2016年には『植物図鑑』が映画化されるなど映画化やテレビドラマ化も多数されている作家有川浩。今回はそんな有川の執筆した作品の中でおすすめの作品を紹介していきたいと思います。
1972年生まれで高知県出身の有川浩は、子供の頃から物語を書くのが好きで、遊び道具が文学だったんだとか。
2003年『塩の街』で電撃ゲーム小説大賞を受賞し、翌年同作でデビューを果たします。ペンネームが一見男性のようで、間違える方も多いようですが、有川浩は女性作家です。
作品には、読んでいてドキドキしてしまう“ラブコメ要素”がふんだんに取り入れられていて、登場人物の設定やストーリー展開もとても分かりやすく、若い女性たちから絶大な人気を誇る作家です。
こちらは映画化、アニメ化、漫画化され、知っている方は多いと思います。図書館戦争シリーズは『図書館戦争』を1作目として『図書館内乱』、『図書館危機』、『図書館革命』と4作あり、そのほかに本編とは別に『別冊 図書館戦争Ⅰ/Ⅱ』があります。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
舞台となるのは2019年の架空の日本。公序良俗を乱し人権侵害をする表現を規制するために「メディア良化法」という、メディア良化委員会が不適切だと判断したものは検閲を受ける法律が制定されています。検閲執行の際に妨害行為を行うならば武力制圧も行われるといった過激な法律であり、その法律に唯一抵抗した存在が「図書館」でした。図書館は「図書館の自由に関する宣言」をもとに「図書館の自由法」を制定し、良化特務機関と長きにわたり対抗していました。
主人公・笠原郁は高校三年生の時に書店で検閲に遭遇してしまいます。どうしてもほしかった本を守りたかった郁は万引きで捕まってもいいと抵抗。そんな窮地に現れたのが図書隊員の「王子様」だったのです。郁は「王子様」との出会いで自分も図書隊員を目指し、全国初の女性隊員とし図書特殊部隊に配属されることになり……。
本編四作はミリタリー、SF要素の強いものとなっており、良化特務機関と図書隊の闘いの日々を描いているものになっていますが、少しずつ恋愛要素が見え隠れするところが面白いところです。
ミリタリー要素より恋愛要素がほしい方は『別冊 図書館戦争Ⅰ/Ⅱ』の2作品がおすすめです。こちらは図書館戦争シリーズを読んでからのほうがより楽しめると思います。併せて作品中に出てくる『レインツリーの国』も出版されているので是非読んでみてくださいね。
自衛隊三部作、とは電撃文庫から出版されている自衛隊を題材とした有川浩の3作品のことを指しており、今回紹介する『塩の街』のほかに『空の中』と『海の底』があります。それぞれ陸、空、海の3つの自衛隊を題材としており、主要な登場人物に自衛隊員がかかわっています。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
『塩の街』は塩害により塩で埋め尽くされ、社会が崩壊しかけた東京を描く物語です。元・航空自衛隊二等空尉の主人公・秋庭高範は塩害により両親を失った女子高生小笠原真奈と出会い、真奈を助けたことから彼女の保護者として生活することになります。塩害により東京が塩で埋め尽くされようとした世界の中で互いに助け合い、惹かれあう、そんな元航空自衛官と女子高生の恋愛SF作品となっています。
塩の街は有川浩のデビュー作品であり、異例の文庫版からハードカバーになった作品でもあります。出版社はもともとハードカバーで出版するつもりでしたが電撃小説大賞で大賞を受賞してしまったがゆえに文庫として出版せざるを得なくなったという作品です。
文庫からハードカバーにするために大幅な改稿を行い、本編のサイドストーリーである『塩の街、その後』も収録されています。大幅な改稿があったために年齢などの細かな設定が多少変わっており、文庫であったシーンがハードカバーでは存在しない、などの変更点があります。設定や存在しないシーンを確かめるべく文庫版とハードカバー、両方買って楽しむのもいいかもしれませんね。
塩害によって自分の身の回りの人が消えていく切なさや辛さ、怖さなどがしっかりと描写されていて切なくなる、泣ける物語です。
自衛隊員の結婚をつづった代表作・ラブコメ今昔を含んだ自衛隊員の恋愛を描いた短編集であり、全6編収録されています。同シリーズに『クジラの彼』がありこちらも自衛隊員の恋愛を描いた短編集となっております。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2012-06-22
作品はすべて自衛隊員の恋愛について書かれてはいるのですが、有川浩の他作品と比べ恋愛要素が強いため、ミリタリー系が絡んだものを読んだことがないという方でもサクサク読めると思います。サクサク読めるのには上記の理由もあると思いますが、もう一つ短編集ならではのテンポの良さもあると思います。
