宮沢賢治のすごさが分かるおすすめ作品!美しい言葉が並ぶ9選

更新:2021.11.24

絵本や国語の授業などで宮沢賢治と出逢った方は多いのではないでしょうか。あの頃何を思って読んでいたでしょう。何を感じていたでしょう。あの頃から成長した今、宮沢賢治と再会して感じる気持ちの変化を楽しんでみませんか? 言わずと知れた名作から隠れた名作まで、9作品をご紹介します!

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天才にして奇人と呼ばれ、数々の逸話を残した宮沢賢治

明治29年岩手県に産まれた宮沢賢治。今でこそ知らない人がいないと言えますが、生前はほとんど知られることはなく、無名に近かったそうです。生涯で受け取った原稿料がたった5円だけだったとも言われていて、その無名さが伺えます。しかし、原稿料に比例しないのが作品数です。詩、童話、小説と創作活動は死の間際まで続けられ、死後それらが世に広まり、偉人としての宮沢賢治が知れ渡ることになります。

小学生の頃から成績は優秀で、鉱物採集や昆虫の標本作りに熱中していたそうです。以降、星座、岩石標本の収集、宗教、レコード、浮世絵、農業、チェロ、オルガン、エスペラント語など、興味はあらゆる分野に向けられます。生涯作家として活動をしていたものの、様々な職業も経験しています。教育者や農業の指導者、石灰技師、最終的には農民として暮らします。ストイックに興味を追求し、それらを物語に埋め込み、作品を生み出す。幻想的で奥深い物語は、こういった経験や知識があればこそなのです。

また、勉強熱心で文芸に長けていて、「生き物の命をとるくらいなら死んだほうがいい」と、極端な優しさも持ち合わせていた賢治が、なぜ奇人と呼ばれていたか。それは、周囲の人たちに、裕福な道楽者として見られていたからです。「金持ちが農民の真似事をして馬鹿にしているのか」と思われても不思議ではなかったと思います。事実、実家は裕福で、何も考えずに、悠々と生きることもできたのですから。

しかし、あえて苦しい生き方を選びます。考えることを選んだのです。仏教を広めるには、農業を盛んにするには、心を豊かにするには、幸せとは、と考え続けます。完全に哲学です。農民暮らしも、実際に経験しなければ本質的な美しさは見いだせないと考えてのことなのです。禁欲。菜食主義。賢治は、どこまでもストイックなのでした。

幻想的で哲学的な物語は、こういった生き様が色濃く映し出されているから生み出されたのでしょう。未完成の作品が多く残されているのですが、賢治の執筆した『農民芸術概論』の中でこんなことを言っています。「永久の未完成これ完成である」。彼は考えることをやめず、深く深く思考の海へ潜り続けた人間なのです。

宮沢賢治の名言が詰まった代表作

代表的な長編小説です。授業で取り上げられることも多い作品ではないでしょうか。今となってはちゃんと見ておけばと後悔するような良作です。

本作は、ジョバンニとカムパネルラが銀河鉄道に乗って様々な人と出会い、考え、成長していく幻想的な物語です。

主人公のジョバンニは孤独です。母親は病気で寝たきり、家計を助けるため学校が終わるとその足で働きに行きます。学校では同級生に悪口を言われ、いじめられています。そんな中でもカムパネルラだけは違います。決していじめたりはしません。授業でジョバンニと一緒に笑われ者になってくれる優しさを持っているのです。授業が終わり先生は言います。今日は銀河のお祭りなのですから、外へ出てよく空をごらんなさい。

ジョバンニが丘に寝転んでいると、「銀河ステーション」と言う声と共に眼の前がぱっと明るくなり、気が付くと銀河鉄道の青いシートに座っていたのです。すぐ前の席に見たような肩の子どもが座っていました。そう、カムパネルラでした。ここから、ジョバンニとカムパネルラの不思議で幻想的な銀河鉄道の旅が始まります。

