奥田英朗のおすすめ作品!初心者向けランキングベスト9!

更新:2021.11.25

エンターテインメント性が高く、密度の濃いストーリーが魅力の奥田英朗の作品は、読んでいてハラハラドキドキさせられ、いつの間にか物語の世界に引き込まれてしまいます。ここでは、奥田英朗をまだ読んだことがない方におすすめの作品をご紹介していきます。

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様々な群像劇を描く作家・奥田英朗

1959年、岐阜県に産まれた奥田英朗は、小さい頃は活字とは無縁な少年でした。マンガばかり好んで読んでいたという奥田が、本を読むようになったのは小学校も終わりかけの時期だったそうです。

雑誌の編集者やコピーライターとして活躍したのち、1997年『ウランバーナの森』でデビューを果たします。新人賞などへの応募ではなく、出版社への持ち込みという形でのデビューでした。2001年に出版された『邪魔』が、大藪春彦賞に輝くと、2004年には精神科医・伊良部シリーズの『空中ブランコ』で直木賞を受賞します。

9位:奥田英朗が描くアラサー女子のリアル『ガール』

アラサ―女子の悩める日常を描いた作品です。1話完結の短編集となっており、それぞれの主人公(アラサー女子)が仕事や恋愛など、女性なら一度は経験するであろう様々なことに奮闘する姿を描いています。

 

著者
奥田 英朗
出版日
2009-01-15

5人の女性が中心となって話が展開されますが、いずれもアラサ―ならではの悩みを抱えていて、年齢の近い女性は共感せずにはいられないのではないでしょうか。例えば、「いつまでもキラキラしていたい女子」、「シングルマザーで、子どものために頑張る女子」、「バリバリのキャリアウーマンなのに、どこか充実できない女子」など。

女性ならきっと「私に似ているかも」と共感を覚えてしまうような、そんな「ガール」たちが登場します。また各話にでてくる「あぁ、こういう人いるよね」という、思わず共感してしまうキャラクターの存在も、この作品の見どころです。

私はまだ、「ガール」でいて良いのだろうか?そんな風にふと感じてしまう、愛しき女性たちに送る作品となっています。奥田英朗により、繊細かつリアルに描かれた『ガール』、ぜひ一度読んでみてください。

 

8位:愛すべき「おじさん」たちの物語『マドンナ』

40代、会社では中間管理職といった5人のサラリーマンが織りなす短編集です。世間ではそろそろ「おじさん」の仲間入りをする年齢、いや、もうすでにおじさんか?そんな5人の主人公には、それぞれ会社と家庭があり、時に悩み、迷いながら生きています。

ある主人公は女性上司の下で働くことに迷い、ある主人公は部下の女性に淡い恋心を抱いて迷う。きっと現実でも起こっていることで、同年代のサラリーマン読者ならば、「あるある」と言ってしまうかもしれません。

著者
奥田 英朗
出版日
2005-12-15

家庭や会社で起こる、様々な出来事に悩みながら迷いながら生きる「おじさん」たち。日本を支えるサラリーマンのおじさんたちの日常は、普通だけれど時にドラマチックです。

ちょっとした見栄やプライドがあり、いくつになっても子どもの部分があるおじさん。時に漂う哀愁。憎めない、ちょっと可愛い愛すべきおじさんたちの物語です。

同年代の男性であれば大いに共感しながら読め、主婦の方ならご主人に重ねて、若者であれば、お父さんをイメージしながら。色々な年代の方が楽しんで読める作品です。

7位:圧倒的な人物描写で描かれる、いじめの真相『沈黙の町で』

ある日、中学2年の男子生徒の遺体が学校で発見されます。死因は転落死。当初は事故かとも思われましたが、状況が不可解だったため調べていくと、数々の証拠が出てきます。逮捕される同級生たち。少年は彼らによって「いじめ」を受けていたのです。

著者
奥田英朗
出版日
2016-01-07

『沈黙の町で』はここから様々な事件関係者やその周りの人間の視点で事件の真相を描いていく群像小説になります。

冒頭に「いじめ」という答えが出てしまっているのにもかかわらず、次々と変わっていく視点に奥田英朗の持ち味である登場人物のリアルさが加わり、読者を物語へ引き込ませる作品です。

