中村航おすすめ文庫ランキングベスト5! 甘く切ない恋愛小説

更新:2021.11.24

雰囲気のある文体で恋愛小説を綴る中村航。バンド経験を活かしてなのか、心地よい音楽が聴こえてくるような作品が多いのです。 中村航の作品のおすすめを5作ご紹介します。

ブックカルテ リンク

バンド活動を経て、執筆活動に入った中村航。

中村航は1969年に岐阜県大垣市で生まれ、岐阜県立大垣北高等学校を経て芝浦工業大学工学部工業経営学科を卒業しました。

卒業後はメーカーでエンジニアとして勤務。27歳のときに、10代から続けていたバンドをやめて時間を持て余していたときに、友人にすすめられて中村航は小説を書きはじめました。

2002年、『リレキショ』で文藝賞を受賞してデビューしました。

著書の表紙イラストは、中村航が盟友と読んでいるというイラストレーター・宮尾和孝が担当することが多く、作品によっては章扉や挿絵も描いています。

2015年より、ナカムラコウ名義で「月刊ブシロード」で連載されている漫画「BanG_Dream!(バンドリ)[星の鼓動(スタービート)]」の原作も担当しています。

また、中村航はスーパーダッシュ小説新人賞、日本ケータイ小説大賞などの選考委員も務めました。

5位:普通な恋愛こそが「最強」 『絶対、最強の恋のうた』

陽気な中学時代、クールな弓道部員の高校時代を経て、大学生になった「私」は恋をすることにしました。「今度は的じゃなくて、別のものを射抜くことにしたんです。例えば男子とか」と、遥か遠くから歩いてくる同学年男子に声をかけて……。
 

著者
中村 航
出版日
2008-11-07

ボーイミーツガール物語です。男女双方の視点で描かれていく展開と、登場人物、鍋の魚肉ソーセージや水族館のハリセンボンやマンボウといった、ところどころに出てくる小道具を中村航は丁寧に描き上げています。

タイトルには「最強」とありますが、平凡でよくある日常の恋愛が描かれています。だからこそ、感情移入して、共感できるのでしょう。

とても楽しくて、おもしろくて、元気になれてしまう魅力的な恋愛小説です。ほんとうに「最強」の中村航作品。ぜひ読んでみてくださいね!

4位:謎のラジオ番組がつなぐ『星に願いを、月に祈りを』

夏のキャンプの夜。小学生のアキオ、大介、麻里は、ホタルを見るため、宿を抜け出して川に向かいました。川にたどり着いた3人は、偶然、謎の深夜放送を耳にします。

高校生になったアキオは、夏休みに再びキャンプ場を訪れ、あの謎のラジオ番組を聞き……。
 

著者
中村 航
出版日
2013-06-06

ひとつのラジオ番組で繋がる、中村航の連作短編集です。最後まで読むと、そのラジオ番組の謎も解け、すべてがつながっていきます。

綴られる言葉が美しく、最後はどうなったのかをはっきりとは書かず、読者に想像させる形になっています。本編中に出てくる「からすとうさぎの物語」も捉え方次第でどう返ってくるかが変わる象徴のようです。

たくさんの音楽が流れる作品なので、その曲を聴きながら読んだり、タイトル通りに合間に夜空を見上げてみたりしても良いかもしれません。とても優しい気持ちになれる中村航の作品です。

3位:これが、運命の恋。『僕の好きな人がよく眠れますように』

東京の理系大学の大学院生である「僕」は、運命のひと――北海道からきた研究員の斉藤恵(めぐ)と出会いました。

日夜、一緒に研究を続けていくうちに、「僕」はめぐへの思いを募らせて、誰とも付き合えない事情を持つ彼女と許されない関係へと……。

「出会ってから楽しかったこと。一緒にいるときの自分が好きなこと」、「ずっと優しくいられる気がすること。空かないフタでも、開けられる気がすること」……運命のひとと出会ってしまったときの心模様がこんな言葉で綴られ、なんだか羨ましい気持ちになりました。

著者
中村 航
出版日
2011-01-25

一生に一度の運命と思える人に巡り合ってしまったのに、その相手は恋してはいけない理由があって、それでも思いが止められなくて……という過程が巧みな文体で描かれています。よくないことなのに「恋っていいな」と思ってしまうくらいです。

だめだと分かっているのに、好きになってしまう。そんな淡く切ない恋愛小説として完成度の高い中村航の作品です。ぜひ手にとってみてください。

2位:なにかを失っていく純愛物語『100回泣くこと』

実家で飼っていた愛犬・ブックが死にそうと連絡を受けて、「僕」はバイクで帰ることを決めます。ブックは2ストバイクのエンジン音が大好きだったのです。

4年ほど乗っていなかったバイクをともに修理しながら、「僕」は彼女にプロポーズし、彼女は「結婚の練習をしよう」と答えてくれました。愛犬も一命をとりとめ、バイクも動くようになり、幸せはずっと続くと思っていたのに……。

著者
中村 航
出版日
2007-11-06

中村航の純愛物語です。心温まる幸せな日常、死に直面した際の感情が淡々と描かれていきます。

それがやがて失われていくのですが、幸せな描写がしっかりとあるだけに余計に悲しくて切なくなるのです。

登場人物も、「僕」と彼女の距離感も、物語の展開も自然で読みやすい中村航の作品。読みながら、自然に涙が滲むことでしょう。

1位:あの時と今が切なくリンクする『あのとき始まったことのすべて』

営業マンとして働く社会人3年目の「僕」は、中学時代の面影を残す同級生・石井さんと再会し、楽しい思い出がよみがえり、別の新しい感情も芽生えていきます。

そして、一夜をともにしたあとに待っていたのものは……。

著者
中村 航
出版日
2012-06-22

とても心に切なさの残る中村航の恋愛小説です。

「人生でいちばん笑わせたひと」といっしょにいられるのは幸せなことでしょうし、そう思える誰かの存在は大切で素敵なものになるに違いありません。そんな姿が描かれています。

激しい感情のやりとりではなく、淡々と展開は進むからこそ、それが胸に染み込んでいくのです。

ベタな設定かもしれませんが、中村航の手にかかると切なくて、甘酸っぱくて、最高にピュアでさわやかな作品に仕上がるのだと、改めて驚かされました。

幸せにしたい、幸せになってほしい大切なひとがいるひとたちにぜひ読んでほしい1冊です。


ピュアで切ない恋愛小説を描く中村航。恋愛だけでない大切ものにも気づかせてくれる作品ばかりですので、ぜひ読んでみてくださいね。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る