定期的にワイドショーを騒がせている不倫報道。イケナイとわかっているのに、なぜ彼らはその衝動を止めることができないのでしょうか。燃え上がる想いと背徳感、そして支払わなければならない代償……さまざまな感情がうずまく不倫がテーマの漫画を、おすすめ順にランキングで紹介していきます。
不倫は片想い状態では成立しません。2人の想いが通じ、なおかつ肉体関係を結ぶと、「不倫」という言葉の枠組みにガッチリはまります。人が不倫をするきっかけのひとつはセックスレスだそうです。
『1122(いいふうふ)』は結婚7年目、相原一子(あいはらいちこ)と二也(おとや)の仲の良い夫婦の物語。しかし二也は一子以外に、1児の母である柏木美月という恋人がいました……。
- 著者
- 渡辺 ペコ
- 出版日
- 2017-05-23
物語の冒頭から夫が不倫をしているなんて、まったくいい夫婦じゃない……と困惑した読者も多いのではないでしょうか。しかし本作では、なんと妻公認の不倫なのです。
子どものいない相原夫婦は、結婚7年目の仲良し夫婦。二也は家事も仕事もできるハイスペック男子です。しかし、かつて一子が拒んだことをきっかけに、セックスレスになっていました。
二也はお花の教室に通っていて、毎週木曜日は教室に行った後にお泊り。妻の待つ家には帰らず、恋人と過ごすのです。
夫婦とは、最小単位の家族。作中には、結婚や夫婦に関するアンケートの結果や、一子の友人たちの会話など、女性の赤裸々な意見も載っています。不倫を容認する彼女たちが作る家族の形から目が離せません。
セックスは、本来であれば相互の了承があってなされる行為です。しかしなかには、立場や暴力などで屈服させ、むりやり身体を奪う場合もあります。
圧倒的に加害者側に非があるにも関わらず、被害者の多くは「自分が悪い」と自らを責めてしまいがち。周囲の人からも好奇の目を向けられるため、口を閉ざしてしまうことも多いのです。
そんなある種閉鎖的な問題に一石を投じたのが本作です。
- 著者
- 鳥飼 茜
- 出版日
- 2014-02-21
『先生の白い嘘』では、女性だけではなく男性の性被害者も登場し、男女の性差について描いていきます。
原美鈴は24歳の高校教師。内向的な性格で外見も地味であるせいか、周囲からは恋愛に疎いと思われていましたが、実は誰にも言えない問題を抱えていました。実は友人の引っ越しを手伝っていた際、友人の彼氏からレイプされてしまったのです。関係は今でも続いていて、美鈴は女である自分自身を憎んでいました。
ある日彼女は、担任をしている生徒の新妻祐希から、女性へのトラウマを打ち明けられます。少年は、アルバイト先の女性からむりやり性行為を迫られたせいで女性の性器が怖くなり、EDを発症して悩んでいました。お互いの本音を吐露するうちに、2人の関係が変わっていきます。
美鈴と友人の彼氏の関係は、一種の不倫。しかし力関係は一方的で、彼女にとっては肉体的にも精神的にも苦痛しかもたらしません。自分自身を痛めつけ、すり減らして生きる美鈴の姿に読者の心も痛みます。
『先生の白い嘘』については<衝撃漫画『先生の白い嘘』をネタバレ考察!現代の隠れた格差、生きづらさ>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
不倫は妻や夫のいる人が他者と交際する、肉体関係を持つことを指しますが、それが1人とは限りません。中には二股どころか三股、四股という猛者もおり、不倫していた相手同士で鉢合わせ、修羅場になったなどというエピソードが、テレビなどで面白おかしく語られることもあります。外部から見れば面白い話で済みますが、当事者たちはどのような気持ちなのでしょうか。
『スマ倫な彼女たち』は、複数不倫を扱った作品。主人公の長谷川倫が、妻子のある身ながら、複数の女性と交際をする様子が描かれます。破滅的ではなく、セクシーでありながらライトな雰囲気があり、恋愛のドロドロ感は薄め。とはいえ、女性同士の暗黙の戦いといった場面もあり、倫とともに読者もバレるかも、というハラハラ感を楽しむことができます。
- 著者
- 沖田 龍児
- 出版日
- 2015-04-09
長谷川倫は不動産会社に勤めるごく普通のサラリーマン。妻とは結婚5年目、3歳になる娘がおり、幸せな家庭を築いていました。しかしそれは、倫の表の顔。裏側では複数の女性との、やめられない不倫関係が続いていました。