ひとりひとり、作中でとった行動には彼らなりの理由があるという事を見事に描ききっています登場人物たちそれぞれの心理描写の細かさによるリアリティで、まるで本当にあった事件について調べているような感覚になり、ページをめくる手を止めさせない本作。

最後の畳み方も「いじめ」というテーマへ真っ向から挑んだからこそ奥田英朗が出したこのテーマへの答えなのでしょう。

6位:平凡な日常が、ちょっとした事件でどんどんと転げ落ちていく『邪魔』

奥田英朗の独特な文体で創り上げた少し重めの作品で、2001年に大藪春彦賞を受賞しました。

及川恭子は平凡な主婦です。郊外の建売一戸建てに夫と子ども2人の家族4人で暮らしており、近所のスーパーでパートをしています。

あるとき、夫の夜勤先で放火事件が発生、第一発見者の夫は病院に入院するのです。警察の捜査や本社の調査から、「もしかしたら夫が犯人なのではないか?」と疑念を持ったところから、恭子の転落人生が始まります。警察の追及に偽証したり、勢い余ってパート先に市民活動家を引き込み、その活動家に騙されたりしながら、地域やパート先でどんどん居場所が無くなっていくのです。

著者
奥田 英朗
出版日
2004-03-15

事件を追う刑事の久野も、どんどん転げ落ちていきます。久野の妻は、7年前に交通事故で死亡しているのです。早すぎた妻の死により、もともと久野は精神に大きなストレスを抱えています。そんなところに上司と先輩の確執という署内のいざこざや、担当となった放火事件取り扱いを巡る捜査方針の微妙な確執等が積み重なっていくのです。そうして久野の周辺も悪いほう悪いほうへ展開していきます。

果たして2人は一体どこまで墜ちていくのでしょうか。あの時あの人の言うことを聞いていなければ、あるいは重要参考として報告しておけば、こんなことにはならなかったのではないか?物語の最後で2人は絡み合い、新たな展開へすすんでいきます。

奥田英朗が、細かいエピソードを丁寧に積み重ねることで、物語の展開スピードを抑制しています。抑制しつつも、どこまでも転落していく様を追体験しながら、その重い暗さにどっぷりとはまってみてください。

 

5位:大人たちの姿を小学生の視点で描いた痛快ストーリー『サウス・バウンド』

型破りなお父さんの姿を痛快に描き、主人公の少年の成長を綴る人気小説です。2007年には豊川悦司主演で映画化もされた作品になっています。

主人公は学校6年生の男の子、長男なのに上原二郎。父である一郎は、働きに行くこともなくいつも家でごろごろしています。

 

著者
奥田 英朗
出版日
2005-06-30

実はこの父親・一郎は、元過激派で国の体制にとことん反発する日々を送ります。年金を払わず督促を伝えに来るおばちゃんと喧嘩し、学校の積立金が高いと学校の先生に食ってかかり、学校へ行く必要はないと二郎に言ってしまうかなりの変わり者です。

そんな父にやれやれ……の二郎、小学生の日常だって大人に負けず劣らず色々と大変なのです。一郎に振り回されながらも、二郎は様々な経験を通して成長していきます。面食らうような言動が印象的な一郎ですが、後半はなかなかにかっこよく痛快の一言。涙あり笑いありで家族の絆は深まっていきます。

周りに振り回されることなく、自分の考えで判断することが大事なのだと教えてくれる、笑えて面白い内容ですが胸に染みる作品になっています。

4位:変わった精神科医が活躍する人気シリーズ『イン・ザ・プール』

かなり風変わりな精神科医の、不思議な活躍を描いた人気シリーズです。『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』、『町長選挙』の3作品からなるシリーズで、映画化やドラマ化もされ、『空中ブランコ』では直木賞を受賞しました。

様々な症状で伊良部総合病院の神経科を訪れる患者たちが、本当に医者だろうか、と疑ってしまうような型破りな精神科医・伊良部先生。彼に振り回されるうち、心の病が癒されていく、という面白おかしいストーリーが綴られています。

 