著者
宮沢賢治
出版日
2011-04-15


銀河鉄道の旅の最中、地層の採掘をしている学者らしき人物、鳥を捕まえる商売人、船に乗っていたという兄弟とその家庭教師などと出逢います。この出逢いによって、ジョバンニは優しさや悲しさを感じ、幸せのことを考えるのです。それは読者への問いかけでもあるかもしれません。

「ぼくはおっかさんがほんとうに幸せになるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸せなんだろう」カムパネルラは泣くのをこらえるように言います。

「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです」家庭教師は祈るように言います。

銀河鉄道の旅も終わりの方でジョバンニは言います。「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」

普遍的な疑問に答えを導き出すのは容易ではありません。それでも考えること自体が大切なのだと、賢治は言っているのかもしれないですね。

冒頭でも言いましたがアニメ映画のほかにも実写映画や舞台化もされていて、幅広く、長く愛されている作品です。銀河鉄道999やドラえもんの映画など、その影響を受けた作品もとても多く、メッセージ性の強さを改めて感じさせます。銀河鉄道の夜を読み、幸せとは、と思いをめぐらせてみませんか。

絵本でも有名な童話。山猫軒へようこそ

2人の若い紳士が狩猟をするため山へ来ました。獲物を探して奥へ奥へと進みます。あんまりにも山奥なので、山の案内人は途中でいなくなってしまい、連れてきた猟犬も山の物凄さに泡を吹いて死んでしまいます。もう帰ろうと道を探すも、分からなくなり途方に暮れる。ふと後ろを見ると西洋造りの家を見つけます。

ここが「西洋料理店 山猫軒」です。お腹を空かせた2人は中へ入っていきます。入っていくと扉と注意書きを見つけます。「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」

著者
宮沢 賢治
出版日
2012-04-15

なるほど、忙しい店なのかと扉を開けると次の扉と注意書きがあります。「髪を整え、履物の泥を落としてください」なるほど、厳しい店だけど、それだけ高級なのかと扉を開けるとまたしても扉と注意書きが。「鉄砲を置いてください」「帽子、外套を脱いでください」「金属製品を全て外してください」「壺のクリームを手足に塗ってください」……。雲行きが怪しくなっていきます。

意表をつくような設定が面白い物語ですね。滑稽なコメディ映画を見ているような気持ちになります。初め犬が死んでしまったところで2人は損したと言って金勘定をするんです。嫌な奴だなと思っていると、勝手な勘違いから山猫軒の術中にはまりそうになる。そんなトホホな展開で最後にもまた悲劇。本当に滑稽です。

童話の中には教訓めいた作品が数多くありますが、本作もまさしくそうだと思います。コミカルに描かれていますが、考えさせる部分は多く、捉え方も様々かもしれません。みなさんは何を感じるでしょうか。

動物たちとゴーシュから伝わることが深い

こちらも絵本になっているようです。「セロ弾きのゴーシュ」セロとはつまりチェロのことですね。町の活動写真館でチェロを弾く係を任された、楽団の中でも一番下手なゴーシュの10日間の出来事を描いています。

今度の町の音楽会へ出す曲の練習をしている時も、学長はゴーシュに厳しくあたります。「セロがおくれた。やり直し」「セロっ。糸が合わない」「ドレミファを教えるひまはない」「君には困るな」「感情というものがさっぱり出ない」「とけた靴ひもを引きずってみんなのあとをついてあるくようだ」「わが金星音楽団がきみ一人のために悪評をとる」とまぁ、さんざんな言われようです。さすがのゴーシュも練習が終わった後にチェロを抱え、壁の方を向きながら泣いてしまいます。そして気をとり直してひとり練習を始めます。

その晩、家に帰るとゴーシュは虎みたいな勢いでごうごうごうごう弾きます。夜中も過ぎて、顔も真っ赤、眼も血走り、物凄い顔つきでいまにも倒れるかと思うほど練習に没頭します。そしてそれは毎日繰り返されるのです。