相手の女性は、キャバクラ嬢のさやかや、上司の絵梨、初恋の女性である新庄に、料理研究家として活躍する芸能人の亜季など、いずれも美人揃い。やめよう、やめようと思いながらも不倫関係をやめられない倫に、羨ましさと同時に共感する男性読者は多い事でしょう。優柔不断なのに関係を続ける努力を怠らないというところに、感心してしまいます。
倫が不倫をやめようとしつつも、関係を続けてしまうため、不倫をしていく女性は増える一方。妻以外の人間は、不倫相手であるという自覚があり、妻への優越感もあるためか、大胆な行動に出るところなど、女性の心理の描写も巧みです。優柔不断なダメンズ倫の複数不倫、ハラハラ感満載の不倫ハーレムをお楽しみください。
男性の不倫は、家庭を保険に火遊びをするという感覚ですが、女性は不倫をするとその恋に引きずられてしまいがちです。相手の家庭を崩壊させてしまったり、自分自身も傷つき、仕事を辞めざるを得なくなったり。不倫の果ては破滅しかないとわかっていても、相手への気持ちがあるために、そこから抜け出せず、気持ちの重さの分だけ自身の枷となってしまうのです。
『サプリ』は、働く女性のリアルを描いた作品。登場するのは、30代前後の仕事に打ち込む女性たち。彼女たちは激務をこなしながら、仕事や恋の悩みに向き合っていきます。女性の婚姻年齢は年々上昇していますが、30歳前後というのは、わけもなく焦りが出始める時期。それだけに、同じ年代で仕事に打ち込む独身女性には、共感できる部分が多いはずです。
- 著者
- おかざき 真里
- 出版日
- 2004-06-30
主人公は、華やかながら長時間労働は当たり前というブラック業界でもある、広告業界に勤める藤井ミナミ。彼女は彼氏から仕事と自分という2択を迫られたとき、仕事を選んでしまうほどの、ワーカーホリックです。仕事以外に何もない、と気が付いたミナミは、自分自身の事、仕事についてなど、様々なことについて深く考えるようになります。
本作にはミナミ以外にもいろいろな立場の働く女性が登場します。ミナミ自身も、実は二股をかけられていたことが発覚するのですが、家庭がありながら不倫がやめられない田中ミズホの対比が面白いところ。堅実な考えを持った渡辺ユキも登場し、様々な女性の考えを、漫画を通して知ることができます。
メインは仕事に通じる事柄ですが、仕事とプライベートは地続き。不倫の恋についての提言もあり、なるほどとつい唸ってしまうほどの説得力があります。広告業界が舞台ということもあり、皆オシャレな雰囲気ですが、働いているという点では、キャラクターたちも読者も変わりません。共感する部分も多く、女子会をしているような雰囲気を味わえる作品、読めば元気になること間違いありませんよ。
不倫をするのに性別は関係ありませんが、家の外に出る機会が多い男性のほうが、出会いのきっかけは多い事でしょう。現在は共働き世帯も増えましたが、少し前は、女性が家庭を守るものというのが常識とされていました。一歩家庭という枠組みを超えてしまえば、男性は自由だったのです。
戦国武将の中でも、農民から成りあがった豊臣秀吉が絶大な人気を獲得しているように、主人公が成りあがり、トップに立つ話というのは人気のある題材です。『課長島耕作』を含む「島耕作」シリーズは、1980年代から現代までを舞台にした、サラリーマンの一代記。団塊の世代である島耕作を主人公に、サラリーマンをリアルに描いています。
- 著者
- 弘兼 憲史
- 出版日
- 2008-05-16
島耕作が出世していくサクセスストーリーがメインのシリーズですが、それと同時に様々な女性との関係を描く、不倫漫画でもあります。シリーズ中でも本作は、課長クラスとなった島耕作の物語であり、最も不倫描写が多い作品。仕事よりもオフィスラブに精を出しているのではないのか、というくらいの頻度に驚かされます。
女性にとっては微妙な気分になる可能性は高いですが、本作に登場する不倫は、身代をつぶすほど濃密なものではなく、ちょっとした遊びのような感覚。男性がどのような感覚で女性との関係を楽しんでいるのかという心理を、垣間見ることができます。
仕事と不倫、両方に力を注ぐ島耕作のバイタリティには心底敬服。不倫をしていても何故か嫌味が無いのは、描写自体は淡々としているからでしょうか。本作が描かれた年代が1983年から1992年ということもあり、女性としては反論したい部分もあるかと思いますが、これも日本の辿ってきた歴史の一部であるともいえます。1980年代の考え方と、バイタリティ溢れるサラリーマンの姿を垣間見られる作品です。
