知らない家族の顔が見えてくる
この本は、表紙と題名に惹かれて読みました。私がよく行う、ジャケ買いというものです。
近所でも評判の仲良し3姉妹に起こった事件。それは、長女が次女を殺害するというもの。
美人で完璧だった長女がなぜ? 残された三女が真相を探っていくと、知らなかった家族の顔が見えてきた、というお話です。
このお話は、長女に共感するところが多くありました。長女の名前が百合というのですが、私の名前にも「ゆり」が付く、というのと、私も長女だというところです。長女であるが故に、我慢してきたことや、妹が羨ましく思ったりしたなと、自分と重ねて読んでいきました。
完璧な人間なんていない、そう思わされる作品です。本当の気持ちは何なのか、この事件をきっかけに家族が1つにまとまっていくラストは、希望が見えた瞬間でもありました。ミステリーですが、家族愛も考えられるお話です。
誰かに愛されたいと願うことの尊さや残酷さ
今まで湊かなえさんの作品はたくさん読んできましたが、その中で一番好きなお話です。母親のことが大好きで、母親が喜ぶことを判断基準としてきた〈私〉と、そんな〈私〉から生まれた〈わたし〉。母親離れが出来てない女性が親になるとどうなるか。そんな親をもつ娘はどうなるのか。母性とは何なのか。お互いの母親から愛されたいと思う、母娘を描いた物語です。
とても心理描写が細かく、読後は人間が怖いと思いました。私はこの本を読み、愛と憎しみは表裏一体なんだと痛感しました。愛しているから妬みが生まれ、嫉妬するほど愛している。これは、母娘関係だけでなく、友達、恋人、上司……などなど様々な関係に当てはまることではないでしょうか。誰かに愛されたいと願うことの、尊さや残酷さを思い知らされる物語です。ずっしりと重い作品ですが、女性はもちろん、男性にも読んで頂きたいと思っています。