著者
宮沢 賢治
出版日
1969-02-24

やはり動物たちとのやり取りが読みどころでしょう。ゴーシュは初めに来た猫を徹底的に懲らしめます。その時に怒りという感情を曲に込めることができるのです。

夜通し行われる死に物狂いの自主練習、その最中4晩に渡って訪問者が現れます。生意気な三毛猫。ドレミファを習いたいかっこう鳥。純朴な子狸。野ねずみの親子。彼らはみな一様にゴーシュにチェロを弾いてくれと申し出ます。野ねずみの母親が言うには、ゴーシュのチェロの音は動物たちの病気を治すのだと言われ……。

その他かっこう、狸、ねずみとの出逢いがゴーシュをセロ弾きとしても、人としても成長させているます。学長に言われたことを全て克服し、人間的にも一回り大きくなったゴーシュですが、自分ではよく分かっていません。周囲に認められた時も、「どこまで人をばかにするんだ。」と憤慨したり、「今夜は変な晩だなあ。」とこぼすだけで、慢心しないゴーシュの姿が描かれています。

この童話もやはり教訓めいたものがあり、人によって感じることが違うかもしれません。そして、幼い頃に読むのと大人になってから読むのでは捉え方が大きく変わるように感じます。大人も子どもも楽しく読める童話なので、一緒に読むことで新たな発見も生まれるかもしれませんね。

クラムボンの意味って?

私は本作を国語の授業で習いました。正直に言えばその時の授業のことは何も覚えていません。唯一覚えているのは「クラムボン」「かぷかぷ」というワードだけでした。

改めて読んでみると、なんと不思議な童話でしょう。クラムボンが何なのか、説明はありません。ですが、クラムボンはかぷかぷわらい。死に、そしてまたわらうのです。クラムボンが複数いるのかそれも分かりません。分からない事だらけです。分からない事を分からないままに物語は進みます。

本作は、2匹のカニが物語の主人公の5月と12月の2編からなる童話です。

5月、2匹は水の底からクラムボンや魚を見て話しをしています。すると突然黒い影が魚を襲います。2匹は何が起こったのかも分からずに恐怖に震えます。そこへお父さんがやってきて、2匹の話から、それはきっとかわせみだと推測します。怖がる2匹に大丈夫心配するなと諭します。

著者
宮沢 賢治
出版日
2015-04-15

12月、大きくなった2匹は泡を吐いて遊んでいます。すると黒い大きなものが落ちてきます。かわせみだ、と2匹は首をすくめて怯えます。またお父さんが言います。そうじゃない、あれはやまなしだ。3匹はやまなしを追いかけ、おいしそうだねと、もう2日もするとおいしいお酒になると話、さあ、帰って寝よう。と自分たちの穴に帰って行くのでした。

とても短い物語ですが、この作品こそ人によって解釈が大きく分かれます。登場する全てが何かしらの例えではないかということなのですが、何にでも置き換えられそうで難しいと感じてしましいます。子どもの素直な気持ちで読む方がある意味では理解しやすいのかもしれません。

すぐに読めてしまう作品なので、とにかく読んでほしいです。面白いと思うのも、つまらないと思うのも自由です。国語の授業で取り上げられているこの作品は、教師の手腕が問われるのだそうです。そんな教師をも悩ませる「やまなし」考えることの楽しさに出逢えるはずです。

宮沢賢治 IN ワンダーランド

この作品も絵本になっているようですね。賢治の作品は絵が付くことで分かりやすくなるのかもしれません。

一郎のもとにおかしなはがきが届くことで物語は始まります。字は下手で文面には「めんどなさいばんしますから、おいでんなさい」と書かれています。

翌日、場所が書かれていない裁判所へ向かうためにやまねこを追います。栗の木に聞きます。やまねこが通らなかったかい。「けさはやく、馬車でひがしの方へ行きましたよ」

しばらく行き今度は滝に聞きます。「さっき、馬車で西の方へ行きましたよ」

しばらく行きお次はきのこに聞きます。「けさはやく、馬車で南の方へいきましたよ」

またすこし行きりすに聞きます。「けさまだくらいうちに馬車でみなみの方へいきましたよ」

おかしいなと思いながらもまた少し南へ行きます。すると背の低いおかしな形の男が見えてきます。彼に聞くと「いますぐに、ここに戻ってお出やるよ」聞くとその男は馬車の操縦士だと言います。しばらく話していると山猫が現れます。
 

