『フルーツバスケット』を含む高屋奈月のおすすめ漫画5作品!

更新:2021.11.27

高屋奈月はファンタジー系の作品が多く、深い世界観や個性豊かなキャラクター達が暴れまわります。また、彼女の『フルーツバスケット』は国外で最も売れた少女漫画としてギネスに記録された作品ですが、それだけで終わるにはもったいない!高屋奈月の魅力が伝わる作品を5冊ご紹介します。

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ギネスにも記録された高屋奈月の代表作!

1998年から連載がスタートした『フルーツバスケット』。全23巻のこの作品は、日本のみならず世界でも大ヒット記録を生み出した高屋奈月の代表作です。物語は、1人の少女と動物憑きの奇妙な体質を持つ草摩一族の人たちとの交流を中心に描くファンタジーラブコメディです。

ヒロインは本田透(ホンダ トオル)女子高生。トオルは幼い頃に父親を亡くし、母親と2人で暮らしてきたが、高校生になった頃事故で母親も亡くしてしまう。父方の祖父の家に引き取られます。

著者
高屋 奈月
出版日

トオルは天然ですが、どんな事にもめげないひたむきな性格。ゆえに生活は苦しくてもアルバイトをしながら母親と約束した高校生活を送るため前向きに生きています。そんなトオルが偶然、草摩家と関わることで運命が動き出す、家族愛や友情、ラブが飛び交うファンタジーです。

トオルはひょんなことから同じ学校の文武両道の人気者「プリンス・ユキ」こと草摩由希(ソウマ ユキ)と、ユキの従妹で保護者役の草摩紫呉(ソウマ シグレ)の家でお世話になることに。

草摩家は古くから続く名家で、代々12支の秘密を背負っています。12支の秘密とは、物の怪憑きの人間の存在のこと。正確には、12支+猫の13人の物の怪憑きが草摩家にはいるのです。同じ頃、草摩爽(ソウマ キョウ)もシグレの家に居候することになり、4人の同居生活が始まります。

草摩家での生活の中で、ユキとキョウとトオルのラブが動いたり、猫であるキョウが背負った悲しい宿命や、自由になりたいと願うユキの切ない想いを高屋ワールドで描いています。

高屋先生は、伏線の使い方が非常に上手で、最初からたくさんの伏線が張られていて、最期まで綿密に練られて作られたストーリー完成度が高い作品です。キャラも多く個性も強いのですが、1人1人がしっかり生きています。

本作品は主人公の清らかさが物語全体を優しい雰囲気で包み込んでいます。彼女は芯のしっかりした、優しさに溢れた少女で、彼女が母親から言われた数々の言葉を胸に大切に秘めています。

「疑うより 信じなさい」「人は良心を持って生まれてこないんだよ 生まれながらに持っているのは食欲とか物欲などの欲だけ 良心は身体が成長するのと同じで 自然の中で育てていく心なんだ」「透は信じてあげられる子になりな それはきっと 誰かの力になるから」……。(『フルーツバスケット』から引用)

そしてその優しさに、苛酷な宿命を背負ったユキが励まされる姿は読んでいる者も一緒に心を洗われるような気持ちになります。


『フルーツバスケット』とその続編『フルーツバスケット another』の魅力を紹介した<漫画『フルーツバスケット』、続編「another」の魅力をネタバレ紹介!>の記事もおすすめです。

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高屋奈月の描く、想いを抱えた者たちの戦い

主人公は、高校生の乙矢環(オトヤ タマキ)。といっても普通の高校生ではなく、お寺の1人息子、「守護師」でもある。守護師とは、邪心に囚われ邪鬼へと変化した人間の魂を救うための護法を操る人のことです。これは守護師の家系でただ1人の継承者という宿命を背負う彼の数奇な運命を描いた、全5巻の作品です。

著者
高屋 奈月
出版日

タマキと共に数奇な運命に翻弄されていくヒロインは、タマキの幼馴染の如月旭(キサラギ アサヒ)。彼女はタマキのことが大好き。アサヒは、邪鬼を祓うことで疲れているタマキのそばに常にいて支え、時にイラつかせることがありながらも、彼の心を癒していました。

