでしょうか。慣れない生活に変わり、子どもの「生活リズムの乱れ」が気になっている方も多いと思います。
そんな方におすすめしたいのが『子どもにいいこと大全』です。
- 著者
- ["成田奈緒子", "石原新菜"]
- 出版日
「朝不機嫌で、起きられない」
「イライラすることが多くなった」
「食欲がない」
「寝つきが悪い」
ありがちなこれらのお悩みは「自律神経の乱れ」と関係しているかもしれません。
本書では子どもの自律神経を整える良い習慣を睡眠、食、運動などの多様な切り口から紹介しています。あなたにも「実践できそう!」という習慣があるはず!ぜひ参考にしてみてください。
「子どもの才能が伸びてほしい」というのは親の願いですよね。でも、自分の子どもにどんな能力があるのか、どこを伸ばしてあげればいいのかわからない……。そんな方にぜひ読んでほしいのがこちらの本です。
- 著者
- 伊藤 美佳
- 出版日
話題のモンテッソーリ教育について、ハーバード大学の心理学者が唱える「多重知能理論」をベースに紐解いていきます。運動、学力、クリエイティビティ、コミュニケーションなど「9つの知能」を伸ばすオリジナルメソッドを40種類も紹介。日本人向けにアレンジしているので非常にわかりやすく、家庭教育に落とし込みやすいです。
「中田敦彦のyoutube大学」でも紹介され、大反響になりました。ぜひ一度手にとってみてはいかがでしょうか。
「自分でできる子に育つ教育ができていなかった……」と罪悪感を感じる必要はありません。育児は家庭の数だけあるもの。完璧にやろうとしなくて良いのです。
モンテッソーリ教育やレッジョ・レミリア教育は、「子どもが自分で考え、行動するようになる」メソッドであると同時に、「親自身が幸せになる」教育でもあります。悩んだときはぜひ本書を手に取り、子育てをもっと楽しむことができれば嬉しいです。