男女問わず、自分のパートナーが他者と肉体関係を結ぶというのは面白くないもの。いわゆる寝取られというものですが、寝取られた側からすると、敗北したような気持ちになります。気持ちが自分から離れる事も耐え難い事ですが、肉体にコンプレックスがあった場合は、心理的なダメージがより増えるということは、想像に難くありません。
男性は肉体を武器に、物理的に戦うことができますが、女性が身体を武器に戦うとなると、やはり性的な関係が深くかかわってきます。『リベンジH』は、とある女性の復讐劇を描いた作品。美貌と恵まれたプロポーションを武器に復讐をしていくのですが、その的確すぎる復讐方法に、戦慄を覚えます。
- 著者
- 仙道 ますみ
- 出版日
- 2015-03-27
鈴音秘芽子は、美人で抜群のプロポーションを持ちながら、彼氏はおらず独身。接客業をしていましたが仕事を辞め、故郷に帰ってきました。そこで、かつて同級生だった高柳眞由美と再会。4歳の娘と、夜の関係がご無沙汰な夫を持つ眞由美は、ストレスが貯まり、つい秘芽子に愚痴を吐露します。酒を飲み、酔った眞由美は秘芽子と肉体関係を持ってしまいました。一度は連絡を拒否したものの、再び話をしてしまった眞由美に、秘芽子は旦那への仕置きを提案します。
一見すると男性へ復讐する話に見えますが、秘芽子の真の復讐相手は女性。かつて地味な容姿をしていた秘芽子をいじめていた同級生たちに、身体を使って復讐をしていく物語なのです。30代を過ぎ、出産を経験すると、どんなに努力しても体型は崩れるもの。そんな体型をコンプレックスに感じる女性たちの前に現れる、完璧なプロポーションの持ち主である秘芽子は、さぞ脅威に映るでしょう。
秘芽子は同性であるためか、女性の傷を的確に抉ってくる作戦を用いてきます。その的確な手腕に、感心しつつも、背筋がうすら寒くなるのを押さえることができません。相手に合わせて復讐の手段を変えていく、秘芽子の知恵と追い詰めていく見事な手腕をお楽しみください。
優しく仲の良い両親に、まっすぐに育っている子どもたち。仕事は順風満帆で収入は安定し、特に不安も不満もない、絵にかいたような幸せな家庭があります。しかし、何かが欠ければバランスは崩れるもの。幸せで絆がしっかりとあると思っていた家庭でも例外ではありません。
『幸せの時間』は、一つのきっかけで幸せな家族が崩壊していく姿を描いた物語。きっかけというのは不倫です。家族以外の女性と関係を持つというのは、結婚したパートナーに対しての裏切りと同時に、家族に対する裏切りでもあるのでしょう。大切に育んできたものが、男女の関係という、抗いがたい本能的な部分で崩壊していく様に、どこかやるせなさを感じてしまいます。
- 著者
- 国友 やすゆき
- 出版日
浅倉家はエリートサラリーマンの達彦、妻の智子、良介、香織の4人家族。達彦と智子は互いを尊重し、支え合いながら家庭を築いてきました。相手を認めるという姿は、まさしく理想の夫婦。新居に引っ越し、絵に描いたような幸せな家族は、穏やかな日常を過ごすはずでした。
しかし、智子が交通事故を起こしたことで、幸せな家庭が少しずつ崩壊していってしまいます。智子が事故を起こした相手は、高村燿子。耀子と不倫関係になってしまった達彦でしたが、家族にバレたうえに、横領も発覚するという最悪の事態に。子どもたちは家を離れ、智子も不倫をするなど、負の連鎖が続いていきます。
交通事故から不倫に発展というまさかの展開ですが、その後に続く転落劇は、現実にありそうな出来事。そのせいか、妙にリアルに感じられてしまいます。読者は見守るしかなく、歯がゆい気持ちを味わい続けるところが辛いところ。負の連鎖はどこかで食い止められるのか、不倫から始まる崩壊劇の行方を見届けてください。
人は基本的に愛されたい生き物です。それが多ければ多いほど、精神面でも肉体面でも満たされるもの。しかし、そこに立ちはだかるのは倫理観と一夫一妻という法律の壁です。それでも人は、多くの相手と愛ある関係を結ぼうと力を尽くすのです。
『フリンジマン』は、愛人を作ってみたい男性たちの物語。ある日の雀荘で、彼らは多い時で愛人が5人もいたという井伏真澄と出会います。仕事はできないけれど愛人作りだけは任せとけという井伏に、田斉、満島、安吾の3人は愛人作りの極意を教えてもらうことに。
- 著者
- 青木 U平
- 出版日
- 2013-12-06
かくして愛人教授井伏と愛人を作るために頑張る「愛人同盟」3人の、目指せ愛人獲得という、世の女性が見たら顰蹙を買う野望がスタートしました。しかし百戦錬磨の井伏の教えがあろうと、そう上手く事は運びません。彼氏のフリをお願いされたり、実はバツイチであることを隠していたりと、女性たちもなかなか強かな面を見せます。