著者
宮澤賢治
出版日
2014-11-14

山猫の話によると、おとといから面倒な争いが起こっていて、それには毎年苦しまされているというのです。もう3日目になる裁判、その内容はどんぐりの背比べです。文字通りどんぐり達が、頭の形のことで争っているのでした。とがってるのが偉い。丸いのが偉い。大きいのが偉い。いや、背が高いのだ。どんぐり達は各々自分が一番偉いと主張しています。「このとおりです。どうしたらいいでしょう。」山猫は一郎に相談をして……。

童話らしい童話です。どことなく不思議の国のアリスを彷彿とさせる、異世界に迷い込んだような雰囲気があります。この作品での教訓は、やはりどんぐりの背比べの部分でしょうか。無意味な争いは何も生み出さない。欲深い物は報われない。そういった教えがあるように思えます。

分かりやすく面白い童話なので読み聞かせにはちょうどいいかもしれません。そして、やっぱり賢治の作品は大人になってから読むことで得るものが多いです。お礼を渡される時、塩鮭の頭と黄金のどんぐりのどちらが好きか聞かれた時、一郎は何を思いどんぐりを選んだのか。裁判を終わらせた文句をお説教で聞いたと言っていた一郎は、どうしてそのお説教を受けるに至ったのか。なぜ生き物や自然と会話できたのか。そもそもはがきはなぜ一郎のもとに届いたのか。

そうやって、読んで考える楽しみというのが、賢治の作品には共通してあります。普段とは異なる経路で頭を使って考えているような感じがします。 みなさんも頭の柔軟体操をしてみませんか。

宮沢賢治の言葉を考える

番外編です。賢治の作品ではなく、その世界観に欠かせない擬音語・擬態語=フランス語でオノマトペ、をまとめて解説した一冊です。

賢治が用いる擬音・擬態は実にオリジナリティに溢れていて、それが頭の中のイメージに彩りを加え、より明確に、より鮮明に想像する手助けをしてくれるのです。

先に紹介したクラムボンの笑い方は「かぷかぷ」ですが、さてみなさんはかぷかぷ笑ったことがありますでしょうか。

著者
宮沢 賢治
出版日
2014-12-10

最後に気に入った擬音をいくつかご紹介したいと思います。

「ぐんなり」心身ともに疲れ切っている猟師を表現したものですが、げんなりやぐったりでは物足りないと感じてしまいます。

そういった愉快な擬音たちを157種類も集めてあるのです。1ページに1つの擬音が書いてあるので、次のページを開くのが楽しみで仕方ありません。 宮沢賢治の作品を読む上で、その魅力をより楽しむことができます。

「ゴギノゴギオホン」フクロウの鳴き声だそうですが、このような音は自然を愛し、自然の魅力に注目したからこそ生まれたオノマトペでしょう。

「にがにがにがにが」主人公が「にかにか」笑う描写の後に使われたオノマトペです。喜びの大きさを表現するために「にかにか」を超えてしまったんですね。

ただページを捲るだけでも楽しい本作。考え過ぎて疲れた頭のリフレッシュには最適です。本棚に置いておきたい1冊です。

醜いと言われたよだかは居場所を求めて空を飛ぶ

宮沢賢治の童話の中でも教訓的にとらえられている作品が『よだかの星』です。小学校の国語や道徳の教材としても使われるほど、有名な作品なのでご存知のかたも多いと思います。

美しいかわせみやハチスズメの兄であるのに容姿が醜いよだかは、それゆえに仲間から嫌われ孤独でした。鷹からも改名を強要され、遂に故郷を捨てます。よだかは生きることを嫌悪し、太陽にあなたのもとへと行かせてほしいと願いますが、「お前は夜の星だから星にお願いしてごらん」と言われます。そしてよだかは星たちに頼みますが、相手にされません。居場所を失ったよだかは命をかけて飛び続け、やがて「よだかの星」となって今も夜空に輝いているのでした……。

