申年だけに今年こそ読みたい「西遊記」特集!

更新:2021.11.29

2016年、干支の座はサルが主役。申年とも書きますが、「申」は稲妻の落ちる形から生まれた漢字だとか。 稲光のような激しさを持ったの孫悟空のイメージがぴったりに思いませんか!知ってるようで意外と知らない『西遊記』を楽しく読めるきっかけ本をまとめてみました。

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『西遊記』道中の案内人

著者
中野 美代子
出版日
2013-09-21

作者の中野美代子さんは中国四大小説の大長編『西遊記』シリーズを訳したひとり。

冒頭から”『西遊記』のおもしろさは、あらすじにはありません!”と言い切っていて、思わずごめんなさい!と言葉が出てしていました。というのも私も長いこと長編に挫折したまま部屋の隅に文庫を置きっぱなしだから。

本書ではこんな読み方があったのかと、本編をより楽しむための驚きの切り口が満載でした。

孫悟空の輪っかの名前は緊箍児(きんこじ)。「悪さをこらしめるためじゃないの?」とそんな単純な話ではありません!中国文化さらには孫悟空の体質に注目して、思いもよらない新解釈へと発展させています。

これだけでも面白い探求の一冊です。
 

Go to the west

著者
峰倉 かずや
出版日
2015-04-25

そもそも『西遊記』の原作を読みたいと思ったきっかけが、1997年より連載が開始されたコミック『最遊記』シリーズです。

タイトルの通り『西遊記』を題材にしながら青年誌ならではのハードボイルドなストーリーと破天荒なキャラクターたち。
三蔵法師は銃を愛用し、無邪気な笑顔を見せる孫悟空、細面でインテリズム漂う猪八戒、ワルなのにどこか優しい沙悟浄など好きにならざるを得ない要素も満載で、たちまち虜にさせられました。

その最大の魅力といえるのが彼ら登場人物が人間的であり弱さを抱えていること。
読み返すたび、私は強いメッセージを受け取ってきました。過去から逃れることはできなくとも、未来に小さな希望を見出していくことはできるはずだと。

現在もアニメ、舞台と形を多様にして『最遊記』シリーズが続いています。
 

―実は彼が微かすかな声で呟やいているのである。「俺おれはばかだ」とか、「どうして俺はこうなんだろう」とか、「もうだめだ。俺は」とか―

著者
中島 敦
出版日
1994-07-18

仲間の一人、沙悟浄に焦点を当てた異色作が『悟浄出世』と『悟浄歎異 ―沙門悟浄の手記―』。

作者の中島敦といえば、心を病んだ友人が虎に姿を変えてしまった『山月記』を思い出す方も多いでしょうが、文章の巧みさで描かれた沙悟浄。ひとりごとでブツブツつぶやく沙悟浄像にも必読の価値があります。

三蔵法師らと出会い旅する沙悟浄は言います。「生きものの生き方ほどおもしろいものはない」と。短い話ではありますが『山月記』と同様忘れられない話になることは間違いありません。

残念なことに作者の死から続編を読むことはできませんで、そのせいでしょうか。私の心には苦悩する沙悟浄が住み着いて、時折「もうだめだ」「納得いかぬ」とぼやき始めて困ってしまいます(笑)
 

お次の回のおたのしみ

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2009-11-26

私が孫悟空からモンキー・マジックを得られるのなら分身の術で決まりです。

髪を抜いてふうっと息をかけると小さい分身がわっと敵に立ち向かう。今日の生活に不要でも、もしかしたらの万が一、いざ助けを求める人物が目の前に現れるかもしれません。

ひょんなことから引きこもりを救うこと二郎と、株の取引トラブルの原因を探る五十嵐の異なった二つの物語。平凡な彼らにはどんな力があるのでしょうか。読者の前に斉天大聖・孫悟空が現れるとき、交差したストーリーが一つに繋がります。伊坂作品らしいヒーローの哲学に、「誰かを救う」そんな奇跡が起こせる力を信じたくなる、これぞモンキー・マジックでしょうか。
 

すべてはここから始まった

著者
中野 美代子
出版日

『西遊記』が本にまとめられたのは中国、1592年、明時代の終わり頃にと言われています。
その以前の時代から伝わったお話で、長い歴史のなかで親しまれた冒険譚。

サル年、孫悟空の年だからこそ、『西遊記』シリーズを読破しようと思います。
みなさまも一緒に『西遊記』に挑戦してみませんか?

今年も本を通じてのたくさんの出会いがありますように!

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