基本的には愛人を作るという目的に4人が邁進していく姿をコミカルに描きますが、根底にあるのは人を愛するという心。大学生のアキの相談から始まった、彼女とアキの好きな相手を別れさせるという一連の騒動の中で、恋愛とは何かという命題の答えを垣間見ることができます。
愛人教授にライバルが登場したりと、なかなかドタバタコメディの色の強い本作。不倫に対するイメージが変わるかは読者次第ですが、愛を得るために奔走する4人の男たちの情熱には一目置きたくなる、勢いのある作品です。
『フリンジマン』については<『フリンジマン』に学ぶ愛人の作り方!?ヤンマガのご乱心漫画をネタバレ!>で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
恋は1人でするものではない、とはよく言いますが、不倫も結局は双方の合意の元で結ばれる関係です。中には相手に恋人や妻がいたことを知らずに付き合っていた、なんてことも。悪気なく相手を翻弄する人の中で、特に女性は小悪魔などと称されます。
小悪魔な女性への恋を拗らせたショコラティエと、彼を取り巻く人々の恋模様を描いた『失恋ショコラティエ』。本作には小悪魔女子が登場します。高橋紗絵子は、ふわりと柔らかな空気を纏った女性。男性にとにかくモテるので、彼氏が途切れたことがありません。
- 著者
- 水城 せとな
- 出版日
- 2009-01-09
高校生の時、紗絵子に恋をした主人公の小動爽太は、紗絵子に交際を申し込み、OKをもらいます。しかし、元カレとヨリを戻した紗絵子に「付き合っていたつもりはなかった」とあっさりフラれてしまうハメに。失意の爽太は紗絵子へのこじれた恋心を抱えたまま、25歳になってしまいました。
フランスで修行をし、ショコラティエとなった爽太の元を紗絵子が訪ねてきます。もしや、と期待する爽太ですが、紗絵子は結婚するからウェディングケーキを作ってほしい、と爽太に依頼。そんな時、意気投合したショコラティエ六道誠之助の誕生パーティーで、一途な片想いをしているモデル加藤えれなと出会います。互いの片想いを語り合った2人は、合意の上でセックスフレンドに。紗絵子への想いを抱えながら、爽太の日々は過ぎていきます。
爽太や多くの男性を翻弄する小悪魔女子、紗絵子以外の登場人物は、苦しい片想いや三角関係、はたまた不倫関係に頭を悩ませています。全員恋愛負け組かと思いきや、紗絵子の結婚生活にも波乱が待ち受けていました。予想もしていなかった結婚生活から夫から心が離れ、爽太に気持ちが傾く紗絵子。対する颯太はこじれた恋心に翻弄されながらも、自身の心が誰に向かっているのかを測ります。
最終巻ではそれぞれの関係や想いに決着がつきます。爽太が長い間、人生のすべてともいえるほど抱え込んでいた恋心に、どのような答えを出すのかが見どころのひとつ。様々なタイプの女性の、恋愛へのスタンスも細かく分析され、共感度はかなり高めです。胸キュンがこれでもかと詰まった、大人のための恋愛漫画、甘いものと一緒にお楽しみください。
本作は日常から外れてちょっとしたアクシデントに見舞われた人妻たちが様々なシチュエーションで夫以外の男性と関係を持ってしまう様子が描かれています。
浮気をしている夫の精神的圧迫に耐えられなくなた人妻、息子の担任教師に怪我をさせてしまった人妻、夫の部下を好きになってしまった人妻などの「非日常」を切り取った短編集です。
- 著者
- 黒澤R
- 出版日
- 2017-01-19
本作の魅力は何といっても人妻たちが恋をする様子がエロチックに、生々しく描かれているところ。性行為のシーンがリアルに描写されているからというのもありますが、それよりも彼女たちの迷いや葛藤が丁寧に描かれているところが色っぽいのです。
日々の抑圧された欲求をおずおずと出し始める様子や、一般的には「いけない」とされる不倫という関係にはまってしまう彼女たちの表情はセクシー。妻というよりも「ひとりの女性の赤裸々な様子が表されています。
不倫にまつわる心の変化や闇がリアルに描かれた、どこか生っぽい恋愛漫画の短編集です。
同窓会を機に再会した4人は過去の想いが再燃し、互いに惹かれていきます。離婚を経験した健太は、過去に自分からフった、今は人妻のあけひと想いを通わせるようになり、昔からモテて、現在も女に不自由していないものの、家庭で居場所がない遼介は薫子と頻繁に会うようになっていくのです。
しかし彼らの恋は学生時代のように相手を思う気持ちだけあればいいというものではなくて……。
