「漫☆画太郎」という漫画家をご存知ですか?顔が強烈でインパクト大な絵柄…。その作品は、1度見たら忘れることは、もはや不可能!漫☆画太郎の手に掛かれば、『星の王子様』だって超個性的。しかし、誰もが1度は見たことのある絵ですが、きちんと読んだことのある方は意外と少ないのではないでしょうか?今回はそんな漫☆画太郎作品のランキングベスト10をご紹介します。
漫☆画太郎(まんがたろう)は1990年に「週刊少年ジャンプ」GAGキングでキング賞を受賞後、『DRAGON BALL外伝』が同誌に掲載されてデビューしました。インタビューで語ったところによると、藤子不二雄Aの『まんが道』に影響されて漫画家を志したとか。
本名、生年月日、その他プライベートの経歴が公表されておらず、活動歴の長さに反して謎の多い漫画家です。
濃すぎる作画と理不尽な展開でカルト的人気を獲得するも、連載作品のほとんどが打ち切りの憂き目に遭っています。それもそのはずで、本人は長期連載を苦手だと公言していて、そのためかストーリーが脇道へ逸れることが多々あるのです。
漫☆画太郎と言えば「ババア」と呼ばれる、元気で豪快な老婆キャラ。皺だらけの皮膚、膨らんだ下腹、垂れた乳房の凄まじいビジュアルは1度見たら忘れられません。どうやら実の祖母がモデルらしく、高齢の祖母が漫画内だけでも元気でいてほしい、という思いで描かれたキャラのようです。
イロモノキャラが多い漫☆画太郎作品のイメージですが、時々登場する美少女が非常に可愛らしいと密かに有名。あまりにも普段の画風とかけ離れているため、アシスタントが描いたのではないかと疑われたほどです。そんな美少女も漫☆画太郎ワールドの住人らしく毎回酷い目に遭うのがお約束。
天丼ネタにコピー(コマやページの使い回し)、悪趣味な表現、独特の言語感覚から繰り出される台詞、ころころ変わる作者名、そして作者自身の存在感。漫☆画太郎作品はどこを取っても異色、異様で、1度ハマると抜け出せなくなるでしょう。
夏の甲子園を目指して、星道高校野球部に期待をかける校長の浅倉南太郎。予選1回戦の相手が外道高校だとわかると、監督も兼任する浅倉は頭を抱えました。外道高校は極悪非道のラフプレーが信条のチームで、過去に辛酸を舐めさせられたことがあったのです。
そんな星道高校へ、神がかり的な投球技術を持った少年、野球十兵衛が転校してきます。ですが彼は、凄まじいボールで父親を殺めた過去があり、その技術を封印していました。浅倉は十兵衛の力を見込んで、彼を野球部にスカウトします。果たして星道高校野球部は外道高校にかなうのでしょうか。
- 著者
- 漫F画太郎
- 出版日
本作は野球漫画のフォーマットに則ったギャグ漫画ですが、まともに野球は行われません。ナンセンスギャグと寄り道が繰り返され、なぜか死人が出て、気付けば生き返るはちゃめちゃな展開がくり広げられます。
連載開始早々アンケート結果が芳しくなく、試行錯誤の結果、本当に錯誤してしまったようです。しかし、無茶苦茶を力業で押し通すのが画太郎流。他では決して見られない理不尽が魅力でもあります。
「『てめーらにはおしえてやんねー!!!!! くそしてねろ!!!!!』
まさに外道!!!」(『地獄甲子園』より引用)
この有名すぎるフレーズは本作が出典。一体どんな場面で使われた台詞なのか、ぜひ一読してお確かめください。それは「まさに外道」。『地獄大甲子園』のタイトルで再刊行されていますが、こちらの作品は番外編などが省かれているのでおすすめは『地獄甲子園』です。
取材中の彼は、奇妙な老人を目撃します。老人は釣りをしていたのですが、釣り糸の垂れる先がなんと住宅地のマンホール。道ばたで釣りをする姿に呆気に取られていると、今度は全裸の老婆が現れました。2匹の犬を散歩させる老婆が猛烈な勢いで走ってきて、そこでとんでもないことが起こってしまいます。驚きの余り画太郎は思わず叫びます。
「は……はうあ!!!」
- 著者
- 漫 画太郎
- 出版日
- 2009-10-20
優しいパステル調の表紙には、柔和な画太郎(?)に寄り添うように子供や動物達が集まり、まるでおとぎ話の絵本のよう。ご安心ください。中身はいつも通り下品でめちゃくちゃな漫☆画太郎作品です。
本作はビジネスジャンプ連載のオムニバス短編『世にも奇妙な漫☆画太郎』、そのコミックス未収録作品を中心とした短編集となっています。ファンお馴染みのコピーによるコマ使い回し、トラック轢殺オチはもはやマンネリズムを超越して芸術の域。収録作『ランドセル』に登場する女の子はファンの間で語り草になるほどの可愛さで、一見の価値あり!?
