人付き合いでストレスを感じたことのある人は、きっと少なくないはず。 職場や学校、近所など私たちのまわりには様々な人がいるので、中には苦手な人や話したくない人もいるかもしれません。とはいっても、苦手な人たちとまったく関わらないことは難しい。ではどうすればいいのでしょうか。 今回は、人付き合いでストレスを溜めないためにはどうしたらいいかについて、考えてみたいと思います。
「人はどこまで人に優しくするべきなのだろう。正直なところ、彼女たちと一緒に暮らすのはストレスで早く出て行ってくれたら、としか思えない。もっと自分が優しければ、彼女たちを快く迎え入れてあげられるのだろうか」。
こんな言葉に共感する人へ、最初に紹介したい本が、『はぶらし』(近藤史恵・著)。
鈴音の学生のときの同級生・水絵が約10年ぶりに電話をかけてきて、自分と子供を1週間だけ家に泊めてほしいとお願いをしてきます。鈴音は無下に断ることもできず、1週間ならと承諾してしまったけど、実際に一緒に暮らすと違和感を感じることばかり。
貸した歯ブラシを、ありがとうとそのまま水絵に返され、唖然とする鈴音。新しいものを買って返してくれるものと思っていたのに…。でも、たかが歯ブラシで腹を立てるのも大人げないと思うようにしながらも不快な思いは募る一方。
「お風呂のお湯を一回しか使っていないのに、落としたらもったいなくない?」そんな水絵の言葉にもイライラが募ってきます。なぜ私の家なのに、そんなことを言われないといけないの?と。
さらに追い討ちをかけるかのように、まだ仕事が決まらずあと1週間泊めてほしいという水絵。36歳独身で脚本家の仕事もなんとかうまくやれているからといって、「水絵は恵まれているから」なんていう言葉で簡単に片づけられたくない。
だが、鈴音は「就職が決まるまで」という願いを聞き入れてしまいます。
- 著者
- 近藤 史恵
- 出版日
- 2012-09-27
「人はどこまで人に優しくするべきなのだろう。正直なところ、彼女たちと一緒に暮らすのはストレスで早く出て行ってくれたら、としか思えない。もっと自分が優しければ、彼女たちを快く迎え入れてあげられるのだろうか」。
そんな鈴音の気持ちに共感する人は少なくないはず。
友達を助けてあげたい気持ちはある。だからといって、友達のために何でもしてあげることはできない。どこかで線引きをするべきだが、どこで線を引いていいのかもわからない。友達の頼みを無下に断ることもできない。
どんなに仲良い友達でさえ、距離が近すぎたり、どちらかが相手に寄りかかりすぎたり頼りすぎると綻ぶこともあります。ましてや鈴音や水絵のように、10年も会っていなかったのに一方的にお願いばかりされたら、ストレスがたまるのは至極当然のこと。
人付き合いでは、相手との距離感や思いやりが大切と改めて感じさせられる一冊です。
では、人付き合いで、しんどいと感じるとき、その「しんどい」ってどんなものなのでしょうか?