著者
奥田 英朗
出版日
2006-03-10

「ストレスを無くそうなんて無駄な努力」あっさり言ってしまう伊良部先生は、まるで子供のような自由すぎる言動で、患者たちを戸惑わせます。そしてかなりの強烈なキャラクターの持ち主。注射フェチな彼は、看護師のマユミちゃんが患者にする注射を、毎回熱い眼差しで見つめ、またマザコンであり、外見は丸々太った体型という、一度聞いただけで脳裏に焼きつくような医師なのです。

最後にはなんだかんだ問題が解決してしまっている結末に、気持ちの良い爽快感を感じるおすすめのシリーズになっています。

3位:現代の家族の姿を描く『家日和』

様々な家族の姿を時にユーモラスに、時に感動的に描く、連作短編集です。『家日和』、『我が家の問題』、『我が家のヒミツ』の3作品からなるシリーズになっています。

それぞれ6つのストーリーが描かれた作品で、ささやかながらも、その家族にとってはなかなかに深い、あなたの家にもあるかもしれない問題が取り上げられています。

 

著者
奥田 英朗
出版日
2010-05-20

両親の離婚に悩む兄弟や、ちょくちょく転職を繰り返す夫を持つ奥さん、里帰りにはどちらの家から行ったら良いか、と悩み話し合う夫婦などなど、たくさんの家族が登場します。

どの登場人物も家族を大事に思うほどに悩みも深くなっていきます。その悩みに共感すればするほど、最後の晴れやかに前を向く姿が印象的です。面白くて笑ってしまう場面や、胸がつまり涙ぐんでしまう場面もある、なんともあたたかいシリーズになっています。

読み終わったあと、きっと家族に優しくしたくなります。普段本を読まない方にもおすすめしたい、読みやすく素敵なシリーズ作品です。

2位:奥田英朗が描く渾身の超大作!『オリンピックの身代金』

オリンピック開催が間近に迫った、昭和39年夏の東京で起きる事件を描くサスペンス超大作です。吉川英治文学賞を受賞し、2013年には竹野内豊主演でテレビドラマ化された作品です。

昭和39年夏。東京ではアジア初のオリンピック開催を控え、熱狂的な盛り上がりを見せていました。そんな中、警察を狙った爆破事件が発生し、オリンピック開催の妨害を示唆する脅迫状が届きます。

 

著者
奥田 英朗
出版日
2014-11-14

しかしこの事件は国民に知らされることなく、極秘の内に操作が進められていくことになるのです。そして容疑者として浮かんだのは1人の学生でした。

戦後、懸命に這い上がろうとした当時の日本が、どれほどの人を犠牲にして五輪開催という大行事を成功させようとしていたのかなど、当時の社会の様子も細かく描かれています。

エンターテインメント性が非常に高く、手に汗握る事件の行方とともに、高度経済成長を迎えようとしている昭和の日本の様子がわかる、奥田英朗渾身の傑作長編小説になっています。

1位:この殺害計画の結末は……?『ナオミとカナコ』

1人の男を殺す計画を立てる、2人の女の物語です。2016年、広末涼子・内田有紀主演でテレビドラマ化され、たいへん話題になった人気作品で、奥田英朗の作品を読んだことの無い方に、ぜひおすすめしたい傑作犯罪サスペンスです。

OLの小田直美と専業主婦の服部加奈子は、大学時代からの親友です。直美は、やりたい仕事ではないながらも、熱心に日々の仕事をこなし、あることをきっかけにチャイナタウンで食料品店を営む女社長と交流を深めることになります。

 

著者
奥田 英朗
出版日
2014-11-11

一方加奈子は、夫からの壮絶なDVに苦しめられていました。そのあまりにひどい現実を知り、直美は加奈子の夫を殺害する計画を持ちかけるのです。

果たして、2人の前代未聞の殺害計画は、どのような結末を迎えるのか。

2人の心理描写が、奥田英朗独特の文体により、とても丁寧かつ巧みに描かれ読者を引きつけます。気がつけば犯罪を犯そうとしている2人を、応援してしまっていることに気付き、すっかり彼女たちの共犯者となった気分になることでしょう。

奥田英朗の魅力が存分に光る、読み応えたっぷりのエンターテインメント作品になっています。

奥田英朗のおすすめ作品をランキングでご紹介しました。どの作品も、登場人物の心理描写の上手さは圧巻の一言です。すっとストーリーに引き込まれていく感覚を、ぜひ一度体験してみてくださいね。

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