また、秋田書店連載の縁で実現した『浦安鉄筋家族』の浜岡賢次のコラボ合作漫画も収録されており、不条理ギャグ二大巨頭による夢の共演も楽しめます。
ミトコンドリア大王の治めるミト王国には、13歳になるお姫様がいました。大王の孫、マゴコンドリア姫です。過保護な大王によって監禁状態のマゴ姫は外界を知りません。マゴ姫は、かつて城に忍び込んだ伝説の怪盗パパンのように、泥棒の技を磨いていつか脱出することを考えています。
ダウジング能力を使い、ついに念願叶って城から脱出したマゴ姫。ひょんなことからパパンを継ぐパパン2世の少女・ヌスミと出会います。姫のお目付役の忍者、お汁も加わった3人は、「7個集めても何も願いごとの叶わない龍の玉」を集める旅に出ることなりました。
- 著者
- 漫☆画太郎
- 出版日
- 2011-07-04
漫☆画太郎の描く女の子は可愛い。ファンや一部の漫画好きには有名ですが、本作品を見れば一目瞭然。皺だらけの醜悪な「ババア」キャラを描く漫画家と同一人物の仕事とは、とても思えません。キラキラふわふわしたキャラ造形は、萌え漫画と比較しても充分通用するレベルにあります。
しかし、ヒロイン3人が何の役にも立たないお宝を巡ってキャッキャうふふする話……ではありません。もちろん画太郎作品らしく、彼女達以外は、いつも通り汚いキャラばかり出てきます。マゴ姫、ヌスミ、お汁は毎回のように彼らに酷い目に遭わされたり、彼らを酷い目に遭わせたりします。主要3キャラの可愛さとのギャップが病みつきになる、おすすめ漫画作品です。
世間に絶望して、首でも吊りかねない中年サラリーマン。腹に一物抱えた、政治家風の悪そうな高年男。怒りに燃えて、今にも火を噴き出しそうな婦人。涎を足して、虚ろな視線のお爺さん。彼らに漫☆画太郎が語りかけます。
「そんなかお にあいませんよ」
「さあ わらって」(『わらってごらん』より引用)
思わずみんなにっこりいい笑顔。
- 著者
- 漫 画太郎
- 出版日
- 2004-03-04
本作品は漫画というより、相田みつを風のモノクロ画集です。そこに描かれるのは美男美女ではなく、画太郎渾身の筆致による、負の感情を湛えた汚い中高年の姿。そして彼らは「わらって」の一言を受け、次のページで渾身の輝く笑顔を見せてくれます。
浮かない顔と笑顔が交互に描かれるだけの本作品。これは中高年の、バリエーション寄せ集めでしょうか?あるいは画太郎的ワンパターンの極地?いいえ、これはもうシュールレアリスムの芸術です。
終盤に行けば行くほど、人物の極端なギャップが描かれるようになります。あまりの落差に吹き出すこと必至。まるで漫☆画太郎とのにらめっこ勝負のようになっていくでしょう。笑うと負けよ。でも笑ってしまう。
「そう そのほうがいい」(『わらってごらん』より引用)
あるところに、お爺さんとお婆さんが住んでいました。お婆さんが川で洗濯をしていると、上流から大きな桃が流れてきました……。それから10年後、荒くれ者とともに山賊行ためを働く若者がいました。彼こそ、毎夜初代桃太郎の話を聞かされ、グレてしまった2代目桃太郎です。
「オレの名前はジョニーだ――ッ!! 桃太郎じゃねぇ――!!!」(『つっぱり桃太郎』より引用)
育ての親である山田太郎、つる夫妻は、桃太郎、もといジョニーに望まぬ役割を押しつけたことを反省し、3人はついに和解しました。同じ頃、初代に退治されて大人しくしていた鬼が突如蜂起。村は鬼に襲撃され、山田夫妻は殺されてしまいました。復讐を誓ったジョニーは鬼退治の旅に向かいます。
- 著者
- 漫 画太郎
- 出版日
- 2003-08-19
『桃太郎』といえば、日本でも有数の作品。桃から生まれた桃太郎が、3匹のお供を従えて鬼退治、というあらすじは皆さんご承知のことでしょう。漫☆画太郎が世界観を大胆にアレンジしてその続編を描くというのだから、これはもうただで済むはずはありません。
時は流れて鬼退治から100年後。『北斗の拳』に登場する世紀末暴走集団にようにバイクを乗り回し、狼藉を働く荒くれ者・ジョニーが主人公。『桃太郎』の続編で、桃太郎の2代目なのに名前が違うし、お供はいるが犬、猿、キジじゃない、という画太郎ワールドが展開されます。
