コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズ他、おすすめ小説6選!

更新:2021.11.24

シャーロック・ホームズといえば世界一といっても過言でない探偵の名前でしょう。その生みの親である アーサー・コナン・ドイルの名もまた知られています。そんな彼の有名作や知られざる名作を紹介します!

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シャーロック・ホームズを生み出した作家コナン・ドイル

アーサー・コナン・ドイルは医師や政治活動家としての顔を持つイギリスの推理作家です。彼の書いた推理小説シリーズは作中に登場する名探偵の名を取って「シャーロック・ホームズ」シリーズとして知られています。

1859年のスコットランドでコナン・ドイルは生まれました。カトリック系の家系で、父親は酒に溺れ、とても貧しい生活をしていました。コナン・ドイルはイエスズ会系の学校を出た後に医大へ進出。開業医として細々と生計を立てる毎日を過ごしています。しかし診療所は流行らず、暇な時間を活用して小説を書きはじめました。そうしてかの有名な探偵シャーロック・ホームズは生まれました。

作家として成功するとアーサー・コナン・ドイルは開業医を止め、作家活動一本に絞ることに。「シャーロック・ホームズ」シリーズ以外にも、歴史小説である「ジェラール准将」シリーズや、SF小説である「チャレンジャー教授」なども発表しています。小説家としてだけでなく、『南アフリカ戦争 原因と行い』などイギリス軍の功績を記したノンフィクション作品も書いており、サーの称号を与えられました。

有名探偵が活躍する短編たち

『シャーロック・ホームズの冒険』には、コナン・ドイルが1891年から1892年にかけて書いた短編が収録されています。どの話もホームズの助手であるワトスンの語り口で書かれており、ワトスンの目を通したホームズの面白おかしく読むことができます。

著者
アーサー・コナン・ドイル
出版日

短編第1作目である「ボヘミアの醜聞」はシャーロック・ホームズの忘れられない過去が綴られています。ホームズのもとに届いた依頼はスカンジナビアの女王との結婚が決まったボヘミアの国王の元へ、皇太子時代に付き合っていた女性がふたりの写真を送りつけると脅迫してきたという内容でした。その強迫してきたアイリーンという女性との対決が思い出として綴られています。久しぶりに会ったワトスンが太ったことを見て、結婚生活が似合っているとか少し前に風邪をひいたことなどを言い当てるホームズの奇人っぷりも楽しめる作品です。

コナン・ドイルは、本作に収録されている「まだらの紐」をホームズ短編の中で一番のお気に入りの作品と謳っています。依頼者のヘレンには双子の妹で、亡くなった母がおり、双子のそれぞれが結婚するときにその財産の半分ずつを相続することになっていました。その間に遺産を管理していたのが義父のグリムズビー・ロイロットです。しかし結婚することになった姉のジュリアは妹に「夜中に口笛の音が聞こえる」と告げ始め、ある日突然「まだらの紐」という謎の言葉を残して死んでしまい、ホームズのもとへ依頼にきたのでした。本作でもホームズの冴えわたる観察眼が見られるほか、姉と同じように死の危機に瀕したヘレンを守るための対決などが書かれていて面白いです。

他にも謎の赤毛による組織を描いた「赤毛組合」や、実際の人種差別集団を扱った「オレンジの種五つ」など、一風変わった事件が多く取り扱われています。魅力的なキャラクターであふれたシャーロック・ホームズの宝箱のような短編集です。コナン・ドイルの作品を初めて読む方にもおすすめしたい一作です。

復讐殺人の影に隠された悲しい恋物語

コナン・ドイルが開業医時代に書いた『緋色の研究』はシャーロック・ホームズが登場する記念すべき第1作目です。ホームズの相棒であるワトスンの回想録という形を取っており、2部構成になっています。

第1部ではイーノック・ドレッバーという身なりの良い紳士が毒殺された事件をホームズが鮮やかに解決する様子が描かれています。第2部ではジェファースン・ホープ青年がモルモン教徒の町で恋人を略奪される経緯が書かれ、それら2つの章が繋がり合うことで物語が完成するのです。

著者
アーサー・コナン・ドイル
出版日
2006-07-12

「シャーロック・ホームズ」シリーズの記念すべき第1作目ということで、世界一有名なコンビ、ホームズとワトスンの出会いが書かれています。ホームズがワトスンの軍医経験と負傷して帰ってきたことを言い当てるシーンでは、ホームズの鋭い観察眼と超人的推理力が描かれており、圧倒されます。クセのあるキャラクターたちのやり取りも面白いです。

19世紀の退廃的なロンドンの雰囲気が読めるのも本書の魅力です。そのものものしい雰囲気の中、空き家に横たわる死体や、復讐の文字などおどろおどろしい雰囲気が謎解きにという過程にマッチしています。古めかしい文章まで作品全体の雰囲気を作っている至極のミステリーです。

名家に潜む魔犬―名探偵が暴いた闇―

名家の当主を殺したのは、恐るべき魔犬だった……。

アーサー・コナン・ドイル著作『バスカヴィル家の犬』。探偵小説の世界的傑作「シャーロック・ホームズ」シリーズの1つであり、『緋色の研究』・『四つの署名』などと並ぶ数少ない長編作品でもあります。