『一緒にいて楽しい人疲れる人』(PHPスペシャル編集部編)の第1章では、3つの「しんどい」を挙げています。
1つめは、人と深くかかわるのがしんどい(嫌われているんじゃないかと思い込み、自分から人とのつきあいを断ってしまう)。2つめは、人を許せなくてしんどい(なんであの人はああいうことをするの?と他人の言動にイライラしてしまう)。そして3つめが、相手の反応を気にしてしんどい(相手にどう思われているのか気になり動けない)です。
そして、3つそれぞれの「しんどい」の対処法も紹介しています。
人付き合いは相手が楽しい人ばかりならいいけど、そうもいかないもの。反対に、自分が一緒にいて疲れる人になっている場合もあるので、気を付けたいところ。
- 著者
- 出版日
- 2015-02-21
続く第2章では、さまざまな分野で活躍している人が、人付き合いの秘訣について語っています。
作家の襟野未矢さんは、「人付き合いの上手い下手は性格の問題ではなく、〚技術〛の問題です」と語る。たとえば、誰かに話しかけられたら「何を答えるか」よりも「どんな態度を示すか」が大切と、いい人と「出会う・つながる・関係を維持する」ための技術のアドバイスは参考になることばかり。
また、初対面の人と話すのが苦手な方におススメなのが、一緒にいて楽しい人の「聞き方」(第4章)。会話を楽しむためには、①「おもしろい話をしよう」と思わない、②会話の間や沈黙を恐れない、③自分をよく見せようとしない、と3つの「ない」が秘訣だそう。
上手く話そうとか盛り上げようとか考えるから人と話すのが憂鬱になるのかもしれません。一番大切なのは、「あなたに関心がある、あなたのことが知りたい」という気持ち。人付き合いをしんどいと感じなくなるには、発想を変えることが大事なのだと気づかせてくれます。
次に紹介するのは、勝間和代の『断る力』。ある程度のアウトプットをしながらも時間に余裕を持つことができる秘訣は、「断る力」だといいます。ただし、断るためには実力をつける必要がある、そのためにも自分の実力が出せないような余計な仕事をしている暇はないという言葉には説得力があります。
上司からの誘いを断れずに飲み会にいってしまう人や、上司より先に帰宅できず会社に残ってしまう人など、「断ること」ができない人は、相手に嫌われるのではないかという思いがあると指摘。その上で、嫌われたとしても単に相手と相性が合わなかったり巡りあわせやタイミングが悪かったなど外部要因であることが多いのだから気にしなくていいのだ、という著者。
では、どうしたら自信をもって断ることができるのか?
それは、「自分の揺るぎない軸を持つこと」です。自分は何が得意で、何が不得意なのか。どこまでは自分の責任としてよりたくさん引き受けることができ、どの部分については逆に得意な人に任せるべきなのか。その線引きをすることが大事だと著者はいいます。
自分を客観的に評価し、得意不得意を見極めることで、得意分野を目標達成の手段として活用できたり、任せた相手にとってもメリットになったりします。「断ることは相手の否定ではない」という力強い言葉が、背中を押してくれます。
- 著者
- 勝間 和代
- 出版日
- 2009-02-19
さらには、断る力が身に付くことで自分を好きになるそう。自分を好きになると、他人からの評価も気にならなくなります。
自分が自分らしくあるためにどうしたらいいか、相手の一番いいところを活用するためにはどうしたらいいか、考えることの大切さを説く著者。「お互いの思いやり」にもつながる「断る力」を身に付けたら、より仕事もはかどり、人付き合いで悩むこともなくなるはずです。
最後に紹介する本『人生は負けたほうが勝っている』(山埼岳也・著)では、人生の処世術を教えてくれます。
人生において努力は必要だけど、無理をしてはいけない。突っ張って無駄な努力をするよりも、上手に受け流す。人に勝とうとするから疲れるのであって、人に勝ちを譲ることで、自分も相手も幸せになる。つまり、いいことづくめになるといいます。
たとえば、「上手に出世するための負け」では、駆け引きについて話しています。「人はどうしても『駆け』」のほうに重点を置きがちだが『引き』こそ大いに利用するべき」。上手な商人を見習ってみたり、相手である客の利益になるよう値段を引いたりおまけをつけたりと「負ける」ことが、「損して得とれ」になるとアドバイス。
また、「人に好かれるための負け」では、弱みを見せることが人に好かれることにつながると述べています。自分の弱点を隠そうとするのでなく最初からさらけ出すことで、かえって人はカバーしてくれる。「弱みはマイナスではなく人間的魅力になる」という著者のメッセージで、楽になる人もいるのではないでしょうか。
- 著者
- 山崎 武也
- 出版日
そのほかにも、悪から身を守るための負け、妬まれずにトクをするための負け、幸せを味方にするための負けと、負けることで人付き合いもうまくいく秘訣が盛りだくさん。
上手に負けることのできる人と、なにがなんでも勝とうとする人。どちらに人が集まるかは一目瞭然。自ら負けることで自分にとっていい環境になるのなら、負けることは悪いことじゃない。
人づきあいでストレスを溜める人は、一概に真面目に言葉を受け止めてしまう人が多い。なんでも真っ向から受け止めてしまうから疲れるのであって、「受け流す」「割り切る」こと、そして「どう思われるか」より「どうありたいか」を大切にすることで、人づきあいのストレスはかなり軽くなるに違いありません。
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