佐藤優のおすすめ本5選!元外交官が語る、読書法から人生のヒントまで

更新:2021.11.24

大使館勤務のエリート外交官から一転、背任等の容疑によって執行猶予付きの有罪判決を受け、失職。その経験をまとめた『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』は大反響を呼びました。今回はそんな佐藤優の豊富な人生経験をもとに執筆された著書の中から、おすすめの本を5冊ご紹介します。

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「知の巨人」佐藤優とは?

佐藤優は、1960年生まれの東京都出身の元外務省国際情報局分析第一課主任分析官であり、作家です。1985年に同志社大学大学院で神学修士の学位を修めた後、外務省へ入省しました。2002年に鈴木宗男事件に関する背任及び偽計業務妨害容疑で逮捕され、512日に及ぶ勾留後に保釈。2007年、東京高等裁判所で有罪判決を受けます。2009年に最高裁判所から上告を棄却され、異議申し立てを行わなかったため、有罪が確定し、外務省職員を失職しました。

2005年に発表された処女作『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』では、自身にかけられた一連の容疑を「国策捜査」であると主張、大きな反響を受け、第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞します。

今回は、異色の経歴をもつ佐藤優の魅力が伝わる5冊の本をご紹介します。

膨大な情報の処理方法が学べる

読書は、知識を得るための手段として有用です。そうは言っても忙しい生活を送りながら、その限られた自由時間の中で読める本の数には限りがあります。しかし、佐藤優は毎月300冊、多い時では500冊の本を読むと言います。凡人からは想像のつかない知識量を一体どのように処理しているのでしょうか。

著者
佐藤 優
出版日
2012-07-27


『読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』では本の読み方を、「自分にとって有益であり時間をかけて読むべき本か」の判断を瞬時に行う「超速読法」、「全てを理解しようとする完璧主義を捨て、熟読すべき本を選別」するための「速読法」、これらの方法によって選別された本を3回読むことで理解を深める「熟読法」の3種類に大別し、詳しく解説しています。

限られた時間を有効活用し、多くの本に触れ知識を吸収したいと考えている方だけでなく、必要な情報を瞬時に取捨選択する技術は多くのビジネスパーソンに役立つこと間違いなしの1冊です。

未来のリーダーへ向けたメッセージ

本書では、日本屈指の進学校として名高い「灘高校」の生徒たちから佐藤優へのアプローチによって実現した3回にわたる講義が収録されています。

著者
佐藤 優
出版日
2016-07-29


日本の上位1%に入るであろうエリート高校生たちとの対談式講義の中で、近年行われているゼロ金利政策に対する持論を展開したり、信頼関係を作るために必要なことは「約束を守ること」と「できない約束をしない」ことだと諭したり、佐藤優が政治・経済・国際情勢にとどまらず、読書の仕方や人間関係の注意点に至るまで真剣に、時には笑いを交えた講義を展開しています。

なかでも、学生運動を間近で見てきた経験から、世の中にある、薬物、金、異性、アルコールといったハマると危険なものについて、「どう危険なのかをある程度の体験を通じて、本当に危ないところには入らないで知っておくというのは、皆さんが学生時代に勉強しなければならないことの一つだとは思う」という一言が印象に残っています。

これからの日本を背負う立場の若者への佐藤優の強く温かい言葉の数々は、幅広い世代の方にとって一読の価値あるものでしょう。

情報氾濫社会を生き抜くバイブル

佐藤優と、ニュース解説者などして活躍する池上彰との共著である『最強の読み方』は、新聞・雑誌・インターネット・テレビなど、多くの情報が氾濫している現代社会における効率の良いインプット方法がやさしく具体的に解説されています。そのどれもが私たち一人ひとりができる実践的な方法です。

著者
["池上 彰", "佐藤 優"]
出版日
2016-12-16


10紙以上の新聞に目を通しているという両者ですが、その理由として「視点の違う論調を比較することで思考の偏りを防ぐ」「自分の意見と相容れない意見を目にする必要性」について語っているのが印象的です。
インターネットの普及により、無料で大量の情報に接することができるようになり、便利になった反面、情報過多になってしまったり、デマ情報に気付けなかったりといったマイナスの部分もあり、新聞の良い面について再考させられます。

また、「中学レベルの基礎知識の重要性」にも触れられています。情報をインプットするにも、基礎知識が欠損していると、それが頭を素通りしてしまうと言います。本書を読むことで、中高生であれば自分たちが現在学んでいることの大切さに気付くことができるでしょうし、社会人となった大人が読むことでもそれらの知識が衰えない様に日々精進することの大切さに気付くことができるでしょう。

人生の「負け方」指南書

『「ズルさ」のすすめ』は、社会が敵となり執行猶予つきの有罪判決を受けた著者ならではの視点から、実直なだけではなく時には「ズルさ」も交えながら生き抜く処世術がまとめられています。

著者
佐藤 優
出版日
2014-12-02


「外交官のお酒の飲み方」の中では、外交官時代には相手の情報や弱みを握ったり、心理的優位に立ったりするためにお酒を利用していたという話が出てきます。故小渕恵三元首相の命により、こうした優位性を保ったまま交渉ができる様に、交渉相手のタブーを集めた「べからず集」を作成していたというエピソードは、元外交官ならではの裏話であるとともに「事前の準備の大切さ」に気付かせてくれます。

本書の中で佐藤優は「人生にとって大切なのは『いかに負けるか』ということなのかもしれません。自分を見失わないように、上手く負けることができるか」と言っています。私たちはどうしても「負けることはいけないこと」と捉えてしまいがちです。そういった固定概念に縛られて生きることを苦しく感じている方は、ぜひ本書を手に取ってみてくださいね。

「いま」を読み解くヒントがいっぱい

『世界史の極意』は、いわゆる受験勉強的な世界史について記載されているのではなく、あくまでも「いま」を読み解く上で必要な歴史的出来事が解説されています。そのため、世界史に全く興味のない方が、入門書としての機能を期待して本書を手に取ると、若干のとっつきにくさを感じてしまうかも知れません。高校の授業で習う程度の知識を得た状態で読むのが最適です。

著者
佐藤 優
出版日
2015-01-08


佐藤優は本書を「世界史を通じて、アナロジー(類比)的なものの見方を訓練する本」であると位置づけています。イスラム原理主義の暴走を止めようと動いていたのがレーニンやスターリンだった、というくだりは、現在のイスラム国のテロ行為を止めるうえで参考にできる部分があるのではないかと考えさせられます。

人間一人あたりの人生は約80年と短く、一人の人間が体験できる物事には限度があります。歴史は、過去に生きた多くの人々の、それぞれの80年の体験が蓄積されたものです。本書を読むことで、一人ひとりが体験できることは少なくても、その結晶である歴史を読み解けば、これからの時代を生きて行くヒントが得られることに気付かされることでしょう。


佐藤優のおすすめの本5冊、いかがでしたか。エリートである「外交官」という職を失うことは、多くの人から見れば「失敗した人生」と映るかもしれません。そんな逆風にも負けない力強さを感じる佐藤の著書は、読む人の心を勇気づけてくれることでしょう。

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