人間を邪鬼に変え、邪鬼の理想郷を築こうとしている、月華一族とそれを防ごうとする乙矢一族。千年越しの戦いをしてきた両者ですが、水月華の生まれ変わりのアサヒがヒラ王を目覚めさせたり、タマキの母が命を落としたり……と戦いは激しく苛酷なものになっていきます。

そしてその激しい戦いの中で着実に想いを育むふたり。1巻で真面目に話しているアサヒが、タマキに顔を近づけると条件反射でキスしてしまう場面は胸がキュンとします。

何と言っても高屋奈は人間の内面を深く描くのが上手。キャラそれぞれの背景がしっかりしていて、愛情だけではなく嫉妬や罪悪感とか表面には見えないけど、内側にあるドロドロしたものも面白く描いています。

そんなリアルに描かれたキャラたちはとっても魅力的です。タマキは文句なく格好いいし、アサヒの真っすぐにタマキを想うきもちが作品から伝わってくるので、涙する場面も多くあります。ぜひ、そんな魅力的なふたりに会いに行ってみてください!

高屋奈月の近未来ファンタジー

舞台は22世紀末の地球で、戦争により街は破壊され、「名無し」と呼ばれる孤児たちがあふれています。格差社会が生まれ、軍事政権が当たり前となった時代、人々の願いを叶えるという”翼”を探し求め、軍と戦い自分たちの生きる道を見つける、という2人の近未来ファンタジーです。

著者
高屋 奈月
出版日

主人公の寿は「名無し」で孤児院育ちの16歳の少女。元盗賊で、精神年齢は低いけど、真っすぐな性格です。6歳まで孤児院で暮らしていましたが、孤児院がなくなり居場所を失って、流れの盗賊となって生きてきました。

そんなコトブキに恋をする天才軍人ライモン・シラギ。「生きる理由がみつからない」と自殺を図ったこともありますが、今はコトブキにラブで、本当はコトブキを捕まえるはずの軍人なのに、2年以上もコトブキを追いかけ回しては楽しんでいます。

いつも真っすぐ前をみつめ必死に生きてきたコトブキは、念願の働く場所を手に入れ盗賊から足をあらうことが出来ました。どんなに宿の店長にこき使われても、盗賊よりは全然気分がいいとはりきって働きます。しかし、元盗賊がゆえトラブルを起こしてしまい、せっかく見つけた働く場所も失くしてしまいます。

失意のコトブキの前に現れたのはライモンでした。3カ月も現れなかったライモンですが、実は彼、コトブキと共に生きるために軍を脱退してきたのです。

本作品は彼のまっすぐさに胸キュンするシーンが盛りだくさん!ライモンはコトブキが中心に世界が回っている!と言い切るほどコトブキが大好き!ストレートに気持ちを伝えるライモンはいつでも明るくコトブキを肯定します。

2人は願いを叶えてくれるという伝説の「翼」を探すために旅にでることに……そして「翼」の正体にたどり着きます。果たしてその時、2人の願いは何なのでしょうか?

作品の内容は暗い闇の部分が多くて、重い話になりがちですが、高屋奈月の作画の明るさとコトブキとライモンの掛け合いがテンポよく進むので面白いです。旅をしながら愛を育む2人の成長を描く高屋ワールド全3巻ご覧ください!

高屋奈月が描く繊細なふたりの想い

主人公は高校1年生の高橋厚士。中学時代から同級生2人とポップスのバンドを組んでいます。作詞作曲を担当していて、ボーカル兼ベース。目つきが悪いため、睨んでいると周囲から怖がられてしまいます。

そんなアツシの良き理解者は、同級生でギターの崇とドラムの裕人。いつも不愛想で、口下手なせいでケンカを売られたり、先生に呼び出されたり、女子に泣かれたりしてもマイペースでいられるのは、明るいこの2人のおかげでしょう。

