朱川湊人のおすすめ小説ランキングベスト6!ノスタルジックなホラー世界

更新:2020.12.15

昭和30〜40年代の下町を舞台に繰り広げられるホラーを得意とする作家、朱川湊人。2005年には『花まんま』で直木賞を受賞しました。今回はそんな朱川湊人のおすすめ小説を6作品、ご紹介します。

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直木賞受賞作家、朱川湊人とは?

朱川湊人(しゅかわみなと)は2002年、短編「フクロウ男」がオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビューを果たした小説家です。

デビューからわずか3年後、『花まんま』で直木賞受賞を果たし、一躍人気作家となりました。短編を得意としており、作品の多くは短編集となっています。また、特撮好きがきっかけとなり、『ウルトラマンメビウス』の脚本を手掛けたこともあります。

朱川湊人の特徴は、ノスタルジックな世界観です。小説のほとんどが昭和30年代から40年代の下町を舞台としています。懐かしさを感じる舞台に、ホラー要素を加えて人情味や人の残酷さをじわりと描き出します。恐ろしくも悲しい、または優しい物語を描き出すことに長けた小説家です。

6位:徹底的に、救いようのないストーリー?

姉は、17歳を目前に自殺しました。悲しむ家族の中でも母の神経衰弱は一際ひどい状況。そんな母の元に、姉の友人と称する少女が現れます。少女は上手に母に取り入り、弄び始めます。主人公の弟は怒りを覚え、行動に出るのですが……。

著者
朱川 湊人
出版日
2009-08-20


『水銀虫』は2006年に発表された短編集です。本作に収録されている短編は、どれも濃密なホラー。自殺やいじめ、カニバリズムといった重々しいテーマが設定されており、胸やけしそうなほど嫌な内容となっています。現代を舞台としていますが、秘密基地や狭苦しい喫茶店など懐かしさも感じさせます。

本作の魅力は、救いようのなさでしょう。登場人物の多くは、日々を一生懸命に生きている善良な一般人です。しかし突然不幸が襲ってきて、成す術もなく奈落の底へ突き落とされるのです。読後まで残る苦々しさを味わいたい方に、おすすめの1冊です。

5位:朱川湊人が描き出す、グロテスクで美しい世界……

早苗は、妹を病気で失います。そんな妹の最後の写真は、無理やりな笑顔に瘦せこけた姿。早苗は死体の写真を撮ってくれる仕事を知り、新たに妹の写真を撮ってもらおうと決意するのでした。やってきた若いロシア人女性のカメラマンは、妹を美しく飾り立て、きれいな写真を撮ってくれました。早苗はそれに満足し、葬儀を執り行います。その後、妹が入院していた病院の師長が訪ねてきて、妙なことを言うのです。妹さんは本当に火葬されたのですか、と。師長は15年前に起きた奇妙な出来事を語り始め……。

著者
朱川 湊人
出版日
2010-01-30


2006年に発表された短編集『赤々煉恋』。収録作品「アタシの、いちばん、ほしいもの」を原作として、2013年には『赤々煉恋』のタイトルで映画化されています。どの短編も愛や性をテーマとして描きながら、死体や四肢欠損を愛好する性癖といった特殊さも描き出します。それだけに他作品とは違った怖さがあるのです。

魅力は、グロテスクかつ美しい世界にあるといえます。本作の性愛は一般には理解しづらいグロテスクなもの。しかしそこにある愛は、純粋で美しいのです。この2点がうまく絡み合い、独特の世界観を作り上げています。

4位:日本ホラー小説大賞短編賞受賞作!

除霊アシスタントであるジュンは、霊魂を体内に入れることが仕事です。ジュンは仕事中、白い部屋にいるように感じていました。ある日、霊魂が抜けた少女エリカを救うことに成功します。しかしジュンは白い部屋でエリカと語ったことから、彼女に恋をしてしまうのでした。ジュンの恋は、どのように展開していくのでしょうか……。

著者
朱川 湊人
出版日


『白い部屋で月の歌を』は2003年に発表された、2つの中編を収録した作品です。表題作は日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しています。表題作は霊の存在が前提で、もう一つの「鉄柱」は幸せを絶頂に迎えた人が鉄柱で首をくくるという風習がある田舎を舞台にしたお話です。両作品ともに、ノスタルジックな田舎を舞台にゆったりと忍び寄る怖さがあります。人間の本質を問われているようなラストには考えさせられはず。

本作の魅力は、切なさです。表題作は幻想性の強い物語の中で、ジュンの特殊な体質から叶うことの恋の切なさを、「鉄柱」は哲学的考察を加えた中で、生きることの切なさを描きます。異なる切なさが胸に突き刺さってくることでしょう。

3位:朱川湊人の直木賞受賞作!