自衛隊ラブコメシリーズの2作品の中から自分のお気に入り作品を見つけてみるのもいいかもしれませんし、これをスタートにしていろんな有川浩のミリタリー恋愛作品を読んでみるのもいいかもしれないですね。
『植物図鑑』というタイトルだけで判断しないでください。これはれっきとした恋愛小説です。写真がいっぱい載っていて、説明文、見ることができる期間などが書いてある図鑑ではありません!ちゃんとした恋愛小説なので安心して手に取ってみてください。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2013-01-11
ある冬の晩、飲み会から帰ってきたOL・さやかがマンションの下で行き倒れている一人の男を見つけるところから始まります。彼の名はイツキ。所持金もなくなり死にそうになっていたイツキはさやかに「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか?」 「咬みません、しつけのできた良い子です」と言い、さやかに一晩止めてほしいと言ってきます。さやかはイツキを部屋に上げて寝床と食料を提供することに。
次の日さやかはおいしそうな臭いで目を覚まします。イツキがご飯を作ってくれたのです。それからイツキとさやかの同居生活が始まり……。
この作品はタイトル通り植物がいっぱい出てきます。そしてその植物の調理法が載っています。なんだか不思議な本です。本編はちゃんと恋愛小説ですよ。この作品を読んで名前のない草はない、という言葉は本当なんだな、と思わされます。定番のフキノトウからノビルまでいろいろな料理に使える野草が出てきます。植物が好きな方におすすめです。
元悪ガキの還暦男性3人が、町のトラブルを解決していく様子を描いた作品で、『三匹のおっさん』・『三匹のおっさん ふたたび』とシリーズ構成になっています。2014年には北大路欣也主演でテレビドラマ化もされました。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2012-03-09
“キヨ”と呼ばれる清田清一は、職場を定年退職しますが、自分が世間から「おじいちゃん」のカテゴリーに入れられてしまうことに不満を持っています。剣道の師範で、姿勢もスタイルも良く、孫の祐希も働いているゲームセンターに再就職します。“シゲ”こと立花重雄は元柔道家で、居酒屋を経営。今は息子の康生が店を受け継いでいます。“ノリ”こと有村則夫は工場経営をしていて機械に強く頭脳派。娘の早苗を溺愛しています。
この、まだおじいちゃんにはなりたくない、元“三匹の悪ガキ”が、“三匹のおっさん”となりご近所のパトロールを開始するのです。キヨの孫・祐希と、ノリの娘・早苗の恋の行方なども描かれ、物語に花を添えています。
まだまだ頼もしい3人が、町の悪を懲らしめる姿が痛快に描かれた、面白おかしくそしてかっこいい作品になっています。
片道15分のローカル線の車内で起きる、様々な出会いや人間関係を描いた連作短編集です。2011年、中谷美紀主演で映画化され注目を集めました。有川浩を読んだことのない方に、ぜひ1番におすすめしたい作品です。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2010-08-05
舞台となるのは阪急電鉄・今津線の車内。電車を利用する乗客たちの、16のエピソードが描かれます。1話1話は短いですが、どんどん視点を変えて描かれる乗客たちの物語が、少しずつ混じり合い、知らず知らずのうちに起こる、人の関わり合いがなんとも絶妙で面白いのです。
図書館好きな男女、恋人を寝取られてしまったOL、優しそうな老婦人、喧嘩を始めるカップルなどなど、登場人物たちはどこにでもいるような普通の人たちですが、皆個性豊かで魅力的です。
読み終わった後に、ほんわかと心が温かくなる物語になっています。普段本を読まない方でも、読みやすく気軽に楽しめる作品なので、とてもおすすめです。
航空自衛隊の広報室を舞台に、元戦闘機パイロットと、美人テレビディレクターの交流を描いた作品です。2013年、新垣結衣主演でテレビドラマ化もされました。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2016-04-12
主人公・空井大祐は、航空自衛隊に所属する自衛官です。空自の花形である、ブルーインパルスのパイロットを夢見ていましたが、突然の交通事故によりパイロット生命を絶たれてしまいます。空井は広報課に異動になり、個性的な先輩たちに囲まれ、慣れない広報官の仕事に苦労する日々を送っていました。
そんな中、空井は帝都テレビのディレクター・稲葉リカのアテンド役を務めることになります。稲葉は気が強く自衛隊嫌いで、報道記者からTV番組のディレクターに異動になったことでストレスを溜めていました。空井を挑発する態度をとる稲葉でしたが、稲葉のある一言が空井の心を傷つけ、それに気づいた稲葉も思わず動揺します。