お馴染みの「ババア」キャラや、グロシーン、無意味なコマのコピーによる天丼ギャグは健在。これまでの長期連載作とひと味違うとこがあって、なんとめちゃくちゃながらも一応ストーリーが進むんです。数話分かけた展開をまるごと「なかったこと」にされるのも珍しくない画太郎作品にあって、奇跡的な1本といえるかも知れません。
古代中国風の平和な世界に、突然妖怪が復活して押し寄せました。襲われた村の長老は、かつて妖怪を駆逐した仙人、萬々(まんまん)の伝説を語ります。村の若者は助力を得ようと、大急ぎで仙人の住む萬々山を訪ねました。しかし、あいにく昼寝中だった萬々は嘆願を聞こうともしません。
若者は萬々の弟子、娘々(にゃんにゃん)に妖怪退治を託し、息絶えます。人のよい娘々は力になろうと考えますが、使える術はたった1つしかない半人前。果たして娘々の妖怪退治はうまく行くのでしょうか。
- 著者
- 漫 画太郎
- 出版日
- 2009-09-18
本作は漫☆画太郎2本目の週刊少年ジャンプ連載作品ですが、当時の読者にはすでに濃厚で品のないグロ作風と知られていただけに、主人公、娘々のビジュアルは驚きをもって迎えられました。本作品以後10年ほど同様の美少女キャラが描かれることはなく、画太郎本人ではなくアシスタントが描いていた、とまことしやかに囁かれていたとか。
中身はいつも通りの画太郎節。他作品との差異は、やはり娘々の存在です。画太郎漫画の登場人物とは思えないほど愛らしくて品行方正な彼女が、主に画太郎ワールドの餌食となります。彼女は死んだ妖怪の体液や吐瀉物を浴びるなど酷い目に。しかし、悲劇的であればあるほどヒロインの可憐さが際立ちます。
妖怪退治については、娘々の実力ではなく周囲の状況や幸運の積み重ねなどによって行われます。凶悪な妖怪と、それよりもさらに凶悪な仙人、萬々の強烈な応酬も見所です。
世間はとかく外見や身分に弱いものです。日本の最高学府、東大の学生ながら影では犯罪を繰り返す若者。彼が身分を明かせば誰もが安心、信用してしまう。そんな男の前に老人が現れて……。
- 著者
- 漫☆画太郎
- 出版日
本作はGAGキング受賞作『人間なんてラララ』、漫画家デビュー作『DRAGON BALL外伝』などの初期短編および未単行本化作品を収録した短編集となっています。画太郎本人は長期連載が苦手と公言していますが、その反面、短編作品には光るものがあります。短い紙幅を独特の感性と勢いで一気に語り尽くす手腕は、さすがの一言です。
最初期ながら『DRAGON BALL外伝』の評価は高く、早くも才能の片鱗が感じられます。同作のタイトルはもちろん鳥山明の超有名漫画のパロディですが、中身は欠片も関係ありません。しかし、同時代の小学生にとっては共感できる「あるあるネタ」となっていて、ドラゴンボールとは無関係なのにドラゴンボールが重要な位置を占めるという怪作です。
映像化された『ババアゾーン』の他、『珍遊記』の番外編なども含まれており、非常にバラエティ豊かな短編集となっています。
舞台は「蜀」ならぬ「食」の国。
持ち前の妖力で都を荒らし回る、山田太郎という男がいました。太郎の行状に困り果てた山田夫妻は、旅の僧侶、玄じょうに引き取ってもらうよう懇願しました。玄じょうは太郎を調伏し、その妖力を奪い取ります。
妖力の抜けた太郎は、頭に3本しか毛のない猿のような姿になりました。そして玄じょうは太郎を引き連れて天竺を目指します。
- 著者
- 漫 画太郎
- 出版日
- 2009-05-19
本作品は1990年から連載された、ギャグ漫画です。連載時期はいわゆるジャンプ黄金期に当たり、リアルタイムの読者にとって漫☆画太郎といえば、この作品のイメージが強いのではないでしょうか。
中国の伝奇『西遊記』をモチーフに、天竺を目指す壮大な物語かと思いきや、脱線に次ぐ脱線で話はまるで進みません。下ネタお下劣作風に、ドラゴンボールやドラゴンクエストなど人気作品のパロディがぶち込まれ、小学生男子が呵々大笑する展開がくり広げられます。
1年ほどであえなく打ち切られた本作品ですが、2009年には『珍遊記2~夢の印税生活編~』という続編が描かれました。そちらの主人公はなぜか『まんゆうき』の娘々となっていますが、引き続き山田太郎も登場するのでぜひ合わせてお楽しみください。