著者
宮沢 賢治
出版日

澄みきった透明感のある文体で書かれた作品です。

深いテーマ性が魅力の宮沢賢治の作品ですが、この『よだかの星』は容姿が醜いと言われて嫌われるよだかが主人公の為、容姿で人を嫌ったりしてはいけないという教訓を教える教材として小学校などで広く使われています。

しかし研究者の視点からは宮沢賢治の自己犠牲の物語として見られており、賢治が終生抱き続けた「自己の出生に対する自己嫌悪」を表しているとされているのです。

『よだかの星』を読んで、あなたは何を感じるでしょうか。「人を見た目で判断しない」という教訓や「自己犠牲」の精神の現れというとらえ方の他にも、もしかしたら様々な解釈ができるのかもしれません。けれどどんな解釈ができるにせよ、『よだかの星』が長く人々に読み継がれている宮沢賢治の名作であることは疑いないでしょう。命が尽きるまで居場所を求めて飛び続けたよだかの哀しくも美しい物語です。

岩手をモチーフとした「イーハトーヴ」が登場!

宮沢賢治の実体験が色濃く反映されていると言われているのが『グスコーブドリの伝記』です。こちらの作品は岩手をモチーフとした架空の理想郷「イーハトーヴ」に住む樵の息子が主人公です。

イーハトーヴに住む樵の息子・グスコーブドリは冷害による飢饉で両親は出て行ってしまい、妹もさらわれてしまうなどの苦難を経験しますが、農業に携わったのちに学問の道に進みます。彼はペンネン老技師のもとでイーハトーヴ火山局の技師として働くことになり、様々な成果をあげますが、またしてもイーハトーヴは深刻な冷害に陥ってしまいます。グスコーブドリは火山を噴火させることで冷害を食い止めようと考えましたが、噴火させる1人は犠牲にならなければならないのでした……。

著者
宮沢 賢治
出版日
1993-07-01

宮沢賢治自身と重なる部分が多い『グスコーブドリの伝記』ですが、その共通性から「ありうべかりし自伝」と言われることもあるそうです。またグスコーブドリの自己犠牲的な行動から「自己犠牲を美化した作品だ」と批判を受けることもあったと言われています。しかし作品としての評価はいまだに高く、宮沢賢治の代表作の1つとなっています。

火山が噴火した際の炭酸ガス(二酸化炭素)の温室効果でイーハトーヴを温めるという部分は、後に温室効果のわかりやすい例として紹介されるようになりました。ただの童話では終わらないというのが宮沢賢治の作品の1番の魅力と言えるでしょう。

宮沢賢治が生前に刊行した作品

生前はほとんど発表されることのなかった賢治の作品の中で、生前に刊行された数少ない作品の一つが『春と修羅』です。これは詩集のタイトルであり、その中におさめられた詩のタイトルでもあります。

出版された『春と修羅』には「序」の部分と69編の作品が収録され、「おれ」の自己肯定や自己宣言が伴った作品集となっています。内面と外面、光と影のような対比が印象的で、それは宮沢賢治の他作品にもみられる特徴です。

著者
宮沢 賢治
出版日
1999-09-25

民族芸能を見たことから生まれた「原体剣舞連」や賢治の妹・トシの臨終の際を描いた「永訣の朝」など、単体でも有名な詩が多数収録されています。

宮沢賢治の書いた詩は仏教の影響を受けているからかどこか達観しており、また透明感のある清らかな文章が特徴です。賢治の魅力がたっぷりと詰まった1作です。


以上、宮沢賢治のおすすめ作品9選でした。それぞれの作品の内容に触れてご紹介させていただきましたが、賢治の文章の魅力は、情景描写の豊かさにもあります。それは時に禍々しく、時に幻想的で、賢治の生み出す世界には必要不可欠な要素なのです。ここで書ききれないほど魅力に溢れた、自然を愛した偉人の世界をどうぞお楽しみください。

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