宮下奈都は1967年生まれ、福井県出身の小説家です。2004年に「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選しデビューを果たしました。
2012年に『誰かが足りない』が本屋大賞で7位になり注目を集め、2016年に『羊と鋼の森』で本屋大賞1位になりました。
本作『よろこびの歌』は、不安定な未来に惑う少女たちが、「歌」をきっかけに心を通わせながら、希望という光に向かって奮闘する。そんな姿を描いた青春小説です。
単行本刊行時には、「読売新聞読書委員が選ぶ2009年の3冊」という企画で、小泉今日子が推奨した事でも話題になりました。
- 著者
- 宮下 奈都
- 出版日
- 2012-10-05
著名なヴァイオリニストの母を持つ御木元玲は、音大附属高校の受験に失敗し、新設女子高の普通科に進みますが、挫折感から同級生とも上手く付き合えません。
この高校には、玲の他に、肩を壊してソフトボールを諦めた早希、霊が見えてしまう史香、実家がうどん屋の千夏、クラス委員のひかり、美術部の佳子など、それぞれ共有できない事情や悩みを抱えた少女達が集まっていました。
物語は、そんな彼女たちの日常が、彼女達の目線で語られてゆきます。
合唱コンクールとマラソン大会、二つの行事を通し、玲は、「やらされる」ことから生まれる反発と、「自発的にやること」から受ける感動の意義を実感します。
スコーレとは、「スクール」の語源となる、学び、遊び、余暇という、3つの意味を一言で表すギリシャ語です。
人生では、中学、高校、大学、社会といった4回の「スコーレ」との出会いがあり、そこには「体験」というかけがえのない教材が山積している!というのがこの作品のテーマです。そのテーマに沿って、麻子という主人公が、13歳の子供の頃から成人するまでの過程を、丁寧に丁寧に綴っています。
- 著者
- 宮下 奈都
- 出版日
- 2009-11-10
話は4部に分かれ、「その1」は主人公の中学時代、「その2」は高校時代、「その3」は社会人になって入社し出向した先での日々、「その4」は本社での勤務生活、といった構成になっています。
学びの場は、常にあなたの直ぐ傍にある事を教えてくれる一冊です。
相手から突然の婚約破棄宣言。主人公の明日羽ならずとも、人生最大の危機に陥る出来事です。彼女は伯母から「ドリフターズ(やりたい事)リスト」を作る事をすすめられます。
このリストを作ることで、彼女は真剣に自分の「心」と向き合うのです。
「私はこれまで悔いなく過ごしてきただろうか」
「相手の意見やその場の空気に流れていなかっただろうか」
- 著者
- 宮下 奈都
- 出版日
- 2013-01-18
「自分の心を見つめ直すこと」「その日その日を一生懸命生きること」で少しずつ成長してゆく明日羽にとって、不味い「太陽のパスタ」も、美味しい「豆のスープ」も、彼女の「明日」には必要だったのです。
「癒しのスープ」がのみたいあなたにおすすめです。
「マイペースで他の子と一歩ずれてしまう男の子」ハルと、「周囲から浮かないよう息を潜める優等生の」遥名。6歳の歳の差のあるふたりが、別々の場所で、恋や仕事や失意を経験しながら、その日を迎えるまでのプロセスを綴った一編です。
物語は数年ごとに、アルバムをめくる様に、時間を飛びながら進みます。ハルと遥名は次第にお互いを愛おしい存在として意識してゆくのですが、ハルが高校生になり遥名が社会人になっても、ふたりの生活は平行線状態で進んでゆき、なかなか交錯しません。
東日本大震災にも触れながら、作者はふたりの紆余曲折を丁寧に描いてゆきます。
- 著者
- 宮下 奈都
- 出版日
- 2014-09-19
平凡でも、「心を許すことができる」、「波長が合う」相手に出逢い、その人を愛する事が出来たら、その人にとってはそれが「最高の幸せ」であると証明する為に、敢えて回り道をさせながら、一極へと導いてゆく語り口に、知らず知らずに引き込まれてしまう作品です。
古いレンガ作りで、屋根に蔦を這わせて建っている小さな一軒のレストラン。店の名前は「ハライ」。誰もが、初めて来たのに懐かしいと感じるようなお店です。
このレストランは、予約を取るのも難しいお店ですから、満席になっているはずなのに、一席ぽつんと空いています。誰かが予約したのでしょうが、そこに誰かがいません。
愛せる誰か、愛してくれる誰か、信じたい誰か、信じてくれる誰か、共に笑い、共に泣いてくれる誰か。
- 著者
- 宮下 奈都
- 出版日
- 2014-10-16
本作は、同じ日同じ時間に「ハライ」に予約を入れた六組の客が繰り広げる日々を綴った短編集です。予約から来店に至るまでのエピソードが、オムニバス的に展開されています。
物語の主人公が抱えている悩みや、苦しみは、人が一度は経験するものばかりです。この本の中から溢れる優しさや癒しに、きっとあなたは救われるでしょう。ドラマチックでなくても、「ちいさな幸せ」が本当の「幸せ」だと感じさせてくれる一冊です。