平山夢明おすすめ小説ランキングベスト6!文庫で読めるスプラッタホラー

更新:2021.11.24

平山夢明の小説は読むのが辛くなるほどグロテスクなのに、どこかページを繰る手が止まらなくなってしまう魅力があります。今回はそんな彼の魅力が伝わる作品をランキング形式でご紹介します!

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グロテスクな世界観が癖になる、ホラー作家平山夢明

平山夢明はホラー作家です。ホラーといってもジャンルは様々ですが、彼の描くホラーはグロテスクな面を前面に出したスプラッタホラーが多くあります。酔ってしまいそうなほど強烈な世界なのですが、それがだんだん癖になってくる稀有な作家です。またラジオパーソナリティーや映画批評など、幅広く活躍しています。

学生時代にホラー映画製作に熱中し、テレビ番組で賞をもらったことも。別名義でホラー映画の批評もこなしており、そのかたわらで短編小説を執筆していました。このミステリーがすごい!国内部門1位を獲得した作品は日本推理作家協会賞も受賞しています。ホラーの新境地を開き続ける作家のひとりともいえるでしょう。

6位:平山夢明が描くホラーの極み

平山夢明『他人事』はホラーの極みの短編集。常人が頭の中で想像してしまった、ひどい話を文字にしたうえに書籍化してしまった、そんな雰囲気です。

「たったひとくちで...」は、テレビで活躍するタレント料理人の娘が誘拐され、誘拐犯が作ったシチューを食べたら娘は解放する、という物語。そのシチューで煮込まれていたものはいったい?それを一口食べただけで見破った料理人とは?

「定年忌」は定年のセレモニーを終えた途端、会社や社会、あるいは家族からののセーフティーネットから放り出される物語です。放りだされるというのは無視される、相手にされなくなるという生易しいレベルではありません。国家の法律からも生きる価値なしと定められた上に、誰彼となく、これまでの恨みつらみをまとめて報復されるというものです。実際、とてもその後生きていけるとは思えません。

著者
平山 夢明
出版日
2010-08-20

会社現役時代に犯した数々のハラスメント、あるいは勘違いかもしれないが立場上疑われてしまうような数々の行動。そういった事項が本人たちの恨み、つらみにつながったら嫌だなという思いは、たいていは一時の妄想や想像で終わりますが、その妄想や想像を極めて具体的な記述で鮮やかに物語にしてしまうのが平山夢明なのです。

凄惨な表現は気持ちの良いものではありませんが、恐ろしいもの見たさからか、読み込んでしまいます。

具体的で詳細に記述されているホラー表現に戸惑いながらも、新たなストーリー展開を見せる平山夢明から目が離せません。

5位:「このミス」第1位を獲得した平山夢明の人気作を収録

『独白するユニバーサル横メルカトル』は短編集です。表題作「独白するユニバーサル横メルカトル」は日本推理作家協会賞短編部門を受賞するなど、高い評価を受けました。語り手が地図帳という、今までになかった斬新な設定が独特の魅力を生み出しています。

タクシー運転手が持つユニバーサル横メルカトル図法の地図帳が、主人とその息子の所業を丁寧な口調で語ります。この地図には自我があり、タクシー運転手の主人に献身的に仕えていました。最短ルートを提供しつつ、状況に応じて臨機応変にルートを示す献身ぶり。

著者
平山 夢明
出版日
2009-01-08


そんな地図の主人はタクシー運転のストレスから、シリアルキラーの殺人鬼に変貌してしまいました。地図には死体を埋めた場所が記載されていきます。しかし男はあっけなく亡くなってしまい、地図を受け継いだのはその息子でした。彼は救急隊員でしたが、父親と同じように殺人鬼への道を進んでしまいます……。

ユニバーサル横メルカトル図法は古い地図なので、語り口もやけに古めかしく丁寧です。主人に仕える執事を連想させます。例えば、地図の自己紹介。

「申し遅れまして相済みません。私は建設省国土地理院院長承認下、同院発行のユニバーサル横メルカトル図法による地形図延べ百九十七枚によって編纂されました一介の市街道路地図帖でございます」
(『独白するユニバーサル横メルカトル』より引用)

これまでもこれからも、こんな自己紹介をしてくる地図は現れないでしょう。ただグロテスクなだけではなく、個性的な着眼点も平山夢明の魅力といえそうです。

4位:不気味な家族に隠された秘密

『メルキオールの惨劇』の主人公12(トゥエルブ)は人の不幸をコレクションする依頼人のために、ある人物に接触します。自分の息子の首を落とした母親。彼女はどうしてそんなことをしたのか?事件を追っていくうちに、ある信じられない真相にたどり着きます……。

全くないとは言えませんが残酷な描写が他の作品に比べて控えめで、ミステリの雰囲気も漂っているので、入門編におすすめです。そして平山夢明の書くセリフの応酬もどこか滑稽でくすっと笑えてきます。

著者
平山 夢明
出版日


「良い後家だが……」
「気が強い」
「ああ、気が強い。なにしろ後家だからな。後家は気が強くなくっちゃ」
「良い尻だ」
「ああ、良い尻だ。なにしろ後家の尻だからな。後家の尻はああでなくっちゃ」
「金がいるんだな」
「ああ、金がいるな。なにしろ後家は物いりだ。後家の台所は火の車でなくっちゃ」
(『メルキオールの惨劇』より引用)

そんなコミカルなやりとりをいれながらテンポよく進んでいく本作。爽快な読後感とは言い難いですが、絶対に忘れることのできない内容となっています。続編を望む声も上がるほど、引き込まれるものがある1冊です。