妹はまだ4歳。でも、いきなり大人びた発言をするようになりました。彼女は、自分は「繁田喜代美」という女性で、21歳の若さで突然暴漢に襲われ、命を失ったと語り出します。当然、兄は戸惑いますが、妹の記憶にある彦根にある生家を一緒に訪ねることにしました。生家を目の前にした兄妹はなにを見て、どう行動するのでしょうか……。

著者
朱川 湊人
出版日
2008-04-10


2005年に発表された短編集『花まんま』。同年、第133回直木賞を受賞した作品でもあります。どの話も大人が子ども時代を回想する形になっており、不思議な現象や生き物が出てきます。幽霊や墓場といった死と関連しているモチーフが多数描かれおり、それが様々な生をくっきりと浮かび上がらせることに成功した作品といえるでしょう。

本作の魅力は、大阪を舞台としている点です。登場人物の多くは関西弁を使います。それが昭和30年代の下町の雰囲気と非常にマッチしており、どの作品にも感じられるノスタルジックさをより強く感じることができるのです。

2位:失われつつある昭和の風景と人情

物語の舞台は昭和30年代の東京都足立区です。小学生の和歌子は、母親と姉の鈴音の3人で仲良く暮らしています。

美しく優しいけれど病弱な姉の鈴音には、ある秘密がありました。鈴音には過去に起こった出来事や人の記憶を「見る」能力があるのです。鈴音はその能力をずっと秘密にしていたのですが、ある出来事から和歌子にだけは秘密を打ち明け、誰にも言わないよう頼むのでした。

ある日、和歌子の同級生の男の子が車に当て逃げされるという事件が起こり、和歌子は姉ならば逃げた犯人が「見える」のではないかと思い姉に協力を頼みます。繊細な鈴音は事故現場を見るのを怖がるのですが、「かわいそうな同級生と悪い人を放っておいてはいけない」という和歌子の言葉に動かされ、事故現場に行き犯人の顔と車を「見る」のです。

和歌子はお巡りさんに姉の見た事を伝え、同時に姉の秘密も打ち明けてしまいます。するとそのお巡りさんは、内緒にするという和歌子との約束を破り、鈴音の能力を神楽という刑事に話してしまうのでした。突然姉妹の元を訪れた神楽は、鈴音を未解決の一家惨殺事件の未だ血の跡が残る現場に連れて行き、犯人を「見る」よう要請します。以後、鈴音は何度も事件現場や容疑者を見せられることになるのでした。

著者
朱川 湊人
出版日
2009-02-25

神楽は事件解決に行き詰まると鈴音を頼り、和歌子は病弱な姉が「見る力」を使うと極度に気力体力を消耗することを知っていながらも事ある毎に姉の力を当てにしてしまいます。それはまるで、一度便利なものを知ってしまったら元の生活には戻れないといった人間の営みを象徴するかのようです。

この物語は、少女が不思議な力で事件を解決するという単純なものではなく、見るだけでは分からないこと、見たものには必ず別の側面があるという事を教えてくれます。主人公の少女たちはまだ幼いため見たものを見たとおりに捉えてしまいますが、いくつもの失敗を経て、「目に見えないものを見る」ということを学んでいくのです。そして姉妹の秘密を知らないはずの母が時々に発する言葉は、どんな時代にも人にとって大切な事を思い出させてくれます。

1位:朱川湊人のデビュー作を含む短編集!

茶色のコートに、サングラスをかけた男は「ほーうほーうほーう」とフクロウのような鳴き声を出します。同じように答えなければ、殺されてしまうという都市伝説「フクロウ男」を作ったのは「私」。「私」はフクロウ男について自ら広め、同じ格好で夜の街をさまよいます。そしてその行動は、どんどんとエスカレートしていくのでした……。

著者
朱川 湊人
出版日


『都市伝説セピア』は2003年に発表された作品で、デビュー作「フクロウ男」を含む短編集です。また、第130回直木賞の候補作でもあります。

昭和の時代に流行った都市伝説を題材としたホラー短編集である本作は、幽霊が出るような作品は少なく、主に常軌を逸した人間の狂気を描き出します。それでいて心を揺さぶるようなラストを描く作品もあり、思わず涙腺がゆるんでしまいます。

じんわりとした怖さが魅力の本作。どの短編の設定も奇妙さはなく、比較的ありがちといえます。しかし読者は、柔らかく詰め込み過ぎない文章により、恐ろしさがじんわりと襲ってくることを感じられるでしょう。

以上、朱川湊人のおすすめ小説を5点、ご紹介しました。ノスタルジックな世界の中で、様々な趣向のホラーを展開します。多くが短編で読みやすいですので、気軽に挑戦してみてください。

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