著者
高屋 奈月
出版日

アツシの中学時代からの片思いの相手は、タカシの従妹で同じ高校に通う中田杏。アンズは本来笑顔の可愛い明るい子ですが、中学時代にいじめにあってからは、いつも下を向いて歩き、1人でいます。そんなアンズが気になって仕方のないアツシ。

モノローグでこんな言葉があります。

「心の傷というものが 目に見える物であれば そんな風に傷つく事も 傷つける事もなくなるかもしれないのに」

アツシのアンズを想う気持ちが繊細すぎて切なくなります。この話は高屋奈月らしい繊細な心をもったふたりの人間の様子が愛おしくなる作品です。

学校の文化祭でライブをすることになったアツシ達。同じくライブをする上級生にアツシが絡まれますが、アンズはアツシを励まします。

「高橋君は無口な分 歌で 色んな事伝えようとしてくれてるみたい…」(一重括弧内すべて『僕が笑うと君は笑うから』から引用)

アンズの言葉を聞いたアツシは、自分の作った歌で彼女に笑顔を取り戻してほしいと思い、彼女の為に歌をつくります。そんな思いの丈を詰め込んだ歌をアツシがアンズに捧げるシーンは感動的。見た目や偏見で誤解されてきた2人だからこそ、人の心の内側をよく見ているんでしょう。お似合いの2人に心温まる作品です。

しっかりと描かれた伏線、高屋奈月の手腕に感動!

『フルーツバスケット』が終わり、2007年から連載がスタートした全11巻の「星は歌う」。この作品も伏線が張り巡らされた高屋ワールド全開の感動作です。

「でも たぶん 知ってても 好きになった 好きになってた」

冒頭のモノローグだけで、これはどこで回収される伏線なのか……と最初からワクワクします。

著者
高屋 奈月
出版日
2008-01-18

主人公は椎名サクヤ、女子高校生。中学進学前に両親が離婚し、父親に引き取られるものの、再婚した父親の奥さんとうまくいかず、父親に捨てられてしまいます。現在は従兄の宮古奏(ミヤコ カナデ)と2人暮らし。高校では星空観賞同好会(通称:ホカン)の会長をしていて、星が大好きな女の子。夜空を見ているだけで、星々が歌い自分を支えてくれていると感じています。

従兄のカナデは心に傷を負っていて、現在は引きこもり状態で自宅で作る陶芸によって少しの収入はあるけど、周囲の人たちからはサクヤを働かせて生活しているダメ人間だと思われています。でもサクヤにとってはカナデと暮らすことは幸せで、生活費を稼ぐことは苦にならない。それよりも周囲がカナデを悪く言うことに思い悩んでしまいます。

実はサクヤは辛い過去を持ち、高校生の今も決して楽な暮らしをしているわけではありませんが、カナデと2人で街から少し離れた海のそば、夜になると星が綺麗に歌ってくれる、そんな生活に満足していました。仲良しのヒジリやユーリもいるし、ユーリのお兄さんの酒屋でバイトをしてカナデの待つ家に帰る。それがサクヤには幸せでした。

ある日サクヤの誕生日の日に家に帰ると、葵千広(アオイ チヒロ)という少年がいました。チヒロは後にサクヤと同じ高校へ転校してきます。チヒロもサクヤと同じような辛い過去を持っており、叔父の住む町にやってきたのです。

サクヤはチヒロに惹かれていき、またチヒロもサクヤに惹かれていきますが、チヒロには中学時代からのサクラという彼女がいます。サクラは、ある事件があり今は意識不明の昏睡状態でした。複雑な状況で揺れるふたりの行く末は……。

物語はふたりの変わらない想いを追いかけます。この作品は時間経過と登場人物たちの交流によって変わっていく心が丁寧に描かれています。複雑な状況だけに登場人物たちの心の変化も見応えがあます。この作品にも現れている、高屋奈月の、途中で読むのが苦しくなるくらいの過程と、感動的なハッピーエンドという特徴は何度読んでもクセになります

『星は歌う』については<『星は歌う』最終回までネタバレ紹介!「フルバス」作者の隠れた名作【無料】>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

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