はやみねかおるのおすすめ小説!大人になっても楽しめる人気5作品

更新:2020.12.15

児童文学作家として有名なはやみねかおる。読者はやはり子供に多いですが、本格的なトリックや魅力的なキャラクターには、いくつになっても夢中になってしまいます。そこで今回は、おとなが知らないはやみねかおるの人気シリーズをご紹介します。

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小学校教師から児童文学作家となったはやみねかおる

はやみねかおるは、三重県出身の男性小説家。小学校教師として、本嫌いの子供に本を薦めるうちに自分でも書き始め、『怪盗道化師』で講談社児童文学新人賞に入選し、デビューしました。

小さいときから本が好きで、大量に読むため読む本がすぐになくなってしまい、だったら自分で書いて読めばいい!と思って書き始めたのが小説家を目指したきっかけだそうです。

作家として活動する傍ら、自身も月に40~50冊の本を読むというはやみねかおるの引き出しは幅広く、ジュブナイルミステリーに始まり、青春小説、冒険小説、さらにはSF、ファンタジーとそのジャンルは多岐にわたります。

はやみね作品には、知っていると思わずくすりとしてしまうような様々なパロディが随所に散りばめられています。そして、作品同士の世界観や登場人物を共有しているため、作品を読んでいればいるほどおもしろい!それがはやみねワールドなのです。

はやみねかおるが描く探偵シリーズ。みんなを幸せにする名推理

はやみねかおるといえば、この作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。三つ子の中学生、岩崎亜衣・真衣・美衣と夢水が中学1年生から3年生になって卒業するまでに、様々な事件に遭遇し解決していく、はやみねかおるを代表する大人気シリーズです。

このシリーズの最大の魅力はなんといっても、「人が死なないミステリー」だと思います。人が死ぬからミステリーは苦手という方でも読みやすく、入門書としてはぴったりな作品ではないでしょうか。

 

著者
はやみね かおる
出版日
1994-02-15


名探偵の仕事は、難解な謎を解くことではなく、人が幸せになれるように事件を解決すること。名探偵のいるところには必ず事件が起こります。でも、大丈夫です。夢水清志郎は必ず、みんながしあわせになるように事件を解決してくれます。

おすすめは、第一作『そして五人がいなくなる』。夏休みの遊園地で「伯爵」と名乗る怪人が、天才児四人を次々に消してしまいます。消失劇の真相に辿り着いた夢水は、「謎はわかった」と言ったきり、なぜか謎解きをやめてしまいます。

すべての謎が解き明かされた後で、捜査にあたっていた上越警部が言った、「長いこと警官をやってると、犯人を逮捕することと事件を解決するってことが、同じに思えてくる。でも、ほんとうはそうじゃないんだな。いくら犯人を逮捕しても、解決しない事件もある」という台詞に、夢水が謎を明らかにしようとしなかった事件の顛末が集約されているように思います。さて、夢水の優しさとは何だったのでしょうか。

自信家で自意識過剰、自分さえ良ければ周りがどうなってもいい、そんなどうしようもない性格の夢水が、どうして「名探偵」と呼ばれるのか。その所以がこの本を読めばわかります。みんなが幸せになれる夢水の謎解きには、読み終わった後に満ち足りた幸福感を残してくれます。

怪盗の美学と浪漫が詰まった人気シリーズ

神出鬼没の大怪盗・クイーンと、パートナーのジョーカー、人工知能のRDが飛行船トルバドゥールで世界中を駆け巡り、華麗に獲物を盗み出します。本シリーズの魅力はなんといっても、強烈な個性を持ったキャラクターたちにあると思います。

まずクイーンが、「怪盗」という言葉を聞いて一般的に思い浮かべるイメージとは逸脱した存在です。クイーンの趣味は猫のノミとり、電話での悩み相談、通信販売など、怪盗でなくてもとても変わっています。さらに、「人生に大切なのは、C調と遊び心」という口癖のとおり、自由奔放な性格で怪盗の仕事も自分の好みに合わなければ半年に一度しか仕事をせず、ジョーカーやRDを困らせてばかりいます。

 

著者
はやみね かおる
出版日
2002-03-15


その姿は、およそ怪盗らしいものではありませんが、ひとたび「怪盗の美学」を満足させる獲物を見つけると、犯行前には必ず予告状を出し、持論に則って大胆不敵に獲物を盗み出します。その鮮やかな手口や、キャラクターたちのユーモアに富んだ会話は痛快で小気味よく、冒険小説と呼ぶに相応しいものです。

そして、行く先々で出会うICPOや秘密結社、さらには殺し屋集団など、個性豊かな敵との財宝をめぐる手に汗握る攻防戦には、謎解きとはまた違ったミステリーのおもしろさがあります。

おすすめは、第四作、『怪盗クイーン、仮面舞踏会にて』。正体不明の秘宝・ピラミッドキャップを巡って、怪盗や探偵卿、そして、謎の秘密結社と様々なキャラクターの思惑が交錯します。本作で登場する伝説の大怪盗にして、クイーンのお師匠様である皇帝との師弟対決は必見です。

ドイツの古城で行われる優雅な仮面舞踏会。繰り広げられるお祭りのような賑やかさは華やかな怪盗小説そのものです。舞台がヨーロッパというのもいかにも、らしいという気がします。なぜピラミッドが作られたのかの謎が解き明かされる、本書の後編にあたる『怪盗クイーンに月の砂漠を』もあわせて読むと一層おもしろいです。

どこにいたって、冒険はできる!