- 著者
- 柴門 ふみ
- 出版日
- 2011-11-30
『東京ラブストーリー』や『あすなろ白書』で有名な柴門ふみの恋愛漫画です。同窓会で再会した男女が恋に落ちるというと、物語ではありふれた設定のようにも思えますが、その偶然性やドラマチックな展開がリアルに描かれています。
また、本作の見所は主人公・健太の逡巡の様子。過去に悔いの残る振り方をしたことであけひがずっと忘れられず、大人になって再会した後に彼は彼女の存在の大切さに気づきます。
しかし幼かった頃よりもしがらみが多くなり、ふたりは人妻と離婚経験者という一筋縄ではいかない関係性になってしまっているのです。そんな時間が経ってしまった悲しみや、それでもどうしようもなく惹かれてしまうという熱情の様子が丁寧に描かれています。
過去から現在までの心の変化を不倫を通して描いたおすすめ作品です。
単身赴任の夫・純平と離れ、5歳の娘とふたり暮らしをしている杏寿。彼女はある日、純平から部下の子の家にあがってしまい、その子の夫に不倫していると誤解されたという話を聞かされます。
関係を持っていないならまだ許せるとはいえ、誤解されるような行動をした純平に杏寿はショックをうけました。しかし純平の報告のあと、相手側の夫から知らされたのは、ふたりが実際には関係を持っており、しかもこの不倫が2度目だという事実でした。
そこから今までの平穏だった日常は壊れていき……。
- 著者
- 草壁 エリザ
- 出版日
- 2015-05-13
本作は女性向け漫画雑誌に連載されていたということもあり、既婚女性のリアルな悩みが描かれています。
仲が悪い訳ではないけれど最近セックスレス気味の杏寿と純平。そういう行為がないことに対する女性の不安と、そんな不安には全く気づかず茶化すような態度をとる純平は、しっかり相手と向き合いたい女性と面倒くさい話は極力避けたい男性の様子がリアルに描かれています。
この他にも子供がいることですぐ別れられない妻の葛藤や、子供がいるからこそふたりの関係がより強固になる様子など、結婚している人なら特に共感できるシーンが多い本作。もちろん特定のパートナーがいたことのある人なら誰しも想像に難くないものばかりなので、既婚者でない方にもおすすめです。
美しいだけでない、現実的に面倒くさくてすぐに終わりにはならない不倫という事件の前後の様子をぜひご覧ください。
晩婚化が進んでいるとはいっても、30を過ぎると本人も周囲も焦りを見せはじめるもの。特に女性は外見や体力の衰えを感じるせいか、より強くプレッシャーを感じることでしょう。
『東京タラレバ娘』は、あの時こうだったら。こうしていれば。そう言い続けたら30を超えてしまい、結婚どころか恋人の影すらない鎌田倫子が主人公。友人の山川香、鳥居小雪とともに、居酒屋に集まっては、「タラレバ」な過去を語り、飲んだくれていました。ある日、金髪の美青年モデルKEYに「タラレバ女!」と罵倒されたことで、現実を見つめるようになります。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2014-09-12
倫子は恋人がおらず、結婚のために恋人を作るところからスタート。美人でネイルサロンを経営している香と、父親が経営する居酒屋「吞んべえ」の看板娘小雪は、道ならぬ恋に惑うことになります。
香は元カレの涼とよりを戻すものの、彼にはモデルの彼女の存在が。別れなければという思いと今の彼女と別れた後の関係を期待し、離れられずにいます。小雪は、ひょんなことから知り合った妻子持ちの丸井に片想い。3人の中では一番大人で、落ち着いていたと思われた小雪が、不倫の沼に落ちていきます。
彼女や妻のいる相手との関係を周囲は止めますが、それでも進んでいってしまうのは「禁断」という二文字ゆえなのでしょうか。淡い期待を持って関係を続けてしまう香も小雪も、結局は泥沼の不倫の恋に溺れ、手痛い傷を負います。
不倫はけして2人だけの関係ではなく、互いの家族や友人関係までを巻き込んでいきます。しかし、香と小雪にとっては確かに恋だったものが、周囲の目から見れば不倫となるというのは悲しいところ。人の心はままならないものだと実感する作品です。
ストーカーという言葉から受ける印象は、あまりよくないのが一般的です。行動は過激で、相手の気持ちをまるで考えず、自己中心的な恋心だけを育てている、そんなマイナスイメージしかないストーカーですが、それだけ相手を想っているという面を否定することはできません。