ロシア文学作品を代表するフョードル・ドストエフスキーの名著、まさかの漫画化。さすがの画太郎も気合いを入れたと見えて、名前を「漫F画太郎」に改名して臨みます。ちなみに改名自体はこれまでにもちょくちょく行ってきました。
ロシア王国に、人間心理を知り尽くしたと豪語する、主人公の青年がいました。天才を自称する彼は、自身を「ゆとり」と罵った質屋の老婆の殺害を計画します。一分の隙もない計画は順調に進むかに見えましたが……。
- 著者
- 漫F画太郎
- 出版日
- 2011-10-08
『罪と罰』をご存知の方はお気づきかと思いますが、この時点で原典とは異なります。主人公もロージャ・ラスコーリニコフではなくエビ山エビゾー。
貧乏なところと質屋の老婆殺害計画は変わりませんが、動機や計画以後の展開はまるで別作品です。生活苦の末に正義感から悪徳質屋を殺害し、罪の意識に苦しむラスコーリニコフの姿は影も形もありません。
本作品で特徴的なのはやはり表紙でしょう。1巻はEnomotoの原典を想起させる重厚な美麗イラスト、2巻はかんざきひろによる流行のラノベ風萌え絵。3巻はどちらとも方向性が異なる『バキ』作者の板垣恵介、という風に一見読者を騙すがごとき装丁になっています。
しかし、1度ページをめくればいつも通りの画太郎ワールド。読者に面食らわせる文字通りの先制パンチです。
名著を大胆にアレンジした画太郎版『罪と罰』。なんと珍しく打ち切られることなく最後まで描き切られ、無事完結した奇跡の1本です。どのような結末を迎えたかはぜひご自分でお確かめください。
ミト暦310年7月10日、アンゴルノア率いるエイリアンが地上へ攻めてきました。男は食われ、女は犯され、ミト王国は滅亡の危機に陥ります。しかし、王国最強の9人の勇者がたまたま居合わせたおかげでことなきを得ました。英雄と讃えられるべき勇者達は、なぜか忽然と姿を消します。
実はアンゴルノアは王女・マツコを妊娠させていました。赤子はミトコンドリアと名付けられ、名君として治世を行います。彼こそ後のミトコンドリア大王でした。勇者はその真実を秘匿するために自ら表舞台を去ったのでした。
そして100年後。ミトコンドリア大王の孫、マゴコンドリア姫の「7個集めても何も願いごとの叶わない龍の玉」集めの旅が再開します。
- 著者
- まん○画太郎
- 出版日
- 2014-08-09
かつて打ち切られたガールズファンタジー漫画『ミトコン』。「ペレストロイカ」はロシア語で「再構築」を意味します。本作品『ミトコンペレストロイカ』はその名のとおり続編であり、同時にリメイクでもあります。
物語は発端となる過去からスタートし、序盤は『ミトコン』の展開をなぞる形に。画太郎のお家芸コピー&ペーストと思わせて、なんとしっかり描き直されています。それどころかブラッシュアップまでされて、まさに「再構築」。
また「ペレストロイカ」は「改革」も意味します。掲載誌を少年向けの「ジャンプスクエア」から青年向けの「コミック@バンチ」に移した本作は、表現規制が緩和されてさらにパワーアップ。画太郎漫画なのでグロはいつも通りですが、エロがいつも以上に過激になっています。
主要登場人物のマゴ姫、ヌスミ、お汁の3人は健在。今作でも引き続き可愛らしい彼女達が酷い目に遭わされたり、酷い目に遭わせたりします。過去作ではなかったお色気シーンが増量された分、さらに過酷になったといえるかもしれません。
お馴染みの「ババア」キャラ、下ネタ、汚物表現、お決まりの台詞にコピー&ペーストのワンパターン。この1作に漫☆画太郎の魅力の全てが詰まっていると言っても過言ではありません。
いかがでしたか。漫☆画太郎への認識が改まったかと思います。酷い部分も確かにありますが、癖になる何かがあります。同好の士と語り合って認識を共有するところまでが、画太郎ワールド。ぜひ知り合いにお薦めして犠牲者、もとい仲間を増やして楽しみましょう。
『ミトコンペレストロイカ』について紹介した<『ミトコンペレストロイカ』に画太郎先生の才能溢れるw おすすめのワケは>の記事もあわせてご覧ください。