物語は、名家バスカヴィル家の当主が怪死を遂げたことから始まります。被害者の知人から依頼を受け、調査に当たろうとするホームズ。しかし当の本人は別の仕事を抱えており、やむを得ず助手のワトスンが代わりに現地へ行く事に。

怪物は本当に実在するのか。そしてなぜ、バスカヴィル家の当主は死ななければならなかったのか。謎を追いかけていく中、2人が見た真実とは……。

著者
アーサー・コナン ドイル
出版日

本作を読み進めて行く上で、何といっても欠かせないのは幾重にも仕込まれた謎の数々です。挙動不審な態度の執事夫婦。付近の刑務所から脱獄したという凶悪犯。湿地帯に響くおぞましき叫び声と、事件当時目撃されたという巨大な怪物。

一見何の共通点も無いように見えるキーワード群ですが、読み進めていくと、それぞれの根幹に括り付けられていた繋がりが紐めいて浮かび上がり、あたかもパズルのように組み合わさっていく快感が生じます。

他のシャーロック・ホームズ作品にも言える事ですが、これぞまさにコナン・ドイル流の推理トリックと呼べるでしょう。

また、本作の特徴として物語の大半を助手のワトスンにスポットライトが当てられている所も見逃せません。ホームズの快刀乱麻ぶりに隠れて日頃今一つ影が薄いワトスン。そんな彼がホームズの助けなしで奮闘する前半部分は、どことなく危なっかしさ漂う微笑ましさとスリルがあり、読み手の側に等身大の楽しみを与えてくれます。

後半以降はホームズと合流し、いつも通りの掛け合いを繰り広げていきますが、そうした掛け合いの中にも2人ならでは親しみがあり、前半部分とは異なる喜びが味わえるでしょう。

かつて悪逆の当主を喰い殺したという『バスカヴィル家の犬』。果たして作中で目撃された怪物とは、甦った伝説そのものなのか? それとも伝説を悪用しようと目論む黒幕の陰謀なのか? 真実は是非、本作を読んで確かめてみて下さい。

世界中で任務を遂行する勇将の回想録

「シャーロック・ホームズ」シリーズがあまりにも有名なコナン・ドイルですが、歴史小説にも挑戦しています。ドイルはナポレオン配下のフランスについて勉強し、エティエンヌ・ジェラール准将を生み出しました。本書『勇将ジェラールの回想』は主人公ジェラールによって語られた様々な武勇伝が綴られた短編小説のような体裁をなしています。

著者
コナン・ドイル
出版日
1971-01-15

最大の魅力はなんといってもジェラール准将というキャラクターでしょう。美男子で、剣の腕も乗馬の腕も達人級です。そんな彼には女に弱いという弱点もあります。まるでジェームズ・ボンドの騎士版のような彼が世界中を舞台に活躍する様子が面白い冒険活劇です。

また歴史小説と名を打つように、本書には歴史が描かれているのも面白いです。フランス軍側を描いているので、当時のイギリス軍との戦いが展開されます。外国側から見た当時のイギリス軍に対する意見など、イギリス人であるコナン・ドイルだからこその見方も興味深いです。

古生代の生物にロマンを求めて

『失われた世界』は恐竜をテーマにしたSF小説です。物語は古生物学者のチャレンジャー教授がアマゾン流域で死亡したアメリカ人の持っていたスケッチブックを見つけるところから始まります。そこには見たこともない古生代の生物が描かれていたのです。まだ見ぬ失われた世界を目指して、チャレンジャー教授は探検隊を組んで、アマゾンの秘境へとのぞむのでした。

著者
コナン・ドイル
出版日
2016-03-11

色々な古生代の生物が出現する本書が面白くないわけはありません。肉食恐竜に襲われたり、猿人に連れ去られたりと、緊張したシーンの連続が魅力的です。また古生代の生物が存在していたという夢を世間から嘲笑されており、自分たちを証明しようと奮闘する様子に感情移入もできます。

 

修道院で育った少年の出世物語

実際にあったナヘラの戦いを題材にして、コナン・ドイルは『白衣の騎士団』を執筆しました。修道院で育ったアレインは父親の教えを守り、気高い騎士であるサー・ナイジェル・ローリングに従士します。射手として騎士団に入ったジョンと共に戦争の渦中へと巻き込まれていきます。

著者
コナン ドイル
出版日

本書は修道院しか知らなかった青年が外の厳しさや人々の優しさを知っていくという子供向けの内容になっています。ストーリーも勧善懲悪でわかりやすく、個性的な仲間や結婚などのサクセス・ストーリーもあって面白いです。

子供向けの内容ながら、歴史的考察などがあるのも本書の魅力です。イングランド皇太子で黒太子として知られるエドワードやフランス軍指揮官のベルトラン・デュ・ゲクランなど実在の人物が登場しており、実在の事件を中心に物語は進みます。歴史好きが見ても楽しい内容です。

アーサー・コナン・ドイルはシャーロック・ホームズだけでなく、多くの魅力的なキャラクターやシリーズを生み出しました。推理、歴史、SFとそのジャンルは多岐にわたり、多くの人々を楽しませてくれます。

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