『あげくの果てのカノン』は、ゲル状の異星人「ゼリー」が地球を侵略しつつある近未来が舞台。東京は廃墟と化し、人々は侵略されていない地域か地下での生活を余儀なくされていました。
- 著者
- 米代 恭
- 出版日
- 2016-06-10
高月かのんは、地方に住む地上民。パティスリーで働いています。高校の時のバスケ部の先輩、境宗介に片想いしており、フラれているにも関わらず、再会を心待ちにしていました。その期間実に8年。23歳になり、職場で宗介と再会したかのんでしたが、彼は異星人を破壊する特殊部隊SLC(異星生物対策委員会)のリーダーとなっていました。
初穂という妻のいる宗介と、不倫関係に陥るかのん。かのんは初穂から、宗介はある問題を抱えていることを知らされます。ゼリーは外敵ではあるものの、高い自己再生能力を持つ生物。ゼリーを移植することで肉体的損傷を回復できる「修繕」という技術があり、ごく一部の人間が恩恵を受けることができます。
しかし、修繕は副作用を伴う不完全なもの。肉体が回復する代償として、性格や味覚の好みなどが変化する「心変わり」が起こってしまうのです。修繕を繰り返し、心変わりを起こして少しずつ別の人格になっていく宗介にはその自覚はありません。受け入れるかのんと、受け入れられない初穂。宗介を巡る2人の女性の関係や想いが、物語の中核をなしていきます。
不倫とはいえども、通常の不倫ものとは一線を画する本作。不倫に至るまでの理由や崩壊しかけた世界という舞台設定もさることながら、かのんの宗介への想いの形が、痛々しいところも、特徴だといえるでしょう。8年越しの恋を拗らせているかのんは超ストーカー気質。宗介の歴代元カノを調べてファイリングしたり、使用済み物品を集めたりと、痛さ全開。
しかし、宗介を一途に想い、出会えたことで瞳を輝かせ、その言動に一喜一憂する姿は、純粋な恋心を持った乙女そのもの。その表情の豊かさに惹きつけられ、彼女の幸せを願いたくなります。SF×不倫という、今までにない題材も新しい本作、崩壊する世界で恋を追いかけるかのんの恋の行方にご注目ください。
『あげくの果てのカノン』については<漫画『あげくの果てのカノン』の魅力を全巻ネタバレ紹介!SF×不倫の話題作>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
妻や彼女、夫や彼氏のいる相手と肉体関係を結ぶこと、または秘密の交際を行うことを、一般的に不倫と言います。不倫は良くないというのが世論であり、良い印象を抱けるものではありません。しかし、それぞれの関係に注目すると、それは本当に人に責められるべき行いなのか、判断に迷うこともあります。
『うきわ』は、社宅に住む隣り合った夫婦の物語です。中山麻衣子と隣に住む夫の上司、二葉さんは互いに心惹かれる関係。しかし、思わせぶりな態度をとりつつも、一線を超えることはありません。帰宅するとき、ごみを出すとき、そしてベランダ越しに、少しだけ話をして心を通わせる関係を続けています。
- 著者
- 野村 宗弘
- 出版日
- 2013-11-29
2人は肉体関係を結んではいないものの、心を通わせる関係です。不倫をしている状態だといえるのでしょう。その事実だけを見ると、社宅を舞台にした上司と部下の妻の不倫劇になりますが、2人が互いに心を通わせる関係になったきっかけもまた不倫であることを考えると、見方が変わってくるのではないでしょうか。
麻衣子の夫は「車の修理110番」とメールや電話番号を偽装し、頻繁に女性と連絡を取り合っています。二葉さんの奥さんは、陶芸教室に通いあまり家に帰ってきません。隣に住んでいるが故に、互いのパートナーがどうなっているのかを察する麻衣子と二葉さん。
決定的な言葉を口にすることはなく、ベランダの仕切り越しに言葉を交わす姿が哀愁を誘います。夫の浮気に心が沈んだ時、浮き輪のように心を救い上げてくれた二葉さんの存在に、麻衣子は救われます。しかし、救い上げられた先にあるのは、募る想いを成就することができない、ままならない日常。淡々と過ぎる時間が胸に迫ります。
女性は結婚をすると妻になり、子どもが生まれれば母になります。掃除に洗濯、料理に子育てと、休む間もなく日常はまわり、いつしか自分が女ではなく母という存在になっていることに気が付き、唖然とするという話も珍しくありません。
『ふれなばおちん』の主人公、上条夏はアラフォーの専業主婦。髪はボサボサ、服は適当と、身なりを気にしないタイプです。家事は完ぺきにこなし、夫の義行と娘の優美香、息子の真樹夫が元気で生活できることに幸せを感じていました。しかし、優美香はそんな母親の外見を気にしなさすぎるところを不満に思っています。