おばあちゃん仕込みのサバイバル技術をもつ一見普通の中学生・内藤内人と、巨大企業の後継者で学校創設以来の秀才・竜王創也。誰も知らない創也の夢は、「究極のゲーム」を作ること。そのために創也は、究極のゲームを作った伝説のゲームクリエイター「栗井栄太」に会おうと痕跡を探し、下水道にピクニックに行ったり、深夜のデパートに侵入したりと、ゲーム制作の合間に内人といっしょに冒険へ繰り出します。

創也や栗井栄太が作ろうとしているゲームは、バーチャルゲームのような仮装空間ではなく、現実世界がゲームフィールドであるリアル・ロールプレイングゲーム。テレビやパソコンの中だけにとどまらない彼らのゲーム作りが、必然的に冒険騒ぎになってしまいます。

 

著者
["はやみね かおる", "にし けいこ"]
出版日
2003-10-11


作中には、「砦」と呼ばれる廃ビルが出てきます。彼らにとって砦とは、「戦うための場所」ではなく「守るための場所」。微妙にニュアンスの違うその表現をあえて用いているところに、はやみねかおるの砦へのこだわりを感じます。この砦は、「竜王グループを継いでほしい」というの周囲の大人たちの身勝手な期待や重圧から、創也と彼の夢を守っています。守るための砦を内人と創也が持っているというのがとても印象的です。

またこのシリーズは、普通の小説とは一味違う「ゲーム・ブック」形式のスピンオフも出版されています。読者を巻き込んで、選択次第でストーリーが変化していくゲームブックは、いつもとはちょっと違った読書を楽しむことができます。

私のおすすめは、第五作『都会のトム&ソーヤ(5) IN塀戸(上・下)』。シリーズ初の上下巻で、折り紙付きの読み応えです。今作の舞台は地図にない村・塀戸村。買い取った廃村に、栗井栄太は「IN塀戸」というR・RPGを作り上げました。参加者たちはそれぞれ役割を与えられ、ゲームは開始されます。

そこでは、UFOの墜落、重力をコントロールする宇宙人の出現など、およそ現実では起こりえない超科学現象に、ゲームと現実の境が崩壊します。次々と起こる予測不可能なリアル・ロールプレイングゲーム内人と創也が挑戦します。最後に解き明かされるトリックには、思わず「ぎゃふん」と言ってしまうかも。

やさしい魔術師のいる商店街

ひとりでに増えていく駄菓子屋のおかし、心霊写真騒動、足跡だけが現れた透明人間。虹北商店街で巻き起こる様々な謎を、ケーキ屋の娘・野村響子をワトソン役に、古本屋「虹北堂」の店番をしながら安楽椅子探偵・虹北恭助が魔法のように解き明かします。

不思議な事件を解決する一方で、自身の弱さに悩む恭助の姿や、巻を追うごとに少しずつ進展していく響子との関係には、多感な思春期の少年少女特有のみずみずしい感覚ときらめきに満ちています。こどもからおとなへと変化していく時間の中で、誰もが覚えのあるそんな日常の一瞬一瞬を切り取った成長小説です。

 

著者
["はやみね かおる", "藤島 康介"]
出版日
2011-04-12


私のおすすめは、第一作『少年名探偵 虹北恭助の冒険』。シリーズ一作目にあたる本書は、はやみねかおるが思い描く「虹北商店街」という人情に溢れた場所と、そこにいる個性的で愉快な人々が一番よく描かれているように思います。学校へ行かずいつも虹北堂でひとりぼっちの恭助に、家族のように寄り添う商店街の人たちの優しさは、こんな商店街があったらいいなという、温かくて柔らかな気持ちにさせてくれます。

格好良く事件を解決する恭助は魔術師の異名に相応しいですが、「学校に来たら、いつでも、わたしと一緒いられるわよ」と響子に言われて耳まで真っ赤になる姿は、いつもの大人びた恭助と違い、年相応な思春期の男の子らしい反応で、二人のこれからがどうなっていくのか気になってしまいます。

救世主は究極のドジっ娘?

主人公・真野萌奈美、通称モナミは超がつくほどのドジっ娘であること以外はいたって普通の高校生。突然現れた謎の少年・丸井丸男に、世界の出来事と学校での出来事が同調していると告げられ、あろうことか世界を救う鍵はモナミにあると言うのです。平和を守るために、丸男はモナミの身辺警護を申し出ますが、シンクロに加えて、爆薬を仕掛ける生徒会長や世界の終末を望む科学部長、モナミの命を狙う殺し屋までもが登場し、事態はさらに混乱を極めます。

 

著者
はやみね かおる
出版日
2014-10-25


本書は作家生活二十周年記念作品として書かれたものですが、節目の作品が十八番のミステリーではなくファンタジーというのも、引き出しの多いはやみねかおるらしいかもしれませんね。

私のおすすめは、第一作『モナミは世界を終わらせる?』。早朝練習していた部活の陣地争いが中東戦争に繋がってしまったり、良くも悪くも、周りを巻き込んで世の中を変えてしまう未来の不確定要素であるモナミ。彼女の一挙一動に丸男といっしょにはらはらしながらも、常にお気楽で明るい活力に満ちたモナミは、読者にさえ「なんとかなる!」と前向きな気持ちにさせてくれます。落ち込んだ時に読みたくなる、ビタミン剤のような本です。


おもしろい本を読むのに、おとなもこどもも関係ありません。おもしろい本は、いくつになってもおもしろいのです。児童書だからと一線を画する前に、ぜひ、はやみね作品を読んでみてください。素敵な赤い夢をお約束いたします。

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