2人の心情がそれぞれとても細く描かれ、どんどんストーリーに入りこむことができます。徐々にお互いを理解していく2人の姿や、どん底から希望を見つけていく様子を描くと同時に、航空自衛隊という特殊な場所について、とても詳しく説明されています。
思い通りにいかない人生、やりたい仕事ができるときばかりではありませんが、それでも仕事と真剣に向き合い、一生懸命取り組んでいこうとする2人の姿が印象的です。
本書は表題作「クジラの彼」を含む全6篇の短篇で構成されています。有川浩の人気三部作『塩の街』『海の底』『空の中』のうち、『海の底』のスピンオフとして執筆された表題作をはじめ、全篇通して描かれる甘い恋愛模様が読者の心を惹きつけます。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2010-06-23
有川浩と言えば、自衛隊三部作と呼ばれる『塩の街』『海の底』『空の中』をはじめ、自衛隊を題材にして物語を紡ぐことで有名な作家。
表題作「クジラの彼」は『海の底』のスピンオフとして執筆された作品ですが、ドラマティックな展開を見せる『海の底』とは違うテイストに仕上がっています。海上自衛隊に所属する主人公、冬原と、合コンで出会った聡子との恋愛模様。タイトルは聡子が冬原に言った、「潜水艦ってクジラみたい」という言葉から来ています。一度任務についてしまうとなかなか帰ってこられないクジラ乗りの冬原。なかなか会えない聡子との恋愛は少しずつ試練の兆しを見せ始めます……。
今すぐ会いたいと電話越しに訴える恋人に会うため、「脱柵」を試みた自衛隊員の恋愛を描く『脱柵エレジー』も秀作。若い女性と男性の心理をよくついていて、登場人物の心模様に読者も少なからず類似点を感じるはず。少し長いですが、作品中のある箇所をご紹介します。
「…結局のところ、離れて会えない状況を彼女は充分に楽しんでいたのだ。まるで悲劇のヒロイン気分で。たった数日が待てない、というのは少し大げさに言って気分を盛り上げる演出で、それを真に受ける必要などなかったのだ。ごめんな辛い思いをさせて、でも好きだよ。優しくそう慰めて、引き離されて会えない気分を盛り上げてやればそれで良かったのだ。でも、その計算外がそのときは少し気に入ったのだ。基地を脱走してまで私に会いに来ようとする彼、彼に会うために家を抜け出して夜中の電車に乗る私。こんなドラマティックな状況もそうはない。ロミオとジュリエットもかくやの気分で電話を切って、それからはたと我に返ったのだ。」(『クジラの彼』より引用)
何だか身につまされるような、恋愛の核心をつく表現力。甘い恋愛模様の中にも現実感が見え隠れする、絶妙な味加減が魅力の作品です。
SF、ミリタリー、恋愛要素が強い作品が多かった有川浩ですが、今回の作品は大学生たちが繰り広げるドタバタ青春コメディとなっております。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2013-06-26
主人公・元山高彦が入学した電気工科大学には「機械制御研究部」(通称・キケン)というサークルがあり、そのサークル部員は先輩たちの中である意味恐れられている一癖も二癖もある変な男たちでした。入学早々そんなサークルに引きずり込まれた元山と同期生たちは、日々繰り広げられる様々な事件や犯罪スレスレの行為に振り回されていきます。
この作品はスピード感がとてもいいです。今までは恋愛小説にミリタリーやSFを絡めた、またはその逆のものが多かった有川作品ですが、この作品はあまり恋愛要素もつよくなければもちろん学生生活のストーリーなのでミリタリーやSFはあまりないです。恋愛小説のほうが好き、という方にもおすすめの作品となっております。
今回は有川浩の数ある中から8作品を紹介いたしました。どの作品もそれぞれの個性が出ていてとても面白い作品となっています。基本的に自衛隊三部作や自衛隊ラブコメシリーズについては読む順番はありません。この二つは似たような作品の分類と思ってくださってかまいませんが、図書館戦争シリーズに関しては1シリーズ通して設定や登場人物が同じですので、しっかり順を追って読まないとわからなくなってしまうと思います。
有川浩は自衛隊と絡めた作品が多い作家ですがその中にもしっかりと恋愛要素が練りこまれているので、恋愛小説好きにもおすすめです。
他にも有川浩の作品をもっと読んでみたい方は、こちらの記事もおすすめです。
人気No.1恋愛小説家・有川浩のおすすめ文庫作品ランキングベスト10!
有川浩の作品はあらゆる世代からの人気が高く、映像化したものも数えきれないほど。本好き読者による2011年の好きな作家ランキング女性編では、堂々の1位を獲得している作家。そんな有川浩の人気作品をご紹介します。