- 著者
- 小田 ゆうあ
- 出版日
- 2011-09-15
娘の愚痴を聞いていた義行は、勤めている会社に派遣社員としてやってきた、劇団で役者をしているというイケメン男子佐伯龍に、芝居で夏を誘惑してほしい、とお願いをします。嫌がる龍でしたが、社宅に住めるようにすることを条件に了承。龍は夏と会うことになります。
ミイラ取りがミイラになる。そんなことわざがありますが、龍はまさしくこの状態でしょう。夏の飾らない性格に触れ、いつしか本気の恋へと発展。対する夏も佐伯の誘惑に、女性としての華やいだ気持ちを取り戻し、美しくなっていきます。
夏と龍は互いに惹かれるようになりますが、きっかけは龍が夏を誘惑するという依頼です。肉体関係という一線を超えれば家族は崩壊することになり、家族を愛する夏は龍への恋心との板挟み状態に。夏の気持ちがわかるからこそ、龍も最後の一線を守り通します。
家族を取るか。不倫の恋を取るか。パート先の店長と駆け落ちをして行方不明となった、同じ社宅に住んでいた小牧さんと夏の対比が光ります。タイトルの「ふれなばおちん」とは、触ったらすぐにでも落ちそうな、という意味を持った言葉。触れられた夏が落ちてしまうのか否か、不安定な心が風に吹かれてゆらゆらと揺れます。
名前は個人を証明するのに欠かせないものです。生まれた時に必ず名前をもらうことにより、人間は個として存在できるようになります。『名づけそむ』は、そんな名前を巡る人間模様と、込められた思いを描く短編集です。
1巻完結で、全10話を収録。全編名前にまつわる物語が紡がれています。彼氏いない歴=年齢というOL崎岡愛子。しっかり者の学級委員長嶋真弓にほのかな想いを抱く須田柾。生真面目すぎる性格ゆえに人生が上手くいかなくなった長谷部律美など、それぞれの登場人物の人生と、名前の由来が結ばれていきます。
- 著者
- 志村 志保子
- 出版日
不倫を扱っているのは、18年前に家族を捨てて駆け落ちをした坂野三津江の物語と、「小春」という名前が嫌いな聡子の物語。三津江は、男と駆け落ちをしたものの、長くは続かずひとりパートをしながら貧しく暮らしていました。そこへ、大人に成長し結婚を控えた娘、優花が現れます。
優花は三津江に結婚式へ出席してほしいとお願いしますが、元夫は反対。悩んだ三津江は、わざと名前を書き間違えることで、優花の心が離れるように仕向けます。家族を捨てた母親と関わらないよう、唯一残してあげられた名前という結びつきを無くしてしまう。母親としての愛と、不倫の行き着く先のもの悲しさが交わり、切ない気持ちがわき出します。
「小春」という名前を嫌う聡子は、夫が小春という、偶然再会した幼馴染と結婚するために、離婚することになったという過去を持つ女性です。一人息子の一也が結婚相手に小春という名前の女性を連れてきたことで、気持ちが揺れ動きます。
聡子の物語は希望のある物語でしたが、三津江の物語は、その後の彼女の人生を考えると、やりきれなさが胸にのこることに。不倫の果てに、何もかも失う姿に哀愁が漂います。名前は子どもに贈ることができる、最初のプレゼントにして、強い結びつきを生むもの。自身の名前の由来を、改めて知りたくなる作品です。
恋愛というのは愛し愛される関係ですが、そもそもそこに至るまでの心理でつまづく人もいるでしょう。自己評価や自己肯定感という言葉が話題になっていますが、容姿に優れ仕事ができ、他者に評価されても、自己評価が低いがゆえに、わたしは恋愛する資格が無い、と思い込む人は確かにいるのです。
東京の図書館に勤めていた岩谷ヨリは、アラフォー女子。不倫関係に疲れて故郷のある中崎県に帰郷します。中崎県立図書館に勤め始めたヨリは、パーティーで容姿端麗な精神科医の真木誠と知り合いました。実は故郷の離島では同級生という真木と、ヨリは愛人契約を結ぶことに。
- 著者
- 西 炯子
- 出版日
- 2011-05-10
『姉の結婚』は、不倫に疲れて帰ってきたら、また不倫関係に落ちたという、まさしく不倫がループしている物語。ヨリは真木との関係を続けていくことになるのですが、自己と他者を冷静に分析し、常に物事から自分を一歩外に置いてみようと試みています。冷静であらねばならないという、ヨリの強い自制心の表れであはありますが、結果として気持ちを内にしまい込んでしまうのでしょう。
だからこそ、やっと口にすることができた相手を求める言葉や、顔を赤らめる姿は、雁字搦めになっていた心が少しは解放されているのだろうか、と胸をなでおろしたくなる気持ちに。自然と、ヨリが幸せになる術はないのだろうかと、彼女の気持ちに寄り添いたくなってしまいます。