3位:条件が整ったとき、「それ」は発動する

『ミサイルマン』は短編集です。その中でも一番衝撃的な作品「枷」という短編をご紹介します。「枷(コード)」とは、収集家が自身の行動を制限する縛りのようなものです。しかし副作用も強く、自分で課した条件が揃ったとき、あらがえない衝動が沸き起こります。

主人公は、女性が死を覚悟したとき、超常現象的な力を見せることに気づきます。その力を「顕現」と名付け、引き起こされる現象を収集することに取り憑かれた男。彼は女性たちへの拷問によってその欲求を満たそうとします。

そしてだんだんとエスカレートしていきそうになる行為に、枷をすることで欲求をセーブしようとするのです。その枷とは舞台俳優である主人公ならではのものでした。

著者
平山 夢明
出版日
2010-02-09


「1、そのとき演じている女優と同じアクセサリーを身につけている」
「2、13歳から29歳である」
「3、そのとき演じている役のセリフを主人公に一言でも語りかける」

かなり限定的なものだったのですが、あるとき内縁の妻の連れ子の娘が条件にぴったり当て嵌まってしまいます。苦悩する主人公がとった行動とは?拷問の描写が痛々しいですが、同時になぜか美しさも感じてしまうのは作者の力量なのでしょう。

そしてこの作品、非常に珍しい二人称で話が進んでいくのですが、それがまた薄気味悪さを演出しています。

「あなたは女の上に馬乗りになると今度こそ思い切り首を絞め始めた」
(『枷』より引用)

まるで自分がしているのかと錯覚を起こしてしまいそうなほど、「あなた」と呼ばれ物語が進んでいくのが辛く、残酷です。その効果が功を奏したのか、ラストはある種の爽快感さえ覚えさせられます。平山夢明の巧みな技術にうなってしまう1冊です。

2位:平山夢明が描く様々な「死」について

こちら『或るろくでなしの死』も短編集となっています。「或る〜の死」で統一されたタイトルが7編収録されています。社会的な死、物理的な死、平山夢明は自身が想像し得る死という概念について、様々な角度から描いています。

「或る嫌われ者の死」は世界中に病気を振りまいたため徹底的に嫌われるようになった日本人のひとりについて。「或るごくつぶしの死」は頭が少し弱い女を孕ませてしまい社会的に死んでしまう浪人生について。どれも濃い話ばかりですが、おすすめは表題作「或るろくでなしの死」です。

著者
平山 夢明
出版日
2014-10-25


殺し屋のヨミは殺害現場の一部始終をサキという少女に見られてしまいました。半ば脅されながらサキの請うハムスターを買ってやるのですが、サキはハムスターの頭を石で割って殺してしまいます。どうしてそういうことをするのか、その陰にはカネコという男の存在がありました。

勧善懲悪がはっきりした読みやすい作品です。サキは母親から虐待を受けていたりと悲惨な身の上なのですが、ヨミとの間にそこにそこはかとない友情が生まれたような雰囲気で描かれます。この作品もグロテスクな場面は出てきますが、結末のおかげでむしろ晴れ晴れとしてくるほどです。

この短編集は平山夢明得意のスプラッタホラーを扱った収録数は少なめです。その代わり、見殺しにされたり、存在をないものとされたり、精神的に心を抉ってくるものが多くなっています。それが全くの想像、と言い切れないどこか身近なところにある物語たちはこれもまたある種のホラーなのかもしれません。

 

 

1位:殺し屋の巣窟で命がけの仕事!平山夢明の代表作

平山夢明といえば『ダイナー』というほど、有名な作品です。主人公のオオバカナコは、軽い気持ちで闇サイトの話に乗ってしまうのですがそれが失敗。激しい拷問の末に怪しい会員制の「ダイナー」という食堂のようなところでウェイトレスをするはめになります。ダイナーの会員たちはプロの殺し屋で、カナコはいつ殺されるかわからない危険な状況で過ごすことになります。

「掃除だ。流しから始めろ。道具は下の物入れにある。スポンジだけは使い捨てにして良い。いいか、全て舐められるぐらい、きれいにするんだ。忘れるな、それがお前の命綱だ」
(『ダイナー』より引用)

著者
平山 夢明
出版日
2012-10-05


身一つで売られ、明日の命の保証もないカナコが、一癖も二癖もある殺し屋たちや、店主のボンベロと交流し、成長していく物語です。作者から大バカな子、と名付けられたカナコ。けれども過酷な状況ながらも一生懸命生きようとする彼女の姿に、どこか元気をもらえます。

ちなみにこの作品のもう一つの魅力はボンベロが作る料理です。読んでいるとまるでその温度も伝わってくるかのような描写力です。そしてその信じられないほど美味しそうな料理と残酷なシーンの描写の対比が素晴らしい。殺し屋という死と隣り合わせの舞台で活躍する人物たちが、ダイナーに来て食事をする。そこには確かに命を繋ぐ生を見出せます。生と死をひとつの物語に書き込んだ、平山夢明の実力が発揮された名作です。

いかがでしたか?最近刺激が足りない、変わった物語が読みたい、そう感じている人にぜひおすすめしたい作家が平山夢明です。常人では思いつかないような奇抜な設定、世界観、そしてそれを構築する文章力は彼ならではのもの。気味が悪い、グロテスク、とよく評されますが、ファンが多いのも事実。平山夢明の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょう。

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