あたらしい自分になれる。古本市で見つけたディープでキュートな本

更新:2021.12.6

街の風景が変わっていくなか「いつもと違う本が読みたい」そんな思いにかられた事はありませんか? 古本市はそんな皆さんへのおすすめのスポットです。夏の京都・下鴨納涼古本まつりや、秋の神田古本まつり、本だけをフリーマーケットする「一箱古本市」など全国各地で開催され賑わいをみせています。さまざまな古本市をめぐって、わたしはキュートな古本好きな自分と出会いました。今回は特別ディープな5冊を紹介します。

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文学の森に魅惑の短編集

古本市で出会ったらまず買ってしまう、ちくま文学の森シリーズ。全10巻。
安野光雄氏が描いた表紙イラストがディスプレイしたくなるほどに可愛いです。中身も間違いない文学の森から、選りすぐりの精鋭たちが集まっています。ページを開くと独特の行間と書体が目に飛び込んできて心くすぐられました。

名作家の短編はどれも面白そうなタイトルばかり。
言うなればピクニックに出た森で野イチゴをつまんでみる感覚のような。スイーツ食べ放題でひと口ずつ味覚を楽しむような。甘みだけでない大人向けビターな話が深い味わいを教えてくれます。

著者
出版日
2010-09-08

わたしはありのままのわたしとはちがうわ

木のぬくもりを感じさせるような、おしゃれな雑貨屋さんの入り口にあった古本コーナー。
プリティな女の子のポエム集かな、と想像していました。

詩編、物語、会話とさまざまな形に変わる短い文章が64編。共通するのはコロコロと変わる心。文学的な世界を面白がっていると、底なし沼に引きずり込まれる不思議な感覚にさせられます。作者のR・D・レイン氏は精神科医。全てを見透かすような瞳を持った男性でした。
最初の予想は見事に外れましたが、文体のリズムを楽しみたくてふと読み返す一冊です。
 

著者
R・D・レイン
出版日
1978-02-25

この穴、覗くべからず

青空のもとに本好きが集う一箱古本市では変わり種も豊富です。
表紙で笑うカラフルで豊満な美女人形がどうしても気になってしまいました。

ためらいながらも手を伸ばすと、男性店主の方と目があって思わずどきり。
「文化」ですからね。ごにょごにょと言い訳がましいことを心のなかで唱えたりして。
内容もさることながら写真を見ているだけ陽気でゆかいな気持ちになります。

著者
妙木 忍
出版日
2014-03-21

彼らははたして、サイコパスなのだろうか?

心のアンテナを高く伸ばして古本をジャケット買い。のちにとんでもない本だった、と気づくことがあります。思い出してみれば古本市のにぎわいなんて知らん顔。異様な雰囲気を放っていました。

『診断名サイコパス』は1995年に出版され、良心の呵責を持たないサイコパスの存在を世間に広く知らしめるきっかけになった一冊です。サイコパスは身近に潜んでいる可能性があると指摘したうえで、翻訳者の小林宏氏は「(サイコパスに出会ってしまったら)あきらめるしかないのだろうか」と後書きで記していました。その気持ちよくわかります。
とんでもなく面白い本と出会ったら、いつもあきらめるしかありませんからね。

著者
ロバート D. ヘア
出版日

そんなに明るくする必要はないんだよ

夕闇に沈む古本市。
ぽつぽつと灯った街灯と帰り支度を急ぐ人並み。
時間はまだまだたっぷりあります。

照明探偵団団長の面出薫氏は、自らの足と感性を駆使し、90年代、夜の街に灯る照明を探し歩きました。「夜の街の中に気持ちのいい景色を作りたいと思って」と警察の職務質問にも負けない信念ったらすごい。街はイルミネーションがきらめきはじめました。自分の足で、目で、肌で感じてこれからもいろんな「好き」ハンティングしていきたくなります。

著者
面出 薫
出版日
1998-04-07

歩いて探し見て触り、読んで驚き五感を刺激される古本市。最初はなじみにくい古本の世界ですが、次第に知らない自分がムズムズと目覚めてくるのが分かります。

そして一冊の本を介して生まれるコミュニケーション。本との出会いが人との出会いにつながると面白くてやめられません。 
みなさんはこれからどんな本に出会うのでしょう。 
古本市で見つけたとんでもない本、ぜひ教えてください。

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