不倫相手となる真木の妻、理恵はヨリとそっくりな容姿を持つ女性。真木との結婚生活は崩壊しており、多くの相手との不倫関係の後に短大時代の恩師との愛人関係に。多くの愛を求めようとする理恵はヨリと対照的な存在です。数多の愛を手に入れていたはずの彼女が、結婚や不倫という行為にどういった結論を出すのかも、注目ポイント。
本作は契約愛人関係の中で、ヨリと真木の恋愛を描いています。しかし、好きだから付き合う、とならないのが大人の恋愛の難しいところ。ヨリには素直になりなさい、と声をかけて背中を押してあげたくなる、大人の女性のための恋愛漫画です。
不倫に発展しやすいのは職場ですが、それ以上に燃え上がる、と言われるのが同窓会です。大人になった姿にときめきを覚え、一夜の関係のはずがズルズルと長引いて取り返しのつかないことになる。そんなことは珍しくありません。
渡辺美都は占い師から2番目に好きな人と結婚すると良い、と言われ現在の夫渡辺涼太と結婚したという経緯を持っています。彼女が小学生のころから想いを寄せているのは、有島光軌。偶然再会した2人は肉体関係を持ち、不倫関係に落ちていきます。
- 著者
- いくえみ 綾
- 出版日
- 2012-11-08
美都も有島も既婚者という、W不倫を描いているいくえみ綾『あなたのことはそれほど』は、美都にも有島にもあまり同情する気持ちがわかないというところが、不倫の一般的なイメージと重なります。美都は初恋を追い、有島は遊びのためと、そこには各々の身勝手な気持ちしか存在していません。
本作の見どころは、美都の夫涼太と有島の妻麗華の存在でしょう。イケメンの有島に比べては凡庸に見えるけれども、美都を一途に愛している涼太。そして有島の妻としては地味さが際立つ麗華ですが、感の鋭さは抜群。核心を突くことはなく、巧みな言い回しで不倫をする有島をじわじわ追い詰めていく姿は、恐ろしくもあり、爽快でもあります。
しかし、不倫をしていた美都と有島が攻められ、不幸になって終わる物語ではありません。涼太は妊娠疑惑のある美都に、不倫相手の子でも自分の子として育てる自身があると豪語するほどの狂気を見せ、ストーカーといえるような行動が目立つように。麗華が冷静であるせいか、互いの狂気がより増幅され、えも言われぬ恐怖感を生み出します。
W不倫の行き着く果てに、平凡な日常生活はあるのか否か、固唾をのんで見守りたくなる作品です。
不倫をしていて一番怖いのは、相手の家族と関わる事なのではないでしょうか。特に互いのパートナーが激昂することは想像にたやすく、それゆえに不倫は人間関係を打ち壊すもののひとつとして挙げられるのでしょう。
少女漫画界を長くリードし続けてきた一条ゆかりの作品に、不倫を扱った作品があります。『うそつきな唇』は、女子大生と大学助教授の不倫がきっかけに展開される人間模様を描いた物語。その大きな特徴は、主人公が不倫相手の家庭に大きく関わってしまうというところでしょう。
- 著者
- 一条 ゆかり
- 出版日
櫻華女子大学英文科に通う毬谷沙織は大学3年生。湖でおぼれた自分を助けるために父親を亡くしており、その影響なのか重度のファザコンです。父親にそっくりな大学助教授の高橋博明に想いを寄せていて、いつしか不倫関係に。
偶然知り合った高橋の妻、梗子に気にいられた沙織は、高校受験を控えた高橋の息子、ひろみの家庭教師を引き受けることになりました。ひょんなことから不倫相手の家庭に関わることになってしまった沙織ですが、関係がバレてしまったことで、愛憎渦巻くドロドロな展開になっていきます。
本作は沙織と博明、沙織と梗子という、不倫相手とその妻の関係はもちろんですが、不倫相手の子どもであるひろみとの関係もポイントになります。実は沙織の義妹、留香の彼氏でもあるのですが、そのひろみからも想いを寄せられるという泥沼関係に。いっそ現実感が薄まるのが不思議なところです。
沙織は大好きだった父親を自分のせいで亡くし、15歳で母親が再婚するという、どこか現世に身の置き所のない女性です。だからこそ、強く愛を求めてしまうのかもしれません。壊すためではないとはいえ、不倫相手の家庭に入り込んでしまった沙織が出す恋への結論を、見守ってください。
不倫という言葉には良いイメージはありません。そこには関わった人の複雑な心理が絡み合い、濃い人間ドラマを生み出します。不倫という言葉の持つ力は強いですが、それにかかわる人々の心理を知ることができる作品ばかりです。